経営労務情報 平成27年(2015年)9月号

I お知らせ◆年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月に支払う給与から対象となります。
(具体例は以下のとおり)※例年9月支払給与から変更されている場合は9月で結構です。
●翌月払の会社では9月分から(例:9月末日締切の10月10日支払)
●当月払の会社では10月分から(例: 10月20日締切の10月末日支払)
「厚生年金」の料率も上がります。お客様への通知は、今月中にはお届け致します。
◆最低賃金が、10月1日より820円(愛知県)に変更されます。今回も大幅な変更になります。パート募集時の時間給や、10月1日以降の給与計算時はご注意ください。

II 「マイナンバー」 について、会社が準備すること◆いよいよマイナンバーの「通知カード」が10月から送付されてきます。
小規模事業者向けの「マイナンバーチェックリスト」(内閣府)よりご説明します。従業員さんへの対応は以下の「7項目」となります。
【1】「担当者」1名を、「役員」か「責任のある方」から決めてください。
【2】皆さんへ「マイナンバー制度」が始まり「通知カード」が届くことを伝えて下さい。
【3】利用目的(「年末調整」「社会保険・雇用保険届出」)を皆さんへ伝えてください。
【4】「通知カード」コピーと「運転免許証」コピーを預かってください。免許証がない場合は写真付書面(パスポートなど)のコピーとなります。扶養家族は「通知カード」コピーのみ預かります。※来年からは「個人番号カード」コピーでも可能です。
【5】預かった書類のファイルは、必ずカギのかかる書棚や引出に保管してください。
【6】パソコン管理の場合は、セキュリティ対策を厳重にしてください。当面はパソコンによる管理をしない方が安全です。紙(コピー)での管理をお勧めします。
【7】退職者のマイナンバーのコピーは、シュレッダーによる確実な破棄が必要です。
◆お客様へは、従業員さんへお渡しする「届出書」「回収封筒」などをご用意いたします。

III 個別労使紛争の「解決状況確認ツール」の活用◆個別労使紛争の3つの解決手段
労使紛争の解決手段には「労働局によるあっせん」「労働審判」「民事訴訟」があります。
1)「労働局によるあっせん」=労働問題専門の「紛争調整委員会」が、(1)双方の主張確認、(2)双方が求めると具体的なあっせん案を提示、(3)合意の形成を提示します。
2)「労働審判」=労働審判官(裁判官)1名と労働関係の労働審判員2名による「労働審判委員会」が、3回以内の期日で審理し適宜調停を試みます。解決に至らない場合には、柔軟な解決を図るための労働審判となる場合もあります。
3)「民事訴訟」=裁判官が法廷で「判決」を出します。途中での「和解」の場合もあります。

◆最近の傾向
厚生労働省の調査結果では、上記の紛争解決を利用した場合には「会社が従業員に金銭を支払って解決した」が全体の9割を超えました。内閣府でも、裁判で認められ、労働者の申出による「金銭補償解決」制度の導入の検討を発表しています。

◆「解決状況確認ツール」とは?
厚生労働省は、労使紛争の解決方法を確認することができるサイトを開設しました。
(1)事案内容(普通解雇、整理解雇、労働条件引下げ等)、(2)残業代請求の有無、(3)労働者の性別、(4)雇用形態、(5)勤続年数、(6)役職、(7)月額賃金、(8)企業規模の条件、を入力し解決方法(あっせん、労働審判、和解)や、「解決金」の金額を調べることもできます。

IV「精神障害」の 労災請求件数 が過去最多◆「心の病」での労災請求が過去最高
平成26年度の労災請求が公表され、うつ病などの「心の病」が1,456人(うち認定者497人、自殺・自殺未遂者99人)で、前年度比47件増、支給決定件数497件となり、統計開始以来最高でした。また、脳・心臓疾患認定者も277人となり、前年比は減少しましたが、ここ数年300人前後の高止まりが続いています。

◆精神障害に関する内訳
請求件数の業種別では「製造業」245件、「医療・福祉」236件、「卸売業・小売業」213件の順に多く、支給決定件数では「製造業」81件、「卸売業・小売業」71件、「運輸業・郵便業」63件の順でした。年齢別の請求件数(カッコ内は支給決定件数)では「4049歳」454件(140件)、「3039歳」419件(138件)が多くなっていました。

「月80時間以上の残業」を行っていた人は約4割
認定者497人のうち、「過労死ライン」の月80時間以上の残業を超えた人は201人(前年比57人増)。このうち160時間以上の残業は67人(前年比36人増)でした。

◆長時間労働やストレスを減らす工夫が必要
心の病になっても労災が認定される人は限られますが、「長時間労働の削減」「ストレスを軽減できる環境づくり」が大切と考えられます。

V スポット情報●マイナンバー通知カード、 送付先変更の受付開始(8月24日)
全国の自治体が、10月から郵送されるマイナンバーの「通知カード」について、送付先の変更届の受付を開始した。対象者は、DVや児童虐待、ストーカーなどの被害者や東日本大震災で避難した被災者、病院や介護施設に長期間入っている独り身の人など。希望者は8月24日~9月25日の間に、住民登録している市区町村に申請します。(郵送申請可)

●「マイナンバー法改正案」成立へ(8月27日)
参議院内閣委員会は、マイナンバーと基礎年金番号の連結を最大1年5カ月間凍結する修正案を盛り込んだ「マイナンバー法改正案」を可決した。修正が入ったため参議院本会議で可決後、改めて衆議院へ送り、来週の衆議院本会議で成立する見通し。当初案はマイナンバーを預金口座にも記載することで税金や保険料の徴収に役立て、年金分野でも活用する予定だったが、凍結中は年金相談や支給申請手続等にマイナンバーを使うことができない。具体的な凍結期間は政令で定める予定。

●介護保険料額に年収反映、平成30年度にも導入へ(8月10日)
政府は、医療保険事業者が加入者数に応じて拠出している介護納付金について、加入者の平均年収に応じて負担割合を決める「総報酬割制度」を導入する方針を固めた。社会保障審議会で本格的な見直し論議をスタートし、平成30年度から段階的に制度を移行していく考え。総報酬割制度に完全移行した場合、個人が支払う保険料は大企業社員で月595円、公務員で月1,850円増加し、中小企業社員は月272円減となる見通し。

●雇用保険料引下げへ、議論開始(8月5日)
厚生労働省が雇用保険料の引下げに向けた議論をスタートさせた。雇用情勢の改善により積立金が6兆円を超えたことを受けたもので、失業給付に当てる保険料を現在の1%から0.8%に下げる方向。その場合の労使の負担の減少額は約3,200億円となる見込み。

●厚生年金・国民年金が、運用好調で黒字最高に(8月7日)
平成26年度年金特別会計の収支決算(時価ベース)について、厚生年金は4年連続の黒字(13兆390億円)、国民年金は6年連続の黒字(8,046億円)となりました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用成績が好調で、15兆2,626億円の運用収益を計上、いずれも年金積立金の市場運用を始めた平成13年度以降最高の黒字額となった。

経営労務情報 平成27年(2015年)6月号

I お知らせ◆真夏を感じるほどの天候になり、建設業のお客様では「熱中症」が早くも心配されます。皆様の会社でも、暑さ対策と健康管理をお願い致します。
◆労働保険の申告書が届き始めました。7月10日までの申告となります。お客様の申告書はこちらでお預かりして保険料をお知らせ致します。
◆送付されてきた住民税「特別徴収」通知書の中に、退職者分は含まれていませんか。退職者分は異動届の提出が必要となります。ご不明点は連絡ください。
◆前号でもお知らせしましたが、今年9月から来年8月までの社会保険料は、4月から6月に払われる給与の「平均額」で決定されます。この間の給与総額が多いと社会保険料が増えてしまいます。6月に支払う給与総額にはご注意ください。

II 中小企業における「人材不足」と「人件費高騰」の実態 ◆中小企業白書からみえる人材不足の広がり
平成27年版の中小企業白書が公開され、人材不足の企業が約4割にものぼりました。特に、建設業、医療・福祉関連の人手不足が目立ち、これは高い離職率も影響しています。新卒者の4割以上が3年以内に離職しており、また小規模の会社ほど離職率が高くなっています。

