経営労務情報 平成25年(2013年)4月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 1年間に負担する社会保険料はどのように決まる?●社会保険料の額を決める「標準報酬月額」とは
健康保険や厚生年金保険の保険料額は、従業員の個々の給与の額ではなく、区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」に基づいて計算されます。この幅が、「標準報酬月額等級」として、健康保険は47等級、厚生年金保険は30等級に分かれています。これらの保険料は会社と従業員の折半ですので、会社の負担が過重とならないよう、保険料額の上限が設定されています。なお、状況に応じて、政府の決定で最高等級の上に等級を追加することができることとされています。

●標準報酬月額はどうやって決まる?
標準報酬月額の決定方法として、以下の3つがあります。
(1)資格取得時決定
  「新入社員」は(1)により決定されます。
(2)定時決定
原則、4月・5月・6月に支払われる給与の平均額を基準として決定されます。決定された「標準報酬月額」は、基本給額・定額の手当額の変更がない限り、1年間適用されます。
(3)随時改定
基本給額・定額の手当額の変更により、大幅な給与額の変動があるときは、3ヶ月平均の給与額にて、等級が変更となります。

●残業量の調整や昇給のタイミングに注意
上記(2)の定時決定によって、1年間の「標準報酬月額」が決定されることから、4月・5月・6月に多くの残業が発生すると、負担する社会保険料の額が大きくなります。特に、厚生年金保険料は平成16年の制度改正によって平成29年9月まで毎年0.354%ずつ引き上げられることとなっています。そのため、昇給等がなくても、保険料の負担は年々増加する一方です。

不必要な残業を控えたり、業務の進め方を見直したり、昇給月を変更したりするなど、社会保険料の削減対策・方法もありますので、お気軽にご相談ください。

II 「叱られること」についての若手社員の意識●若手社員の約5割が上司・先輩に叱られた経験
ある人材総合サービス企業が、入社3年目までの若手社員を対象に行った意識調査の結果を発表しました。調査では、若手社員に対し「上司・先輩に叱られることがあるか」を尋ねたところ、ほぼ半数が叱られたことがあると回答しました。性別でみると、男性のほうが女性よりも叱られている傾向が見られたようです。

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●「正当な理由があれば、上司・先輩に叱られたい」8割弱
「正当な理由があれば、上司・先輩に叱られたいか」と尋ねたところ、「叱られたい」と回答した割合は78.5%で、大多数は叱られたいと感じていることがわかりました。また、「叱られることは自身の成長に必要か」と尋ねたところ、「必要」と回答した割合は87.7%で、性別を問わず、叱られることは自身の成長に必要と考えていることがわかりました。

●「叱り方」にも工夫が必要
昨今、世間を騒がせている体罰問題やパワハラ・セクハラによる訴訟問題によって、上司が部下に対して「叱る」という行為に慎重になっている傾向にあるようです。しかし、今回の調査で、「正当な理由があれば叱られたい」と8割弱の若手社員が回答しており、社会に出るまでにあまり叱られた経験がない若手社員が、本当は「叱られたい」と思っていることがわかりました。

ただ、叱られることに慣れていない若手社員の指導方法を間違えると、訴訟問題にも発展しかねません。例えば、以下のような指導方法・叱り方には注意が必要です。
・他の従業員がいる前で、一方的に叱責すること
・人格や尊厳を否定する発言をすること
・会社の方針とは無関係に、自分のやり方・考え方を部下に強要すること
・部下からの相談の拒絶、もしくは業務上必要な助言を与えないこと

●「パワハラ防止規程」の策定
近年は訴訟となるケースも増加しているため、パワハラ防止規程を定めて、運用している企業も増えているようです。パワハラ対策やセクハラ対策は、日頃の労務管理における予防が重要です。「社内ルールの策定」「相談窓口の設置」「セクハラ・パワハラに対する認識の研修」など、予防策に取り組むことで、重大トラブル発生のリスクは相当に抑えることが出来ます。

III 「解雇権濫用」「名ばかり管理職」に関する裁判例●メーカーが多数の労働組合員を解雇
神戸市にある鋼管メーカーを解雇された従業員(22人)が地位確認などを求める訴えを提起していました。神戸地裁は「解雇権濫用のため無効である」として、会社に対して未払賃金の支払いを命じる判決を下しました。この会社は、事業縮小を理由として2011年6月に工場勤務の従業員(28人)を解雇しましたが、28人のうち26人は労働組合員だったそうです。裁判官は「他部署への配転を検討するなど、解雇を避ける努力を尽くしていない」と指摘し、また、「解雇された従業員の大半が労働組合に加入していたことは、明らかに不自然である」としました。

●大学が財務課長を管理職扱い
広島県にある私立大学の元財務課長(57歳)が、実態は管理職ではないにもかかわらず管理職として扱われて残業代が支払われなかったとして、大学側に対して未払賃金等(約630万円)の支払いを求めて訴えを提起していました。広島地裁は「管理監督者には該当しない」として、学校側に対して約520万円の支払いを命じました。裁判官は主に以下の2点より、「権限や責任が経営者と一体ではない」と判断しました。
(1)財務課長には、上司として法人事務局長などが置かれ、業務の大部分で上司の決裁が必要であり、権限は限定的だった
(2)出退勤の時間等に関する自己裁量が限定されていた

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)3月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 健康保険料・雇用保険料は据え置き 毎年春に健康保険料・雇用保険料の見直しが行われます。特に健康保険料(介護保険料を含む)は、毎年アップしてきました。厚生労働省と全国健康保険協会(協会けんぽ)は、平成25年度の各保険料率の据え置きを決定しました。

愛知県の健康・介護保険料率

  平成25年度
健康保険料(愛知県) 9.97%
介護保険料(全国一律) 1.55%

※健康保険組合に加入している企業については料率が異なります

雇用保険料率

事業の種類 平成25年度
一般の事業 1.35%
農林水産業
清酒の製造の事業
1.55%
建設の事業 1.65%

平成25年度/雇用保険料率の負担内訳

事業の種類 保険料率 うち被保険者負担分 うち会社負担分
一般の事業 1.35% 0.5% 0.85%
農林水産業
清酒の製造の事業
1.55% 0.6% 0.95%
建設の事業 1.65% 0.6% 1.05%

II 4~6月に払われる給与額にご注意下さい!! ●社会保険料の定時決定
毎年4月から6月に支払われる給与の平均額により、本年9月以降の社会保険料が決定(定時決定)されます。この3ヶ月間の平均給与額が上がると、社会保険料も上がってしまいます。「必要以上の残業はないか」「昇給により社会保険等級が上がってしまわないか」など、増額要因となるものには注意が必要です。
「給与の見直しはしても、社会保険料を必要以上に増やしたくない」などのご相談も多数頂いております。詳しくはご相談に応じておりますので、気軽にお問い合わせ下さい。

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III 就活生・内定学生・若手社員 それぞれの思い ●就活生は企業の何を知りたいのか?
人材採用コンサルティング会社(株式会社ジョブウェブ)が、就活生を対象にした調査で、以下の結果が得られました。

「会社説明会で聞きたいことは?」(回答上位3項目)
(1)他社との違い(77.6%)
(2)会社の雰囲気・社風(71.9%)
(3)仕事内容(68.8%)

「会社説明会のプログラムにあったら良いと思うものは?」
(1)社員との交流会(76.8%)
(2)社内見学(54.8%)
(3)内定者との交流会(49.0%)

●「愛社精神」はあるか?
株式会社マイナビが、「内定を獲得した2013年4月入社の学生」と「入社2~5年目の若手社会人」を対象に、「仕事に関する意識調査」を実施しました。「愛社精神がある」と回答した内定学生は78.4%、若手社会人は43.0%との結果が出ました。内定時にはあった「愛社精神」は、入社後、薄らいでいく傾向のようです。

