経営労務情報 平成29年(2017年)9月号

Ⅰ お知らせ◆ 今年も厳しい 残暑 が続きます。外作業、工場内の「熱中症」には十分ご注意ください。
◆ 最低賃金が、10月より 871円(愛知県) にまた上がる予定です。今年もまた大幅な上昇です。パート募集時の時給や、10月以降の給与計算時にはご注意ください。
◆ 年1回 の 社会保険料 の「定期変更」は、10月 に支払う給与 からです。
「厚生年金」の 料率 も また 上がります。 お客様へは改めてお知らせいたします。
◆ 年金事務所による社会保険「未加入」事業所への「加入促進」が強化されています。 1人以上の法人と5人以上の個人事業が対象になります。 ご不明な点はご遠慮なくお問い合わせください。
◆ 本年も「労働保険料申告」「社会保険算定届」にご協力頂きありがとうございました。

Ⅱ 「人手不足倒産」が増えている! 深刻化する企業の人手不足問題◆「人手不足倒産」増加の状況
人手不足の問題が各方面で叫ばれています。帝国データバンクが7月上旬に公表したデータでは、人手不足による倒産件数は4年前の約2.9倍に増えています。
平成29年上半期の「人手不足」による倒産件数は前年同期比で44.1%増、2年連続の前年同期比増でした。
倒産件数全体では、「人手不足倒産」の割合はまだ小さいですが、業種や倒産する会社の規模に変化が出てきおり、人手不足の影響の広がりが懸念されています。
◆影響が出ている業界にも変化が
人手不足倒産の業種は、以前から「介護事業」や「IT関連」などが高くなっていましたが、近ごろはこれらの資格やノウハウがいらない業種でも人手不足倒産が増えています。
退職する社員が、待遇や給与を理由にして他の従業員を引き抜いて退社し、人材不足から倒産に陥るという事例も見られます。
◆影響が出ている中小企業は約7割
日本商工会議所の調査(全国約 3,500の中小企業を対象)では、「人手不足の影響あり」と回答した企業は約7割に上りました。
具体的な影響は、「売上維持・売上増への対応が困難」53.3%、「従業員の時間外労働増加や休暇取得の減少」48.8%、「業務・サービスの質低下」46.1%となり、人手不足への対応策としては、「既存従業員の多能工化・兼任化」53.5%、「採用活動の拡大」51.6%、「離職防止や新規人材獲得の為の労働条件の改善」38.8%となっています。
◆問題が起きていない企業も他人事ではない
今後、人手不足はさらなる影響の拡大が懸念されます。経済産業省では、昨年10月に『中小企業・小規模事業者の人手不足対応研究会』を立ち上げました。企業も動向も見極めながら、人材確保策を考えていくべきでしょう。

増加する「過重労働」に関する脳・心臓疾患、精神疾患の労災請求
◆平成28年度「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省は、過重労働で発症した脳・心臓疾患や、ストレスなどが原因で発病した精神障害に関して、平成14年から、労災の請求件数や支給決定件数などを年1回取りまとめています。今回平成28年度の集計結果が公表されました。
◆脳・心臓疾患に関する労災補償状況
請求件数は825件で、前年より30件増加。支給決定件数は260件で前年比9件増、うち死亡件数も同11件増の107件。
業種別では、「運送業、郵便業」が212件と最も多く、次いで「卸売業、小売業」106件、「製造業」101件と続きます。
年齢別では、「50~59歳」が請求件数266件、支給決定件数99件とともに一番多く、「40~49歳」が請求件数239件、支給決定件数90件と、2番目に多くなりました。
時間外労働時間別の支給決定件数は、「80時間以上~100時間未満」が106件で最多、「100時間以上」の合計件数は128件。
◆精神障害に関する労災補償状況
精神障害の請求件数は、前年から71件増の1,586件と過去最多。未遂を含む自殺件数は前年から1件減の198件。支給決定件数は498 件で前年から26件増加、うち未遂を含む自殺の件数は前年から9件減の84件。
業種別請求件数は 「医療、福祉」302件、「製造業」279件、「卸売業、小売業」220件、支給決定件数は「製造業」91件、「医療、福祉」80件、「卸売業、小売業」57件でした。
年齢別では、「40~49歳」歳の請求件数が542件、支給決定件数が144件と最も多く、次いで「30~39歳」の請求件数が408件、支給決定件数136件でした。
理由別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が63件でした。
企業側は、事業場の労災事故に限らず、労働時間・働き方等の管理も必要な状況になってきました。

厚生労働省が労働法令違反による送検企業名を H P で公表◆全国の労働局の送検企業を一覧で公表
厚生労働省は今年5月上旬から、長時間労働や賃金不払い、労災につながる安全配慮義務違反などの労働関係法令に違反した疑いで書類送検した企業名を、同省ホームページ(HP)に掲載しました。
最初に掲載されたのは334件で、全国の労働局が昨年10月以降に書類送検した企業・事業所名、所在地、公表日、違反した法律、事案概要などを県別に並べてあります。
各労働局の発表内容を一覧表にまとめて公表したのは初めてです。
◆安衛法違反の事例が最多
リストの内訳をみると、企業が安全対策を怠った労働安全衛生法違反が209件で最も多く、次いで賃金未払いなど最低賃金法違反が62件、違法な長時間労働などの労働基準法違反が60件、労働者派遣法違反19件。
労働基準法違反では、女性社員が過労自殺した電通や、違法残業の疑いで書類送検されたパナソニック、労災事故を隠した疑いで書類送検された日本郵便などの大企業も含まれました。
他に36協定を超える違法残業の疑いで、印刷会社や運送会社などが書類送検されました。同じ会社が複数回書類送検されたケースもあり、地域別では最も多かったのが愛知労働局の28件、次いで大阪労働局の20件、福岡労働局の19件でした。
◆一覧は毎月公表、掲載期間は1年
厚生労働省は各労働局に、企業を書類送検したら公表するよう通達しています。
これまでは報道機関に資料配布だけが大半でしたが、昨年末に発表した「『過労死等ゼロ』緊急対策」の一環として、「一覧表にして社会に警鐘を鳴らす狙いがある」としています。
その後は月に一度内容が更新されています。公表期間は書類送検した日から約1年です。期間中に違法状態を改善した企業名は、ホームページから削除されます。

ス ポ ッ ト 情 報●外国人技能実習生への法令違反事業場が過去最多(8月9日)
厚生労働省は、平成28年に外国人技能実習生に対する労働関係法令違反が発覚した事業場が4,004事業所あり、平成15年以降で最多となったと発表した。
法令違反の内訳では「労働時間」(23.8%)が最も多く、「使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準」(19.3%)、「割増賃金の支払」(13.6%)が続いた。

●長期失業者68万人 19年ぶりの低水準(8月9日)
総務省が今年4~6月の「労働力調査」の結果を発表し、求職期間が1年以上に及ぶ「長期失業者」は68万人(前年同期比10万人減)で、約19年ぶりの低水準となったことがわかった。年齢別では35~44歳の女性の減少幅が最も大きかった。

●正社員の有効求人倍率が初めて1倍超に(7月28日)
厚生労働省は、6月の有効求人倍率(季節調整値)が43年4カ月ぶりに1.51倍(前月比0.02ポイント増)となったと発表した。
また、正社員の有効求人倍率は1.01倍となり、平成16年11月の集計開始以来、初めて1倍を超えた。
また、総務省の発表による同月の完全失業率(季節調整値)は2.8%(前月比0.3ポイント低下)だった。

●児童扶養手当の支給を「年6回」に変更へ(8月14日)
厚生労働省は、低所得のひとり親家庭向けの児童扶養手当について、2ヶ月ごとの年6回支給に見直す方針を明らかにした。
現在は4ヶ月ごとにまとめて支給しているが、小まめに受け取れるようにすることで家計管理を手助けするのが狙い。
自治体のシステムの改修し、平成31年度にも変更される見込み。

●女性管理職が過去最多に(8月10日)
厚生労働省は、平成28年度の女性管理職(課長相当以上)の割合が、平成21年度以降で過去最高の12.1%だったと発表した。
役割別では「部長相当職」が6.5%、「課長相当職」が8.9%と、いずれも前年度より上昇。
産業別では「医療・福祉業」50.6%、「飲食・宿泊サービス業」21.0%で割合が高かった。

●派遣事業の許可基準を緩和へ(8月7日)
厚生労働省は、労働者派遣法に基づく派遣事業の許可基準を緩和し、9月上旬にも適用する方針を固めた。
現状では派遣労働者への賃金支払いを滞らせない目的で「純資産額」や「現預金額」に要件が設けられているが、地方自治体と債務保証や損失補填の契約を結ぶことを条件に、これらの要件を撤廃する。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム