経営労務情報 令和5年(2023年)12月

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意ください。
以下は本人負担率です。
     厚生年金 = 9.15%
健康保険+介護保険 = 5.915%
(健康保険5.005 %、介護保険0.91%)
 ・雇用保険料率は以下の料率です。
(建設業=0.7%、建設業以外=0.6%)
◆建設業、運送業の残業協定が変更されます。
令和6年4月より建設業、運送業の残業協定(36協定)の上限時間が原則45時間に減少し、一般の事業所と同じになります。
申請書式も変わりますので、ご注意ください。
◆インフルエンザの拡大にご注意を。
感染が広がっています。感染対策としてインフエンザのワクチン接種もご検討ください。
◆年末調整が始まります。
大きな変更はありませんが、配偶者や扶養家族の収入確認などをしっかりご確認ください。

建設業の時間外労働の変更適用猶予されていた時間外労働の上限規制が、令和6年4月から開始されます。
◆時間外労働の傾向に職種の差
帝国データバンクの「建設業の時間外労働に関する動向調査」(2023年8月時点)では、建設業全体の時間外労働は前年を下回っているものの職種により増加していました。
「建設業全体」の時間外労働DI(※)= 48.8
 ・「はつり・解体工事業」=54.4
 ・「内装工事業」=52.4
 ・「建築工事業(木造建築業を除く)」=51.8
 ・「鉄骨工事業」=51.6
※時間外労働DIは、0~100の値をとり、50超が増加、50未満は減少を表しています。
◆職種に応じた対策を
「建設業」全体では48.8(年平均も48程度)で減少していますが、土木工事業(造園工事業を除く)の44.8を除く職種が50を超えています。来年4月1日まで残された時間は多くありません。それぞれの職種の特性を踏まえ、時間外対策を具体化していく必要があります。

中途採用は即戦力重視の傾向株式会社マイナビが2023年1~7月に中途採用をした企業の人事担当者を対象(有効回答数1,600件)とする「中途採用実態調査」を実施しました。
◆「即戦力の補充」のため、中途採用を実施
直近半年(2023年1~7月)の正社員の過不足感については、「余剰」が27.3%(前年比1.9ポイント増)、「不足」が43.1%(前年比0.2ポイント減)となり、人手不足状況は変わっていませんでした。また、役職やスキル別では、「スペシャリスト人材(IT人材など)」の不足が最も多い47.9%でした。
中途採用する理由は、「即戦力の補充」が48.1%で最も多く、これは専門的な人材を求めた結果です。また運輸・物流業では、「労働時間短縮への対応」が33.7%と全体平均より10ポイント以上高く、来年4月からドライバーなどの残業時間上限規制が始まる、「2024年問題」に対応する人材確保と考えられます。
◆今後の中途採用の課題
課題としては、「求職者の質が低い」が36.3%で最も高く、次に「入社後の早期退職の増加」が30.3%でした。また今後の動向は、「積極的」が53.8%(前年比0.9ポイント増)で、「消極的」の8.1%と大きく差がでました。
特に、経験者採用を積極的に(52.1%)が、未経験者を積極的に(41.6%)を上回りました。
今後の採用基準は、「書類選考」「面接」ともに「厳しくする予定」と回答した企業が増加し、ています。

「年収の壁」への当面の対応厚生労働省は、パートさんの社会保険料負担による手取り収入の減少を避けるため出勤調整をする「年収の壁」問題への対策として、支援強化を発表し10月から実施しています。
◆106万円の壁への対応
・キャリアアップ助成金のコースの新設
 パート収入増の取組みをした事業所へは、一定期間助成(1人当たり3年で最大50万円)を支給します。賃上げや就労時間の延長、保険料負担分の手当(社会保険適用促進手当)の支給が対象です。この「社会保険適用促進手当」は最大2年間、社会保険料決定の対象外になります。
◆130万円の壁への対応
パート収入が130万円を超えてしまっても、人手不足による時間延長等で一時的な収入増であるという事業所の証明があれば、扶養者家族でいられます。
◆配偶者手当への対応
・企業の配偶者手当の見直し促進
 中小企業でも配偶者手当(家族手当など)の見直しが進む取り組みがされます。

転職者が前職を辞めた理由◆年間で常用労働者の15%が退職
採用に苦慮する企業も多いですが反面、退職者を減らさなくては状況が変わりません。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果」では、令和4年の1年間の離職者数(事業所を退職したり解雇された者)は約765万人となり、常用労働者数に対する離職率は15.0%となりました。
◆転職者が前職を辞めた理由
同調査で、前職を辞めた理由は、男女とも「その他の個人的理由」(男性19.6%、女性25.0%)と「その他の理由(出向等を含む)」(男性14.7%、女性8.6%)を除くと、①「定年・契約期間の満了」(男性15.2%、女性10.9%)が最も多く、②「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」(男性9.1%、女性10.8%)、③「職場の人間関係が悪かった」(男性8.3%、女性10.4%)となりました。
◆企業で可能な取組みを検討
上記調査とは別に、エン・ジャパン㈱が実施した「就業前後のギャップ」についてのアンケート調査では、約8割が入社前後で「ギャップを感じた経験がある」と回答し、上位の理由 ①「仕事内容」②「職場の雰囲気」③「仕事量」の3項目で合計55%となりました。特に「職場の雰囲気」は離職理由のトップでした。

メンタルヘルス不調者の増加帝国データバンク「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査が発表されました。
◆「50人の壁」とは
社員数が50人を超えると発生する経営課題をさします。50人を超えると経営をするために社長のほか複数の管理職が必要となり、人事制度も複雑化し管理のレベルも高まります。また情報共有や意思疎通が難しくなるため、組織内のコミュニケーションの質が低下しメンタルヘルス不調者の割合が高まります。
◆社員数50人超で大きく増加
この調査では、過去1年間で「過重労働時間となる労働者」や「メンタルヘルスが不調となる労働者」がいるかどうかを質問しています。(有効回答企業数は1万1,039社)
<社員数と メンタルヘルス不調者がいる割合 (%)>
 ・5人 以下 :5.0%
 ・6 人~ 20人:10.8%
 ・21人~ 50人:19.5%   
 ・51人~ 100人 :31.6%
 ・101人~300人:45.5%
 ・301人~1,000人 :59.0%
 ・1,000人 超 :62.0%
(全体では21.0%が「いる」と回答(5社に1社)
規模が大きくなるほど割合が高まり、50人を超えたところで大きく増加しています。
考えられる改善策は、定期健康診断の確実な実施、職場の喫煙対策、労働時間管理や仕事の進め方の見直しなどによる労働密度の適正化などが重要となってきます。

新規学卒就職者の離職状況厚生労働省は令和2年3月卒業の新規学卒就職者の離職状況を公表しました。
◆就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度比1.1ポイント上昇)、新規大卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。
◆事業所規模別、産業別の離職率
事業所規模別では、1,000人以上で高卒者26.6%、大卒者26.1%と3割を切るのに対し、5人未満で高卒者60.7%、大卒者54.1%、5~29人で高卒者51.3%、大卒者49.6%と規模別の差が大きいことがわかります。
産業別では、宿泊業、飲食サービス業(大卒51.4%)、生活関連サービス業、娯楽業(同48.0%)、教育、学習支援業(同46.0%)、医療、福祉(同38.8%)、小売業(同38.5%)などで離職率の高さが目立っています。
◆人材の流出を防ぐために
株式会社リクルートマネジメントソリューションズによる「新人・若手の早期離職に関する実態調査」によれば、入社3年目以下社員の退職理由は、
「労働環境・条件がよくない」(25.0%)
「給与水準に満足できない」(18.4%)
「職場の人間関係がよくない、合わない」、
「上司と合わない」、「希望する働き方ができない」(各14.5%)となっています。
企業にとってはすぐに対応が難しい課題もありますが、人手不足の中で様々な工夫をしている状況も見られることから、各企業でも人材の流出を防ぐための施策をいろいろと検討したいところです。

有給休暇の取得率が過去最高◆年次有給休暇の取得率が初の6割超え
厚生労働省の令和5年「就労条件総合調査」結果によると、令和4年の年次有給休暇の 付与日数の平均は17.6日(前年調査17.6日)、実際に取得した日数は10.9日(同10.3日)で、平均取得率は62.1%(前年比3.8ポイント増)と初めて6割を超え、昭和59年以降では過去最高となりました。
産業別では、郵便局、農業協同組合等の「複合サービス事業」が74.8%と最も高く、「宿泊業、飲食サービス業」が 49.1%と最も低くなりました。
政府は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和3年7月30日閣議決定)において、令和7年までに年次有給休暇取得率を70%以上とすることを目標に掲げています。
◆有給休暇の取得率を上げるためには
厚生労働省は、毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、年次有給休暇を取得しやすい環境整備を推進するための集中的な広報を行っています。今年は、リーフレットを使い「年次有給休暇の計画的付与制度」の導入、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式の活用方法についても紹介しています。
平成31年4月に年次有給休暇の年5日取得義務が施行されて以来、年次有給休暇の取得率は過去最高となりましたが、政府の目標の70%には及ばない状況です。各企業で年次有給休暇の取得率を上げるにはどのような取組みが必要なのか検討も必要となります。
中小企業でも、若者の採用を増やすための検討課題のひとつにする必要がありそうです。

スポット情報●少子化財源の「支援金」概要案判明(11/10)
少子化対策の財源の一つとして創設する 「支援金制度(仮称)」の概要案が、9日のこども家庭庁の会合で示された。現役世代や後期高齢者を含む全世代から、収入に応じた額を医療保険の保険料に上乗せして徴収する。
使い道は法律に明記し、まずは妊娠・出産期から0~2歳の支援策に充てるほか、育児休業給付の拡充、親の就労に関わらず保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」などの施策に充てる。年内に詳細を詰め、2024年の通常国会への関連法案提出を目指す。
●有休取得率が6割超え義務化で拡大(11/3)
厚生労働省の2023年就労条件総合調査によると、労働者の年次有給休暇の取得率は62.1%と初めて6割を超えた。2019年(52.4%)から10ポイント近く上がった。有給休暇の1人当たり平均持ち分は17.6日で、実際の取得日数は10.9日。労基法改正による年5日の有休取得義務化が追い風になった。
●フリーランスを労災保険の対象に(11/2)
厚生労働省は、フリーランスの労災保険特別加入の対象範囲を原則全業種に拡大する。
加入は任意で、企業から業務委託を受け、企業で働く労働者と同じ条件にある事が加入条件となる見通し。労災保険法施行規則を改正し、2024年秋の施行を目指す。
●求人倍率が 3カ月連続で低下(10/31)
厚生労働省の31日の発表によると、9月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で、前月から横ばいだった。有効求人数も横ばいだったが、新規求人数(現数値)は前年同月比で3.4%減少した。また、総務省が同日発表した9月の完全失業率は2.6%で、前月から0.1ポイント減少した。
●潜在的な働き手約530万人(10/31)
内閣府は「眠る働き手」が約530万人いるとの試算を公表した。内訳は「就労時間を増やしたくて、それができる労働者」265万人と完全失業者184万人、就業希望はあるが今は求職活動をしていない84万人。
人手不足が成長の制約とならないためには、これらの人が力を発揮できるよう、「年収の壁」の是正や働き手のスキルの磨き直し等を行うことで、潜在的な労働力を掘り起こせるとみる。
●2024年春闘の賃上げ目標発表(10/20)
連合は19日、2024年の春闘での統一要求の賃上げ目標を「5%以上」とする方針を正式発表した。物価上昇を踏まえ、今春闘の「5%程度」より表現を強めた。来春闘について、日本商工会議所会頭は「少なくとも中小企業では難しいというのが実感だ」、経団連会長は「(今春闘と)同じ熱量で賃上げを目指す」と述べている。
●高齢者の職場への送迎制度を新設へ(10/19)
厚生労働省は、交通が不便な地域に住む高齢者の就労を支援するため、2024年度より職場への送迎制度を新設する。全国シルバー人材 センター事業協会に委託し、費用は国が負担する。モデル事業として数十カ所から開始し、将来的には全国展開を目指す。
●労基法改正を求める報告書まとまる(10/14)
働き方の多様化に対応するため、労基法の改正を求める報告書が、13日の「新しい時代の
働き方に関する研究会」でまとめられた。
労基法の対象となる「労働者」の定義や、労働条件を「事業場」ごとに決める原則、労働者の「過半数代表者」の枠組みの見直しなどを求めている。年度内にも新しい研究会を立ち上げ、法改正に向けた本格的な議論に入る。

経営労務情報 令和5年(2023年)9月

お知らせ◆最低賃金 が10月1日より41円上がり1,027円(愛知県)となります。
今年も過去最大の増額となります。
パートさんの時給と、社員の基本給や手当など固定して支払う月額または日額が、時間単価に換算した場合に、最低賃金額以上となっている必要があります。
◆年1回の社会保険料の「定期変更」
「社会保険の算定基礎届」に基づく年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月払分給与から対象となります。
個人ごとに社会保険料を、変更する必要があるかをご確認ください。
◆ 今年も厳しい残暑が続いています。
外作業、工場内の「熱中症」にご注意ください。仕事中の「熱中症」は労災になってしまいます。
◆ 社労士業務ソフトのウイルス攻撃について
6月に㈱エムケイシステム(ソフト名「社労夢」)のサーバーがウイルス攻撃を受け、皆様にご心配とご迷惑をおかけしましたが、全て改善しましたのでご報告いたします。


令和5年度の「最低賃金」全国平均で初の1,000円超え◆目安はAランク41円、Bランク40円、Cランク39円
中央最低賃金審議会で地域別最低賃金額の改定が決定されました。過去最大の引上げで 全国平均で時給1,002円となりました。
◆引上率が4.3%を基準として検討された理由
政府の方針や賃金、通常の事業の賃金支払能力、労働者の生計費を勘案して4.3%が基準とされましたが、目安の議論を行ってきた公益委員の見解では、消費者物価の上昇が続いていることや、昨年 10 月から今年6月までの消費者物価指数の対前年同期比は 4.3%と、昨年度の全国加重平均の最低賃金の引上げ率(3.3%)を上回る高い伸び率であったこともあり、特に労働者の生計費を重視した目安額とされました。また、この目安額が、中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で、厳しいものであると言わざるを得ない、とも指摘しています。
◆厚労大臣が中小企業・小規模事業者に対する支援策に言及
審議会の答申で要望のあった、業務改善助成金の対象事業場拡大等についてはできるだけ早期に発表したいとしています。

