労災保険とは

労災保険の概要労災保険とは【労災保険】
労災保険とは、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」といいます。)に基づく制度のことです。仕事中や通勤途中の災害により、従業員がケガをしたり、病気になったときに、様々な保険給付が行われます。

主なものとしては、「治療費の支払い」「休業補償」「障害に対する補償」「遺族に対する補償」があります。また、この他に、被災従業員の社会復帰の促進、遺族の援護などの事業が行われています。

●適用事業とは
事業経営において、従業員を一人でも使用する場合、適用事業として労災保険法の適用を受けることになり、加入手続を行う必要があります。正社員だけでなく、パート・アルバイトの方も含めて全従業員が対象となっており、従業員であれば誰でも、仕事中や通勤途中の災害により、従業員がケガをしたり、病気になったときは、保険給付を受けることができます。ただし、以下の事業については、強制ではなく任意加入とされています。

1.農業
個人経営であって、かつ従業員数が常時5人未満の場合。ただし、一定の危険または有害な作業を主として行う事業や事業主が特別加入している事業については、強制的に労災保険へ加入しなければなりません。

2.林業
個人経営であって、常時従業員を使用せず、かつ年間使用延べ従業員数が300人未満である場合。

3.水産業
個人経営であって、従業員数が常時5人未満、かつ総トン数5トン未満の漁船によるものまたは災害発生のおそれが少ない河川・湖沼または特定の水面において主として操業する場合。

業務災害とは

労災保険は、仕事中や通勤途中の災害に関して保険給付が行われます。仕事中の災害を業務災害、通勤途中の災害を通勤災害といいます。業務災害とは、従業員が就業中に、業務が原因となって発生した災害(会社の指揮命令下において、業務遂行をしていた際の災害)のことです。そのため、会社内でのケガであっても、休憩中や私用中などケガの原因によっては補償の対象とならないことがあります。通勤災害とは、従業員が合理的な経路及び方法により、出社または退社途中に発生した災害のことです。

業務上災害については、労働基準法で最低限の補償基準が決められており、会社に補償義務が課せられています。その補償が確実に実行されるよう、従業員を一人でも使用するときは、強制的に労災保険に加入しなければならないこととなっています。また、従業員が労災保険による保険給付を受けることにより、会社は労働基準法の補償義務が免除される仕組みとなっています。

従業員のケガ、病気に対する保険制度としては、労災保険のほかに健康保険がありますが、健康保険は、従業員の業務以外の事由によるケガ、病気、出産、死亡に関して保険給付を行うと定められています。そのため、業務災害及び通勤災害については、健康保険による保険給付を受けること(病院で健康保険証を提示して治療を受けるなど)ができません。(唯一の例外として、被保険者数が5名未満の企業の役員等については、一部、健康保険証を提示しての治療が認められています。)

労災保険給付の種類

保険給付の種類 支給事由
療養補償給付 療養の給付 業務災害または通勤災害によるケガなどにより、労災指定病院で治療を受ける場合の現物給付
療養の費用の支給 業務災害または通勤災害によるケガなどにより、労災指定病院以外での治療や、コルセットなど装具を製作した場合の現金給付
休業補償給付 業務災害または通勤災害によるケガなどにより、療養のため勤務することができず、給与が支給されない日が4日以上となった場合
障害補償給付 障害補償年金 業務災害または通勤災害によるケガなどが治ったときに、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合
障害補償一時金 業務災害または通勤災害によるケガなどが治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合
遺族補償給付 遺族補償年金 業務災害または通勤災害により死亡した場合(法律上、死亡と推定される場合を含む)
遺族補償一時金 ・遺族補償年金を受け取る遺族がいない場合
・遺族補償年金の受給者が失権し、他に遺族補償年金を受け取ることができる遺族がいない場合で、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たないとき
葬祭料 業務災害または通勤災害により死亡した方の葬儀を行う場合
傷病補償年金 業務災害または通勤災害によるケガなどが1年6ヶ月を経過した日以後において治っておらず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合
介護補償給付 障害補償年金または傷病補償年金の受給者で、介護を要する場合
二次健康診断等給付 企業での健康診断のうち、直近のもの(一次健康診断)において、次のいずれにも該当する場合
・検査を受けた従業員が、(1)血圧検査 (2)血中脂質検査 (3)血糖検査、(4)腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定の全ての検査において異常の所見があると診断されていること
・脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないと認められること

1.業務上災害による給付を「補償給付」といい、通勤災害による給付を「給付」といいます。表のなかでは、全て「療養給付」と表記してありますが、通勤災害による「給付」についても給付理由及び給付内容は同様です。

2.「治ったとき」とは、ケガなどの症状が安定し、医学上、一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなったときをいいます。これを「治ゆ」といいますが、必ずしももとの身体状態に回復した場合をいうものではありません。

文責:木嵜真一

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム