経営労務情報 平成31年(2019年) 4月号

お知らせ◆3月より「介護保険料」の保険料率が上がりました。給与の保険料は、「4月に支払う給与」から上げてください。お客様へは新保険料をお送りしていますのでご確認ください。
◆本年4月からの「雇用保険料免除(不要)」対象者は昭和30年4月1日以前生の方です。対象者は改めてお知らせいたします。
◆4月から6月に支払う「給与総額」にご注意ください。今年9月から1年間の社会保険料は4月から6月に支払う給与の「平均額」で決まります。この間で残業などの手当が多いと社会保険料が増えてしまいます。
◆4月は入社・異動が増え「年金事務所」への申請が多くなり「保険証」が届くのが遅れてしまいます。早めの連絡をお願い致します。
◆4月から労働基準法が変更
有給休暇の5日消化の義務化、残業時間の上限設定など労働基準法が大きく変わりました。お客様へは詳しくご説明いたします。

人手不足問題への対応どうしますか?◆人材不足を実感している企業が 9割
企業の「人手不足」の問題については、しばしば新聞やテレビでも報道されるところですが、自社の状況はいかがでしょうか?
エン・ジャパン株式会社が実施した2019年の「人材不足の状況」についてのアンケート調査(762社から回答)によると、「人材が不足している部門がある」と回答した企業が9割という結果でした。 これは2016年の調査に比べ、5ポイント上昇した数字となり、3年前よりも人材不足感が増していることが分かります。
◆人手不足への対応策は?
人手不足を実感している会社では、どのような対策を講じているのでしょうか。
同調査では、人材不足への対応策として、86%が「新規人材の採用(欠員の補充)」と回答。次いで「既存の業務を効率化する(ICT化、標準化等)が35%、既存社員の教育、能力向上が30%、社員のモチベーション向上のため処遇見直しが18%となりました。
調査でも、「新規人材の採用」を解決策とする会社が多数でしたが、最近は「高齢者雇用」「外国人雇用」「退職後からブランクのある女性の雇用」など、これまで採用市場に多くなかった人材の積極採用に目を向ける企業も増えていいます。
◆「新規人材の採用」以外の解決策も
今後避けられない人口減少、労働力人口減少の中では、「今いる人材が離職しないこと」「業務の効率化をすること」は重要テーマです。
社員の処遇制度を見直したり、職場環境の改善、社内コミュニケーションの活性化などにより人材確保のための積極的な取組みを始めている企業も少なくありません。
◆人材確保のために今から対策を
人手不足の問題は、今後企業ごとに工夫を凝らして解決していかなければならないテーマです。人材獲得競争の波に乗り遅れないように、今から検討していく必要があるでしょう。

人事・労務に関する 「トップ・マネジメント」の意識 ~経団連調査~◆調査の概要
日本経済団体連合会(経団連)は、会員企業および東京経営者協会の主要会員企業の労務担当役員等を対象に、春季労使交渉・協議や人事・労務に関するトップ・マネジメントの意識・意見などを調査しています。今回は2018年の調査結果の注目点を取り上げます。
◆賃金関係
月額賃金について、労働組合等の要求とは無関係に、自社として実施を決定したことは、
①「定期昇給の実施、賃金体系の維持」64.9%と、②「初任給の引上げ」46.5%でした。
賞与・一時金では、前年度より増額した企業は54.6%、前年度の水準を維持した企業も32.0%と、増額・維持する企業が約87%にのぼっています。
◆労働生産性と人材育成の取組み
新たなビジネスやイノベーションの創出に向けた具体的な取組みとして、
①「挑戦する社内風土づくり」(54.5%)
②「組織や業務体制の見直し」(47.8%)
③「中途採用など外部人材の積極的な採用と活躍の推進」(42.4%)
④「社員の知識・スキル向上のための教育・研修」(40.5%)があげられています。
今後(5年程度)注力したい項目としては、「成長分野・重点分野への戦略的な人事異動」(47.4%)が最も多い結果になりました。
◆高齢社員の活躍推進
高齢社員を雇用する目的としては、
①「知識や経験等を活かした専門能力の発揮」(45.4%)
②「労働力・人材の確保」(28.9%)、
③「後進の指導・育成、技術・技能の伝承」(23.4%)と続きます。
高齢社員のモチベーション維持・向上のために既に実施している施策は、
①「人事評価制度」(56.4%)、
②「勤務時間・日数などの柔軟な勤務制度」(55.5%)が最も多く、検討している施策は、①「基本給水準の引上げ」(39.4%)と ②「定年年齢の引上げ」(37.4%)が上位を占めています。
◆副業・兼業の取扱い
副業・兼業の実態として、「現在認めている」企業が21.9%に対し、「認めていない」企業は78.1%と圧倒的に多い結果となりました。
後者のうち今後も認めるつもりはない企業は43.5%にのぼります。
副業・兼業を認める理由として、「社員のモチベーション向上」(37.7%)、「自社では提供できない仕事経験による能力向上やアイデアの創出」(34.9%)でした。
認めない理由としては、「社員の総労働時間が把握できない」(64.6%)、「社員の健康確保が図れない」(54.5%)、「疲労の蓄積によって社員の業務効率が低下する」(44.9%)が多くあげられています。