令和4年度、労基署の監督指導結果&指導事例令和4年度に長時間労働が疑われる事業所に対して労基署が実施した監督指導の結果が公表されました。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業所や、長時間にわたる過重な労働による過労死等による労災請求が行われた事業所を対象に行われました。 
指導事例などの概要は以下のとおりです。
◆監督指導結果のポイント
1.対象期間:令和4年4月~令和5年3月
2.対象事業場:33,218件
3.主な違反内容(是正勧告書を出した事例)
(1) 違法な時間外労働があった:14,147事業場(42.6%)
(2) 賃金不払残業があった:3,006事業場( 9.0%)
(3) 過重労働による「健康障害防止措置」の未実施:8,852事業場(26.6%)
◆指導事例のポイント
1.是正内容の4割超を占め、過大な時間外 労働が行われていた事例
 ① 長時間の過大な時間外・休日労働があった。
 ② 36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行なっていた。
 ➂ 労基法に定める上限時間を超えて時間外・休日労働を行なっていた。
 ④ 時間外と休日労働を1か月80時間以内とするための具体的検討の未実施だった。
2.時間外・休日労働時間が1か月80時間超の者に対し情報を提供しなかった事例
 ① 1か月80時間を超えた労働者に対し、時間外・休日労働時間に関する対応すべき情報を通知していなかった。
 ② 休日労働に対する割増賃金の未払い。
 ➂ 休日労働に対する3割5分以上の割増賃金の未払い。
3.衛生委員会での調査審議等がなかった事例
 ① 衛生委員会で長時間労働による健康障害の防止対策が審議されていなかった。
 ② 1か月80時間を超えて時間外・休日労働をした労働者に対し、医師の面接指導の制度を導入していなかった。
4.深夜業に従事する労働者に対する事例
 ① 深夜業に従事する場合は6か月以内ごとに1回健康診断を実施していなかった。

シニア雇用に関する、シニア自身、若手、経営者の思いシニアの働き方に関し、シニア自身や、同僚となる若手、雇用主である経営者等、それぞれを対象とした個別調査はありますが、それらを同時に行った調査はあまり見かけません。
今回、特定非営利活動法人YUVECの調査「シニア雇用ならびにシニアの働き方に関するアンケート」は、調査対象それぞれの感じ方が同時にわかる調査となりました。
◆経営者・シニアそれぞれの考える問題点
初回の2020年度調査では、下記の傾向(いずれも複数回答)が明らかになりました。
1.経営者が問題だと思うシニアの資質
 ①自分のやり方、経験にこだわる(66.7%)
 ②ITに弱い(37.0%)
 ③新しいことを習得してくれない(29.6%)
 ④自分の経験を自慢する(22.2%)
2.シニアが感じる一般的なシニアの問題点
 ①フルタイム勤務をいやがる(49.7%)
 ②ITに弱い(39.9%)
 ③自分のやり方・経験にこだわる(39.9%)
 ④新しいことをおぼえない(17.5%)
この傾向は3回目の2022年度調査でもおおむね同様で、経営者は「シニアがフルタイムで働かないこと」を許容している一方、やり方や経験にこだわることを嫌っています。ここがシニア自身と経営者の大きく違う点です。
◆若手・中堅社員が望むシニア像
職場で同僚となる若手・中堅層が望むシニア像は次の回答が上位でした(4位は同率)
 ①人柄がよい
 ②技術、経験、業界(商品)知識、人脈等会社に役立つ何かを持っている
 ③自ら手を動かす
 ④過去の事例に詳しく自分の仕事の役に立つ
 ⑤若手とうまくコミュニケーションができる
人手不足感がますます強まる中、シニアを特別視せず、シニア雇用のメリットを活かした職場づくりを考える必要もありそうです。

転職活動で「選考辞退をしたことがある」は61%総合求人サイト『エン転職』が、転職者を対象に転職活動時の「選考辞退」についてのアンケート結果を公表しました。
※調査期間:2023年5月29日~6月27日、有効回答数:8,622名
◆選考辞退をしたことが「ある」人は61%。「2社以上」の選考辞退経験者は63%。「転職活動において選考辞退をしたことはありますか?」の質問に、「ある」と回答した人は61%で、昨年2022年に実施した同調査より5ポイント上昇しました。
選考を辞退したことがある人に、辞退したのは何社かと質問すると、1社は37%で、2社以上の回答は63%(内訳は2社:28%、3社:16%、4社:5%、5社:5%、6社~9社:4%、10社以上:5%)。辞退したタイミングは、「面接前」が46%、「面接後」は45%、「内定取得後」は37%でした。
◆辞退理由
面接前に選考辞退した理由は、「他社の選考が通過した」が最多の37%、次は「ネットで良くない口コミを見た」が27%、「企業の応対が悪かった」が20%でした。
面接後に選考辞退した理由は、「求人情報と話が違った」が49%で最多、「他の選考が通過した」は35%で2位でした。
内定後に辞退した理由は、「他社の選考が通過した」と「提示された条件がイマイチだった」がそれぞれ44%で第1位でした。
「これが決め手となって辞退を決めた」という質問には、「他社の選考が通過した」「ネットで良くない口コミを見た」「企業の対応が悪かった」「求人情報と話が違った」について、具体的なエピソードも回答されています。
辞退するに至った理由の「求人情報と話が違った」や「企業の応対が悪かった」などは、企業の信頼を損なう大きな問題です。ネットの「口コミ」などが、求職者には転職先選びの判断の一つになっていることも、企業としては今後の採用活動において注意しておきたいところです。

フリーランスら個人事業主が、労働安全衛生法の対象に厚労省の「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」において、個人事業主なども労働安全衛生法(以下、安衛法)の対象に加えるとする報告書案が示され了承されました。これにより仕事を発注した企業・個人事業主等に対して、業務上の災害の予防や発生時の報告などが求められます。
◆業務上の災害の把握等
報告対象は、「休業4日以上の死傷災害(被災者が業務と関係のない行為で被災したことが明らかな事案は除く)」となる見込みで、
1.被災時に個人事業者等が行っていた業務の内容を把握している者、
2.災害状況を把握している者に当たる特定注文者及び災害発生場所管理事業者
に対して労基署への報告を義務付けます。
ただし、脳、心・精神事案が疑われる事案については、個人事業主自身もしくは代理する 業種・職種別団体が労基署に報告できるよう新たに仕組みが整備されます。
業種・職種別の団体には、防止対策を周知することが求められます。
◆危険有害作業等の災害を防止するための対策
事業者は、安衛法が定める措置について、労働者と同様に個人事業主等にも対応が求められます。また、個人事業主等にも事業者が通常行っている機械等の定期自主検査の実施や安全衛生教育の受講などが義務付けられます。

トラックGメンによる荷主、元請事業者への監視体制の強化◆荷主等への監視体制強化へ
国交省は、長時間の荷待ちや、依頼になかった附帯業務、無理な配送依頼等、適正な取引を阻害する疑いのある荷主企業(着荷主企業も含む)・元請事業者の監視を強化するため、「トラックGメン」を創設しました。
◆トラックドライバーの労働条件改善が急務
ドライバーは、他産業と比較して労働時間が長く、低賃金がみられることから、担い手 不足が課題にあり、荷待ち時間の削減や適正な運賃の収受等により、労働条件を改善することが急務となっています。
これまで国交省では、適正な取引を阻害する行為を是正するため、貨物自動車運送事業法に基づき、荷主企業・元請事業者への「働きかけ」「要請」等を実施してきましたが、2024年問題(ドライバーへの時間外労働の上限規制が適用されることによる、物流への影響が懸念される問題)を前に強力な対応が必要と判断し、トラックGメンを創設したものです。
「トラックGメン」による調査結果を、貨物自動車運送事業法に基づく荷主企業・元請事業者へ以下の対応で実効性を高める予定です。
「働きかけ」(違反原因行為を荷主がしている疑いがあると認められる場合)
「要請」(荷主が違反原因行為をしていることを疑う相当な理由がある場合)
「勧告・公表」(要請してもなお改善されない場合)
◆162名体制で始動
トラックGメンは、国交省の既定定員82人のほかに、新たに80人を緊急に増員し、合計162人体制により業務を遂行するとしています。トラックGメンは、本省および地方運輸局等に設置されます。