◆ベア実施の中小企業も大幅増
今年度に入り、中小企業でも景気回復や人手不足を背景に、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を実施する動きが広がっています。財務局の調査によると、中小企業の37%が今春ベアを実施したことが判明、ベアを含む何らかの賃上げを実施した企業は89.1%に上り、雇用確保のため人件費を捻出していることがよくわかります。

◆「人手不足」関連倒産の傾向
人手不足による企業倒産も、平成25年から目立ち始め、徐々に増加しています。
東京商工リサーチの集計では、「後継者難」型倒産が多いものの、最近は「求人難」による倒産の増加が目立つようです。賃上げによる人材獲得競争はコスト増を招くため、人材不足・人件費高騰は中小企業の経営にとって足かせとなっている様子もうかがえます。

◆自社の対策
今後は、賃上げ以外の措置も必要になります。自社の現状と時流を見極めながら、雇用確保の対策を講じていく必要があります。

III 平成26年の労働災害発生状況と発生防止の取組み◆労働災害の発生数が前年を上回る
厚労省が平成26年の「労働災害発生状況」を公表し、「死亡災害」は1,057人(前年比+27人、+2.6ポイント)、「死傷災害」は11万9,535人(同+1,378人、+1.2ポイント)、「重大災害」(一度に3人以上が被災)は292件(同+48件、+19.7ポイント)となり、いずれも前年を上回る結果となりました。同省では「死亡災害、死傷災害の15%以上の減少」を目標に対策を実施しています。

◆労働災害の概要と動向
死亡者数が多い業種は、(1)建設業377人(前年比+10.2ポイント)、(2)製造業180人(同▲10.4ポイント)、(3)陸上貨物運送業132人(同+23.4ポイント)、発生状況では、(1)「墜落・転落」263人(同▲1.1ポイント)、「交通事故」232人(同▲0.4ポイント)、「はさまれ・巻き込まれ」151人(同+14.4ポイント)となりました。
また、死傷者数が多い業種は、(1)製造業2万7,452人(同+1.4ポイント)、(2)商業1万7,505人(同+4.0ポイント)、(3)建設業1万7,184人(同+0.03ポイント)、発生状況は、(1)「転倒」2万6,982人(同+4.3ポイント)、(2)「墜落・転落」2万551人(同+1.8ポイント)、(3)「はさまれ・巻き込まれ」1万5,238人(同▲0.2ポイント)でした。
「重大災害」の内訳は、(1)「交通事故」147件(同+19.5ポイント)、「中毒薬傷」50件(同+22.0ポイント)、「火災高熱物」14件(同+133.3ポイント)となりました。

◆労働災害防止のための取組み
死傷者数の多い転倒災害の防止策として、6月の重点期間に、巡視・点検の実施指導が行われます。交通事故災害は業種を問わず発生していることから、全国安全週間(準備月間)においては警察機関と連携して安全対策に取り組むようです。

IV 通常国会に提出された「労働基準法改正案」のポイント◆改正案のポイント
1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得
有給5日を毎年、時季を指定して与えなければならない法案
4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
5)フレックスタイム制の見直し
6)企画業務型裁量労働制の見直し
7)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
特定高度専門業務の従業員は、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が除外
◆詳細は、次号よりご説明いたします。

V スポット情報 ●「年金記録確認第三者委員会」を6月末で廃止 (H27/5月15日)
総務省は、年金記録確認第三者委員会を6月末で廃止する。平成19年の設置後、8年間で約14万6,000件(審査件数は約27万件)の記録を回復、近年は処理件数が大きく減少し役目を終えたと判断したため。業務は、すでに厚生労働省に引き継がれている。

●収入の多い高齢者の基礎年金「減額」を検討(H27/5月19日)
政府の経済財政諮問会議が、一定以上の収入のある高齢者の基礎年金を減額する仕組みを検討していることがわかった。国と現役世代の負担を軽くするのがねらいで、6月末にもまとめる政府の「財政健全化計画」に反映したい考え。

●リストラ離職が大幅に減少、卸売・小売業では増加 (H27/5月21日)
リストラにより30人以上の離職者が出る企業に作成が義務付けられている「再就職援助計画」に基づく離職者が、平成26年に4万7839人(前年度比12%減)になった。(厚生労働省)業種別では、製造業で2万2,506人(同27%減)となったものの、卸売・小売業で9,291人(同19%増)となった。

●「配偶者控除」平成29年からの新制度導入を検討(H27/5月2日)
政府が「配偶者控除制度」を見直す検討に入ったことがわかった。年内に具体案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出し、平成29年1月から導入したい考え。現在の減税規模は維持しながら、夫婦単位で一定額を控除する案などを検討。新制度により適用対象者は大幅に拡大される見込みだが、所得制限等も検討するとしている。

●企業の「節税策の報告」を義務化へ 政府検討 (H27/5月26日)
政府は、税理士やコンサルティング会社に対し、企業に提供している節税策の報告を義務付ける検討に入った。報告を受けた節税策の情報をもとに法制度を手直しし、脱法的な手法をなくすのがねらい。報告を拒む場合は罰金も検討しており、平成29年の改正予定。

経営労務情報 平成27年(2015年)4月号

I お知らせ◆新入社員を迎える3月、4月は、社会保険への加入・異動が多いため、年金機構の事務処理も増えて、健康保険証が届くのも遅れます。早めの連絡や申請に心がけて下さい。
◆介護保険料が4月から減額変更となりました。 (お客様へは順次お知らせ致します)
協会けんぽの介護保険料率は、旧料率1.72 % → 新料率 1.58 %となります。
「建設国保」などの 国保組合 も変更になっていますのでご注意ください。
◆生年月日が、昭和26年4月1日以前の方は、4月分給与(翌月払の会社では5月支払分)から「雇用保険料」が免除となります。 (お客様へは順次お知らせ致します)
介護保険料の変更とともに、給与計算の時にはご注意ください。
◆今年9月から来年8月までの社会保険料は、4月から6月に払われる給与の「平均額」で決まります。この間の残業等の手当額が多いと社会保険料が増えます。そこで無駄な残業を減らす管理も必要となります。 4月から6月に支払う給与総額にはご注意下さい。

II 「外国人技能実習制度」 適正化 に関する法案のポイント◆技能実習生の人権侵害防止のため「監督機関」を新設
政府は、「外国人技能実習制度」を拡充する新法を閣議決定し、国会に提出しました。
受入れ期間が、現行の最長3年から5年に延長となり、低賃金や長時間労働で酷使する等の防止のため、受入団体や企業を監視する「外国人技能実習機構」を新設します。

◆不正行為があった際には罰則も!
「外国人技能実習機構」は、立入調査や不正行為のチェックを行い、外部との遮断、帰国の強要、パスポートの取上げなどの禁止や、罰則を設けて実習生の保護を図ります。

◆介護分野も受け入れに
在留資格に「介護」を新設する入管難民法改正案も閣議決定されました。
現在の実習制度では製造業や建設業、農業などの69職種ですが、介護は対人サービスで初めての職種となり、更に、林業、自動車整備、惣菜製造、店舗運営管理などが追加の職種として検討されています。

III 中小企業のトップが考える平成27年の経営施策とは? ◆経営活動に影響を与えそうな要因
産業能率大学の調査(従業員数6人以上300人以下の企業経営者635人が調査対象)によると、今年の経営活動に影響を与えそうな要因として、次のことを想定しています。

(1)人材不足(46.5%)【前年比14.5ポイント増】
(2)国の政策変化(44.1%)
(3)消費税の増税(43.6%)
(4)原材料コスト増大(29.3%)
(5)業界構造変化(28.2%)

1位の「人材不足」は、平成22年の調査開始以来、過去最高となりました。また、昨年の人員確保は「例年より難しかった」との回答が半数を超え、本年の取組対策について尋ねた結果も、「従業員の新規採用」が前年比3.8ポイント増となっています。人材不足はまだまだ続きそうです。

◆強化している採用施策
本年の新卒採用については、4社に1社が実施を検討しており、年々増加傾向にありますが、実際に確保できた企業は約半数に留まりました。こうした中で中小企業が強化している採用施策は次のように「即戦力確保」の意向が目立ちます。
(1)中途採用(33.4%)(2)大卒採用(21.4%)(3)高卒採用(15.1%)(4)女性採用(13.4%)

◆平成27年に取り組みたいこと
昨年と比較して増加傾向にある本年の取り組みとしては、(1)新規事業への進出 (2)従業員の教育、育成 (3)従業員の新規採用 (4)従業員満足度の向上 (5)女性の活躍推進 などですが、労働環境や法制度の変更が今後も予定されていますので、情報を収集しながら課題に取り組んでいきたいものです。

IV 主婦の「パート探し」に関する 調査結果 から◆6割以上が「パートをしている方が幸せ」と回答
働いていない全国の主婦200人を対象に、(株)インテリジェンスの求人情報サービス「an」が調査した結果、「専業主婦とパート主婦、どちらが幸せか」という質問に対し、61% が「パートの方が幸せ」と回答しました。理由は「家にこもりきりにならないし自分のお金ができるから」、「社会とつながっていた方が、視野が広がる」などでした。

◆パート先を決めるときの後押しになる要因は?
決める際のポイントは、(1)「急な欠勤OK」(60%)、(2)「職場に主婦のスタッフが多い」(19%)、(3)「従業員割引がある」(17%)という結果でした。子供の発熱など急な用事への対応が必要なため、柔軟に対応してくれる会社を求めている実情がみえます。

◆パート探しは 「WEBの求人サイト」と「求人誌」
パート探し方は、(1)「WEBの求人サイト」(34%)、(2)「求人誌」(28%)、(3)「ハローワーク」(19%)、(4)「お店の張り紙」(11%)となっています。スマートフォン等を使って手軽にWEBサイトを利用して小まめにチェックする主婦が多いようです。

◆主婦層のニーズに対応することも重要に
現在、人手不足感が高まっています。パートの賃金額も上昇しており、資金面の余力のない企業では、賃金だけで人材を集めるのは非常に難しい状況です。フレキシブルな勤務対応を行うことで、人材確保の一役を担うことができるかもしれません。

V スポット情報●零細企業の倒産が大幅減!23年ぶりの低水準(H27/3/23)
2月時点の零細企業の倒産件数が6,142件にとどまり、平成26年度は7,000件を下回る低水準であることが、東京商工リサーチの調査でわかった。平成3年度以来23年ぶりの低水準。ただし全倒産件数に占める割合は、調査開始以来最高の70%台に達する見込み。

●解雇・雇止めが年間47万人、平成14年以降で最少(H27/3/22)
総務省「労働力調査」の結果、平成26年の完全失業者のうち、解雇や雇止めなどで仕事を辞めた人が47万人(前年比14万人減)となり、平成14年以降で最も少ないことがわかった。倒産企業の減少、新たな人材を雇うのが困難といった事情が影響したと見られる。

●労働者派遣法 改正案 を国会に提出(H27/3/13)
政府は「改正案」を閣議決定し国会に提出した。派遣社員の受入期間は、現在最長3年だが、改正案では3年ごとに働き手を代えれば引き続き受け入れが可能となる。期間終了後も、派遣社員が働き続けられよう企業に義務付け、「専門26業務」は期限の制限を除外する特例も廃止する予定。9月の施行を目指す。

●転職者が290万人、5年ぶりの高水準に(H27/3/13)
総務省「労働力調査」の結果、平成26年の転職者は290万人(前年比4万人増)で、4年連続の増加。平成21年(320万人)以来の高い水準。企業の求人が増え、女性を中心に、より良い賃金や雇用形態の仕事を求める人が増えたこと等が要因と分析されている。

●厚生年金未加入の疑いがある中小企業は80万社(H27/2/23)
厚生労働省が国税庁からの情報提供を受けた調査によると、中小零細企業のうち約80万社が厚生年金加入をしていないことがわかった。本年4月以降、3年間かけて強制加入へ向けて指導・検査に乗り出し、立入り検査も実施したうえで加入させる方針。