IV 定昇など賃金制度の動向 ●活発化する賃金をめぐる動き
平成25年の春闘がスタートし、ローソンが2013年度から20代後半~40代の社員の年収を平均3%(平均約15万円)引き上げることを発表したり、政府と経済団体トップとの会談で、安倍首相から、デフレ脱却に向けて業績が改善した企業から賃金を引き上げるよう要請が出たり、賃金をめぐる動きが活発化しています。

●約4割の企業では定期昇給を導入していない
日本生産性本部が実施した、定期昇給についての調査によると、以下の結果が出ました。賃金が自動的にアップする「定昇制度」を導入している企業は徐々に減っているようです。
○年齢や勤続年数に応じた定昇がある企業(55.2%)
○定期昇給していない企業(39.6%)

また、「定昇制度」を実施している企業の中でも、「定期昇給によって上昇する給与水準を抑制したい」または「一定年齢までは定昇は実施するが、現状より早めの年齢で止めたい」という意見もあり、見直し傾向は強いようです。

●年齢・勤続給を導入する企業は減少
各企業の管理職層の賃金体系を見ると、以下のとおりです。
○役割や職責、または職務の価値を反映させる「役割・職務給」の導入率(79.2%)
○職務遂行能力の高さを反映させる「職能給」の導入率(65.6%)
○年齢や勤続年数を反映させる「年齢・勤続給」の導入率(22.7%)
管理職ではない層についても、同様の傾向がみられます。どちらも「年齢・勤続給」は、調査開始から下がり続けています。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)2月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 「中高年従業員の戦略的活用」に向けた研修・教育の実施●悩みの種は「モチベーションの低下」
改正高年齢者雇用安定法(※1)の施行が今年4月1日に迫っています。
「(※1)改正高年齢者雇用安定法」......希望者全員65歳までの雇用が義務化

60歳以降も働く人は、今後ますます増加することが見込まれています。業種や職種にもよりますが、「中高年者を積極的に活用したい」と考えている企業も増えています。

60歳以降の人材を活用する上で、各企業に共通する悩みが、「モチベーションの低下」です。現役世代においても、昇進の可能性がなくなったり、役職定年制により肩書きがなくなったりした後には、モチベーションが下がる傾向にあることがわかっています。60歳以降は、手取り給与が少なくなったり、担当する業務が変更になったりすることから、一層モチベーションが低下してしまう傾向にあるようです。

●モチベーションを高める方法は?
継続雇用後のモチベーションの維持・向上の方法として、以下のようなテーマで研修を実施すると効果が高いようです。
(1)継続雇用後の環境の変化を受け止め、自らのものの見方や考え方の転換を促す
(2)これまでの自分を振り返り、強みを再確認することで自信を持ってもらう
(3)理想の将来を実現するために効果的な選択は何かを考えてもらう
(4)これから会社でどのようなことに取り組んでいくかを決めてもらう

新入社員や幹部候補の育成が中心ですが、中小企業でも、企業力アップ・業績向上のために、社員研修を実施する企業が増えています。今後、増加するであろう60歳以降の従業員により活躍してもらい、会社業績を伸ばすためにも、この層への研修も検討してみてはいかがでしょうか。当事務所でも人材育成・社員研修メニューを提供しております。お気軽にご相談下さい。

II 「改正高年齢者雇用安定法」にどう対応するか?●経団連による調査結果
経団連が発表した「2012年 人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」によれば、改正高年齢者雇用安定法への対応として、以下のような方策を検討している企業が多いようです。

●法改正への対応方法は?
調査結果における「法改正に伴い、必要となる対応は?」との質問に対する回答結果(上位10位)です。
(1)高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する
(2)スキルを活用できる業務に限りがあるため、提供可能な社内業務に従事させる
(3)半日勤務や週2~3日勤務による高齢従業員のワークシェアを実施する
(4)高齢従業員の処遇(給与など)を引き下げる
(5)若手とペアを組んで仕事をさせ、後進の育成・技能伝承の機会を設ける
(6)60歳到達前・到達時に社外への再就職を支援する
(7)60歳到達前・到達時のグループ企業への出向・転籍機会を増やす
(8)新規採用数を抑制する
(9)60歳到達前の従業員の処遇を引き下げる
(10)従来アウトソーシングしていた業務を内製化したうえで従事させる

年金を受給できる年齢が徐々に65歳へと変更されるため、「現役世代の給与」「60歳以降の給与」をどのように設定するかが、これからの大きな課題のひとつとなっています。

III 「社員の健康管理」に関する取組み●健診を受診しない社員とその上司はボーナス減額!
コンビニエンスストア大手のローソンが発表した、健康診断に関する新制度が話題になっています。健康診断を受けない社員に対し、会社は3回程度、受診するよう促し、それでも受診しない社員についてボーナスの15%、その上司についても10%を減額するという制度です。同社では、健康診断受診率が約83%にとどまっていることから、健康で長く勤めてもらうために、あえてこうした制度を導入することにしたそうです。

●安全配慮義務違反による高額な賠償金
社員が健康診断を受診しないことは、「安全配慮義務違反」による会社のリスク要因となります。また、未受診の社員に関連した労災事故等が発生し、死亡してしまったような場合には、裁判となり、相当高額な賠償金の支払いが会社に命じられる可能性もあります。民間の賠償保険もありますが、リスクやコストを考えると、結局は、以下のような日常の労務管理をしっかり行うことが、最も合理的と考えられます。

(1)就業規則などルールの整備
(2)受診しない社員に対する書面での指導や処罰
(3)持病や診断結果に応じて、勤務時間・業務内容の管理
(4)社員の健康状態の把握(「血圧」「血糖値」「コレステロール値」「肥満」など)

IV 退職強要と退職勧奨の相違点・注意点●「退職勧奨」と「退職強要」の違い
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の雇用契約について、社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。しかし、あまりに執拗に行ったり、脅迫や詐欺行為だとみなされると、違法な「退職強要」と判断されてしまいます。実際に、そういった裁判例も多く、「損害賠償リスク」や「退職が無効となるリスク」があります。

争いを防止するためには、退職勧奨の行い方にも注意が必要です。「退職勧奨の実施回数・場所・時間」「社員に伝えるべき事項とその伝え方」「合意書面の作成」などに注意して、適切に行う必要があります。もっとも、問題社員に対する日頃の注意・指導がより重要であり、適切な指導を行ってきた事実・記録があれば、会社にとって有利に働きます。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)1月号

あけましておめでとうございます。
本年が、皆様にとって良き年となりますよう、所員一同心から祈念いたしております。本年もよろしくお願い申し上げます。

I 平成24年「賃金引上げ等の実態に関する調査」厚生労働省は、平成24年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。厚生労働省の統計上においては、平成24年の各企業の給与改定等の状況をみると、前年に比べ好転しています。ただ、ベースアップ(全体的な給与額の底上げ)する企業はあまり増加してないようです

●調査結果のポイント
1 給与額の改定(平成24年中)
(1) 一人当たり平均給与額を引き上げた(予定も含む)企業は75.3%で、前年を上回りました。一人当たり平均給与額を引き下げた企業は3.9%で、前年を下回りました。
(2) 平成24年給与の平均改定額は4,036円、改定率は1.4%で、前年を上回りました。
(3) 給与カット(一定期間、給与を減額すること)を実施している企業は12.8%で、前年を下回りました。

2 定期昇給等の実施
(1) 定期昇給制度がある企業のうち、定期昇給を行った(予定も含む)企業は、管理職56.7%、一般職64.7%で、管理職・一般職ともに前年を上回りました。
(2) 定期昇給制度がある企業のうち、ベースアップを行った企業は、管理職9.8%、一般職12.1%で、管理職・一般職ともに前年を下回りました。

3 賞与の支給状況
(1) 平成23年冬期賞与を支給した企業割合は、89.5%となっています。
平成23年冬期賞与の平均賞与支給額をみると、582,902円、平成22年冬期賞与に比べ、40,753円増加しました。
(2) 平成24年夏期賞与を支給した企業割合は86.8%となっています。
平成24年夏期賞与の平均賞与支給額をみると、573,357円、平成23年夏期賞与に比べ、28,895円増加しました。