中小企業の半数が「継続雇用65歳超の義務化」に反対~日商・東商調査~◆中小企業の「リアル」を調査
日本・東京商工会議所は、「働き方改革関連法への準備状況等に関する調査」と併せ、「高齢者雇用の拡大に関する調査」の結果を公表しています(調査対象:全国の中小企業 2,881社、調査期間:2018年10月22日~12月3日)2019年1月9日公表、日本・東京商工会議所は昨年10~12月に中小企業2,881社(従業員規模300人未満の企業が約9割)。その概要をご紹介します。
◆高年齢者雇用安定法の対応状況は?
現況は、「希望者対象の継続雇用制度導入」が72.7%、「65歳までの定年制導入」が19.2%、「定年制の廃止」が5.1%でした。
定年前・後における給与水準の変化について、「職務内容と責任の水準が変わるため給与水準を下げている」が53.9%に。一方「職務内容と責任の程度は同程度だが給与水準を下げている」が16.3%となり、こうした企業は今後、同一労働同一賃金に向けた対応が必要となりそうです。
給与を下げている企業の定年後の給与は、
①「定年前の7~8割程度」が57.3%、
②「定年前の5~6割」が24.0%、
③「5割未満」は3.0%、でした。
◆7割以上が65歳超を雇用するも、半数が「義務化」に反対
65歳超を雇用する企業の割合は73.7%で、2016年調査結果より2.6%増えました。
「65歳超への義務化」には、「影響はない」が44.0%だった一方、「雇用しているが義務化には反対」29.7%、「65歳までは雇用できるがそれ以上の対応は難しい」20.8%で、義務化に反対する割合が50.5%でした。
しかし2016年調査結果の57.2%に比べて下がっており、中小企業において高齢者雇用が進んでいる実態がうかがえます。
義務化された場合の対応については、
①「不明」が28.5%ながら、
②「定年は60歳のまま、希望者を65歳超まで再雇用する」32.4%、
③「65歳を定年とし、希望者を65歳超まで再雇用する」26.0%で、
定年引上げも視野に入れている企業もありました。

気になる!企業のソーシャルリスク対策 の実態◆従業員の不適切動画投稿問題で改めて問われる企業の対策
飲食店やコンビニの従業員が投稿した不適切動画問題が、企業の評判に悪影響を及ぼしかねない事件が、立て続けに起こりました。
対応として従業員に損害賠償請求訴訟を決定した企業、全店休業して社員の研修を決定をした企業と様々ですが、SNSを活用する企業も、個人も増加している中ではいつ問題に巻き込まれても不思議はありません。
まだ社会人としての自覚に乏しい新入社員の入社も近づくこの時期は、自社の対策を確認しておくべき時期とも言えるでしょう。
◆多くが何らかの対策を講じており、4割が研修を実施
ウェブサイトやアプリのユーザーサポート等を行うアディッシュ株式会社が、2018年12月に行った調査によれば、ソーシャルリスク対策について「未実施、今後も実施なし」と回答したのは5.2%で、多くの企業が対策を行っています。
具体的な内容を実施率で見ると、
①「研修の実施」39.1%、
②「ガイドラインの作成」37.2%、
③「マニュアルの作成」30.9%が上位に入っています。
従業員数別に見ると、100人以上300人未満の研修の実施率が50%であるのに対し、100人未満では19.1%と、十分な対策が取られていない可能性があります。
◆雇入れ時に自筆の誓約書を書かせるのも有効!!
人事コンサルタントの増沢隆太氏によれば、研修の実施や朝礼時の啓発を継続的に行うとともに、雇入れ時に「バイトテロ」を起こした場合の損害賠償を約束させる「誓約書」すべて手書きしてもらうのが望ましいようです。
例えば、必要となる清掃や消毒、商品の廃棄や交換、休業補償などを加害者の負担で行うことを明文化するものです。
用意された誓約書にサインさせるのではなく、従業員自身に「内容を手書きさせる」ことが「バイトテロ」の行為のリスクを自覚させるのに有効だということです。
◆未実施の場合は早急に対策の検討を!
不適切動画を投稿した本人による「せいぜいクビになるだけ」という趣旨の発言が報道にもありましたが、不適切動画の投稿はスマートフォン1台あれば簡単にできます。
投稿する従業員自身も社会問題に発展しかねないリスクだと自覚していない可能性があります。新入社員だけでなく、他の従業員も研修の実施を検討してはいかがでしょうか。

ス ポ ッ ト 情 報●介護保険料算出ミス追加負担も(4月5日)
厚労省は4日、介護保険料の算出に誤りがあったため2019年度に徴収すべき保険料総額が本来より約200億円不足する可能性があることを発表。厚労省所轄の「社会保険診療報酬支払基金」が加入者(40~60歳)の数を誤ったためとしている。厚労省は徴収を担う健康保険組合などに追加拠出を求めており、保険料の引上げを迫られる可能性がある。
●職業紹介事業者2020年春から労働法違反の求人拒否も(4月5日)
厚労省は2020年3月から、悪質な企業による採用を防ぐため、職業紹介事業者が労働法令に違反している企業の求人を拒否できるようになる。具体的には、過去1年間に2回以上、労働基準法や最低賃金法に違反して是正勧告を受けたり送検されて企業名が公表されたりすると拒否される。職業紹介会社のほかハローワークも対象。2017年の改正職業安定法で悪質な企業の求人を拒める規定が盛り込まれたが、具体的な開始時期や内容が決まっていませんでした。
●厚生年金未加入推計156万人(4月5日)
厚労省の調査により、厚生年金に加入する資格があるのに未加入になっている労働者が推計156万人に上ることがわかった。2017年10月から2018年3月にかけて、国民年金第1号被保険者から抽出調査した結果をもとに推計したもの。約3年前の前回調査から44万人減ったものの、未加入労働者は相当数あり、企業が保険料の負担を避けるために加入逃れをしているケースが多いとみられる。
●建設業外国人受入れで監督機関(4月1日)
国交省は、「特定技能」による外国人受け入れが始まるのを受け、建設業で働く外国人の労務管理を徹底するため、日本建設業連合会や全国建設業協会などの業界団体とともに専門機関である「建設技能人材機構」を設立した。機構は適切な技能を備えた人材の確保と受け入れ企業の監督を行う。海外の教育機関と提携し、人材育成から試験・選考までを実施し、作業員に配るICカードで技能の資格や経験をデータとして一元管理する仕組み等も設ける。
●改正入管法施行(4月1日)
4月1日、新在留資格「特定技能」を創設した改正出入国管理・難民認定法が施行され、法務省の外局として出入国在留管理庁が同日発足した。
●技能実習生 2018年の失踪9,052人、6年間で死亡者171人も(3月30日)
法務省は外国人技能実習制度に関する調査結果として、2018年に日本で失踪した外国人技能実習生が過去最高の9,052人だったことを発表した。また、2012年~2017年の6年間に、事故や病気などで亡くなった実習生が171人に上ることも公表した。
●所定内給与30万6,200円と過去最高に(3月30日)
厚労省が3月29日に発表した2018年の賃金構造基本統計調査によると、フルタイムで働く労働者の所定内給与(月額)の平均が30万6,200円(前年比0.6%増)と過去最高となったことが分かった。ただし男女間の格差、非正規・正社員との格差は拡大した。
●求人募集に受動禁煙対策明示の義務化(3月28日)
厚労省は、求人募集を出す際、企業が講じている受動禁煙対策を明記するように義務付けると発表した。改正健康増進法の全面施行に合わせ、2020年4月から適用となる。
●不法就労で強制退去1.6万人(3月28日)
法務省は27日、2018年に出入国管理法違反で強制退去となった外国人が1万6,269人(前年比2,583人増)に上ったことを発表した。全体の6割が不法就労であったという。
●在留カード番号 届出義務化へ(3月23日)
厚労省は、外国人を雇用した事業主が厚労省に提出する「外国人雇用状況の届出」に、在留カード番号の記載を義務付ける方針を固めた。4月からの外国人労働者受け入れ拡大に伴い不法就労を防ぐことが狙いで、2019年度中の運用改正を目指す。

経営労務情報 平成31年(2019年) 1月号

あけましておめでとうございます。
新しい年がよい年になりますよう皆様のご活躍とご健康を心よりお祈り申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

お知らせ◆4月から労働基準法が変更
有給休暇の5日消化の義務化、残業時間の上限設定など労働基準法が大きく変わります。お客様へは詳しくご説明いたします。
◆労働基準監督署調査が変更。
障害を残すような「労災事故」が発生すると監督官が突然会社に来ます。以前は事故原因のみの確認で終わりましたが、昨年ぐらいから、同時に「総合調査」を行う監督署がでてきました。残業単価・労働時間などいろいろ細かく確認され指摘してきます。突然きても「忙しい」と伝え、後日来てもらうことも可能です。お客様へは全てこちらで対応いたします。けがをしない安全策も重要です。
◆住所の変更をお知らせください。
年末調整の際、従業員さんの住所が変わっていましたらご連絡ください。協会けんぽの保険証裏の住所は各自で修正してください。
◆外国人受入が拡大
外国人を採用されるお客様が増えています。社会保険、雇用保険の手続きも変わり、ご用意いただく書類も増えています。スムーズな申請に心がけますのでご協力お願いいたします。
◆インフエンザの感染拡大中
乾燥が続き感染が拡大しています。手洗い・うがいなどの徹底と、早期の受診をおすすめします。回復が格段に早まります。

「チームの雰囲気」が社員の満足度やモチベーションにどう影響するか?ビジネスマンは今の職場に満足しているのか。「チームの雰囲気」が働く人の満足度やモチベーションにどう影響しているのか。㈱日本能率協会総合研究所のアンケート調査(第9回「ビジネスパーソン1,000人調査」【理想のチーム編】調査期間:2018年9月28日~10月9日
◆あなたは現在所属しているチームの雰囲気に満足していますか?
現在の職場のチームの雰囲気に「満足」している人は半数を超えました。(とても満足:10.9%、やや満足:43.6%)ただし20代、60代の約6割が満足している一方、50代と非正規従業員では過半数が満足してない結果でした。
満足の理由は「困ったときに助け合うから(39.6%)」、「自分なりの創意工夫で仕事を進めることができるから(27.2%)」、「互いに情報を共有したり学びあったりしているから(22.2%)」、「期待されている役割が明確であるから(18.2%)」となっています。
一方、満足していない理由は、「フェアな評価がなされていない(24.0%)」、「困ったときにも互いに助け合うことがない(21.8%))、「互いに本音を話せない(21.3%)」となっています。
満足している人と満足してない人の比較では、「職場のチームリーダーはチームの雰囲気を良くすることができているか」について、満足している人は「できている」と6割が回答、満足してない人は「できてない」と5割が回答。
チームの雰囲気に満足している人は良好な人間関係を魅力と感じる傾向が強いようです。
◆上司から言われて嫌だと思う一言は?
「上司から言われて嫌だと思う一言は何ですか」という質問では、
1位 「使えないな!」(33.8%)
2位 「そんなこともできないのか?」(32.6%)
3位 「余計なことをするな」(23.4%)
続いて、
「上が言っているんだから、やれ」(21.5%)
「やる気があるのか?」(16.5%)
「自分で考えろ」(11.5%)
「聞いてないぞ」(10.8%) でした。
◆上司から言われてやる気がでる一言は?
1位「ありがとう」(35.1%)
2位「よくやった」(23.9%)
3位「頑張ってるね」(19.8%)
他には、
「いいアイデアだ」(17.5%)
「おつかれさま」(17.4%)
「あなたにしかできない」(17.1%)
「期待しているよ」(16.0%) が続きました。
上司による感謝とねぎらいの声かけが従業員のモチベーションアップにつながるようです。

本年4月より労働基準法が改正~5つのポイント~「働き方改革」という理由で労働基準法が変わります。ポイントを5つお知らせします。
・・・・お客様へは個別にご説明いたします・・・・
◆ポイント① 有給休暇の取得義務化
有休が年間10日以上となる対象者は、年間5日の消化が義務づけられます。4月から全企業が対象です。消化できない企業は困ったことに罰則の対象となります。
従業員の希望を聞き、有休を5日決めて休ませることになります。または従業員と協定を結び、有休5日を指定することもできます。
ほぼ毎年5日以上使っている、病気などで結果として5日使った場合なども消化したことになります。

◆ポイント② 残業時間の上限が設定
残業の上限時間が法律となります。原則として1月45時間以内、1年間360時間以内となります。特別な事情がある場合(特別条項)として、単月100時間以内(2~6ヶ月平均80時間以内・休日出勤含む)、年間720時間以内となります。上限を超えると罰則の対象となってしまいます。ただし、建設業、運送業、医師などはまだ適用されません。

◆ポイント③ 同一労働、同一賃金
非正規雇用(パート、アルバイトなど)と正規雇用の間の不合理な待遇差を解消する必要があります。また有期雇用の従業員と無期雇用の従業員(正社員を含む)が、同じ職場で同じ業務をしている場合も格差を解消する必要があります。ただし「仕事の質・内容」や「責任の重さの違い」等があれば待遇に差があったとしても問題はありません。
◆ポイント④ 勤務間インターバル制度
インターバルとは、退社時間から翌日の出社までの時間をいいます。例えば、退社から翌日出勤までに11時間以上空ける制度とした場合では、残業した翌日の出勤時間を遅らせるケースもでてきます。これは長時間労働による健康被害を避ける制度です。
◆ポイント⑤ 高度プロフェッショナル制度
高度で専門的な知識を持つアナリスト、プログラマー、コンサルタントなどの職種で、年収1,075万円超の場合、希望者を対象とし、裁量労働制(仕事のやり方や時間配分を本人の裁量に任せる制度)として労働時間の管理をしない制度です。残業代が発生しません。
年間104日以上の休日、4週間で4日以上の休日と健康確保措置が必要になります。