経営労務情報 平成27年(2015年)1月号

明けましておめでとうございます
皆様のご健康とご繁栄を心からお祈り申し上げます。
本年も職員一同、皆様にご満足頂けるサービスを心がける所存でございます。

I お知らせ◆通勤手当の「非課税限度額」が変更されています。
1月からの給与計算時にはご注意ください。国税庁のホームページでも確認できます。
◆インフルエンザが昨年より3週間早く流行期入りしました。インフルエンザは早期診断(受診)が大変重要です。欠勤が続けて4日以上の場合は、健康保険の「傷病手当金」の請求も可能となります。詳しくはご相談ください。
◆昨年のこの時期に、3人程のお客様が脳梗塞で入院されました。血圧が高い方は特にご注意ください。就寝前と起床後の水分補給も大切です。血圧の確認もお願い致します。
◆年末調整で従業員の住所変更が確認できた場合は、社会保険の住所変更届の提出が必要となりますのでご連絡ください。通勤手当額も変更になるかご確認下さい。

II「スケジュール先送り」が影響する平成28年度新卒採用◆経団連「採用選考の指針」
28年度の新卒採用は、広報開始が3年生の3月以降、選考開始が8月以降となり(いずれも経団連「採用選考の指針」)、従来よりも広報は3カ月、選考は4カ月遅れる内容となりました。ただし、指針を順守せずに選考を開始する予定の企業は多いようです。また、より早く学生への接触(インターンシップ、学内セミナー、大学とのコネクション作り等)を行うこととしている企業も多く見受けられるようです。

◆中小企業における懸念事項
人手不足により人材確保競争が激しくなっており、中小企業では採用活動が長引き、大手企業と中小企業の採用選考期間が重なり、中小企業と学生の出会いが減少することが予想されています。また、採用活動がバッティングすることで内定辞退が増加する、採用時期がずれ込むことで社内業務の調整が必要となるなど、様々な懸念がでています。

◆先を見据えて講じておきたい施策
新卒採用については、多くの中小企業では、大手の内定が出揃う10月以降が勝負となりそうです。採用目標を立てる際に目標に達しない場合の対策も講じておくとともに、内定辞退防止のための施策、新卒が辞めない組織作りなどといった取組みも必要です。

III 平成27年「上半期」施行の主な法律改正◆「労働法」関連
4月1日より、「雇入れ時・契約更新時の労働条件に関する説明義務化」等を内容とする改正パート労働法が施行されます。
6月1日より、重大な労働災害を繰り返す企業に、改善計画の提出や企業名公表等を内容とする改正労働安全衛生法 が施行されます。
同改正によるストレスチェック制度導入は12月1日です。

◆「労働保険」関連
4月1日より、労災保険率が全54業種平均で4.8/1000から4.7/1000へと、0.1/1000の引下げとなります。また、一人親方等の特別加入保険料率、海外勤務者の特別加入保険料率、労務費率の改定なども施行されます。

◆「助成金」「奨励金」関連
2月より、「育休復帰プラン」を策定・導入し、対象労働者が育休を取得・職場復帰した場合に助成金が支給されることとなります。「キャリアアップ助成金」、「トライアル雇用奨励金」、「労働環境向上助成金」、「キャリア形成促進助成金」、「建設労働者確保育成助成金」等の改正も見込まれています。

◆「社会保険」関連
1月1日より、健康保険の「高額療養費制度」が改正(70歳未満の所得区分が細分化) されています。また、昨年4月分から実施されている年金額の特例水準解消について、残る0.5%分の解消による改定(減額)が4月分より行われる予定です。

◆その他
4月1日より、10年間延長等を内容とする改正次世代育成支援推進法が施行されます。

IV スポット情報●外国人 技能実習生保護 に政府の関与を強化(2015/1/16)
政府は、外国人技能実習制度を見直す有識者懇談会による報告書案を明らかにし、実習生への賃金不払いや長時間労働を減らすため、送り出し国と日本政府が協力して悪質な仲介団体を排除する法案をまとめることがわかった。また、監理団体の許可や立入り検査を行う管理機関を新設することなどを盛り込んだ。通常国会に提出予定。

