経営労務情報 平成25年(2013年)8月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 業務中の居眠りによるパソコン入力ミスで会社に大損害!?●居眠りが裁判沙汰に
寝不足等が原因で仕事中にウトウト...。誰しもそのような経験があると思いますが、海外では居眠りが原因で「会社にあわや大損害」という事態が起き、裁判沙汰にまでなってしまったものもあるようです。

●一瞬の居眠りが
ドイツの銀行で、行員がパソコンの操作中に一瞬だけ居眠りをしてしまい、大金(日本円で約287億円)を誤って送金しそうになりました。銀行は、事態を重くみて上司である女性(48歳)を解雇処分としましたが、労働裁判所は「重大ミスではあるものの、意図的ではなく解雇理由にはならない。譴責(けんせき)にとどめるべき」との判断を下し、女性の復職と賠償金の支払いを命じました。

●行員の居眠りとミスの状況
この行員は、パソコンで送金額(62.4ユーロ)を入力すべきところ、キーボードに指を置いたまま一瞬居眠りをし、誤って「2億2,222万2222.22ユーロ(約287億円)」と入力してしまいました。その後、ミスが判明して修正されましたが、銀行は「上司が監督責任を果たさず、誤入力を見逃した」として解雇処分としましたが、上司の女性は「処分は不当である」と訴えていました。

●効果的な「昼寝」の活用
居眠りをしてしまいそうなほど眠いときに、効果的なのは「昼寝」です。昼寝研究の第一人者と言われている、カリフォルニア大学のサラ・メドニック氏は、「1時間半の昼寝は一晩分の睡眠に等しい」と主張しています。会社で1時間半もの昼寝をすることは現実的には不可能ですが、昼休みの時間を利用して10分~数十分程度の昼寝をするだけでも、疲労回復により、午後の業務の効率アップにつながります。最近では、昼寝用の専用部屋を用意する企業もあるようです。

II いま注目されている社会人の「学び直し」とは?●雇用保険制度見直し案
現在、厚生労働省では雇用保険制度の見直しをすすめていますが、現在挙げられている論点案は次の通りです。
(1)個別延長給付・雇止めによる失業者の支給日数充実
(2)助成金や職業訓練などに要する費用の、失業給付等の積立金からの借入れ
(3)労働移動・学び直しの支援措置
(4)基本手当の水準(支給率、支給日数)
(5)高年齢雇用継続給付
(6)教育訓練給付
(7)マルチジョブホルダー(2ヶ所以上で働く人)への対応
(8)65歳以上の方への対応
(9)求職者支援制度
(10)財政運営

●「学び直し」に注目
このうち、今、特に注目されているのが(3)の「学び直し」です。現在、「行き過ぎた雇用維持型」から「労働移動支援型」への政策転換を図り、雇用を流動化させ、成長分野(新エネルギー開発、都市再生、農林水産業の高度化等)への転職を促進させるため、国は社会人の「学び直し」に力を入れようとしています。

●国による支援の内容
具体的な支援策として、社会人が専門知識を学び直せるように大学や専門学校の教育プログラム開発に対して助成を行う方針が示されています。また、6月下旬に厚生労働省の職業安定分科会雇用保険部会で示された資料の中で、社会人への支援として「若年者等の学び直しに対する支援」「非正規雇用労働者等のキャリアアップのための自発的な職業訓練に対する支援」を挙げ、企業への支援として「従業員の学び直しプログラムの受講を支援する事業主への手厚い経費助成」を挙げています。

III 精神障害の労災認定件数が過去最多に!●脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
厚生労働省が、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を発表しました。これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況についてまとめたものです。くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。

●精神障害の労災認定件数が過去最多に
今回の発表では、精神障害の労災申請自体は前年より若干少なくなりましたが、労災認定件数は前年度比150件増となり、過去最多となりました。その内容を見ると、長時間労働やいじめなど、行政指導でもよく指摘されるような事項が並んでいます。業種別では、製造業や卸・小売業、運輸業、医療・福祉といった業種が多くなっています。

●仕事量・内容の変化、嫌がらせ・いじめに注意
出来事別での支給決定件数は、以下の理由によるものが多くなっています。
(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった
(2)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた
(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした順に多くなっています。

●体調の管理と併せて労働時間の管理も
「1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行う」場合、脳・心臓疾患や精神障害が、仕事によるものとして、労災認定されやすくなります。会社の労働時間管理も重要になってきます。時間外労働が過度となると、睡眠不足など体調の管理も難しくなり、ヒヤリ・ハットミスが増えるなど、事故が起きる可能性も徐々に増してきます。暑い時期になり、熱中症も多く発生しています。体調管理と併せて、労働時間の管理についても、今一度問題がないか再点検してみてはいかがでしょうか。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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