経営労務情報 平成26年(2014年)5月号

I 5月のお知らせ4月に支払のあった給与から、協会けんぽの介護保険料を変更されましたか? 再確認をお願い致します。
◆今年4月は、昨年より入社した方が多いのか社会保険の手続きをしてから、「健康保険証」が、会社へ届くまでに3週間ほどかかっています。この遅れが改善するまでは、早めの連絡・手続きをお願い致します。
◆真夏を感じるほどの天候になり、建設業のお客様では「熱中症」で倒れる事故も発生しています。皆様の会社でも、暑さ対策の健康管理を早めにお願い致します。
◆住民税の「特別徴収」の通知が送られてきています。退職者分も含まれていないかの確認をお願い致します。

II 中小企業の「賃金」と「雇用」状況◆中小企業が賃金改善に前向き?
帝国データバンク発表の「2014年度、賃金動向に関する企業の意識調査」の結果、賃金改善を見込む会社の割合は46.4%(前年度比7.1ポイント増)となり、2006年の調査開始以降で最高となりました。今後の賃金改善が「ある(見込みを含む)」の回答割合は、意外にも大企業よりも中小企業が高く47.6%でした。

改善内容は、ベースアップで対応が34.0%、賞与(一時金)で対応が27.8%となり、こちらも中小企業ではベースアップで対応が35.5%、賞与で対応が28.2%でした。

◆3社に1社は給与水準アップ
日本政策金融公庫総合研究所発表の「全国中小企業動向調査」の結果、正社員の給与水準が、2013年12月を基準とし、前年同月と「ほとんど変わらない」とした会社の割合が64.2 %で最多となりましたが、「上昇した」会社の割合は34.1%となりました。賞与は「ほとんど変わらない」会社の割合が56.0% で最多でしたが、「増加」した会社は29.3% となりました。つまり、3社に1社は給与水準がアップしたことになりました。

約3割の企業で正社員が増加
次に、正社員数では、前年同月と「変わらない」会社51.4%、「増加」した会社は31.5%となり、約3割の企業で正社員が増加しました。増加理由は、「将来の人手不足に備えるため」が47.3%、「受注・販売が増加したため」が 36.3%、「受注・販売が今後増加する見通しのため」が28.9%でした。

一方、正社員の減少理由は、「退職者・転職者の人員補充できなかったため」64.6%、「受注・販売が減少したため」17.2%、「人員が過剰だったため」9.9%となりました。

III ハローワークの求人票に苦情多数!?7,000件以上の苦情
ハローワーク(職安)の求人票に対する苦情が多くなっています。厚生労働省の平成24年度調査では、求人票の記載内容と実際の労働条件が異なるといった申出が 7,783件にもなりました。

◆苦情の種類
苦情内容は、「賃金に関すること」が2,031件、「就業時間に関すること」が1,405件、「選考方法・応募書類に関すること」が1,030件と上位を占めました。その他にも、「雇用形態」「休日」「社会保険・労働保険」に関することが続きました。

◆具体例
具体的事例では、「面接に行ったら求人票より低い賃金を提示された」、「採用の直前に、求人票にはなかった勤務地を提示された」、「(あり)となっていた雇用保険、社会保険に加入していなかった」などと続きました。

◆具体的な対策
厚生労働省では、「求人ホットライン」を設置し、是正指導を行うことになりました。中島事務所のお客様企業では、このような苦情を受けたことはございませんが、問題の起きない求人票になるよう改善するとともに、より良い人材との出会いを増やす「求人票」になるよう会社様と一緒に今後も検討させて頂きます。

IV スポット情報●中小企業の深刻な後継者不足が明らかに、中小企業白書 (2014/4/26)
2014年度版「中小企業白書」では、経営者の高齢化が進む中、後継者不足が深刻になっている実態が明らかになりました。これが休業・廃業数の増加につながっているとの指摘もされており、今後は親族以外に事業を引き継ぎやすくする仕組みづくりが求められています。

70歳までを「働く人」に位置付け、 政府有識者会議 (2014/5/5)
政府の経済財政諮問会議が「人口減」と「超高齢化」への対策をまとめた提言案が明らかになり、「70歳までを働く人」と位置付けるほか、出産・子育てに関する支援を強化する方針であることがわかりました。6月にまとめる「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれる見通しです。

●派遣の半数が「正社員」としての雇用を希望 (2014/4/30)
日本人材派遣協会の調査で、派遣労働者の48.3%が、将来の働き方として正社員を希望していることがわかりました。しかし同調査によると、派遣先企業から正社員としての採用を打診されたことがある人は18.1%で、本人が希望していても正社員になるのは難しいのが現状のようです。なお、派遣社員として働き続けたい人の割合は14.7%でした。

●現金給与総額が3カ月ぶりに増加、残業代などが押上げ (2014/4/30)
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(本年3月)では、現金給与総額が27万6,740円(前年同月比0.7%増)となり、3カ月ぶりに増加したことがわかりました。ただし、これは残業代などの「所定外給与」やボーナスなどの「特別給与」の上昇によるもので、基本給などの「所定内給与」は、22カ月連続で減少しています。

●「紹介状なし」での大病院受診、初診料全額自己負担に(2014/5/9)
厚生労働省は、紹介状なしで患者が大病院で受診した場合に、新たな負担金を求める制度を2016年4月頃に導入する方針を示しました。医師を高度な治療に専念しやすくするため、軽傷で大病院に行く患者を減らすのが狙いです。来年の通常国会に関連法案の提出を目指しています。

監修 :中島光利、坂山徹

経営労務情報 平成26年(2014年)3月号

この1月末にて退職し、八木義昭君が独立することになりました。独立祝いにお客様を譲ることもできました。立派な社会保険労務士になってくれると思います。

I 介護保険料が変わります協会けんぽの介護保険料率が3月分(4月納付分)より、現行の1.55%から1.72%へ約11%増額されました。原則として、4月に支払う給与からの変更となります。お客様へは、3月末までに変更一覧表をお送り致しますのでご確認ください。

II 産前産後中も社会保険料が免除されます4月より、産前産後の休業(産前42日・産後56日)を取得した場合、社会保険料の免除が受けられるようになります(本人分および事業主分)。この制度の対象者は、3月5日出産の方からで4月分保険料より免除となります。変更ではありませんが、扶養家族の妻が出産し、夫が「育児休業」を取得した場合は出産日から社会保険料の免除となっています。

III 企業の「退職給付制度」に関する最新調査結果◆4社に1社は退職一時金・退職年金「なし」
昨年11月に発表された「厚生労働省・就労条件総合調査」(常用労働者数30人以上の企業を対象、4,211社から有効回答)では、前回調査以来5年ぶりに退職金に関する調査が行われました。それによると2008年調査時は83.9%の企業が退職金制度ありと回答していましたが、今回は75.5%まで減少していました。

◆「退職一時金制度のみ」が大幅増
制度の形態別では、2008年当時は31.9%あった「退職一時金と退職年金を併用」する企業が今回は22.6%へと大きく減少し、「退職一時金制度のみ」とする企業が55.3%から65.8%と大きく増えました。支払準備形態は、退職一時金制度がある企業では、「社内で準備する」企業が64.5%で最も多く、次に「中小企業退職金共済制度を利用」が46.5%でした。

一方、退職年金制度がある企業では、「厚生年金基金」(44.8%)が最も多く、確定拠出年金(企業型)の35.9%、確定給付企業年金の35.6%となりました。今後は、厚生年金基金制度の見直しが進むにつれて変化する可能性があります。

◆支給額も大幅減
勤続35年以上の定年退職者の平均退職金額は、大卒者が2,156万円(前回比 335万円減)、高卒者(管理・事務・技術職)が1,965万円(同273万円減)、高卒者(現業職)が1,484万円(同537万円減)となり、いずれも大きく減少しました。

◆これからの主流は「確定拠出年金」??
2014年度の税制改正では拠出限度額の引上げ検討もされていますが、税制上の優遇措置もあり今後は、確定拠出年金が増加する可能性もあります。《一言》中小零細企業の退職金の現状とは大きな隔たりを感じますが、「退職一時金のみ」という退職金制度への見直しと、今までにない大きな減額が進んでいます。

IV 未払残業代を請求する内容証明が急増中!◆東京管内の割増賃金遡及支払額が17億円
東京労働局から「賃金不払残業の是正結果(平成24年度)」が公表され、割増賃金の是正勧告・指導対象により100万円以上の遡及支払いとなった企業数が125となり、その総額は17億円となりました。

◆ネット上にあふれる割増賃金請求に関する情報
最近は、元従業員から、未払残業代請求の内容証明が届く企業が非常に増えています。「あなたの未払残業代がすぐわかる!」といったホームページや、残業代請求に関する内容証明のひな形を掲載するサイトも増えています。

◆会社としての対応
まず内容証明の送り手は誰か。差出人が従業員個人なのか、合同労組やユニオンなのか、弁護士等なのかにより対応が違ってきます。例えば、本人が会社へのうっぷんを晴らしたいのか、お金が欲しいだけなのか、個人的恨みなのか等が判断できる場合もあります。会社としては、必要な資料(タイムカード、日報、就業規則、賃金規程等)の収集・検討を行い、残業時間を確認したうえで、対応がスタートします。

◆日頃の労務管理が重要!!
未払残業代を発生させない残業・労働時間管理への見直しが必要となります。未払残業代を請求されたという噂が広まれば、今の従業員からも不満を爆発させてしまう場合もあります。今一度、検証してみてはいかがでしょうか。

V スポット情報●国民年金保険料滞納者の差押「年収400万円以上」が対象(2014/1/24)
厚生労働省は、国民年金保険料の納付率アップを図るため、資産の差押えの対象を「年収400万円以上、滞納13ヶ月以上」の人とする方針を明らかにした。また、所得が低い人向けに保険料納付を猶予する制度の対象者年齢を拡大し4月から順次実施の見込み。

●社会保険未加入の建設業者を排除へ 国交省(2014/1/22)
国土交通省は、社会保険未加入の建設業者について、公共事業の元請と一次下請に参加させない方針を明らかにした。将来的には二次下請以下からも排除する考え。同省では、未加入業者への指導を強化し、2017年度には加入率100%を目指している。

●60~64歳の就業希望者のうち男性81%・女性66%が就業(2014/2/20)
厚生労働省が「中高年者縦断調査」の結果を発表し、60~64歳で、2005年時点の「60~64歳は仕事をしたい」と希望していた人のうち、男性の81.2%、女性の66.3%が実際に就業していたことがわかった。同省は「希望者の多くが実際に働いていて、中高年の働く意欲が高まっている証拠」と分析している。

●建設業での外国人受入れ拡大 政府検討(2014/1/25)
政府は人手不足が深刻な問題となっている建設業における外国人の活用を検討する緊急会議を開き、「外国人技能実習制度」の拡充などについて検討を行った。今年度中に対策をまとめ、2015年度から外国人労働者の受入れ拡大を目指す考え。

監修 :中島光利、坂山徹

経営労務情報 平成26年(2014年)1月号

I 2013年度の新入社員の意識調査新入社員の意識に変化はあったのか
日本生産性本部が入社半年後の新入社員を対象に実施した「2013 秋・若者意識アンケート」の調査結果が発表され、新入社員の意識にいくつかの変化が見られました。

「スペシャリスト」志向の割合が増加
キャリアについて「1つの仕事や持ち場を長い間経験させて、スペシャリスト(専門家)としてきたえる職場」と「いろいろな仕事や持ち場を経験させて、ジェネラリスト(会社全般の仕事が見渡せるような人)としてきたえる職場」のどちらを希望するかという問に対し、「スペシャリストの職場」と回答した割合は48.8%となり、「ジェネラリストの職場」のほうを若干上回りました。前回調査と比較すると、「スペシャリストの職場」が7.2ポイント上昇し、過去最高の変化を見せました。

「キャリアに反する仕事を我慢するのは無意味」が過去最高
「自分のキャリアプランに反する仕事を我慢して続けるのは無意味だ」という問に対し、「そう思う」が42.4%(昨年比15.9ポイント上昇)で、調査を開始した2006年以降で過去最高の上昇幅となりました。また、「条件の良い会社があれば、さっさと移るほうが得だ」という問に対し、「そう思う」が41.4%(昨年比5.2 ポイント上昇)となりました。

さらに、転職について「あなたは1つの会社に、最低でもどのくらい勤めるべきだと思いますか?」に対しては、「1年」および「2~3年」とする回答が2011年より上昇し続け、過去最高の44.5%となりました。

「自分の良心に反する仕事の指示には従わない」回答が急増
「上司から、会社のためにはなるが自分の良心に反する手段で仕事を進めるように 指示されました。この時あなたは...」の問いに対し、「指示に従わない」の回答者が16.4%(昨年比6.9ポイント上昇)で、こちらも2006年の調査開始以来の最高の増加でした。

II スポット情報◆ 新卒採用者数が4年連続で増加の見込み(2013/12/19)
2015年春卒業の、大学生・大学院生の採用見通しに関する調査(リクルートホールディングス実施)で、採用者数が前年より「増える」と回答した企業の割合(13.3%)が「減る」と回答した企業の割合(5.5%)を大きく上回ったことがわかった。「増える」と回答した割合の多かった業種は、「建設」(21.5%)、「飲食サービス」(21.1%)、「情報通信」(19.4%)、「証券」(19.4%)の順だった。

◆ 高卒者の就職内定率が64.1%に上昇(2013/12/17)
文部科学省が高卒者(平成26年3月卒業予定者)の就職内定状況(平成25年10月末現在)を発表し、就職内定率が64.1%(前年同期比3.2ポイント上昇)となり、4年連続で改善したことがわかった。同省では「景気回復に伴って企業の採用活動が活発化している」と分析している。

◆ 公的年金の支給総額と受給者数が過去最高に(2013/12/17)
厚生労働省は、2012年度における公的年金の支給総額が約53兆2,397億円(前年度比1.9%増)、受給者数が3,942万人(前年度比2%増)となり、いずれも過去最高となったと発表した。なお、加入者数は6,736万人で、前年度から39万人減少した。

◆ 連合が5年ぶりにベア1%以上を正式決定(2013/12/4)
連合は、来年の春闘において、年齢や勤続年数に応じて賃金が上昇する定期昇給(2%)を確保したうえで、基本給を一律で引き上げるベースアップ(1%以上)の実施を5年ぶりに要求することを正式決定した。大企業との格差を埋める必要がある中小企業については、さらに1%程度の上乗せを要求する方針。

◆ 現金給与総額が4カ月ぶりに増加(2013/12/3)
厚生労働省が10月の「毎月勤労統計調査」の結果を発表し、現金給与総額が26万7,167円(前年同月比0.1%増)となり、4カ月ぶりに増加したことがわかった。所定内給与は24万22,153万円(同0.4%減)で17カ月連続で減少、所定外給与は1万9,511円(同5.4%増)で7カ月連続で増加した。

◆ 「ブラック企業」対策で求人票に採用者数・離職者数を記載(2013/12/2)
厚生労働省は「ブラック企業」対策として、ハローワークを通じて大学生らを採用する企業に対し、来年度から離職率の公表を求めることを決定した。求人票に過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄を設ける。ただし、記入は強制とはしない考え。

◆ 公的年金の黒字額が3兆円 7~9月期(2013/11/30)
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、今年7~9月期の運用実績が約3兆2,418億円の黒字であったと発表した。国内外における株式の上昇により評価益が増加したことによるもので、黒字は5四半期連続となった。

◆ 完全失業率 横ばいの4.0% (2013/11/29)
総務省が10月の完全失業率を発表し、前月と同じ4.0%だったことがわかった。また、厚生労働省が発表した同月の有効求人倍率は0.98倍(前月比0.03ポイント上昇)となり2カ月ぶりに上昇した。

◆ 労働者派遣制度見直し案を労政審に提示 厚労省(2013/12/13)
厚生労働省は、労働者派遣制度の見直し案を労働政策審議会の部会に示した。最長年としている派遣社員の受け入れ期間の上限をなくし、無期限で働き続けられるようにする。また、通訳などの「専門26業務」の区分についても廃止する。来年の通常国会に労働者派遣法の改正案を提出し、2015年の施行を目指す。

◆ 社会保障給付費が過去最高の107兆円(2013/12/7)
国立社会保障・人口問題研究所の発表によると、2011年の年金・医療・介護などの社会保障給付費が107兆4,950億円(前年度比2.7%増)となり、過去最高を更新したことがわかった。内訳をみると、年金が53兆623億円(同0.2%増)で全体の49.4%を占め、医療は34兆634億円(同3.5%増)、介護は7兆8,881億円(同5.1%増)だった。

監修 :中島光利、八木義昭、坂山徹

経営労務情報 平成25年(2013年)11月号

I アルバイトの非行増加!就業規則のチェックを●飲食店や小売店で被害が続出
コンビニのアルバイト店員がアイス用の冷凍庫の中に入っているところを写真に撮ってインターネット上に掲載した事件を皮切りに、最近、飲食店や小売店で類似の事件が相次いで起こりました。中には事件をきっかけに閉店することとなった店舗もあることから、経営者が この問題を軽く考えてアルバイトに対する教育や労務管理をおざなりにすることは、経営の存続をも危うくする大きなリスクをはらんでいます。

●被害を未然に防止するには?
こうした非行を未然に防止するためには、就業時間中は業務に集中することとして携帯電話(スマホ)の操作を禁じたり、休憩時間中や就業時間外であっても勤務先の不利益につながるような行為は慎むべきことを教育したりする必要があります。
さらに、これらのことを職場におけるルールとして徹底し、就業規則や店舗に備付けの業務マニュアル等にも明記しておく必要があります。

●万が一に備えて就業規則等を確認
就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者に作成が義務付けられていますが、正社員用の就業規則だけでアルバイト用のものは作成されていなかったり、アルバイト用の就業規則はあるが、規定内容に不備があったりするケースもあります。

就業規則が作成されていない、または規定内容に不備がある場合、従業員に非行があってもそれを理由として、懲戒処分・懲戒解雇にすることができない場合があります。自社の就業規則をチェックし、作成の仕方や見直しの要否等について検討してみてはいかがでしょう。

II 労働基準監督署による最近の送検事例(労災関連)東京労働局は労災事故に関連した最近の送検事例を公表しました。

●事例(1)労災かくしで道路旅客運送業者を書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年2月、タクシー会社の駐車場で従業員がハイヤーを洗車していたところ、転倒して手首を骨折し、休業4日以上に及ぶ労災事故が発生しました。労働安全衛生法では、「休業4日以上」の労災については、遅滞なく所轄労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出することになっていますが、労災の発生を隠すため報告書を提出しませんでした。タクシー会社と営業所長が平成25年8月に書類送検されました。

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●事例(2)工事現場の墜落死亡災害で書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年4月、高架橋の防風柵新設工事現場で、工事業者の従業員(当時19歳)が、つり足場の組み立て作業中に足場から約13m下に墜落して死亡しました。つり足場の組立て作業を行わせる場合は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者から作業主任者を選任し、作業主任者に作業の進行状況および保護帽と安全帯の使用状況を監視させなくてはなりません。

この工事業者は、選任した作業主任者が現場に不在であり、作業の進行状況と安全帯の使用状況を監視せず、作業をさせていたことが判明しました。工事業者と工事部長が平成25年9月に書類送検されました。

●労働基準監督官が注目されている?
監督署が送検を行うのは特に重大な事案の場合に限られますが、「労働安全衛生法違反」以外にも「労働基準法違反」や「最低賃金法違反」等でも送検されます。10月から、監督官を主人公としたドラマ放送がスタートしたことや、今話題のブラック企業問題など、今後、監督署や監督官に注目が集まるかもしれません。

III 企業における「懲戒処分」の実施状況は?近年、労使トラブルは増加傾向にありますが、それに伴い懲戒処分を実施する (または実施を検討する)企業も増えています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が今年7月に発表した「従業員の採用と退職に関する実態調査」の結果から企業における懲戒処分の状況について紹介します。

●懲戒処分の規定内容
懲戒処分の規定が「ある」企業の割合は94.6%で、ほとんどの企業が「就業規則」に規定しています。規定内容は、割合の高い順に以下の通りです。
「必要な場合には懲戒処分を行う旨の規定」(75.7%)
「懲戒処分の種類」 (69.9%)
「懲戒の対象となる事由」(61.9%)

●最近5年間における実施状況
ここ5年間の懲戒処分の、種類ごとの実施割合は次の通りです。
(1)始末書の提出 (42.3%)
(2)注意・戒告・譴責 (33.3%)
(3)一時的減給 (19.0%)
(4)降格・降職 (14.9%)
(5)懲戒解雇(13.2%)
(6)出勤停止(12.3%)
(7)諭旨解雇( 9.4%)

なお、「いずれの懲戒処分も実施していない」企業の割合は39.0%でした。

●懲戒処分の実施時の手続き
懲戒処分を実施する際の手続きとして法律で定められた要件はありませんが、一般的には「理由の開示」、「本人の弁明機会の付与」が必要とされています。また、「労働組合や従業員代表への説明・協議」を行うことにより、本人以外の従業員の納得性を高めることもできます。実施する際には慎重な配慮が必要です。

監修 :中島光利、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)9月号

経営労務のお役立ち情報です(次号からはテーマを絞り隔月発行とさせて頂きます)
お客様のご理解により担当のお客様をすべて譲り、この9月末にて退職し、木嵜真一君を独立させることができました。お客様には深くお礼を申し上げます。立派な社会保険労務士になってくれると思います。15年勤務してくれました。

I 転職者は転職に際して何を重視している?●人材確保のためには何が必要?
景気が上向きつつある現在、転職を希望する人も徐々に増えてきています。会社が「優秀な人材」「望む人材」「欲しい人材」を獲得するためには、転職者に「この会社に行きたい」と思ってもらわなければなりません。それでは、転職者は何を求めて(何を理由に「この会社に行きたい」と思って)転職をするのでしょうか?逆に会社としては、自社が望む人材に応募してもらうために、何をポイントにすべきでしょうか?

●調査結果
日本経済新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの共同調査の結果、「転職の条件で重視するもの」(3つまで回答)の回答の上位7つは以下の通りでした。
(1)給与水準
(2)会社の将来性
(3)福利厚生
(4)職場の人間関係
(5)スキルやキャリアを磨ける可能性
(6)職務やポスト
(7)会社の社会的貢献度

●「給与以外」で重要な要素
やはり1位はダントツで「給与水準」(82.2%)でした。しかし、給与はもちろん重要な要素ですが、それ以外の項目をみると、「仕事は大変でもやりがいがある」「仕事を通じて自分の成長を実感できる」「仕事を通じて社会の役に立てる」などと感じることができる職場・仕事が求められています。

II「最低賃金」と「定額残業代」●平均で14円の引上げに
政府は、今年10月頃に予定している平成25年度改定に合わせて、最低賃金の額の引上げ方針を固めました。引上げ幅は時給ベースで「14円」(全国平均)とされました。現在、全国平均で749円ですので、763円への引上げになります。今後はこれを目安に、都道府県ごとの最低賃金が決定されます。

最低賃金の引上げに向けて、政府は会社の内部留保が投資や賃金に回るような誘導策を導入する方針です。一方、負担の大きい中小企業に対しては、経営を過度に圧迫しないための対応策も検討するとしています。

●定額残業代と最低賃金、そして定額残業代自体の問題
パート・アルバイトの従業員がいない会社でも、最低賃金の引上げには要注意です。月給制の場合でも、「定額残業代制度」をとっている会社においては、(基本給)と(定額残業代以外の手当額)の合計を時間単価に直した場合、その額が最低賃金を下回ると法違反となり罰金が科される可能性があります。さすがにこの基準自体はクリアしていることが多いと思いますが、定額残業代にはまた別の問題点もあります。定額残業代の支払方法には、以下2パターンがあります。
(1)基本給とは別に手当として支払う方式
(2)基本給などに組み込んで支払う方式

未払残業代訴訟では、支払方法によって、会社側の主張が認められにくくなる場合があります。(1)については、就業規則や雇用契約書に定めがあれば、裁判でも定額残業代が認められやすい傾向にありますが、(2)については特に問題が多く、裁判で否定されることが多いようです。

●これから定額残業代を導入する場合
新たに定額残業代制度を導入しようとする場合、その多くは労働条件の不利益変更に該当することになります。その場合は、原則として書面による従業員との明確な合意が必要です。また、同意を得る前に、従業員に対する説明会や個別面談を行うなど、導入には周到な準備が必要です。消費税引上げを見据えて最低賃金引上げの圧力は強いようです。この機会に就業規則や雇用契約書、残業管理方法についても見直しておきましょう。

III 厚労省が「ブラック企業」の取り締まりを強化●「ブラック企業」の本格取締りがスタート
若年労働者等の使い捨てが疑われる会社(いわゆる「ブラック企業」)が社会問題となっていることを受けて、厚生労働省は、9月に集中的な監督指導を行います。法違反が認められた場合は是正指導が行われます。監督指導内容は以下の通りです。

・長時間労働抑制に向けた集中的な取組みの実施
主な重点確認事項
(1)時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかの確認
(2)サービス残業の有無についての確認
(3)長時間労働者に対する、医師による面接指導などの健康確保措置についての確認

過労死、または、脳・心臓疾患等に係る労災請求が行われたなどの会社については、再発防止の取組を徹底させるため、法違反の是正確認後も監督指導が実施されるようです。監督指導の結果、法違反の是正が行われない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける求人募集ができなくなることも決定しており、重大・悪質な違反が確認された会社については、送検、公表するとしています。

・しっかりとした相談対応
9月1日には全国一斉の電話相談を実施し、過重労働が疑われる会社などに関する相談を踏まえ、法違反が疑われる会社に監督・指導を行います。9月2日以後も「総合労働相談コーナー」「労働基準関係情報メール窓口」で相談や情報の受付をしています。新卒応援ハローワークでも、情報・相談を受け付け、労働基準法などの違反が疑われる会社に関しては労働基準監督署に情報を提供するとしています。

監修 :中島光利、八木義昭

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