経営労務情報 平成25年(2013年)11月号

I アルバイトの非行増加!就業規則のチェックを●飲食店や小売店で被害が続出
コンビニのアルバイト店員がアイス用の冷凍庫の中に入っているところを写真に撮ってインターネット上に掲載した事件を皮切りに、最近、飲食店や小売店で類似の事件が相次いで起こりました。中には事件をきっかけに閉店することとなった店舗もあることから、経営者が この問題を軽く考えてアルバイトに対する教育や労務管理をおざなりにすることは、経営の存続をも危うくする大きなリスクをはらんでいます。

●被害を未然に防止するには?
こうした非行を未然に防止するためには、就業時間中は業務に集中することとして携帯電話(スマホ)の操作を禁じたり、休憩時間中や就業時間外であっても勤務先の不利益につながるような行為は慎むべきことを教育したりする必要があります。
さらに、これらのことを職場におけるルールとして徹底し、就業規則や店舗に備付けの業務マニュアル等にも明記しておく必要があります。

●万が一に備えて就業規則等を確認
就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者に作成が義務付けられていますが、正社員用の就業規則だけでアルバイト用のものは作成されていなかったり、アルバイト用の就業規則はあるが、規定内容に不備があったりするケースもあります。

就業規則が作成されていない、または規定内容に不備がある場合、従業員に非行があってもそれを理由として、懲戒処分・懲戒解雇にすることができない場合があります。自社の就業規則をチェックし、作成の仕方や見直しの要否等について検討してみてはいかがでしょう。

II 労働基準監督署による最近の送検事例(労災関連)東京労働局は労災事故に関連した最近の送検事例を公表しました。

●事例(1)労災かくしで道路旅客運送業者を書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年2月、タクシー会社の駐車場で従業員がハイヤーを洗車していたところ、転倒して手首を骨折し、休業4日以上に及ぶ労災事故が発生しました。労働安全衛生法では、「休業4日以上」の労災については、遅滞なく所轄労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出することになっていますが、労災の発生を隠すため報告書を提出しませんでした。タクシー会社と営業所長が平成25年8月に書類送検されました。

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●事例(2)工事現場の墜落死亡災害で書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年4月、高架橋の防風柵新設工事現場で、工事業者の従業員(当時19歳)が、つり足場の組み立て作業中に足場から約13m下に墜落して死亡しました。つり足場の組立て作業を行わせる場合は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者から作業主任者を選任し、作業主任者に作業の進行状況および保護帽と安全帯の使用状況を監視させなくてはなりません。

この工事業者は、選任した作業主任者が現場に不在であり、作業の進行状況と安全帯の使用状況を監視せず、作業をさせていたことが判明しました。工事業者と工事部長が平成25年9月に書類送検されました。

●労働基準監督官が注目されている?
監督署が送検を行うのは特に重大な事案の場合に限られますが、「労働安全衛生法違反」以外にも「労働基準法違反」や「最低賃金法違反」等でも送検されます。10月から、監督官を主人公としたドラマ放送がスタートしたことや、今話題のブラック企業問題など、今後、監督署や監督官に注目が集まるかもしれません。

III 企業における「懲戒処分」の実施状況は?近年、労使トラブルは増加傾向にありますが、それに伴い懲戒処分を実施する (または実施を検討する)企業も増えています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が今年7月に発表した「従業員の採用と退職に関する実態調査」の結果から企業における懲戒処分の状況について紹介します。

●懲戒処分の規定内容
懲戒処分の規定が「ある」企業の割合は94.6%で、ほとんどの企業が「就業規則」に規定しています。規定内容は、割合の高い順に以下の通りです。
「必要な場合には懲戒処分を行う旨の規定」(75.7%)
「懲戒処分の種類」 (69.9%)
「懲戒の対象となる事由」(61.9%)

●最近5年間における実施状況
ここ5年間の懲戒処分の、種類ごとの実施割合は次の通りです。
(1)始末書の提出 (42.3%)
(2)注意・戒告・譴責 (33.3%)
(3)一時的減給 (19.0%)
(4)降格・降職 (14.9%)
(5)懲戒解雇(13.2%)
(6)出勤停止(12.3%)
(7)諭旨解雇( 9.4%)

なお、「いずれの懲戒処分も実施していない」企業の割合は39.0%でした。

●懲戒処分の実施時の手続き
懲戒処分を実施する際の手続きとして法律で定められた要件はありませんが、一般的には「理由の開示」、「本人の弁明機会の付与」が必要とされています。また、「労働組合や従業員代表への説明・協議」を行うことにより、本人以外の従業員の納得性を高めることもできます。実施する際には慎重な配慮が必要です。

監修 :中島光利、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)9月号

経営労務のお役立ち情報です(次号からはテーマを絞り隔月発行とさせて頂きます)
お客様のご理解により担当のお客様をすべて譲り、この9月末にて退職し、木嵜真一君を独立させることができました。お客様には深くお礼を申し上げます。立派な社会保険労務士になってくれると思います。15年勤務してくれました。

I 転職者は転職に際して何を重視している?●人材確保のためには何が必要?
景気が上向きつつある現在、転職を希望する人も徐々に増えてきています。会社が「優秀な人材」「望む人材」「欲しい人材」を獲得するためには、転職者に「この会社に行きたい」と思ってもらわなければなりません。それでは、転職者は何を求めて(何を理由に「この会社に行きたい」と思って)転職をするのでしょうか?逆に会社としては、自社が望む人材に応募してもらうために、何をポイントにすべきでしょうか?

●調査結果
日本経済新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの共同調査の結果、「転職の条件で重視するもの」(3つまで回答)の回答の上位7つは以下の通りでした。
(1)給与水準
(2)会社の将来性
(3)福利厚生
(4)職場の人間関係
(5)スキルやキャリアを磨ける可能性
(6)職務やポスト
(7)会社の社会的貢献度

●「給与以外」で重要な要素
やはり1位はダントツで「給与水準」(82.2%)でした。しかし、給与はもちろん重要な要素ですが、それ以外の項目をみると、「仕事は大変でもやりがいがある」「仕事を通じて自分の成長を実感できる」「仕事を通じて社会の役に立てる」などと感じることができる職場・仕事が求められています。

II「最低賃金」と「定額残業代」●平均で14円の引上げに
政府は、今年10月頃に予定している平成25年度改定に合わせて、最低賃金の額の引上げ方針を固めました。引上げ幅は時給ベースで「14円」(全国平均)とされました。現在、全国平均で749円ですので、763円への引上げになります。今後はこれを目安に、都道府県ごとの最低賃金が決定されます。

最低賃金の引上げに向けて、政府は会社の内部留保が投資や賃金に回るような誘導策を導入する方針です。一方、負担の大きい中小企業に対しては、経営を過度に圧迫しないための対応策も検討するとしています。

●定額残業代と最低賃金、そして定額残業代自体の問題
パート・アルバイトの従業員がいない会社でも、最低賃金の引上げには要注意です。月給制の場合でも、「定額残業代制度」をとっている会社においては、(基本給)と(定額残業代以外の手当額)の合計を時間単価に直した場合、その額が最低賃金を下回ると法違反となり罰金が科される可能性があります。さすがにこの基準自体はクリアしていることが多いと思いますが、定額残業代にはまた別の問題点もあります。定額残業代の支払方法には、以下2パターンがあります。
(1)基本給とは別に手当として支払う方式
(2)基本給などに組み込んで支払う方式

未払残業代訴訟では、支払方法によって、会社側の主張が認められにくくなる場合があります。(1)については、就業規則や雇用契約書に定めがあれば、裁判でも定額残業代が認められやすい傾向にありますが、(2)については特に問題が多く、裁判で否定されることが多いようです。

●これから定額残業代を導入する場合
新たに定額残業代制度を導入しようとする場合、その多くは労働条件の不利益変更に該当することになります。その場合は、原則として書面による従業員との明確な合意が必要です。また、同意を得る前に、従業員に対する説明会や個別面談を行うなど、導入には周到な準備が必要です。消費税引上げを見据えて最低賃金引上げの圧力は強いようです。この機会に就業規則や雇用契約書、残業管理方法についても見直しておきましょう。

III 厚労省が「ブラック企業」の取り締まりを強化●「ブラック企業」の本格取締りがスタート
若年労働者等の使い捨てが疑われる会社(いわゆる「ブラック企業」)が社会問題となっていることを受けて、厚生労働省は、9月に集中的な監督指導を行います。法違反が認められた場合は是正指導が行われます。監督指導内容は以下の通りです。

・長時間労働抑制に向けた集中的な取組みの実施
主な重点確認事項
(1)時間外・休日労働が36協定の範囲内であるかの確認
(2)サービス残業の有無についての確認
(3)長時間労働者に対する、医師による面接指導などの健康確保措置についての確認

過労死、または、脳・心臓疾患等に係る労災請求が行われたなどの会社については、再発防止の取組を徹底させるため、法違反の是正確認後も監督指導が実施されるようです。監督指導の結果、法違反の是正が行われない場合は、是正が認められるまで、ハローワークにおける求人募集ができなくなることも決定しており、重大・悪質な違反が確認された会社については、送検、公表するとしています。

・しっかりとした相談対応
9月1日には全国一斉の電話相談を実施し、過重労働が疑われる会社などに関する相談を踏まえ、法違反が疑われる会社に監督・指導を行います。9月2日以後も「総合労働相談コーナー」「労働基準関係情報メール窓口」で相談や情報の受付をしています。新卒応援ハローワークでも、情報・相談を受け付け、労働基準法などの違反が疑われる会社に関しては労働基準監督署に情報を提供するとしています。

監修 :中島光利、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)8月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 業務中の居眠りによるパソコン入力ミスで会社に大損害!?●居眠りが裁判沙汰に
寝不足等が原因で仕事中にウトウト...。誰しもそのような経験があると思いますが、海外では居眠りが原因で「会社にあわや大損害」という事態が起き、裁判沙汰にまでなってしまったものもあるようです。

●一瞬の居眠りが
ドイツの銀行で、行員がパソコンの操作中に一瞬だけ居眠りをしてしまい、大金(日本円で約287億円)を誤って送金しそうになりました。銀行は、事態を重くみて上司である女性(48歳)を解雇処分としましたが、労働裁判所は「重大ミスではあるものの、意図的ではなく解雇理由にはならない。譴責(けんせき)にとどめるべき」との判断を下し、女性の復職と賠償金の支払いを命じました。

●行員の居眠りとミスの状況
この行員は、パソコンで送金額(62.4ユーロ)を入力すべきところ、キーボードに指を置いたまま一瞬居眠りをし、誤って「2億2,222万2222.22ユーロ(約287億円)」と入力してしまいました。その後、ミスが判明して修正されましたが、銀行は「上司が監督責任を果たさず、誤入力を見逃した」として解雇処分としましたが、上司の女性は「処分は不当である」と訴えていました。

●効果的な「昼寝」の活用
居眠りをしてしまいそうなほど眠いときに、効果的なのは「昼寝」です。昼寝研究の第一人者と言われている、カリフォルニア大学のサラ・メドニック氏は、「1時間半の昼寝は一晩分の睡眠に等しい」と主張しています。会社で1時間半もの昼寝をすることは現実的には不可能ですが、昼休みの時間を利用して10分~数十分程度の昼寝をするだけでも、疲労回復により、午後の業務の効率アップにつながります。最近では、昼寝用の専用部屋を用意する企業もあるようです。

II いま注目されている社会人の「学び直し」とは?●雇用保険制度見直し案
現在、厚生労働省では雇用保険制度の見直しをすすめていますが、現在挙げられている論点案は次の通りです。
(1)個別延長給付・雇止めによる失業者の支給日数充実
(2)助成金や職業訓練などに要する費用の、失業給付等の積立金からの借入れ
(3)労働移動・学び直しの支援措置
(4)基本手当の水準(支給率、支給日数)
(5)高年齢雇用継続給付
(6)教育訓練給付
(7)マルチジョブホルダー(2ヶ所以上で働く人)への対応
(8)65歳以上の方への対応
(9)求職者支援制度
(10)財政運営

●「学び直し」に注目
このうち、今、特に注目されているのが(3)の「学び直し」です。現在、「行き過ぎた雇用維持型」から「労働移動支援型」への政策転換を図り、雇用を流動化させ、成長分野(新エネルギー開発、都市再生、農林水産業の高度化等)への転職を促進させるため、国は社会人の「学び直し」に力を入れようとしています。

●国による支援の内容
具体的な支援策として、社会人が専門知識を学び直せるように大学や専門学校の教育プログラム開発に対して助成を行う方針が示されています。また、6月下旬に厚生労働省の職業安定分科会雇用保険部会で示された資料の中で、社会人への支援として「若年者等の学び直しに対する支援」「非正規雇用労働者等のキャリアアップのための自発的な職業訓練に対する支援」を挙げ、企業への支援として「従業員の学び直しプログラムの受講を支援する事業主への手厚い経費助成」を挙げています。

III 精神障害の労災認定件数が過去最多に!●脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
厚生労働省が、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を発表しました。これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況についてまとめたものです。くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。

●精神障害の労災認定件数が過去最多に
今回の発表では、精神障害の労災申請自体は前年より若干少なくなりましたが、労災認定件数は前年度比150件増となり、過去最多となりました。その内容を見ると、長時間労働やいじめなど、行政指導でもよく指摘されるような事項が並んでいます。業種別では、製造業や卸・小売業、運輸業、医療・福祉といった業種が多くなっています。

●仕事量・内容の変化、嫌がらせ・いじめに注意
出来事別での支給決定件数は、以下の理由によるものが多くなっています。
(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった
(2)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた
(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした順に多くなっています。

●体調の管理と併せて労働時間の管理も
「1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行う」場合、脳・心臓疾患や精神障害が、仕事によるものとして、労災認定されやすくなります。会社の労働時間管理も重要になってきます。時間外労働が過度となると、睡眠不足など体調の管理も難しくなり、ヒヤリ・ハットミスが増えるなど、事故が起きる可能性も徐々に増してきます。暑い時期になり、熱中症も多く発生しています。体調管理と併せて、労働時間の管理についても、今一度問題がないか再点検してみてはいかがでしょうか。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)7月

経営労務のお役立ち情報!!

I 職場での「熱中症予防対策」はお済みですか? ●職場での熱中症により21人が死亡
平成24年の「職場での熱中症による死亡災害の発生状況」によると、職場での熱中症による死亡者は21人で、依然として多くの方が亡くなっています。また、死亡した21人のうち18人については、WBGT値(暑さ指数)の測定を行っていなかったことが明らかとなったそうです。業種別にみると、「建設業」「製造業」で前年より死者数が増えています。また、昨年は「7月」と「8月」に集中的に発生し、死亡災害の57%が「高温多湿な環境での作業開始から2日以内」という短期間で発生していたとのことです。

●3人に1人が"熱中症予備軍"
"職場での熱中症"による死亡者数は上記の通り21人ですが、昨年6~9月の熱中症による全死亡者数は、685人となっています。また、昨年の夏季には日本人の3人に1人が"熱中症予備軍"だったという調査結果もあるそうです。

●注意すべきポイント
熱中症についての注意事項は、以下のとおりです。
◎建設、製造、運輸交通、貨物で発生割合が高い
◎熱中症になると半数は4~7日の休業を必要とする
◎40歳代の割合がもっとも高く、次いで50歳代、60歳代
◎経験年数が1年未満の従業員の被災が多い
◎全体の約3分の2が従業員数50人未満の事業場で発生
◎どの時間帯でも発生するがピークは15時
◎気温30度以上での被災が多い
◎WBGT値(暑さ指数)が25度以上31度未満での発生が大半

●対策グッズの活用や労働環境の見直し
熱中症の危険性がわかる簡易な熱中症計、内部の温度が上がりにくいヘルメット、冷却材を入れられるベストなど、熱中症対策グッズもいろいろとあるようです。今年の夏は、特に平年より気温が高くなることが見込まれています。対策グッズの活用と作業環境の見直し、健康管理の指導強化などの労務管理が必要とされます。

II 新情報!キャリアアップ助成金が新設されました 雇用保険二事業の一環として、有期契約労働者等*の企業内でのキャリアアップ等を支援する企業に対する包括的な助成制度として、「キャリアアップ助成金制度」が創設されましたので、概要を紹介します。(*対象は有期契約社員およびパートタイマー、派遣従業員など)

助成内容〔下記の6つのコースがあります〕 助成額 ......(  )の額は大企業の額
正規雇用等へ転換 正規雇用等に転換または直接雇用(以下「転換等」といいます。)する制度を規定し、有期契約労働者等を正規雇用等に転換等した場合に助成 ・有期→正規:1人当たり40万円(30万円)
・有期→無期:1人当たり20万円(15万円)
・無期→正規:1人当たり20万円(15万円)
※対象者により、加算の場合あり
人材育成 有期契約労働者等に、「一般職業訓練(OFF-JT)」または「有期実習型訓練(ジョブ・カードを活用したOFF-JT+OJTを組み合わせた3~6か月の職業訓練)」を行った場合に助成 OFF-JT《1人当たり》
・賃金助成:1h当たり800円(500円)
・経費助成:上限20万円(15万円)
OJT《1人当たり》
・実施助成:1h当たり700円(700円)
処遇改善 すべての有期契約労働者等の基本給の賃金テーブルを改定し、3%以上増額させた場合に助成 1人当たり1万円(7,500円)
健康管理 有期契約労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を規定し、延べ4人以上実施した場合に助成 1事業所当たり40万円(30万円)
短時間
正社員
短時間正社員制度を規定し、労働者を短時間正社員に転換・新規雇入れした場合に助成 1人当たり20万円(15万円) ※対象者により、加算の場合あり
パート労働時間延長 有期契約労働者等の週所定労働時間を25時間未満から30時間以上に延長した場合に助成 1人当たり10万円(7.5万円)

III 昨年度の個別労働紛争相談で、「いじめ・嫌がらせ」がトップに! 平成24年度の個別労働紛争解決制度の施行状況によると、「いじめ・嫌がらせ」での相談が増え、今年は初めて「解雇」に関する相談を抜いて、トップになりました。

●平成24年度の相談、助言・指導、あっせん件数
◎総合労働相談件数 106万7,210件
◎民事上の個別労働紛争相談件数 25万4,719件
◎助言・指導申出件数 1万 363件
◎あっせん申請受理件数 6,047件

●平成24年度状況のポイント
・総合労働相談件数は、5年連続で100万件を超えた。
・『いじめ・嫌がらせ』に関する相談は増加傾向にあり、51,670件。
・助言、指導の申出件数は増加傾向にあり、初めて1万件を超えて過去最多。

●あっせんとは例えばどんなもの?
職場の上司によるいじめ・嫌がらせ(暴言等)の実際例

事案の概要 申請人は、採用されてから現在に至るまで、職場の上司より暴言、差別等を受けており、精神的に限界状態にある。このため、暴言等により体調を崩し退職に追い込まれたとして、50万円の慰謝料の支払いを求めて、あっせん申請した。
あっせんのポイント・結果 あっせん委員が双方の主張を聞き、調整を図ったところ、当事者間の歩み寄りにより、解決金として20万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

「パワハラ」の予防は、「何がパワハラか」を管理職、社員が理解することが大切です。定期的に研修を行い、知識・理解を深めることなどが有効です。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)6月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 若者チャレンジ奨励金が創設されました! 若者の人材育成に取り組む会社を支援することを目的として、「若者チャレンジ奨励金(若年者人材育成・定着支援奨励金)」が創設されました。この奨励金は平成25年度末までの期間限定の制度です。

●若者チャレンジ奨励金(若年者人材育成・定着支援奨励金)の概要
この奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若者を、自社の正社員として雇用することを前提に、自社内での実習(OJT)と座学(Off-JT)を組み合わせた訓練(若者チャレンジ訓練)を実施する会社に支給されるものです。

●種類と支給額

訓練実施期間中に支給 訓練終了後に支給
訓練奨励金 正社員雇用奨励金
訓練奨励金訓練受講者1人1月当たり15万円 訓練受講者を正社員として雇用した場合に、1人当たり1年経過時に50万円、2年経過時に50万円(計100万円)

●若者チャレンジ訓練の対象者
35歳未満の若者であって、以下のいずれにも該当する者とされています。
(1) 過去5年以内に訓練を実施する分野で、正社員としておおむね3年以上継続して雇用されたことがない者等であって、登録キャリア・コンサルタントにより、若者チャレンジ訓練へ参加することが適当と判断され、ジョブ・カードの交付を受けた者
(2) 訓練を実施する会社と期間の定めのある労働契約を締結する者 等

●奨励金を活用できる会社の要件(主要なもの)
(1) 都道府県労働局長の確認を受けた訓練実施計画に基づき訓練受講者(雇用保険被保険者に限る)に訓練を実施すること。(一定の要件等に該当する訓練の実施計画を作成し、都道府県労働局長の確認を受けた上で、その計画に基づき訓練を実施する必要があります)
(2) 訓練受講者に訓練期間中の賃金を支払うこと。
(3) 雇用保険に加入していること。 等

II 雇用調整助成金の制度の変更 6月1日以降、雇用保険二事業として実施されている「雇用調整助成金」(※業績悪化により会社が休業した場合に支給される助成金)について、要件が変更となることが、厚生労働省から公表されています。概要は次のとおりです。

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●支給要件に、次の雇用指標が加わります
これまでは、直近3ヶ月売上と前年同期を比較して、売上が減少している場合が対象でしたが、今後はさらに、以下の要件を満たしていることが必要となります。
直近3か月の「雇用保険被保険者数と派遣労働者数の合計」の平均値が前年同期と比べ、
○大 企 業・・・「5%を超えてかつ6人以上」増加していないこと
○中小企業・・・「10%を超えてかつ4人以上」増加していないこと
※つまり、会社の売上が減少して休業しているときでも、新入社員をある程度採用している場合は、助成金対象外となります

●残業相殺が実施されます
平成25年6月1日以降の判定基礎期間から、「休業等を行った判定基礎期間内」に、休業の対象者が時間外勤務(残業)をしていた場合、残業時間相当分が助成額から差し引かれます。
(例)所定勤務時間が8時間の会社で、「休業日数が20日」「休業対象者の残業時間数が合計32時間」であった場合、20日-4日(32時間÷8時間)=16日分の支給となります。

●支給額(平成25年4月1日から、支給額が一部変更されています)

  大企業 中小企業
休業等を実施した場合の休業手当の負担額に対する助成率 1/2 2/3
教育訓練(事業所内訓練)を実施したときの加算額 (1人1日当たり)
1,000円
(1人1日当たり)
1,500円
教育訓練(事業所外訓練)を実施したときの加算額 (1人1日当たり)
2,000円
(1人1日当たり)
3,000円

III 今、話題の「解雇の金銭解決制度」とは? 最近、「解雇の金銭解決制度」(従業員が解雇されたときに、企業が和解金を支払って解決する仕組み)が、政府の規制改革会議で議論となっています。実現すれば、会社にとっては影響のある話題です。

●そもそもハードルの高い「解雇」
解雇については、労働契約法で、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」とされています。裁判例においても、会社の敗訴が大多数で、解雇の実施は企業にとって非常にハードルの高いものとなっています。

●賛成側・反対側の意見
解雇トラブルが裁判になり、元従業員が勝訴した(解雇不当であると認定された)場合、職場復帰が原則となりますが、元の職場に戻るのは現実的には難しいものです。そのような場合、「和解金を支払うことでトラブルを解決する(職場復帰させない)のが妥当である」「和解金の相場がわかればトラブルの早期解決につながる」などというのが、制度導入に賛成する側の意見です。
一方、導入を反対する側の意見では、「『解雇が違法である』と裁判所が認めたのに、職場復帰できないのはおかしい」「企業が『お金を払えば解雇できる』と安易に考えやすくなる」などといったものがあります。実現には時間がかかるかもしれません。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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