スポット情報●求人倍率3カ月連続で低下(8/29)
厚労省の発表では、7月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で、前月から0.01ポイント低下した。求職者が増えた一方、企業の求人数はほぼ横ばいだった。低下は3カ月連続。総務省が同日発表した7月の完全失業率は2.2%で前月から0.2ポイント上昇した。
●リスキリングの推進に1,468億円 
厚労省24年度概算要求(8/26)
厚労省は来年度予算33兆7,275億円の概算要求を発表。23年度より5,866億円の増加。
リスキリング(学び直し)の推進に1,468億円、育児や介護との両立を支える事業には200億円を要求。中小企業や小規模事業者が賃上げできる環境整備と生産性向上の支援に13億円を要求。非正規労働者の正社員化を進める助成金制度も拡充する。
●「こどもは誰でも通園が可能に」
9月に検討会設置(8/26)
こども家庭庁は、親の就労要件を問わず時間単位で保育園などを利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の検討会を9月に設置する。 
小倉将信少子化相が25日の閣議後記者会見で明らかにした。12月に中間とりまとめを行い、来年の通常国会への法案の提出を目指す。
●非正規向けの職業訓練を創設へ(8/23)
厚労省は、主に離職者が対象の職業訓練を、非正規労働者も働きながら学べる新たな訓練の創設を発表した。オンライン講習や受講時間を選べる訓練を創設し、正社員になるのを後押しする。来年度の概算要求に計上する方針。
●「年収の壁」解消へ助成金を導入(8/11)
首相は「年収の壁」解消を目的として助成金制度を10月から適用する考えを示した。3年程度の時限措置。社会保険料の負担で手取りが減少しないよう賃上げしたり、段階的に勤務時間を延ばす計画を作成した企業に対して、最大50万円を助成する方針。
●白ナンバーの飲酒検査の義務化(8/9)
警視庁は「白ナンバー」の車両を使用する事業者にもアルコールチェック検知器による飲酒検査を12月1日から義務化することを発表。 
白ナンバーを5台以上か、定員11人以上の車を1台以上使う事業者が対象となる。道路交通法の改正により2022年10月より開始予定だったが、世界的な半導体不足の影響による 検知器の安定供給困難により延期されていた。

経営労務情報 令和5年(2023年)6月

お知らせ◆7月は4月から6月に支払う給与の届出月です
この届出で今年10月払いの給与から1年間の社会保険料が決まります。3ヶ月の平均給与月額が、残業手当などの増加で高くなると社会保険料も増えますので注意が必要です。
◆7月は「労働保険料」の納付月です
現金納付の第1期納付期限は7月10日です。
口座振替の第1期振替日は9月6日です。
◆夏期賞与を支払った際はお知らせ下さい
賞与からも忘れずに社会保険料を引いてください。個人ごとの賞与額を報告しますので 支払い後にお知らせください。
◆梅雨の間も暑さが心配されます
梅雨の季節でも外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。気温が高くなくても湿度が高いと熱中症のリスクが高くなります。本格的な夏の前に様々な熱中症の対策をご検討ください。
◆最低賃金が今年も10月から上がりそうです
昨年は過去最大の増額となりました。今年も確実に上がる情勢です。パートさんを多く抱える事業所様は、社員の給与とのバランスを考えながら対応策をご検討ください。

令和6年4月より「労働条件明示」ルールの改正◆労働条件明示事項が追加されました
労働基準法施行規則等の改正により、令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります。 
具体的には、労働契約の「締結及び更新」の際の労働条件明示事項が新しく追加されます。
追加される①~④の事項は以下のとおりです。
1) 全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新の際
→ ①:就業場所・業務の変更の範囲
2) 有期労働契約の締結と更新の際
→ ②:更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容。
※最初の締結後に更新上限を新設・短縮する場合は理由の説明が必須。
3) 無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新の際
→ ③:無期転換申込の機会を与える。
  ④:無期転換後の労働条件の明示。
※無期転換後の労働条件を決める際、実態に応じて正社員等とのバランスを考慮し説明する努力義務が加わりました。
◆「労働条件通知書」を見直しましょう
上記1)は、すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新ごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、「変更の範囲」についても明示が必要になります。有期契約労働についても、上記2)3)に基づき、会社の方針をしっかりと説明する必要があります。
改正に適応した「労働条件通知書」となるよう修正が必要となります。

人手不足でない企業はなにをしているのか総務省の統計では、2022年12月現在で、日本の15~64歳人口は前年同月比0.28%減、人数にすると20万8,000人も減少しました。
また、これから働く年齢の15歳未満の人口は同29万3,000人も減少しています。
総人口の推移では、2019年以降加速度的に減少し、2023年5月現在の概算では、総人口は前年同月比57万人減となりました。
◆人手が不足していない企業がしていること
新型コロナ5類移行を受け、多くの企業で人手不足感が高まるなか、不足していないという企業もあります。帝国データバンクのアンケート調査の結果では「人手が不足していない会社の要因(複数回答)」としては、主に次の項目をあげていました。
(1) 賃金や賞与の引上げ   (51.7%)
(2) 働きやすい職場環境づくり(35.0%)
(3) 定年延長やシニアの再雇用(31.2%)
(4) 福利厚生の充実     (26.6%)
(5) 公平で公正な人事評価  (22.0%)
上記(2)の「働きやすい職場環境づくり」とは清潔な環境や休憩スペース、社内相談窓口の設置などがあげられています。また(4)と(5)は、従業員が自身の成長を感じられ安心できる職場になっている状況を意味しています。
◆賃上げの必要性
物価の高騰を受け実質賃金が低下するなか、賃金や賞与の引上げに取り組めない(あるいは取り組む姿勢を見せていない)では、従業員満足度や安心感が低下して優秀な人材が流出し、企業の競争力低下から新規採用が厳しく、運よく採用しても人を育てる余裕もないため早期離職を招くという傾向が見られます。会社を支える一番の力は、信頼できる「人」の力です。会社を信頼してくれる従業員が1人でも多く育つよう、会社は自らの進む先を示しつつ率先して変える努力が求められそうです。

2025年卒業予定の学生のキャリア形成志向◆概要
スカウト型就職サイトを運営する、株式会社 学情は、2025年卒業予定者の学生を対象に「キャリア形成」について以下3点のアンケート調査を実施しました。
(1) キャリア形成の志向
(2)「ジョブ型」採用への興味の有無
(3)「ジョブ型」インターンシップの興味の有無
(1) キャリア形成の志向について
「自身で主体的に選択したい」(29.8%)と「どちらかと言えば自身で主体的に選択したい」(34.4%)の合計が65%以上となり、自主的にキャリア形成を考えたい傾向を示しました。企業に依存する学生は15.6%に留まりました。
(2) 「ジョブ型」採用への興味の有無について
「興味がある」(44.6%)と「どちらかと言えば興味がある」(36.8%)の合計が81.4%となり、学生が「ジョブ型」採用に興味があると回答しました。前年同時期(2024年卒対象)の回答は67.7%で、昨年よりも「ジョブ型」採用に興味がある学生が増加していることがわかりました。
(3) 「ジョブ型」のインターンシップへの興味の有無について
「参加したい」(40.9%)と「どちらかと言えば参加したい」(37.9%)の合計78.8%となり「ジョブ型」のインターンシップに興味があると回答していました。
本格的な採用シーズンを迎え、自立的なキャリア形成を望む学生が増えていることを念頭に採用準備が必要になりそうです。

「2023年度 新入社員の意識」~東京商工会議所~東京商工会議所が2023年卒の新入社員1,050人を対象に、WEB上で社会人生活や仕事に対する意識調査を実施しました。
◆就職先の会社を決める際に重視したこと
「社風、職場の雰囲気」が60.0%で、半数以上が職場の雰囲気に重きを置いています。
その他、「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」(51.5%)、「福利厚生」(41.6%)、「働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(年休取得状況、時間外労働の状況など)」(40.3%)が上位でした。
◆就職先の会社が、内定から入社までの間に 実施したフォローの取組み
「採用担当者からの定期的な連絡」(43.2%)、「会社見学会」(29.0%)、「内定式・内々定式」(27.6%)が上位でした。内定から入社まで期間があるため不安を持たせない対策です。
◆社会人生活で不安に感じること
「仕事と私生活とのバランスが取れるか」(42.0%)、「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」(40.7%)、「仕事が自分に合っているか」(40.0%)が上位を占めていました。
9割強の新入社員は、社会人生活に何らかの不安を感じている結果が現れました。

「残業」は転職先選びに影響する~重要事項~エン・ジャパン㈱は、令和5年5月8日、「社会人1万人の「残業」実態調査~『エン転職』ユーザーアンケート」を公表しました。
運営する総合求人サイト『エン転職』上でユーザーを対象にアンケートを実施し1万2,940名が回答(調査期間は令和5年2月22日~3月28日)。
◆「残業の有無や平均残業時間」が転職先選びに影響していると回答したのは84%
「転職活動をする上で、残業の有無や平均 残業時間等は企業選びにどの程度影響しますか?」の質問に対し、「とても影響する」が最多で49%、「少し影響する」は35%で、合わせて84%が「影響する」と回答しました。
年代別で見ると、20代、30代は半数以上が「とても影響する」(20代:55%、30代:56%)と回答し、「少し影響する」と合わせると、20代は89%、30代は88%に上ります。
また男女別では、「とても影響する」と回答した男性が44%に対し、女性は54%と10ポイントの差があり、男性より女性のほうが、企業選びで残業時間を重要視していました。
◆残業時間が「増加傾向」は26%、「減少傾向」は24%。半数は「変わらない」
「ここ数年であなたの残業時間は増加傾向ですか?減少傾向ですか?」の質問には、 「変わらない」が50%と半数を占め「増加傾向」は26%、「減少傾向」は24%でほぼ同率でした。
業種別で残業時間が増加傾向だったのは、「コンサルティング・士業」が最多で36%、一方、減少傾向は「メーカー(機械・電気・電子など)」が最多で32%でした。
◆残業時間の増加理由は「人手不足」、減少理由は「企業の残業制限」
残業が増加傾向と回答したその理由を聞くと、「人員が足りないため」が最多で75%、次いで「仕事量が増えてきたため」が67%と続きます。一方、残業時間が「減少傾向」と回答した理由は、「残業が制限されたため」が最多で42%でした。
◆残業代の割増制度を知っている人は4割弱
中小企業で働く人の「月60時間を超える残業代の割増率が50%に引き上げられた」ことを「知っている」は39%(内容も含めてよく知っている9%、概要だけ知っている30%)と全体の4割弱に留まりました。
引上げについて「とても良いと思う」(47%)と「良いと思う」(33%)を合わせた80%の人が好感を示しました。一方で引上げが「良くないと思う」(とても良くないと思う1%、良くないと思う8%)という声は1割弱でした。

「技能実習制度を廃止すべき」との中間報告書が示された◆技能実習制度・特定技能制度のあり方を検討
令和4年12月からの有識者会議の中間報告書がまとめられ、「技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきである」と示されました。
◆新たな制度はどんな制度?
基本的な考え方は、(1)制度目的と実態を踏まえた制度の在り方(技能実習)、(2)外国人が成長しつつ中長期に活躍できる制度(キャリアパス)の構築、(3)受入れ見込数の設定等のあり方、(4)転籍のあり方(技能実習)、(5)管理監督や支援体制のあり方、(6)外国人の日本語能力向上に向けた取組みの6項目がでました。
◆具体的にどう変わる?
上記6項目のうち、例えば(2)は「外国人がキャリアアップしつつ我が国で修得した技能等をさらにいかすことができる制度とする」、また(4)は「人材育成に由来する転籍制限は、限定的に残しつつも、制度目的に人材確保を位置づけることから、制度趣旨と外国人の保護の観点から緩和する」とされました。
◆管理監督や支援体制のあり方等も議論の対象
監理団体や登録支援機関の要件厳格化や 悪質な送出機関の排除等に向けた取組み強化のほか、来日前外国人の日本語能力向上(コスト負担の在り方)等も議論の対象となりました。

スポット情報●特定技能2号が11分野に拡大-閣議決定-(6/9)
政府は9日、在留資格「特定技能2号」の対象を現在の2分野から11分野へ拡大する方針を閣議決定した。新たにビルクリーニング、自動車整備、農業、外食業など9分野を追加する。
今後、法務省令改正により対象を追加、今秋にも9分野の試験を開始して合格者は来年5月以降、在留資格変更が認められる見通し。
●12月から白ナンバーの飲酒検査義務化(6/9)
警察庁は8日、白ナンバーの車を使う事業者に対するアルコール検知器を使用したドライバーの飲酒検査について、12月1日から義務化する方針を示した。2022年10月に義務化予定だったが、世界的な半導体不足の影響で検知器の供給が遅れ延期していた。白ナンバー5台以上か、定員11名以上の車を1台以上使用する事業者が対象。
●正職員の手当削減を「合法」と判断(6/5)
正職員の待遇を引き下げて非正規職員との格差を解消する手法について、就業規則変更の合理性を認める判決が、5月24日、山口地裁であった。正職員だけに支給していた手当を全職員対象の手当に改めたことについて、パート・有期法の趣旨に添うとし、経営が右肩下がりで人件費抑制を意識しながら手当の組替えを検討する必要があったとして、正職員の手当削減を肯定。職員全体の不利益は小さいとして、原告従業員の請求を退けた。パート・有期法の趣旨を意識しながら労働契約法10条の不利益変更の合理性に踏み込んだほかにない判決となった。
●物流2024年問題、政策パッケージ公表(6/3)
トラックドライバーへの時間外労働の上限規制適用等により輸送能力が不足する「2024年問題」について、政府は2日「物流革新に向けた政策パッケージ」を示した。荷主と物流事業者に対して、荷待ち・荷卸しなどの作業時間削減といった商慣行の見直しを求め、悪質な事業者には法的措置をとれるようにする方針。24年通常国会への関連法案提出を目指す。物流の効率化や消費者の行動変容も求める。
●荷待ち時間の削減、荷主の義務に(6/2)
運送業における荷待ち時間について、政府は、荷主企業への規制を強化し、削減に取り組むよう義務付ける。一定以上の物流量を抱える荷主企業には、トラック運転手の負担軽減に向けた計画策定を義務付け、国への定期報告も要請するほか、物流に関する管理責任者の任命も求める。関連法の改正案を2024年の通常国会に提出する。
●2028年度までに雇用保険対象者拡大(5/26)
政府は、週所定労働時間20時間未満で働く人も失業給付や育児休業給付等を受け取れるよう、6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」に、2028年度までの雇用保険の対象者の拡大を盛り込む見通し。
まずは雇用保険法を改正し、細かい条件は 労働政策審議会にて議論のうえ、周知と準備の期間をかけて進める。

経営労務情報 令和5年(2023年)3月

お知らせ◆健康保険料・介護保険料が変更されます。
3月より「協会けんぽ」の保険料が変更されます。ただし各保険料は「4月に支払う給与」 から変更をお願いいたします。
お客様へは個人別の「保険料表」を後日お知らせいたします。
※ 新保険料率 (以下は本人負担率です)
     健康保険 = 5.005 %
     介護保険 = 0.91  %
健康保険+介護保険 = 5.915 %
◆雇用調整助成金(特例期間)の終了について
コロナ感染の「雇用調整助成金」の特例期間は3月末で終了します。4月からは通常の「雇用調整助成金」に戻ります。
◆4月から6月に支払う給与にご注意を
4月から6月に支払う給与総額の「平均額」により、今年10月から1年間の社会保険料(厚生年金保険料と健康保険料)が決まります。
残業など手当の増額で月額給与が増えると、結果として社会保険料が増えてしまいます。
◆3月、4月は入社・異動が増加
この時期は入社や異動の申請が多く、新しい「保険証」の発行が遅れます。早めの連絡をお願いいたします。
◆最近の監督署による「事業所調査」について
海外からの技能実習生などの入国がコロナ感染前に戻りつつありますが、海外実習生などを採用している事業所は、労働基準監督署の調査対象になっています。
私どもも調査対応をしてきましたが、「雇用契約書」「出勤・残業管理簿」の有無、残業手当を含め「正しい給与計算」がされているかなどを監理団体とも確認し整備をお願いいたします。

「雇用保険料率」が上がります雇用保険料率が4月の給与分から、従業員負担率も、事業主負担率も、0.1%分づつ加算されます。
◆従業員の負担率は以下となります。
建設業以外の事業は、0.5% → 0.6%
建設業の事業は、0.6% → 0.7%
給与計算時には給与プログラムの変更などもご対応ください。
◆変更対象月の具体例は、以下のとおりです。
15日締/当月25日払 → 4月25日払より
20日締/当月 末日払 → 4月 末日払より
25日締/翌月 5日払 → 5月 5日払より
末 日締/翌月10日払 → 5月10日払より
末 日締/翌月 末日払 → 5月 末日払より
末 日締/翌々月末日払 → 6月 末日払より

いわゆる「多様な正社員」の現状無期転換ルールによって、無期雇用となった社員の受け皿として期待される「勤務地限定正社員」や「職務限定正社員」「労働時間限定正社員」などのいわゆる「多様な正社員」について、労働政策研究・研修機構が、企業側、労働者側それぞれの調査を行った結果(2021年実施)が公表されました。
企業側調査は、従業員30人以上の全国の民間企業などが5,700社、労働者側調査は20歳以上の正社員、契約社員、嘱託、パート・アルバイト、派遣社員の2万人が回答しました。
◆多様な正社員がいる企業は18.3%でした。
◆多様な正社員の採用方法は「中途・通年採用」の割合が最も高く、「有期契約労働者からの転換」や「無期転換社員からの転換」による企業の割合も約2割でした(複数回答)
◆トラブルの事例
「限定された労働条件」の変更について、「限定内容の違反行為」や「限定区分の変更」に関するトラブルが発生しています。
企業側からの「区分変更申入れ」を労働者が拒否、労働者からは「会社都合で限定内容が変更された」事例が最も高くなっています。
限定内容の説明不足や、限定内容の規定がない企業でトラブルが多発してます。
無期転換については、労働条件の明示が重要になります。

賃上げ実態に関する調査結果厚生労働省は令和4年「賃金引上げ等の実態に関する調査」を公表しました。これは、全国の民間企業の、賃金の改定額、改定率、改定方法などの調査を目的に、例年7月から8月に実施されています。調査対象は、常用労働者100人以上を雇用する民営企業で、令和4年は3,646社を抽出し、2,020社から有効回答を得ています。
◆賃金を引き上げる企業が85.7%
令和4年中の賃金改定の実施状況では、1人平均賃金(注)を引き上げた、または引き上げる企業の割合は85.7%(前年80.7%)となり3年ぶりの増加でした。
産業別では「学術研究、専門・技術サービス業」が95.7%、次いで「建設業」が95.4%と高く、また賃金の改定状況では1人平均賃金の改定額は5,534円(前年4,694円)、1人平均賃金の改定率は1.9%(同1.6%)でした。
※ (注) 「1人平均賃金」とは、所定内賃金(諸手当等は含み、時間外・休日手当や深夜手当等の割増手当、慶弔手当等の特別手当は含まない)の1か月1人当たりの平均額です。
◆業績を踏まえつつ労働力の確保を
賃金改定の決定時に重視した要素は、⑴「会社の業績」(40%)、次いで ⑵「労働力の確保・定着」(11.9%)でした。
業界内や他企業の動向も踏まえつつ、自社の戦略を立てていくことが必要となりそうです。

「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果◆「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」
令和3年4月から65歳までの「高齢者雇用確保措置」が義務づけられ、また70歳までを対象に「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」の他に、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」(創業支援等措置)など、雇用によらない措置(高年齢者就業確保措置)が努力義務となっています。
◆70 歳までの実施済企業は中小企業が3割弱
厚生労働省の令和4年6月1日現在の「高年齢者雇用状況等報告」では、70 歳までの措置の実施済企業は65,782社(27.9%)、前年比2.3 ポイント増でした。企業規模別では、中小企業は 28.5%、同2.3 ポイント増、大企業は20.4%、同2.6ポイント増でした。
◆継続雇用制度の導入が最多
実施済みの企業の内訳では、 ⑴「継続雇用制度の導入」が51,426社(21.8%)、前年比2.1ポイント増で最も多く、次いで ⑵「定年制の廃止」9,248社(3.9%)、同0.1ポイント減、⑶「定年の引上げ」4,995社(2.1%)、同0.2ポイント増、 ⑷「創業支援等措置の導入」113社(0.1%)、同変動なし、の順でした。
創業支援等措置の導入などはまだこれからという状況です。今後は人手不足等の状況も踏まえた検討が必要になりそうです。

新卒者の内定状況と企業の採用活動の早期化◆大学生の就職内定率は約85%
令和4年12月1日現在の、令和5年3月大学等卒業予定者の就職内定状況(厚生労働省と文部科学省の共同調査)が公表されました。
大学の就職内定率は84.4%(前年同期比1.4ポイント上昇)となりました。短期大学の就職内定率は69.4%(同6.6ポイント上昇)、高等専門学校・専修学校(専門課程)は、それぞれ96.6%(同5.4ポイント上昇)、69.8%(同0.4ポイント低下)となりました。
◆令和6年卒の採用活動も本格化
令和6年卒の採用活動も本格化しており、リクルートの「就職みらい研究所」が2024年(令和6年)卒業予定に対する「就職プロセル調査」では、今年2月1日時点の大学生(院生除く)の就職内定率は、すでに19.9%(前年同月比で+6.4ポイント)に上っています。
内定企業の業種別では、例年どおり「情報通信業」、「サービス業」、「小売業」と続きますが、他の業種の割合も増えてます。全体として採用の動きが早まっていることがわかります。
◆早期化する企業の採用活動
人手不足の現状で、早期に採用活動を開始する企業が多く、この傾向はますます強くなることが予想されます。また、いわゆる「就活ルール」など新卒一括採用という慣習も見直しが行われる状況の中、新しい採用活動の在り方についても検討が必要になっています。

外国人雇用の届出状況を発表~厚生労働省~厚生労働省は令和4年10月末現在の「外国人雇用についての届出状況」を公表しました。
この届出制度は、労働施策総合推進法に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的として、すべての事業主に外国人の「雇入れ・離職」時に、「氏名、在留資格、在留期間など」を確認し、ハローワークへ届け出ることを義務づけています。
◆外国人労働者数は、182万2,725人で、過去最高を更新
外国人労働者数は、前年比で9万5,504人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しました。前年増加率は5.5%と前年の0.2%から5.3ポイント増加しています。
◆外国人雇用の事業所も過去最高の約30万に
外国人を雇用する事業所数は、29万8,790で、前年比1万3,710増加し、届出の義務化以降、こちらも過去最高を更新しています。
ただし前年増加率は4.8%と、前年の6.7%から1.9 ポイントの減少でした。
◆国籍別では、ベトナムが46万2,384人で最多
国籍別ではベトナムが最も多く、外国人労働者数全体の25.4%を占めています。
次いで中国38万5,848人(全体の21.2%)、フィリピン20万6,050人(全体の11.3%)の順となっています。
前年増加率が高い主な国は、インドネシアが前年比47.5%増で7万7,889人、次いでミャンマーが前年比37.7%増の4万7,498人、ネパールが前年比20.3%増の11万8,196人の順となっています。
◆在留資格別では、「技能実習」が前年比8,534人減
在留資格別では、⑴「専門的・技術的分野の在留資格」が47万9,949人で、前年比8万5,440人(21.7%)の増加、 ⑵「特定活動」が7万3,363人で、前年比7,435人(11.3%)増加、 ⑶「身分に基づく在留資格」が59万5,207人で、前年比1万4,879人(2.6%)増加しました。
一方で、「技能実習」は34万3,254人で、前年比8,534人(2.4%)減少し、「資格外活動」のうち「留学」は25万8,636人で、前年比8,958人(3.3%)減少しています。

スポット情報●高度外国人材の獲得に新制度導入(2/18)
政府は2月17日、高度外国人材を呼び込むための新制度の導入を決定した。在留資格「高度専門職」の取得要件を緩和して優遇措置を設け、資格要件を満たす経営者や研究者、技術者などは滞在1年で永住権の申請可能等とする。また、在留資格「特定活動」に「未来創造人材」を創設し、世界の上位大学を卒業後5年以内の外国人を対象に日本で最長2年間の就職活動等を認める。今年4月中の運用開始を目指す。
●「特定技能」前年比2.6倍増(2/18)
出入国在留管理庁は2月17日、在留資格「特定技能」で働く外国人が13万923人(昨年12月末時点)で、前年同期の約2.6倍に増えたと発表した。新型コロナウイルスによる出入国の水際対策緩和により増加した。
業種別では飲食料品製造業が最も多く4万2,505人で、国籍別ではベトナム人が7万7,137人で最多だった。
●「自己都合退職」の失業給付制限期間を短縮(2/16)
政府は15日、「新しい資本主義実現会議」で失業給付のあり方の見直しなどの議論を始めた。自己都合退職の場合の給付制限期間の必要性について「慎重に検討すべきではないか」とし、資料では住民税の減免措置の対象外となること等も会社都合退職の場合との違いとして挙げられている。
6月末までに策定する指針に盛り込むかを検討する。
●75歳以上の負担増、健康保険法などの改正案を国会に提出(2/10)
政府は2月10日、75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の見直しや「出産育児一時金」の財源を後期高齢者にも新たに負担することを盛り込んだ改正案を国会に提出した。
現役世代の負担軽減のため、年金収入が153万円を超える後期高齢者の保険料を収入に応じて引き上げる。今年4月から50万円に増額する「出産育児一時金」の7%分を、後期高齢者医療制度が負担する仕組みとする。今国会での成立をめざす。
●2022年実質賃金 前年比0.9%減(2/7)
厚生労働省が2月7日に発表した2022年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)で、物価の影響を考慮した実質賃金は前年比0.9%減と、2年ぶりのマイナスとなった。
賃金の実質水準を算出する指標となる物価が3.0%上昇して、名目賃金に当たる現金給与総額の2.1%増を上回り、賃金上昇が物価高に追いつかない状況を映した。
●昨年の求人倍率1.28倍、4年ぶり上昇(1/31)
厚生労働省が1月31日に発表した2022年平均の有効求人倍率は1.28倍と、前年を0.15ポイント上回った。
コロナ禍からの経済活動の再開に伴い求人が伸びた。総務省が同日発表した22年平均の完全失業率は2.6%と前年に比べて0.2ポイント低く、2018年以来4年ぶりの低下となった。
●出産育児一時金が8万円増額(1/28)
政府は27日、出産育児一時金を4月1日から8万円増額し、48万8,000円とする政令を閣議決定した。産科医療補償制度の掛金1万2,000円を含めた総額は50万円となる。総額の引上げは2009年10月以来で、過去最大の上げ幅となる。
●物流業「2024年問題」対応で法改正の方針(1/18)
物流業界で運転手不足が懸念される2024年問題(運転者の労働時間の改善)への対応策として、国交省は関連法を改正する方針を固めた。
納品回数や待機時間の削減に関する計画を荷主と物流事業者が協力して作成することを義務付ける。来年の通常国会への法案提出を目指すとしている。

経営労務情報 令和4年(2022年)12月

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意ください。
以下は本人負担率です。
        厚生年金 = 9.15 %
 健康健康保険+介護保険 = 5.785 %
(健康保険4.965 %、介護保険0.82 %)
 ※雇用保険料率も変更されています。
(建設業=0.6%、建設業以外=0.5%)
◆感染の再拡大に注意しましょう。身近な方が感染されるケースも増えています。発熱時はすぐ受診して検査を受ける対応をお願いいたします。
◆インフエンザワクチンの接種も
今年も感染対策としてインフエンザのワクチン接種もご検討ください。
◆年末調整の注意点
今年も配偶者や扶養家族の収入確認など、もれがないようにお願いいたします。

中小事業も月60時間超えの残業割増率が50%以上に◆猶予措置の廃止
令和5年4月1日から、中小企業も月60時間を超える残業時間に対して割増賃金率を「5割以上の率」とする規定が適用されます。これにより残業時間が60時間を超えた場合は、今までの1.25ではなく1.5を乗じた残業手当の支給が必要になります。
平成22年4月1日施行の改正により、残業時間が月60時間を超えた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金を支払うことになっていますが、中小事業では適用が猶予されていました。
◆代替休暇の規定も適用に
1ヶ月に60時間を超えて残業を行なった場合は、労使協定を結び、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の代わりに有給の代替休暇を与えることができます。
代替休暇は、代休や振替休暇とは違い、超過時間分を有給の代替えの休暇として振り替える制度です。代替休暇の計算方法や、代替休暇の単位(1日または半日)などについては注意が必要になります。
◆残業を減らす管理をしましょう
残業時間の上限規制や残業単価の計算方法が厳格になってきています。効率の悪い残業を減らすなど、時間外労働の問題点を改善する努力が求められています。

雇用調整助成金の特例措置が終了◆12月以降は通常制度による支給
雇用調整助成金の支給上限額引上げや助成率引上げ、提出書類の簡素化等の特例措置が、有効求人倍率の回復等を理由に終了し、令和4年12月以降、通常制度による請求となります。10月以降は1日あたり支給上限額は原則8,355円となっています。
◆特に業績が厳しい事業主の経過措置
ただし特に業績が厳しい事業主については、令和5年1月31日まで1日あたりの支給上限額を最大9,000円とする経過措置が設けられます。助成率も、令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合は10分の9(大企業は3分の2)となります。
◆令和5年2月以降は
原則どおりの扱いとなりますが、申請書類が簡素化されたりする等の措置は令和5年3月まで続きます。

募集しても人が採れない!中小企業の採用活動の現況◆企業の採用活動は活発化している
人手不足の中で企業の採用活動が活発化しています。(株)マイナビが実施した最近の「中途採用・転職活動の定点調査(2022年9月)」の結果でも、9月に中途採用活動を実施した企業は全体で39.8%、従業員規模別に見ると「51~300名」「301名以上」で約5割となり、ほぼすべての業種で採用活動実施率が前年同月比で増加しています。
◆人が採れない企業が2割
採用活動の活発化により、中小企業の新卒採用も厳しい状況となっています。日本商工会議所ならびに東京商工会議所が中小企業6,007社に実施した調査によれば、2021年度の新卒採用の状況について、募集した企業は51.0%で、そのうち「予定人数を採用できた」と回答した企業は45.6%にとどまり、約2割の企業が「募集したが、全く採用できなかった」(19.9%)と回答しています。
マイナビが2023年卒採用の内定状況と2024年卒採用の見通しなどをまとめた「2023年卒企業新卒内定状況調査」でも、24年卒採用は78.6%が実施する予定で、採用予定数を「増やす」とする企業も増加するとしています。今後も採用活動の激化は避けられません。
◆採用活動にも工夫が必要に
コロナによる影響でオンライン面接が普及するなど、採用を取り巻く状況も大きく変化しました。学生の採用活動における質問事項としてよく使われる「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)なども、コロナ禍でエピソードが少なかった学生を困らせているという話も聞きます。これまでの手法が必ずしもマッチしない状況の中で人材を獲得するためには、自社の採用方法に工夫を凝らし、他社と差別化していく取組みが必要になってきそうです。

いま注目の「人的資本経営」◆盛り上がりをみせている「人的資本経営」
近年盛り上がりをみせている「人的資本」や「人的資本経営」ですが、今年の8月30日には内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表されています。こは上場企業向けにガイドラインを示したもので、「人材版伊藤レポート(2020年9月)」、「人材版伊藤レポート2.0(2022年5月)」と併せて活用することが想定されています。
これらは非上場企業にとっても無視できない内容となっています。
◆企業の人的資本の活性度は約30~40%
経済産業省は、「人的資本経営」とは人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」としています。
(株)リクルートが企業で働く10,459人を対象に実施した人的資本経営をテーマとした調査によれば、①今の職場が最適な部署配置だと感じている人、自分の知識やスキル・経験を活かすようなジョブ・アサインメント(仕事の割り当て)を実感している人の割合は約30%、②現在の仕事に関する知識やスキル・経験を言語化できる人、現在の仕事のレベルを高めるために必要な知識やスキル・経験を理解している人の割合は約40%という結果でした。
この結果からみえる企業の現況は、「人材の価値を最大限に引き出す」という人的資本経営からはまだ隔たりがありそうです。
◆今後の動きにも要注目
大企業中心と考えられがちな「人的資本経営」ですが、中小企業でも人材獲得の面などから注目されています。8月には経済産業省および金融庁がオブザーバーとして参加する、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間協力に向けた議論、効果的な情報開示の検討を行う「人的資本経営コンソーシアム」が設立され、様々な情報が出されることが予想されます。今後の動きも注視していきたいところです。

高齢者の体力は低下傾向!これから企業が対策を講ずべきこと◆65歳以上の高齢者の体力は低下傾向!
70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取組みを行うことが努力義務として企業に課せられているなか、気になるデータが公表されました。
高齢者の体力の低下傾向が顕著であることが、スポーツ庁の体力・運動能力調査(2021年度)で分かりました。特に、65~74歳の男性の体力は過去10年間で最低を記録。週1日以上の頻度で運動している人の割合も同区分では減少しており、専門家は、「高齢者に運動習慣が広がり体力向上につながっていた流れが、頭打ちとなってきた」と警戒しています。
◆労働災害が増加する心配も
高齢者の体力の低下は、労働災害の増加にもつながります。そもそも高年齢層の労働災害発生率は若年層に比べ相対的に高いのですが、これは身体機能や体力の低下といった高齢者特有の事情によるものと考えられます。働く高齢者が増えるなか、企業としては、従来の想定以上に高齢者の体力が落ちていることを念頭に、安全に働ける職場づくりが必要となりそうです
◆特に重要な課題は「転倒対策」
特に意識して対応策を講じたいのは「転倒災害」です。職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、厚労省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用して身体機能の状態について知り、無理な動作をしないなどの心がけが必要です。
職種によっては、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法や評価基準について定め、高齢労働者の体力を把握することも必要になりそうです。

紹介状なしで大病院を外来受診する場合の患者負担が増加◆紹介状なしの大病院の外来受診が増加
本年10月から紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担が引上げられました。
これは、一部の病院への外来患者の集中を避けるため「特別の料金」が見直されたことによるもので、対象病院の拡大も行われています。
◆具体的な見直しの内容
「特別の料金」は、これまで医科の初診が5,000円以上、再診が2,500円以上でしたが、初診が7,000円以上、再診が3,000円以上へと引き上げられています。歯科でも、初診が3,000円以上、再診が1,500円以上から、初診が5,000円以上、再診が1,900円以上へと引き上げられています。対象病院は、これまでの特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)に、紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)が加えられています。

スポット情報●介護保険制度見直し、議論先送り(12/9)
厚労省は、2024年度の介護保険制度見直しについて年内の結論とりまとめを先送りする方針を固めた。社会保障審議会で5日に示された案はDX推進や人材確保にとどまりケアプランの有料化などの法改正を要する見直しは、2024年度からの実施を断念。65歳以上の高所得者の介護保険料負担引上げやサービス利用料2~3割負担の対象者拡大などは来年以降も検討を続ける。
●企業年金運用、企業にも責任(12/5)
金融庁は、企業年金の運用に企業も責任を負うよう法律で最善利益義務とよばれる規定を盛り込む方針。金融機関だけでなく企業を含め運用の受託者としての責任を明確にし、民事上や行政上の責任を負わせ、信託銀行などに運用を任せきりで運用戦略がないなどの問題への対処を促す。2023年の通常国会での改正を目指す。
●専門人材の就活前倒しを検討。2026年春入社の学生から対象に(12/1)
政府は、大学生の就職活動の日程ルールの見直しを発表した。来秋までに結論を出す。2026年春入社予定の大学1年生から、専門性の高い人材採用の前倒しや通年採用を容認する方向。
●パートと正社員の待遇差「見直ししていない」が36%(11/26)
厚労省が実施したパートタイマーや有期雇用労働者の待遇に関する調査結果によれば、正社員との「不合理な待遇差の禁止」の法制化を受け、「見直しを行った」とした企業は28.5%、「見直しは特にしていない」とした企業が36.0%だった。「見直した」との回答の内訳は、「基本給」が45.1%で最多、「扶養手当」(6.1%)や「退職金」(3.1%)は少なかった。
●「インフレ手当」19%の企業が支給を検討(11/17)
帝国データバンクが約1,250社から回答を得た調査結果で、物価高の中でインフレ手当を「支給した」企業は6.6%で、「予定・検討中」が19.8%あることがわかった。支給方法は「一時金」が66.6%、「月額手当」が36.2%。一時金の平均支給額は53,700円だった。
●パートの厚生年金加入
企業規模要件撤廃に向け検討へ(11/10)
政府は、短時間労働者の社会保険加入要件を緩和する検討に入る。既に2024年10月より現在の101人以上から51人以上まで従業員規模を引き下げるが、企業規模要件を撤廃する方向で検討を進める。また労働時間が週20時間未満の労働者や、5人以上を雇用する個人事業所の適用業種追加、5人未満の個人事業所への拡大なども検討。
●実質賃金が6カ月連続で減少(11/8)
厚労省の毎月勤労統計調査では、9月の実質賃金が前年同月比1.3%減となり、6カ月連続でマイナスとなった。7~9月では1.7%減となった。現金給与総額は緩やかに増えているが物価上昇率は3.5%に達しており実質賃金の減少につながっている。
●傷病手当金のうち精神疾患の割合が過去最多(11/8)
協会けんぽが毎年10月に支払った傷病手当金の状況に関する調査で、昨年10月の約15万5,000件を調査したところ、「精神及び行動の障害」が約33%と最も多く、統計が残る1995年以降で最多だったことがわかった。件数自体も約5万1,000件と、公開されている2010年以降で最多だった。
●24.5%で定年が「65歳以上」(10/29)
厚労省は2022年の就労条件総合調査の結果を公表。一律定年制を定めている企業のうち、定年年齢を「65歳以上」としている割合は24.5%となり、平成29年の前回調査より6.7ポイント増え、平成17年の同調査開始以降過去最高となった。また、最高雇用年齢を「66歳以上」とする企業は勤務延長制度がある企業で31.7%、再雇用制度がある企業で22.0%だった。

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