経営労務情報 平成28年(2016年)4月号

I お知らせ(該当されるお客様へは、別途お知らせいたします) ◆ 4月は、入社・異動が多く、年金事務所・職安の事務処理が遅れますので、早めの連絡をお願い致します。
◆ 4月より、健康保険料の上限が3等級増えました。(基準上限121万円から139万円へ増額
 月額給与123万5千円以上で、該当される方は5月に支払う給与から増額となります。
◆ 4月の給与より、加入者全員の「雇用保険料」が下がります。
 本人負担率は、建設業以外 の会社は、0.4%、建設業の会社は、0.5%となります
◆ 4月の給与より、次の方の「雇用保険料」が不要(免除)になります。
 対象者は 昭和27年4月1日以前に生まれた方です。(新たな対象者は別途お知らせ致します)
4月から6月に支払う給与にご注意ください。今年9月から1年間の社会保険料は、4月から6月に支払う給与の「平均額」で決まります。この間で残業等の手当が多いと社会保険料が増えてしまいます。

II 社員の転職理由の「本音」と「建て前」◆転職市場は盛況
株式会社インテリジェンスの「DODA 転職求人倍率レポート」によると、平成28年2月の「転職求人数」は前月比4.9%増・前年同月比45.3%増となり、15カ月連続の増加、平成20年1月調査開始以来の最高値を更新した。「転職希望者数」も前月比6.5%増、前年同月比56.8%増となり、6カ月連続で最高値を更新し転職市場は盛況です。企業にとっては人材確保が大きな問題になります。

◆会社に「伝える退職理由」と「本当の理由」
転職する場合、会社に退職の意思を伝えてくる際の「退職理由」が本音ばかりとは限りません。エン・ジャパン株式会社の「退職理由のホンネとタテマエ」のアンケート調査(回答1,515名)によると、約半数の人が会社に本当の退職理由を伝えていないことがわかりました。
会社に「伝えた退職理由」と「本当の退職理由」は以下のとおりです。

【会社に伝えた退職理由】
(1)結婚、家庭の事情(23%)
(2)体調を崩した(18%)
(3)仕事内容(14%)

【本当の理由】
(1)人間関係(25%)
(2)評価・人事制度(12%)
(3)社風や風土、給与、拘束時間(各11%)

◆社員の本音から考える
退職者の本音と建て前を見極めながら、退職者を減らす対策を講じていくことも必要と思われます。

III 企業に広がる有期契約労働者の「無期転換」の動き ◆平成30年4月から本格適用(労働契約法18条のいわゆる「5年ルール」)
平成25年4月に施行された、有期契約者の契約更新に通算5年を超えた場合、無期契約への転換権利が与えられる「5年ルール」の規定が、平成30年4月から順次適用になります。

◆「無期契約」に変える企業が増加
ここ最近、パート社員や契約社員などの「有期契約」で働く人を「無期契約」に変える企業が増えています。背景は「人手不足の中で人材を安定的に確保したい」という考えからです。労働政策研究・研修機構の調査(平成27年7~9月)では、「無期にしていく」と回答した企業は6割を超えました。

◆当初の懸念はあたらず?
企業側も、無期にするメリットとして「長期勤続が期待できる」「要員を安定的に確保できる」という理由を挙げた割合が増えています。

◆経団連も検討を後押し
経団連も今後は人材獲得が困難になるとして、「無期転換を前向きに検討すべきだ」としています。ただし企業は無期転換しても賃金を変える必要はありません。労働政策研究・研修機構の調査でも4分の1程度の企業が「対応方針は未定・わからない」と答えています。

IV 平成27年の労災発生状況◆全体では微減だが...
平成27年における労災発生状況(2月速報)が発表され、全体では前年よりわずかに減少しました。
内訳は「建設業」や「製造業」では大きく減少、第三次産業では大きく増加しました。
特に、介護士・看護師など病院や社会福祉施設では15.9%増加しています。

◆労働者の高齢化
病院や社会福祉施設では、腰痛が最も多く、次いで「転倒」となります。半数が40歳から59歳の層で発生しています。就労環境を見直していくことが現実的かつ必要なことのようです。
一般の企業でも、ストレスチェック制度がスタートし、これから健康診断のシーズンを迎えますので、この機会に安全衛生や健康管理について再確認してみてはいかがでしょうか。

V 民間版の労災保険「使用者賠償責任保険」とは?◆契約件数が伸びている!(今後も伸びると予想)
うつ病などによる労災認定件数の増加や賠償額の高額化を背景に、大手損害保険会社3グループの平成27年度「使用者賠償責任保険」の契約件数が前年度比約1.5倍となっています。

◆「使用者賠償責任保険」とは?
労災認定された事案について、損害賠償責任を負った場合に備える保険です。労災保険金を上回る補償や和解金の支払いのために保険金が支払われます。こうしたリスクへの備えとなります。
加入することで今後のリスク回避のための一助となりそうです。

VI スポット情報●高収入者の 本人負担増を検討。平成30年度介護保険制度見直し (3月25日)
厚生労働省は、介護保険財政の悪化に歯止めをかけるため、大企業の社員らの保険料を引き上げ、さらに一定以上の収入がある高齢者の自己負担の上限を引き上げる検討を始めた。介護保険部会において改革案を取りまとめて来年の通常国会に関連法案を提出し、平成30年4月の介護報酬改定時の施行を目指す予定。

●「残業80時間」で労基署立入り調査の対象に(3月24日)
政府は、労働基準監督官の立入り調査について、1カ月の残業時間の基準の引下げ(100時間→80時間)を検討していることを明らかにした。長時間労働に歯止めをかけるために指導を強化し、子育て中の女性や高齢者が働きやすい環境を整えることがねらい。これに伴う対象者は300万人(2.7倍)に拡がることが予想される。法改正による規制強化などは見送る方向。※ 業種に関係なく対象となります。

●是正指導に伴う 残業代支給 対象従業員が過去最多(3月22日)
厚生労働省は、平成26年度にサービス残業で是正指導を受けた企業が未払残業代を支給した従業員が20万3,507人となり、過去最多となったことがわかった。100万円以上の残業代を支払った企業は前年度より88社減の1,329社だったが、支払われた未払い残業代は約19億円増の142億4,576万円だった。従業員の多い企業が労務管理システムの不備により残業代の一部を一律に支払っていなかったことなどが、全体の人数を押し上げました。

●外国人実習生の失踪が過去最多に(3月7日)
平成27年に日本で失踪した外国人技能実習生が過去最多の5,803人に上ったことが法務省の調べでわかった。失踪者が多かったのは中国人(3,116人)とベトナム人(1,705人)で、賃金不払いなどの不正行為を指摘された受入れ先企業・団体も5年連続で増加している、政府は昨年、実習先の監視を強化する「技能実習適正実施・実習生保護法案」を提出、早期成立を目指しています。

●「法人番号」活用で、社会保険未加入企業を特定へ(2月24日)
厚生労働省は、社会保険未加入企業をなくすため、今年4月から法人番号を活用する方針を明らかにした平成29年度末までにすべての未加入企業を特定して悪質な企業には立入り検査を実施し、強制加入させる方針。現在、未加入の疑いのある企業は約79万社とされています。

経営労務情報 平成28年(2016年)1月号

謹 賀 新 年
皆様の ご健康 と ご繁栄 を心からお祈り申し上げます。
本年も職員一同、皆様とともに課題を解決し、力一杯!頑張りたいと思います。

I お知らせ◆従業員さんのマイナンバー回収は、あせらず着実にお願い致します。
◆中島事務所では、マイナンバーへの取り組みとして、(1)保管金庫の設置、(2)施錠管理ができる書棚増設、(3)光回線へのUTM設置(全ネットワークセキュリティ対策対応機)及び、全パソコンを最高レベルのウイルスソフトへ変更、(4)室内室外への防犯カメラの設置、(5)職員への「研修」の実施、などを今月には終える予定です。今後とも、ご安心いただける専門事務サービスを提供してまいります。
◆年末調整で従業員さんの住所変更が確認できた場合はご連絡ください。
◆インフエンザワクチンを接種しましょう。 高熱による欠勤予防、社内の感染予防、早い回復にも効果的です。接種費用の会社負担(一部または全額)も可能です。

II 「希望者全員が65歳以上まで働ける企業」の割合 ◆70歳以上まで働ける企業は過去最高(対象は従業員31人以上約15万社)
厚労省が平成27年の「高年齢者の雇用状況」を発表。 希望者が65歳以上まで働ける企業が、10万8,086社(前年比4,500社増)、割合は72.5%(同1.5ポイント増)。条件付きを含め70歳以上でも働ける企業は、約3万社。平成21年以降で過去最高。

◆割合は中小企業が多い
内訳は中小企業9万9,952社(同1.6ポイント増増)、大企業8,134社(同0.8ポイント増増)
内訳は中小企業2万7,994社(同1.2ポイント増増)、大企業1,957社(同0.9ポイント増増)
「定年制の撤廃」「定年年齢の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの実施済み企業は99.2%(14万7,740社、同1.1ポイント増増)。 内訳は中小企業99.1%(13万2,318社、同1.1ポイント増)、大企業99.9%(1万5,422社、同0.4ポイント増)。
平成28年度からは65歳以上の従業員を多く雇う企業への助成金が拡充されます。

III 調査結果にみる60代の雇用状況と就業意欲 (平成21年比較) ◆60代でも働いている人が増加(独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査)
・定年後の継続雇用の割合が上昇・・・・・・・・・・・(65~69歳で17.2%→24.0%)
・定年直後の無職が低下(60~64歳で18.2%→13.0%、65~69歳で28.4%→18.4%)
・定年後、60歳台後半 でのリタイアが低下・・・・・・・・・・・(28.3%→24.5%)
・定年未経験者でも上昇・・・(65~69歳で55歳時と同じ会社で勤務 6.1%→10.8%)
60代未就労者も26.0%が就労希望。男性60代前半の未就労者も42.9%が就労希望。

◆定年後の仕事が、「変わっていない」人は49.0%(継続雇用者50.7%)と最多。
定年後の賃金は、「減少した」41.9%(継続雇用者80.3%)が最多。
減少幅は、「41~50%」減が 19.1% (継続雇用者 24.2%)と最多。
減額の、是認派(やむを得ない)と、否認派(下がりすぎだ)の割合は、ほぼ同数。

IV 「時間外労働」に関する企業の意識調査◆残業時間削減への企業意識が上昇
エン・ジャパン㈱が行った「時間外労働(残業)」に関するアンケート調査(50名以上企業を対象)の結果、今後の残業時間削減について、「積極的に取り組む」とした企業が60%、「状況を見て、取り組みを検討する」とした企業が約30%となり、全体の約9割が残業時間削減を実施・検討していることがわかった。

◆先月(12月)からのストレスチェック義務化も意識
「積極的に取り組む」理由は、「メンタル面での不調者を出さないため」「社員の健康維持、ワークライフバランスのため」などが多数。また「業務効率を向上させ、生産性の高い企業体質に改善していきたい」など、『業務効率化』を挙げる企業も多く見られた。
一方、『残業代削減』を理由とした企業は43%と、昨年の66%から大きく減少。経費削減よりも、企業体質を改善し時間外の短縮を図ろうとする企業が増えています。

◆管理職への教育と業務フローの見直しが効果的
残業時間削減の対策としては、「管理職への教育(時間管理)」を実施している:47%、取組みしている:32%。「業務分担やフローの見直し」は、同47%、同27%。「残業を事前申請させる」は、同43%、同25%、が回答上位。管理職に時間管理の意識づけを行ない、業務分担や業務フローを見直すことが効果的と言えそうです。

◆経費削減だけではない効果
この問題は従業員のメンタルにも関係し、生産性の低下にもつながります。残業削減は経費削減だけでない効果(効率アップ、若者の採用など)も期待できそうです。

V スポット情報●愛知の「中小企業の賞与」は、経団連平均の3分の1 (12月11日)
愛知中小企業家同友会が会員企業へこの冬の賞与額アンケートを実施(3700社を対象)。平均額は32万6,500円で、大手企業による経団連平均約91万円の3分の1にとどまった。支給しないも約3割弱あり厳しい現状となった。調査は14年ぶりに実施。1,275社が回答。賞与を支給するは58%、支給しないは27%、検討中は15%。 平均額の内訳は、流通・商業が34万8,500円、建設が32万7,400円、サービス32万2,300円、製造 31万8,600円。 金額の内訳は、20万円未満が19%、60万円以上も9%あった。

●退職予定者の人材バンク創設(中小企業の人材確保支援) (12月4日)
厚労省が、中高年の退職予定者向けの人材バンクを創設する方針を明らかにした。産業雇用安定センターの会員となっている大企業や中堅企業(約6,000社)から退職後も働きたいという50代の人材を募り、退職後に中小企業への再就職を促す。また高齢者が多く働く企業向けの助成金も拡充する考えで、平成28年中に順次実施を予定している。

●65歳以上も雇用保険の適用に(12月9日)
厚労省は、65歳以上で新たに就職した人にも雇用保険の加入を認める方針を固めた。 失業時に最大50日分の一時金が受け取れる。保険料は当面、会社負担分も本人負担分も免除する。来年の通常国会に改正法案を提出。平成28年度からの実施を目指す。

●完全失業率が20年ぶりの低水準に(11月28日)
総務省が、平成27年10月の完全失業率を発表し、3.1%(前月比0.3ポイント改善)で20年3カ月ぶりの低水準となったことがわかった。一方、厚労省が発表した同月の有効求人倍率は前月と同じ1.24倍で、23年9カ月ぶりの高水準を維持した。

経営労務情報 平成27年(2015年)9月号

I お知らせ◆年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月に支払う給与から対象となります。
(具体例は以下のとおり)※例年9月支払給与から変更されている場合は9月で結構です。
●翌月払の会社では9月分から(例:9月末日締切の10月10日支払)
●当月払の会社では10月分から(例: 10月20日締切の10月末日支払)
「厚生年金」の料率も上がります。お客様への通知は、今月中にはお届け致します。
◆最低賃金が、10月1日より820円(愛知県)に変更されます。今回も大幅な変更になります。パート募集時の時間給や、10月1日以降の給与計算時はご注意ください。

II 「マイナンバー」 について、会社が準備すること◆いよいよマイナンバーの「通知カード」が10月から送付されてきます。
小規模事業者向けの「マイナンバーチェックリスト」(内閣府)よりご説明します。従業員さんへの対応は以下の「7項目」となります。
【1】「担当者」1名を、「役員」か「責任のある方」から決めてください。
【2】皆さんへ「マイナンバー制度」が始まり「通知カード」が届くことを伝えて下さい。
【3】利用目的(「年末調整」「社会保険・雇用保険届出」)を皆さんへ伝えてください。
【4】「通知カード」コピーと「運転免許証」コピーを預かってください。免許証がない場合は写真付書面(パスポートなど)のコピーとなります。扶養家族は「通知カード」コピーのみ預かります。※来年からは「個人番号カード」コピーでも可能です。
【5】預かった書類のファイルは、必ずカギのかかる書棚や引出に保管してください。
【6】パソコン管理の場合は、セキュリティ対策を厳重にしてください。当面はパソコンによる管理をしない方が安全です。紙(コピー)での管理をお勧めします。
【7】退職者のマイナンバーのコピーは、シュレッダーによる確実な破棄が必要です。
◆お客様へは、従業員さんへお渡しする「届出書」「回収封筒」などをご用意いたします。

III 個別労使紛争の「解決状況確認ツール」の活用◆個別労使紛争の3つの解決手段
労使紛争の解決手段には「労働局によるあっせん」「労働審判」「民事訴訟」があります。
1)「労働局によるあっせん」=労働問題専門の「紛争調整委員会」が、(1)双方の主張確認、(2)双方が求めると具体的なあっせん案を提示、(3)合意の形成を提示します。
2)「労働審判」=労働審判官(裁判官)1名と労働関係の労働審判員2名による「労働審判委員会」が、3回以内の期日で審理し適宜調停を試みます。解決に至らない場合には、柔軟な解決を図るための労働審判となる場合もあります。
3)「民事訴訟」=裁判官が法廷で「判決」を出します。途中での「和解」の場合もあります。

◆最近の傾向
厚生労働省の調査結果では、上記の紛争解決を利用した場合には「会社が従業員に金銭を支払って解決した」が全体の9割を超えました。内閣府でも、裁判で認められ、労働者の申出による「金銭補償解決」制度の導入の検討を発表しています。

◆「解決状況確認ツール」とは?
厚生労働省は、労使紛争の解決方法を確認することができるサイトを開設しました。
(1)事案内容(普通解雇、整理解雇、労働条件引下げ等)、(2)残業代請求の有無、(3)労働者の性別、(4)雇用形態、(5)勤続年数、(6)役職、(7)月額賃金、(8)企業規模の条件、を入力し解決方法(あっせん、労働審判、和解)や、「解決金」の金額を調べることもできます。

IV「精神障害」の 労災請求件数 が過去最多◆「心の病」での労災請求が過去最高
平成26年度の労災請求が公表され、うつ病などの「心の病」が1,456人(うち認定者497人、自殺・自殺未遂者99人)で、前年度比47件増、支給決定件数497件となり、統計開始以来最高でした。また、脳・心臓疾患認定者も277人となり、前年比は減少しましたが、ここ数年300人前後の高止まりが続いています。

◆精神障害に関する内訳
請求件数の業種別では「製造業」245件、「医療・福祉」236件、「卸売業・小売業」213件の順に多く、支給決定件数では「製造業」81件、「卸売業・小売業」71件、「運輸業・郵便業」63件の順でした。年齢別の請求件数(カッコ内は支給決定件数)では「4049歳」454件(140件)、「3039歳」419件(138件)が多くなっていました。

「月80時間以上の残業」を行っていた人は約4割
認定者497人のうち、「過労死ライン」の月80時間以上の残業を超えた人は201人(前年比57人増)。このうち160時間以上の残業は67人(前年比36人増)でした。

◆長時間労働やストレスを減らす工夫が必要
心の病になっても労災が認定される人は限られますが、「長時間労働の削減」「ストレスを軽減できる環境づくり」が大切と考えられます。

V スポット情報●マイナンバー通知カード、 送付先変更の受付開始(8月24日)
全国の自治体が、10月から郵送されるマイナンバーの「通知カード」について、送付先の変更届の受付を開始した。対象者は、DVや児童虐待、ストーカーなどの被害者や東日本大震災で避難した被災者、病院や介護施設に長期間入っている独り身の人など。希望者は8月24日~9月25日の間に、住民登録している市区町村に申請します。(郵送申請可)

●「マイナンバー法改正案」成立へ(8月27日)
参議院内閣委員会は、マイナンバーと基礎年金番号の連結を最大1年5カ月間凍結する修正案を盛り込んだ「マイナンバー法改正案」を可決した。修正が入ったため参議院本会議で可決後、改めて衆議院へ送り、来週の衆議院本会議で成立する見通し。当初案はマイナンバーを預金口座にも記載することで税金や保険料の徴収に役立て、年金分野でも活用する予定だったが、凍結中は年金相談や支給申請手続等にマイナンバーを使うことができない。具体的な凍結期間は政令で定める予定。

●介護保険料額に年収反映、平成30年度にも導入へ(8月10日)
政府は、医療保険事業者が加入者数に応じて拠出している介護納付金について、加入者の平均年収に応じて負担割合を決める「総報酬割制度」を導入する方針を固めた。社会保障審議会で本格的な見直し論議をスタートし、平成30年度から段階的に制度を移行していく考え。総報酬割制度に完全移行した場合、個人が支払う保険料は大企業社員で月595円、公務員で月1,850円増加し、中小企業社員は月272円減となる見通し。

●雇用保険料引下げへ、議論開始(8月5日)
厚生労働省が雇用保険料の引下げに向けた議論をスタートさせた。雇用情勢の改善により積立金が6兆円を超えたことを受けたもので、失業給付に当てる保険料を現在の1%から0.8%に下げる方向。その場合の労使の負担の減少額は約3,200億円となる見込み。

●厚生年金・国民年金が、運用好調で黒字最高に(8月7日)
平成26年度年金特別会計の収支決算(時価ベース)について、厚生年金は4年連続の黒字(13兆390億円)、国民年金は6年連続の黒字(8,046億円)となりました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用成績が好調で、15兆2,626億円の運用収益を計上、いずれも年金積立金の市場運用を始めた平成13年度以降最高の黒字額となった。

経営労務情報 平成27年(2015年)6月号

I お知らせ◆真夏を感じるほどの天候になり、建設業のお客様では「熱中症」が早くも心配されます。皆様の会社でも、暑さ対策と健康管理をお願い致します。
◆労働保険の申告書が届き始めました。7月10日までの申告となります。お客様の申告書はこちらでお預かりして保険料をお知らせ致します。
◆送付されてきた住民税「特別徴収」通知書の中に、退職者分は含まれていませんか。退職者分は異動届の提出が必要となります。ご不明点は連絡ください。
◆前号でもお知らせしましたが、今年9月から来年8月までの社会保険料は、4月から6月に払われる給与の「平均額」で決定されます。この間の給与総額が多いと社会保険料が増えてしまいます。6月に支払う給与総額にはご注意ください。

II 中小企業における「人材不足」と「人件費高騰」の実態 ◆中小企業白書からみえる人材不足の広がり
平成27年版の中小企業白書が公開され、人材不足の企業が約4割にものぼりました。特に、建設業、医療・福祉関連の人手不足が目立ち、これは高い離職率も影響しています。新卒者の4割以上が3年以内に離職しており、また小規模の会社ほど離職率が高くなっています。

◆ベア実施の中小企業も大幅増
今年度に入り、中小企業でも景気回復や人手不足を背景に、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を実施する動きが広がっています。財務局の調査によると、中小企業の37%が今春ベアを実施したことが判明、ベアを含む何らかの賃上げを実施した企業は89.1%に上り、雇用確保のため人件費を捻出していることがよくわかります。

◆「人手不足」関連倒産の傾向
人手不足による企業倒産も、平成25年から目立ち始め、徐々に増加しています。
東京商工リサーチの集計では、「後継者難」型倒産が多いものの、最近は「求人難」による倒産の増加が目立つようです。賃上げによる人材獲得競争はコスト増を招くため、人材不足・人件費高騰は中小企業の経営にとって足かせとなっている様子もうかがえます。

◆自社の対策
今後は、賃上げ以外の措置も必要になります。自社の現状と時流を見極めながら、雇用確保の対策を講じていく必要があります。

III 平成26年の労働災害発生状況と発生防止の取組み◆労働災害の発生数が前年を上回る
厚労省が平成26年の「労働災害発生状況」を公表し、「死亡災害」は1,057人(前年比+27人、+2.6ポイント)、「死傷災害」は11万9,535人(同+1,378人、+1.2ポイント)、「重大災害」(一度に3人以上が被災)は292件(同+48件、+19.7ポイント)となり、いずれも前年を上回る結果となりました。同省では「死亡災害、死傷災害の15%以上の減少」を目標に対策を実施しています。

◆労働災害の概要と動向
死亡者数が多い業種は、(1)建設業377人(前年比+10.2ポイント)、(2)製造業180人(同▲10.4ポイント)、(3)陸上貨物運送業132人(同+23.4ポイント)、発生状況では、(1)「墜落・転落」263人(同▲1.1ポイント)、「交通事故」232人(同▲0.4ポイント)、「はさまれ・巻き込まれ」151人(同+14.4ポイント)となりました。
また、死傷者数が多い業種は、(1)製造業2万7,452人(同+1.4ポイント)、(2)商業1万7,505人(同+4.0ポイント)、(3)建設業1万7,184人(同+0.03ポイント)、発生状況は、(1)「転倒」2万6,982人(同+4.3ポイント)、(2)「墜落・転落」2万551人(同+1.8ポイント)、(3)「はさまれ・巻き込まれ」1万5,238人(同▲0.2ポイント)でした。
「重大災害」の内訳は、(1)「交通事故」147件(同+19.5ポイント)、「中毒薬傷」50件(同+22.0ポイント)、「火災高熱物」14件(同+133.3ポイント)となりました。

◆労働災害防止のための取組み
死傷者数の多い転倒災害の防止策として、6月の重点期間に、巡視・点検の実施指導が行われます。交通事故災害は業種を問わず発生していることから、全国安全週間(準備月間)においては警察機関と連携して安全対策に取り組むようです。

IV 通常国会に提出された「労働基準法改正案」のポイント◆改正案のポイント
1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得
有給5日を毎年、時季を指定して与えなければならない法案
4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
5)フレックスタイム制の見直し
6)企画業務型裁量労働制の見直し
7)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
特定高度専門業務の従業員は、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が除外
◆詳細は、次号よりご説明いたします。

V スポット情報 ●「年金記録確認第三者委員会」を6月末で廃止 (H27/5月15日)
総務省は、年金記録確認第三者委員会を6月末で廃止する。平成19年の設置後、8年間で約14万6,000件(審査件数は約27万件)の記録を回復、近年は処理件数が大きく減少し役目を終えたと判断したため。業務は、すでに厚生労働省に引き継がれている。

●収入の多い高齢者の基礎年金「減額」を検討(H27/5月19日)
政府の経済財政諮問会議が、一定以上の収入のある高齢者の基礎年金を減額する仕組みを検討していることがわかった。国と現役世代の負担を軽くするのがねらいで、6月末にもまとめる政府の「財政健全化計画」に反映したい考え。

●リストラ離職が大幅に減少、卸売・小売業では増加 (H27/5月21日)
リストラにより30人以上の離職者が出る企業に作成が義務付けられている「再就職援助計画」に基づく離職者が、平成26年に4万7839人(前年度比12%減)になった。(厚生労働省)業種別では、製造業で2万2,506人(同27%減)となったものの、卸売・小売業で9,291人(同19%増)となった。

●「配偶者控除」平成29年からの新制度導入を検討(H27/5月2日)
政府が「配偶者控除制度」を見直す検討に入ったことがわかった。年内に具体案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出し、平成29年1月から導入したい考え。現在の減税規模は維持しながら、夫婦単位で一定額を控除する案などを検討。新制度により適用対象者は大幅に拡大される見込みだが、所得制限等も検討するとしている。

●企業の「節税策の報告」を義務化へ 政府検討 (H27/5月26日)
政府は、税理士やコンサルティング会社に対し、企業に提供している節税策の報告を義務付ける検討に入った。報告を受けた節税策の情報をもとに法制度を手直しし、脱法的な手法をなくすのがねらい。報告を拒む場合は罰金も検討しており、平成29年の改正予定。

経営労務情報 平成27年(2015年)4月号

I お知らせ◆新入社員を迎える3月、4月は、社会保険への加入・異動が多いため、年金機構の事務処理も増えて、健康保険証が届くのも遅れます。早めの連絡や申請に心がけて下さい。
◆介護保険料が4月から減額変更となりました。 (お客様へは順次お知らせ致します)
協会けんぽの介護保険料率は、旧料率1.72 % → 新料率 1.58 %となります。
「建設国保」などの 国保組合 も変更になっていますのでご注意ください。
◆生年月日が、昭和26年4月1日以前の方は、4月分給与(翌月払の会社では5月支払分)から「雇用保険料」が免除となります。 (お客様へは順次お知らせ致します)
介護保険料の変更とともに、給与計算の時にはご注意ください。
◆今年9月から来年8月までの社会保険料は、4月から6月に払われる給与の「平均額」で決まります。この間の残業等の手当額が多いと社会保険料が増えます。そこで無駄な残業を減らす管理も必要となります。 4月から6月に支払う給与総額にはご注意下さい。

II 「外国人技能実習制度」 適正化 に関する法案のポイント◆技能実習生の人権侵害防止のため「監督機関」を新設
政府は、「外国人技能実習制度」を拡充する新法を閣議決定し、国会に提出しました。
受入れ期間が、現行の最長3年から5年に延長となり、低賃金や長時間労働で酷使する等の防止のため、受入団体や企業を監視する「外国人技能実習機構」を新設します。

◆不正行為があった際には罰則も!
「外国人技能実習機構」は、立入調査や不正行為のチェックを行い、外部との遮断、帰国の強要、パスポートの取上げなどの禁止や、罰則を設けて実習生の保護を図ります。

◆介護分野も受け入れに
在留資格に「介護」を新設する入管難民法改正案も閣議決定されました。
現在の実習制度では製造業や建設業、農業などの69職種ですが、介護は対人サービスで初めての職種となり、更に、林業、自動車整備、惣菜製造、店舗運営管理などが追加の職種として検討されています。

III 中小企業のトップが考える平成27年の経営施策とは? ◆経営活動に影響を与えそうな要因
産業能率大学の調査(従業員数6人以上300人以下の企業経営者635人が調査対象)によると、今年の経営活動に影響を与えそうな要因として、次のことを想定しています。

(1)人材不足(46.5%)【前年比14.5ポイント増】
(2)国の政策変化(44.1%)
(3)消費税の増税(43.6%)
(4)原材料コスト増大(29.3%)
(5)業界構造変化(28.2%)

1位の「人材不足」は、平成22年の調査開始以来、過去最高となりました。また、昨年の人員確保は「例年より難しかった」との回答が半数を超え、本年の取組対策について尋ねた結果も、「従業員の新規採用」が前年比3.8ポイント増となっています。人材不足はまだまだ続きそうです。

◆強化している採用施策
本年の新卒採用については、4社に1社が実施を検討しており、年々増加傾向にありますが、実際に確保できた企業は約半数に留まりました。こうした中で中小企業が強化している採用施策は次のように「即戦力確保」の意向が目立ちます。
(1)中途採用(33.4%)(2)大卒採用(21.4%)(3)高卒採用(15.1%)(4)女性採用(13.4%)

◆平成27年に取り組みたいこと
昨年と比較して増加傾向にある本年の取り組みとしては、(1)新規事業への進出 (2)従業員の教育、育成 (3)従業員の新規採用 (4)従業員満足度の向上 (5)女性の活躍推進 などですが、労働環境や法制度の変更が今後も予定されていますので、情報を収集しながら課題に取り組んでいきたいものです。

IV 主婦の「パート探し」に関する 調査結果 から◆6割以上が「パートをしている方が幸せ」と回答
働いていない全国の主婦200人を対象に、(株)インテリジェンスの求人情報サービス「an」が調査した結果、「専業主婦とパート主婦、どちらが幸せか」という質問に対し、61% が「パートの方が幸せ」と回答しました。理由は「家にこもりきりにならないし自分のお金ができるから」、「社会とつながっていた方が、視野が広がる」などでした。

◆パート先を決めるときの後押しになる要因は?
決める際のポイントは、(1)「急な欠勤OK」(60%)、(2)「職場に主婦のスタッフが多い」(19%)、(3)「従業員割引がある」(17%)という結果でした。子供の発熱など急な用事への対応が必要なため、柔軟に対応してくれる会社を求めている実情がみえます。

◆パート探しは 「WEBの求人サイト」と「求人誌」
パート探し方は、(1)「WEBの求人サイト」(34%)、(2)「求人誌」(28%)、(3)「ハローワーク」(19%)、(4)「お店の張り紙」(11%)となっています。スマートフォン等を使って手軽にWEBサイトを利用して小まめにチェックする主婦が多いようです。

◆主婦層のニーズに対応することも重要に
現在、人手不足感が高まっています。パートの賃金額も上昇しており、資金面の余力のない企業では、賃金だけで人材を集めるのは非常に難しい状況です。フレキシブルな勤務対応を行うことで、人材確保の一役を担うことができるかもしれません。

V スポット情報●零細企業の倒産が大幅減!23年ぶりの低水準(H27/3/23)
2月時点の零細企業の倒産件数が6,142件にとどまり、平成26年度は7,000件を下回る低水準であることが、東京商工リサーチの調査でわかった。平成3年度以来23年ぶりの低水準。ただし全倒産件数に占める割合は、調査開始以来最高の70%台に達する見込み。

●解雇・雇止めが年間47万人、平成14年以降で最少(H27/3/22)
総務省「労働力調査」の結果、平成26年の完全失業者のうち、解雇や雇止めなどで仕事を辞めた人が47万人(前年比14万人減)となり、平成14年以降で最も少ないことがわかった。倒産企業の減少、新たな人材を雇うのが困難といった事情が影響したと見られる。

●労働者派遣法 改正案 を国会に提出(H27/3/13)
政府は「改正案」を閣議決定し国会に提出した。派遣社員の受入期間は、現在最長3年だが、改正案では3年ごとに働き手を代えれば引き続き受け入れが可能となる。期間終了後も、派遣社員が働き続けられよう企業に義務付け、「専門26業務」は期限の制限を除外する特例も廃止する予定。9月の施行を目指す。

●転職者が290万人、5年ぶりの高水準に(H27/3/13)
総務省「労働力調査」の結果、平成26年の転職者は290万人(前年比4万人増)で、4年連続の増加。平成21年(320万人)以来の高い水準。企業の求人が増え、女性を中心に、より良い賃金や雇用形態の仕事を求める人が増えたこと等が要因と分析されている。

●厚生年金未加入の疑いがある中小企業は80万社(H27/2/23)
厚生労働省が国税庁からの情報提供を受けた調査によると、中小零細企業のうち約80万社が厚生年金加入をしていないことがわかった。本年4月以降、3年間かけて強制加入へ向けて指導・検査に乗り出し、立入り検査も実施したうえで加入させる方針。

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