●新卒採用「経団連ルール守る」は 28.6%(2015/1/10)
採用期間が短期化した平成28年の新卒採用に関するいわゆる"経団連ルール"について、「守る」とする企業は28.6%(前年に守った企業は55.1%)だったことが株式会社ディスコの調査(574社が回答)でわかった。経団連の示したスケジュールでは、広報活動の解禁が3月から、面接等の選考が8月からとなっているが、短期化に対応できずに面接の開始時期を前年同様の4月とする企業が最も多かった。

●介護分野の外国人増員へ技能実習制度 の対象拡大 (2015/1/6)
政府は、平成28年度から外国人技能実習制度 の対象職種に「介護」を加え、人手不足が深刻な介護分野への外国人の受入れを拡充する方針を固めた。受入れ条件は、来日時にある程度の 日本語能力を身につけていることとする考え。事業者側には、待遇を日本人と同等以上 とすることを義務付け、事業者の監督・指導を強化する方針。

●平成27年度の雇用保険料率は据置き(2015/1/4)
厚生労働省は、平成27年度の雇用保険料率を1.35%(労働者負担分0.5%、事業主負担分0.85%)に据え置く方針を示した。ここ数年で失業給付の受給者数が約5万人減少していることを受けたもので、正式決定は1月以降に開かれる労働政策審議会で行う。

●賃上げ企業の 減税優遇策 を拡充へ (2014/12/29)
政府は、賃上げを実施した企業への減税策を拡充する方針を明らかにした。中小企業については平成28・29年度とも「3%以上」(平成24年度の給与総額との比較)の賃上げで減税を認め、大企業については平成28年度に限り「4%以上」(同)で認める。平成29年4月に消費税率を10%に上げる予定のため、賃上げを促すことで個人消費を高める狙い。

●高卒者の 就職内定率 が7割超に (2014/12/13)
文部科学省は、来春卒業予定で就職希望の高校生の就職内定率が10月末時点で20年ぶりに7割を超えたと発表した。リーマン・ショック後の2009年(55.2%)から5年連続の上昇。男女別では男子72.9%、女子68.3%となった。学科別では「工業」「福祉」「商業」などが高く、都道府県別では、富山、愛知、石川の順に高い。

経営労務情報 平成26年(2014年)12月号

I お知らせ◆賞与を計算される時の、社会保険料率にご注意ください。
夏の賞与時より、厚生年金の料率が変わっています。 ⇒⇒ 厚生年金 8.737%
健康保険4.985% 介護保険0.86% (健康保険+介護保険=5.845%
◆通勤手当の「非課税限度額」が増額されました。
本年4月にさかのぼって変更されました。課税となる通勤手当を支給している場合はご注意ください。変更案内は、税務署からの「年末調整書類」の中に同封されています。
国税庁のホームページより確認もできます。
◆早いもので今年も12月!慌ただしい頃ですが、事故・ケガや風邪などひかれませんようお気をつけになってください。本年もご愛読いただきありがとうございました。

II 「高年齢者雇用」の実態はどうなっている?◆9割以上が 高年齢者雇用確保措置 を実施済
厚労省が、平成26年「高年齢者の雇用状況」(6月1日現在)の集計結果を発表した。高年齢者雇用を実施済の企業の割合は、98.1%(143,179社)となりました。規模別では、大企業99.5%(15,015社)、中小企業98.0%(128,164社)でした。

◆約8割が「継続雇用制度」を導入
雇用確保の内訳では、「定年制の廃止」2.7%(3,850社)、「定年の引上げ」15.6%(22,317 社)、「継続雇用制度の導入」81.7%(117,012 社)となりました。

◆希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合
この割合は71.0%(103,586社)となり、大企業51.9%(7,831社)、中小企業73.2%(95,755社)でした。さらに、70 歳以上まで働ける企業の割合は19.0%(27,740社)で、大企業11.8%(1,780 社)中小企業19.8%(25,960社)となり中小企業の取組みが進んでいます。

◆今後の取組み
同省では、労働局、ハローワークにより未実施企業の早期解消を図るとしています。また、「70 歳まで働ける企業」の普及・啓発等に取り組むとしています。

III 各種調査結果に見る「人材不足」の実態 と 対応策◆雇用・労働分野の切実な問題
「人材不足」は雇用・労働をめぐる最も切実な問題となっています。「人材不足により倒産する中小企業も増え始めている」との報道もあります。特に、飲食サービス業や小売業、運送業等で状況が深刻です。人材不足により社員の業務の負担が高まり、それがさらなる離職につながるといった悪循環も発生しています。

◆厳しい採用状況
リクルートワークス研究所が行った「人手不足の影響と対策に関する調査」では、3社に1社は必要な人数を確保できておらず、うち50%以上は事業に影響が出ているとの結果が出ています。さらに、人材不足の企業の52.7%が「見通しがない」と回答、今後ますます人材不足の悪影響が出てくることが懸念されます。

◆対応策は?
(1)採用対象の拡大(未経験者も採用対象とする、外国人を採用対象とするなど)
(2)処遇の改善(賃金の引上げ、パート・アルバイトの正社員登用など)
(3)業務等の調整(業務効率の向上、外部人材活用、アウトソーシング、受注調整、営業時間の調整など)です。
今後、主婦(20~49歳の既婚・子供あり女性)や高齢者の活用が人材不足の解消につながることが大いに期待されます。

IV パートタイマー用の「労働条件通知書」が変更されました◆改正法で 労働条件に関する説明 を義務化
改正パートタイム労働法が、平成27年4月1日から施行されます。パート・アルバイトの雇入れ時や契約更新時に、労働条件(賃金の決定方法、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、正社員転換等の措置内容等)についての説明が義務化されます。労働条件は、必ず文書など(電子メールやFAXでも可)を渡す必要があります。違反した場合は10万円以下の罰金となってしまいます。

◆労働条件通知書の変更箇所
新たに「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」を記載することになります。この「相談窓口」の体制整備が事業主の義務とされたため、パート・アルバイトを採用している会社では、担当者または担当部署を決めておく必要があります。

◆労務管理に関する疑問は早めに相談を
「平成26年版労働経済白書」では、平成25年の非正規労働者(パート・アルバイト含む)の割合は36.7%、10年前と比較して6%増、人数は約400万人増加しています。非正規労働者の増加に伴い、正社員との労働条件の差について、不公平感を感じるパートと事業主の間でトラブルとなるケースが増えており、パートタイム労働法が改正された大きな理由の1つにもなっていました。労務管理に関する疑問や不安は、早めに対策を検討する必要があります。

V スポット情報 ●就職内定率が大卒・高卒ともに改善(2014/11/15)
文科省と厚労省は、来春卒業予定の大学生の就職内定率が68.4%(10月1日時点。前年同期比4.1ポイント増)となり、4年連続で上昇したと発表した。また、高校生の内定率も54.4%(9月末時点。同8.8ポイント増)に上昇した。

●「配偶者控除」の見直しを検討へ(2014/10/22)
首相は、女性の就労拡大に向け、配偶者控除など税制上の措置や社会保険制度の見直し案を検討するよう、経済財政諮問会議において関係官僚に指示した。政府は、先行して国家公務員の配偶者手当の見直しを検討する考え。

●連合がベア2%以上要求へ 17年ぶりの高水準(2014/10/18)
連合は、来年の春闘で定期昇給(2%)を確保したうえで、全組合員の賃金を2%以上引き上げるベースアップの実施を要求する方針を決定した。ベア要求は2年連続で、1998年の2.9%以来、17年ぶりの高水準。

●高額給与者の健康保険料を引き上げへ -厚労省方針-(2014/10/17)
厚労省は、高所得の会社員の医療保険料を引き上げる方針を明らかにした。標準報酬月額の上限(現在121万円)より上に新たに4段階設定する。約32万人が対象となり、最大で月1万円ほど保険料が上がる見通し。来年の通常国会での法改正を目指すとしている。

●来年度から公的年金給付の抑制策を実施へ(2014/10/16)
厚労省は、現役世代の減少と平均余命の伸びに合わせて公的年金給付額を抑える「マクロ経済スライド」を来年度から導入する方針を固めた。物価下落時も年金額を減額できるようにすることで高齢者への給付を抑え、若者の将来の受給額が減りすぎないようにする。来年の通常国会に国民年金法などの改正案を提出する方針。

監修 :中島光利、坂山徹

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム