経営労務情報 平成26年(2014年)9月号

I お知らせ◆年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月に支払う給与からお願い致します。
具体的には以下のとおりです。(先引の会社では、例年どおり変更してください)
翌月払の会社では9月分から(例:9月末日締切の10月10日支払)
当月払の会社では10月分から(例:10月20日締切の10月末日支払)
◆最低賃金が、10月1日より800円(愛知県)に変更されます。今回は大幅な変更になります。パート募集時の時間給決定や、10月1日以降、パートさんの給与計算時に下回らないようご注意ください。
◆新「パートタイム労働法」が、平成27年4月1日から施工されます。社員とパートの就業規則をはっきり分ける必要があります。詳細は随時お知らせ致します。

II 人手不足の業界には光明? (外国人労働者活用) ◆外国人労働者活用への期待が高まる
労働力人口の減少を補うため、外国人労働者活用への期待が高まっています。これまでは高度人材(研究者や経営者など)を中心に受入れ体制が整えられてきましたが、比較的単純な労働も可能とする議論が進み、建設、農業、製造業、家事支援、介護などでの活用が期待されています。また技能実習制度の拡大も検討されています。

◆受入れの際の留意点
経営戦略・事業運営方針にも大きく関わるため、雇用する目的や必要性を十分に検討し担当業務を決めていく必要があり、諸官庁への手続きなども注意が必要です。

◆トラブル防止のための知識
トラブルを防ぐためには、次のような知識が必要です。
(1)入管法(出入国管理及び難民認定法) (2)労働関係法  (3)日常の労務管理 (4)文化、宗教 (5)生活様式、生活慣習 (6)ビジネス慣習 (7)コミュニケーション方法
社会保険加入となるため賃金は単純に安くならないようです。検討が重要です。

III 深刻な 「後継者不在」問題 と 制度改正の動向 ◆28万社超の企業を分析
4人に1人が高齢者時代。経営者も約3割が65歳超の時代です。帝国データバンクが有する企業概要(145万社収録)及び信用調査ファイル(160万社収録)を分析し、後継者問題に関する調査の結果が発表されました。

◆深刻な後継者不在の状況
国内企業の65.4%が後継者不在。社長年齢が「60歳代」の企業では53.9%が後継者不在、「70歳代」では42.6%、「80歳以上」では34.2%でした。どのような後継者がいるかでは、「子供」38.4%が最多、 「親族」19.9%、「配偶者」10.9%、つまり同族が約7割(69.2%)となりました。

◆業種別の状況
後継者不在割合が、平均値の65.4%以上の業種は、1)サービス業70.4%、2)建設業70.0%、 3)不動産業67.8%、4)小売業66.1%、でした。

◆制度改正の動向
経済産業省の調査結果では、「親族外が後を継ぐ中小企業の割合は約4割でした。同省は法務省と連携し、親族外の事業承継がしやすい制度づくりを進める考えです。親族が無理なら早い対策が重要です。また後継者対策を含めた採用計画も重要です。

IV 中小企業における賃上げなどの取組み状況◆6割強の企業が何らかの賃上げを実施
経済産業省が、「中小企業の雇用状況に関する調査」、及び「中堅・中小企業等における賃上げ等の取組みに関する調査」の結果を発表しました。平成26年度に、ベースアップや賞与・一時金の増額など何らかの賃上げ(正社員1人当たり平均賃金の引上げ)を行った企業の割合は64.5%(前年度比7.7ポイント増)でした。またベースアップに相当する賃上げを行った企業は36.2%で、賞与・一時金の増額を行った企業は48.0%でした。

◆賃上げを行った理由は?
「従業員の定着・確保」とした企業が最多の75.7%、「業績回復の還元」が28.9%、「消費税率の上昇への対応」が21.3%でした。逆に賃上げなしの企業の理由は、「業績の低迷」が71.7%で最多、「賃金より従業員の雇用維持を優先」が33.1%、「原油・原材料価格の高騰」が33.0%でした。

結果からは、人手不足により賃上げせざるを得ない状況、業績低迷により賃上げができない状況、雇用維持への努力やコストアップへの影響が見てとれます。地域別では、賃上げした企業は、昨年度に比べ全国的に増加し、地域間の格差も少なくなり、地方への「経済の好循環」が波及しつつある状況も見られました。

◆非正規社員の処遇改善の取組み例
非正規社員の処遇改善では、賃金改善や、正規雇用への転換(会社側から積極的に働きかけて非正規社員を正規雇用へ転換)が挙げられます。賃金以外では、介護休業や介護休暇の拡充、女性の積極的登用するため短時間 勤務制度を導入、出産祝い金の増額、社員旅行の実施などが挙げらました。全社員の賃上げが不可能でも、若手社員の賃上げ方法が重要になっています。

V スポット情報●「入職率」が「離職率」を6年ぶりに上回る(2014/9/10)
厚生労働省が平成25年の「雇用動向調査」の結果を発表し、入職率(転職も含めて新たに仕事に就いた就職者の労働者全体に占める割合)が16.3%(前年比1.5ポイント増)となり、離職率(仕事を辞めた人の労働者全体に占める割合)の15.6%(同0.8ポイント増)を上回った。入職率が離職率を上回るのは6年ぶり

●現金給与総額が5カ月連続で増加(2014/9/2)
厚生労働省が7月の「毎月勤労統計調査」の結果を発表し、現金給与総額が36万9,846円(前年同月比2.6%増)となり、5カ月連続で増加したことがわかった。伸び率は、平成9年1月以来、17年半ぶりの高さとなった。

●生活保護世帯数が過去最多の160万世帯に (2014/9/4)
厚生労働省が生活保護に関する集計結果を発表し、今年6月時点で生活保護を受給している世帯数が160万4,414世帯(前月比1,321世帯増)となり、過去最多を更新した。受給者数は215万8,840人(同1,012人減)だった。

●医療費が過去最高の39.3兆円に(2014/8/27)
厚生労働省は、平成25年年度における医療費(概算)が39.3兆円(前年度比2.2%増)となり、11年連続で過去最高を更新したと発表した。国民1人当たりの医療費は平均30.8万円(同2.4%増)で、75歳以上の後期高齢者は92.7万円、75未満は20.7万円だった。

監修 :中島光利、坂山徹

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