※統計上、給与改定等の数値は改善しています。が、現状、中小企業ではそこまでの回復には至っていないようにも感じます。本年以降の景気動向に期待したいものです。

II 雇用促進税制を利用しませんか?従業員を新たに雇うと従業員数の増加一人につき、一人当たり最大20万円の法人税が控除される制度です。活用する場合、「雇用促進計画」を事業年度開始後2ヶ月以内に、ハローワークへ提出する必要があります。平成26年3月31日までの期限付きの制度です。

●制度の要件
前事業年度末日と今期事業年度末日の雇用保険加入者数を比較

(例)平成25年3月決算で税制を利用したい場合
平成24年3月31日と平成25年3月31日との比較で、以下の①かつ②の要件を満たす企業は、雇用増加数1人当たり20万円の税額控除が受けられます。
(※法人税額の10%(中小企業は20%)が限度になります)
税額控除に該当する時は、雇用促進計画を平成25年5月31日までに労働局に提出し、確認を受けます。

(1)5人以上(中小企業の場合は2人以上)雇用した
(2)平成24年3月31日時点と比較し、雇用保険加入者数が10%以上増加した

●対象企業
・青色申告書を提出する企業(個人事業主)であること
・適用年度とその前事業年度に、解雇等による離職者がいないこと
・適用年度における給与等の支給額が、一定額以上であること  など

期間限定のお得な制度です。従業員を増やす計画がある場合は、是非、活用をご検討下さい。雇用保険の助成金とは独立した制度のため、他の助成金を受けていても、利用可能です。

III 新入社員の入社後の意識の変化●「今の会社に一生勤めようと思っている」が大幅減
春に新入社員が入社してから半年以上が経ちました。新入社員には、働くうえで意識の変化はあったのでしょうか。公益財団法人日本生産性本部が2012年度新入社員(340人)に実施した、「2012年度新入社員秋の意識調査」によると、「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答は30.6%。同年春の調査結果(60.1%)から29.5ポイント減少しました。この落差は、1997以来過去最大となったそうです。

●「仕事を通じてかなえたい『夢』がある」も減少
「自分には仕事を通じてかなえたい『夢』がある」という質問に対して、「そう思う」と回答した人の割合は50.7%。同年春の調査結果(70.5%)から19.8ポイント減となりました。これらの意識の変化は、入社前の「理想」と、実際に働きはじめてからの「現実」とのギャップを感じ始めていることを示していると言えそうです。

●「人間関係の良さ」も企業選びには重要?
また、「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答した人は、その理由として、給料・福利厚生等の良さの他に、「教育担当の先輩が熱心に指導してくれて、頑張らなければならないと感じている」、「先輩や上司が優しく働きやすい」など、人間関係の良さを挙げている傾向も見られました。入社直後は先輩・上司から指導を受けることが多く、誰にどのような指導を受けたかが、会社のイメージを左右するといっても過言ではありません。その意味で、新入社員の指導法等について検討することは、社員の定着向上のためにも大切です。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

2012年2月号

I 「人材への投資」を「企業の収益」に ●好業績企業の秘訣は?
長引く不況や円高など、企業を取り巻く環境が非常に厳しい中、好業績を維持している企業の秘訣は「人材の育成」や「人材の上手な活用」にあるようです。新聞報道によれば、2012年3月期まで5期連続(5期以上も含む)で経常増益を予想する3月期決算の上場企業を調査したところ、小売業やネット関連事業など、内需型企業を中心に32社が並んだそうです。事業が国内中心であるため、海外景気の影響を受けにくいメリットもありますが、それだけではなく、これら好業績企業の多くが、「待遇」や「人づくり」の面で独自の手法を確立し、人材活性化を果たしているようです。

●パート社員の戦力化を果たしたスーパー
関東を中心に営業展開する食品スーパーでは、1万人以上いるパート社員の戦力化を図ったことが、企業成長の原動力となったそうです。例えば、従来は正社員が行っていた業務(価格設定、商品発注など)をパート社員に移管し、また、地域トップ水準の給料を確保してパート社員の士気を高めたそうです。これにより、店舗に常駐する正社員を削減することができたとのことです。なお、上記の連続増益が見込まれる32社の過去5年の人件費をみると、毎年平均で2.9%増加していました。全上場企業の平均で0.8%減っているのとは対照的に、人材投資・待遇確保に意欲的であることがわかります。

●企業にとっての課題は?
人材への投資を企業の収益に繋げる仕組みは企業によって様々ですが、「仕事を通じて自らが成長できる道筋を企業が示すことが、人材活性化には不可欠」と考えられています。不景気による市場の縮小を乗り切るため、人件費削減で利益を確保するケースもありますが、収入増を伴わなければ持続的な成長を望むことはできません。限られた経営資源をもとに人材に投資し、次の収益拡大に繋げることが、より重要となっています。貴社にとっても、取り組むべき課題の一つではないでしょうか。

II 通勤手当の非課税限度額の見直し ●見直しの内容
通勤手当については、「交通機関の定期代等」と「自動車など(距離比例)」の2つの通勤方法に区分され、それぞれ非課税となる金額が決まっています。これまで「自動車など(距離比例)」に該当する人のうち「通勤距離が片道15キロメートル以上」の場合に限り、距離比例での上限額を超えても、「交通機関定期代相当額」までは非課税となる特例がありました。今年1月以降、この特例が廃止されてしまいました。そのため、「通勤距離が片道15キロメートル以上」の従業員がいる場合は、非課税で計上できる金額が変更となる可能性があります。給与計算時にはご注意下さい。

片道の通勤距離 1か月当たりの限度額
交通機関の定期代等 1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額
(上限100,000円)
2キロメートル未満 全額課税
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,100円
10キロメートル以上15キロメートル未満 6,500円
15キロメートル以上25キロメートル未満 11,300円
25キロメートル以上35キロメートル未満 16,100円
35キロメートル以上45キロメートル未満 20,900円
45キロメートル以上 24,500円

III 心理的負荷による精神障害の労災認定の基準が変更されました! 最近、精神障害の労災請求件数が大幅に増加し、認定の審査には平均約8.6か月がかかっています。そのため、厚生労働省は「審査の迅速化」「効率化」を図るため、新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定め、2011年の年末に都道府県労働局長に通知しました。基準がどのように変更されたのか、概要を紹介します。

<心理的負荷の評価に関する改善事項>

  改正前 改正後
評価方法 2段階による評価
出来事の評価+出来事後の評価
→総合評価
1段階による評価
出来事+出来事後の総合評価
特別な出来事 ・極度の長時間労働
・生死に関わる事故への遭遇等心理的負荷が極度のもの
「極度の長時間労働」を月160時間程度の時間外労働と明示
「心理的負荷が極度のもの」に強姦やわいせつ行為等を例示
具体例 心理的負荷評価表には記載なし 「強」「中」「弱」の心理的負荷の具体例を記載
労働時間 具体的な時間外労働時間数については、恒常的長時間労働を除き定めていない 強い心理的負荷となる時間外労働時間数等を記載
発病直前の連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上
発病直前の連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上
「中」の出来事後に、月100時間程度 等
評価期間 例外なく発病前おおむね6か月以内の出来事のみ評価 基本的には発病前おおむね6か月以内の出来事で評価
ただし、セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続する場合には6か月を超えて評価
複数の出来事 一部を除き具体的な評価方法を定めていない 具体的な評価方法を記載
・強+中又は弱 → 強
・中+中... → 強又は中
・中+弱 → 中*
・弱+弱 → 弱*
*近接の程度、出来事の数、その内容で総合判断
発病者の悪化 既に発病していた場合には、悪化しても労災対象としない 発病後でも、特に強い心理的負荷で悪化した場合には、労災対象とする

ポイント
(1) 分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)が定められた
(2) いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として、心理的負荷を評価することとされた
(3) 精神科医の合議による判定は、判断が難しい事案のみに限定することとされた

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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