過去最多を記録「人手不足倒産」~帝国データバンク動向調査より◆「人手不足倒産」とは
帝国データバンクが全国約1万社の調査回答を集計した。(2018年9月)
正社員不足の企業は全体の51.7%、1年前の同調査(48.2%)に比べ増加しました。
従業員の離職や採用難などで収益が悪化し倒産(個人事業含む、負債1,000万円  以上、法的整理)を「人手不足倒産」と定義し、過去5年半の集計と分析をした。今回は2018年度上半期(2018年4~9月)の結果。
◆倒産件数・負債総額
2018年度上半期の人手不足倒産件数は76件、前年同期(54件)より40.7%増加、2年連続で過去最多を更新。
一方、負債総額は110億4200万円、前年同期(191億2,900万円)より42.3%減少。
過去5年半の累計は、倒産件数447件、負債額946億9,500万円でした。
◆負債規模別
負債規模別の件数は「1億円未満」が45件、前年同期(22件)に比べ2倍。
5年半累計でも227件(構成比50.8%)と小規模倒産が過半数を占めていた。
「1~5億円未満」が上半期27件、5年半累計で179件(構成比40%)と、5億円未満の倒産が全体の90%以上を占めました。
◆業種別件数
2018年度上半期で最も件数が多かったのは、「サービス業」26件、次に「建設業」19件、「運輸・通信業」17件。
業種細分類別の過去5年半の累計では「道路貨物運送」38件、「老人福祉事業」27件、「木造建築工事」26件、「労働者派遣」21件、「建築工事」19件、「受託開発ソフトウエア」18件、「土木工事」15件でした。
◆都道府県別
都道府県別の5年半累計では、「東京都」の62件が突出して多く、次に「福岡県」34件、「大阪府」32件、「北海道」と「静岡」が並んで25件、「愛知県」22件でした。
昨年10月より最低賃金の全国平均26円引き上げ、運送費や原材料価格の高騰、企業環境が厳しさを増す中、「人手不足倒産」もさらに増加することが懸念されます。

外国人実習生の監督指導と技能実習制度の見直し◆外国人実習生に関する監督指導
入国管理法改正により外国人技能実習制度等の見直しが行われます。労働人口は少子化や人口減少により2030年までに最大で約900万人弱、2060年までには3,000万人弱も減少すると言われています。見直しは国が労働力不足対応としての在留資格見直しに大きく踏み出すことを意味しています。
「技能実習」について、実習生を受け入れる企業に対しての全国の労働局や労働基準監督署による監督・指導状況を厚生労働省が公表しました。
◆監督対象事業場・違反事業場は年々増加
平成29年は、実習実施者(企業)に対して5,966件の監督指導を実施、4,226件(70.8%)で法令違反が認められました。
主な違反は、労働時間(26.2%)、安全基準(19.7%)、割増賃金の支払(15.8%)、・就業規則(9.2%)、労働条件の明示(9.1%)などでした。重大ケースとして34件が送検されました。技能実習生の増加に伴って、監督指導も増え、違反件数増も予想されます。
◆違反の申告、通報もより活発に?
技能実習生から監督署などに法令違反の申告がされるケースもあります。技能実習生同士のつながりにより、賃金や割増賃金の不払い等の情報は広まりやすいと思われます。
こうした申告は、監督署だけでなく、各地の入国管理局へも行われ、それが監督等につながるケースもあります。違反等に対するペナルティとして実習生の受入れの停止等が行われますので企業活動に大きく影響します。
◆改正に伴う情報収集を
新しい制度が始まれば企業への監督等も厳しくなることが予想されます。また、労基法・安衛法関連だけでなく、技能実習制度自体に定められている報告や手続きについても、新制度の下で見直しが行われると思われます。
外国人雇用、技能実習生の受入れなどを検討する企業は情報に注意しておきましょう。

スポット情報●11月実質賃金1.1%増、渦中の毎月勤労統計で(1月9日)
厚生労働省が発表した「毎月勤労統計」(速報値)で、2018年11月の賃金が前年同月から1.1%増となった。同統計の調査手法に問題が判明している点については、影響などを「調査中」とする注釈を記載した。
●国民年金への加入は「職権適用」を原則に ~厚労省が検討 (12月30日)
厚生労働省は、若者の国民年金加入漏れを効率的に防ぐため、20歳になった人の加入時の手続きについて、年金機構が手続きを進める「職権適用」の仕組みを原則とするよう省令を改正する方針を固めた。2019年10月の切替えを目指す。従来通り市区町村で加入手続をすることもでき、学生納付特例の申請も窓口で受け付ける。
●「外国人労働者受入れ拡大」政省令案を公表 ~法務省(12月28日)
法務省は、外国人労働者の受入れを拡大する改正入管法の関連政省令案を公表した。「同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払う」などの雇用契約基準、報酬額、行方不明者数の届出など受入企業の義務の内容等が盛り込まれている。1月26日まで意見公募を行ない、3月に公示する方針。
●高プロ運用ルールが決定(12月27日)
厚生労働省は、高度プロフェッショナル制度の運用ルールを盛り込んだ省令案と指針案をまとめた。対象者の年収は1,075万円以上、金融商品開発などの5業務を対象とし、企業側が出勤時間や仕事の具体的な指示をすることは原則禁止とする。また、企業は制度適用の際に1年ごとに本人の同意を得るのが適当と定めた。
●「特定技能」の詳細が決定(12月25日)
政府は、改正入管法による新しい在留資格「特定技能」の詳細を決定した。 平成31年4月からの5年間で約34万人を上限として外国人労働者を受け入れる方針。技能試験は4月から介護、宿泊、外食の3業種で実施し、残りの11業種は2019年度中に始める。また外国人との共生のための「総合的対応策」として、生活相談窓口を全国に100カ所設置する。
●社会保険適用拡大の議論開始(12月19日)
厚生労働省は、18日、働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会の初会合を開いた。2019年を目途に短時間労働者への適用範囲拡大を検討し、2020年の通常国会に法案を提出する方針。企業規模や月給の要件を引き下げる必要があるが、保険料の一部を負担する企業側の反発も強い。
●特定技能の外国人建設労働者の情報を一括登録義務化(12月16日)
国土交通省は、「特定技能」で働く外国人建設労働者の就労日数や内容、技能、社会保険加入状況、在留資格などを建設キャリアアップシステムに登録することを受入企業に義務づける。日本人労働者にも同様のシステムが適用されるため、技能に応じて日本人と同等の適正な賃金の支払いを促す。
●後期高齢者医療保険料の軽減特例を廃止(12月13日)
政府は社会保障費の伸びを抑えるため、後期高齢者医療の保険料を軽減する特例を2019年10月の消費増税と同時に廃止することを決めた。現在、低所得者の保険料は7割軽減されるが、収入に応じて8.5割から9割軽減される特例がある。消費増税による増収分を使った低所得者の介護保険料軽減や低年金者への給付を実施することで、特例廃止による負担増の相殺を見込むが、それでも負担が増える人には別途財政支援を検討する。

経営労務情報 平成30年(2018年)12月号

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意を
 (以下は本人負担率です)厚生年金 9.15 % 、健康保険 4.95 %、介護保険 0.785 %(健康保険+介護保険 = 5.735 %)
◆年間5日以上の有給消化の義務化。
 平成31年4月より有給休暇を年間5日以上消化することが義務化されます。その他「働き方改革法案」に伴う中小企業の今後の対策は随時お知らせいたします。
◆インフエンザのワクチンを接種しましょう。
 欠勤短縮、感染予防、早い回復にも効果的です。接種費用の会社負担も可能です。
◆配偶者特別控除枠が拡大しました。
 配偶者のみ給与収入基準103万円が150万円に、141万円が201万円に増額されました。年末調整時の収入確認にご注意下さい。
◆本年も1年間、誠にありがとうございました。年末年始の事故・ケガなどにお気をつけください。年末年始休業をお知らせいたします。
「 29日(土)より新年6日(日)まで 」

外国人労働者受け入れ拡大で社会保険制度はどう変わる?◆治療のために来日する医療保険の「ただ乗り問題」
 日本では「国民皆保険制度」として保険証があれば誰でも1~3割の自己負担で受診できます。ところが留学や技能実習制度を利用して、治療のためだけに来日する外国人の問題が指摘されています。
低額な自己負担で、がん治療など高額な保険給付を受けるためです。また来日した家族が本人と偽って保険証を利用する「なりすまし受診」も報告されています。来年4月から外国人労働者の受け入れを拡大するなかで、不正利用をどうすべきかが議論されています。
◆医療保険で母国の家族を除外
 今は外国人労働者が生計を支える3親等以内の親族は海外在住でも扶養家族になれます。母国での受診も申請すれば医療費は協会けんぽや健康保険組合などが負担します。
政府は、膨らむ医療費を考慮して改める方針を固めました。母国に残した家族の医療費は除外する方針です。また日本人の家族で日本国内に生活実態がない場合は扶養家族から除外することも検討しています。
◆社会保険料を長期滞納する外国人の在留を認めない方針
 政府は受け入れ拡大により国民健康保険や国民年金の保険料滞納を警戒。また未加入のまま病院で受診し、医療費を踏み倒すなどが想定されるため、保険料の長期滞納者の在留を認めない方針を固めました。
法務省と厚生労働省が保険料滞納に関する情報を共有し、法務省が在留許可の運用指針要件として追加する方針です。
◆国民年金第3号被保険者に国内居住要件
 厚生年金の加入者が扶養する配偶者(国民年金の第3号被保険者)は、保険料を払わず年金を受け取れますが、受給資格に国内の居住を要件とする方向で検討に入りました。
来年度中にも、国民年金法を改正する方針です。これにより海外で生活する配偶者には年金が支給されません。ただし日本人従業員の配偶者が海外に住んでいる場合の対応が検討課題になります。

定年延長の導入状況と課題◆定年延長の状況
 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が「定年延長」に関して行った調査(定年延長実施企業調査)の結果等を公表しました。
今現在は「60歳定年とし、その後継続雇用」とする企業が70%以上ですが、65歳以上を定年とする企業も着実に増え25,000社(平成29年現在)を超えています。
定年の延長をしている企業のうち、80%超が定年年齢を「65歳」とし、また95%が全社員を対象にしています。特に人手不足な職種(運転手、薬剤師、介護職、清掃・警備職等)では、職種に応じた定年年齢する企業も一部にあります。また「役職定年制」を導入している企業は、従業員が30人以下で9.3%、301人以上で21.2%でした。
◆仕事内容と賃金水準
 延長後の定年年齢までの仕事内容が、それ以前と同じである企業が90%以上でした。(59歳以前とまったく同じ:53.8%、まったく同じではないが大体同じ:42.5%)。
特に運輸業では、99.1%が同じ(まったく同じ・だいたい同じの合計)でした。仕事が同じだと、賃金をどうするのか問題にもなります。
 定年延長で社員全体の人事・賃金制度の見直しを行った企業は30.2%、行わなかった企業は67.1%でした。賃金は「59歳時点と変わらない」も61.5%でした。
59歳以降の賃金変更方法は、多い順に、①「個別に決めている」②「等級やランクなどで決めている」③「全員一律で同じ水準に決めている」となっています。
59歳時点の賃金水準を100%として、65歳時点の賃金が
「100%以上」が58.3%、
「90%~100%未満」が8.5%、
「80%~90%未満」10.4%となり、
「80%以上」の総合計は77.2%でした。
◆定年延長の提案は経営層から
 大半の企業で、定年延長に向けて検討を開始してから実際に定年を引き上げるまでの期間は半年から1年程度です。また定年延長の提案は77.5%が社長などの経営陣からの提案によるものでした。
◆社員の納得を得るには
 社員の満足度が9割を超える定年延長ですが、導入には、高齢社員の賃金、組織の若返り、健康管理、モチベーション維持が大きな課題になります。給与も個別対応だけでなく、ルールを決めることも必要になります。

従業員の「通勤事故リスク」対策を取っていますか?◆会社が通勤時の事故責任を追及される ケースが増加
 今年10月1日、事故死したトラック運転手の遺族が、原因は過重労働だとして約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
同様に、通勤途中で発生した事故をめぐり責任追及されるケースが増えています。
◆上司も書類送検されたケース
 平成29年10月、業務で公用ワゴン車を運転中の兵庫県川西市職員が5人を死傷させる事故が発生。職員は当時、選挙対応で約1カ月間休みがなく、200時間超の時間外労働でしたが、今年4月に自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で書類送検されました。 
また過労状態を知りながら運転を命じたとして、上司も道路交通法違反(過労運転下命)で書類送検されています。
◆裁判で和解が成立したケース
 今年2月には横浜地方裁判所川崎支部では、帰宅途中のバイクの居眠り運転で事故死した従業員の遺族が、過重労働が原因だとして損害賠償を求めた裁判は会社が7,590万円支払うことで和解しました。従業員は約22時間の徹夜勤務明けで、事故前1カ月の時間外労働は約90時間でした。
◆裁判官は通勤中の「安全配慮義務」に言及
 裁判所は通勤時にも過労による事故を起こさないよう安全配慮義務があると認定しました。これまで通勤中の事故で会社の責任を認めたものはほとんどなかったため、安全配慮義務が通勤でも必要となってきています。
◆「労働時間把握」だけではリスク回避できず
 働き方改革法では、労働時間把握が使用者の義務として課されることとなりました。
しかし、労働時間を記録等するだけでなく、過労状態で従業員が事故を起こさないような具体策を考える必要がでてきました。

スポット情報●働き方改革実現に向け厚労省が方針(11月15日)
 厚生労働省は、働き方改革の実現に向け、「長時間労働の事業所への監督指導を徹底し、悪質な場合は書類送検などで厳正に対処する」とする政策指針となる基本方針をまとめた。年内にも閣議決定される見通し。
●介護報酬を来年10月に臨時改定~介護職員の賃上げ目指し、厚労省が方針(11月2日)
 厚生労働省は、介護現場の人材不足解消策の1つとして介護職の賃金を引き上げるため、平成31年10月に介護報酬を臨時に改定する方針を固めた。消費税率引上げによる増収分と保険料の計2,000億円で、勤続年数の長い介護職員を中心に処遇改善を図る。12月をめどに大枠が示される見込み。
●9月の有効求人倍率1.64倍に上昇し、正社員は過去最高に (10月30日)
 厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.64倍(前月比0.01ポイント上昇)で、44年8カ月ぶりの高水準だった。また正社員の有効求人倍率は1.14倍で過去最高値を更新。総務省が発表した9月の完全失業率は2.3%(前月比0.1ポイント低下)で2カ月連続して改善した。
●継続雇用年齢70歳へ ~未来投資会議~ (10月23日)
 安倍首相が議長を務める未来投資会議で、企業の継続雇用年齢を65歳から70歳に引き上げる方針を表明した。関連法改正案を2020年の通常国会に提出する方針。
●派遣労働の約4割正社員希望(10月18日)
 厚労省が発表した平成29年に行った実態調査の結果で、派遣労働者のうち39.6%が正社員で働きたいと回答。一方、派遣労働者が働く事業所で「派遣社員を正社員に採用する制度がある」と回答した事業所は24.4%だった。また派遣労働者の年齢層は40~44歳が16.5%で最多。平均賃金は時給換算で1,363円と平成24年結果に比べ12円増加。
●外国人労働者の永住が可能に(10月11日)
 外国人労働者の受入れ拡大のため、政府は新たに2種類の在留資格「特定技能1号、2号」(仮称)を設け、来年4月の導入を目指す。
技能実習生(在留期間最長5年)が日本語と技能の試験の両方に合格すれば「特定技能1号」の資格を得られる。在留期間は最長5年で、家族の帯同は認められない。さらに難しい試験に合格すれば「特定技能2号」の資格を得られ、家族の帯同や永住も可能となる。
●電子メール等による労働条件通知書交付が可能に (10月8日)
 労働条件通知書について、従来の書面による交付に代えて電子メールやファクスなどによる交付が可能になる。労働基準法施行規則改正により来年4月から適用。電子メール等による受取りを希望した労働者に限られ、印刷してそのまま書面化できるものに限られる。
電子メール等での受取りを希望しない場合は、これまでどおり書面交付が必要です。

経営労務情報 平成30年(2018年)9月号

お知らせ◆本年も「労働保険料申告」「社会保険算定届」へのご協力、誠にありがとうございました。
◆年1回の社会保険料の「定期変更」は10月に支払う給与からです。
お客様へは改めてお知らせいたします。
◆最低賃金が10月より 898円 (愛知県)にまた上がります。今年も大幅な上昇です。
「パート募集時の時給」や「10月以降の給与計算」 にはご注意ください。
◆年金事務所による「社会保険加入促進」が更に強化されています。おどすような文面も届いています。ご不明点は連絡ください。

最低賃金が3年連続で3%増加へ◆政策どおり引上げ
厚労省の中央最低賃金審議会は今年(平成30年)度の地域別最低賃金額改定を公表。
引上げ額の全国平均は26円(昨年度25円)、改定額の全国平均額は874円(同848円)となります。引上げ率は+3.1%で、3年連続+3%以上の引上げとなり政府の「働き方改革実行計画」に沿う形になります。
◆地域別最低賃金
都道府県に適用されるランクは以下の通り(都道府県の経済実態でABCDの4ランク)
・Aランク(+27円)...愛知、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪
・Bランク(+26円)...茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、他4県
・Cランク(+25円)...北海道、宮城、群馬、新潟石川、岐阜、他8県
・Dランク(+23円)...青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、他10県
10月から適用(発効日は都道府県ごとによる)。
◆地域間格差の拡大
政府は毎年3%程度引き上げ、全国平均額を1,000円にする目標です。 
最低賃金が高い東京都(985円)と神奈川県(983円)は、1,000円に近く、まだ19県は700円台で地域間格差の拡大も指摘されています。

労働時間の把握、来春より「管理監督者」 にも義務化◆労働時間の記録と保存
来年4月から「管理監督者」の労働時間把握と、その記録の保存が義務化されそうです。(取締役ら経営陣は対象外) 日経新聞7月31日付
◆労働基準法の「管理監督者」とは
労働基準法の「管理監督者」は、労働時間や休日の規定の対象外とされています(ただし深夜割増賃金の支給や年次有給休暇の付与は必要です)。
管理監督者は経営に参画する立場として、自らの労働時間に一定の裁量があるため、労働時間の把握や保存の義務はありませんでした。勤務時間を管理している多くの中小企業の「管理職」はここでいう「管理監督者」にはなりませんので注意が必要です。
◆改正「安全衛生法」の「面接指導」
今回の労働時間把握義務は、労働安全衛生法(安衛法)の、健康管理の「面接指導」に関連するところです。
◆管理監督者の過重労働にも注意
企業の実務上、現在一般社員に行っている出退勤記録と同じことを「管理監督者」にも徹底させる必要がありそうです。
大手電力会社の課長職の過労自殺や、大手フランチャイズ店の店長(「名ばかり管理職」)の過労自殺などの報道を見てくると、管理監督者の過重労働にも注意が必要になります。

66歳以上も働ける企業の割合に関する調査より◆66歳以上まで働ける企業の割合が増加
厚労省の労働市場分析レポート「希望者全員が66歳以上まで働ける企業の割合について」によれば、従業員31人以上の企業では、平成29年度で9.7%(前年比1.2ポイント増)となりました。
◆企業規模が小さいほど65歳を超える高齢者雇用に積極的
企業規模別では、31~100人規模で12%、
101~300人規模で6.2%、
301人以上規模で 3 %
と小さい企業ほど高齢者雇用に積極的です。
ここ5年はゆるやかな増加傾向でしたが平成28年度から平成29年度にかけての伸びは大きくなっています。
◆「定年廃止」 も約3割
「希望者全員66歳以上の継続雇用」が55%、「定年なし」も 26.8% という内訳です。
建設業、情報通信業、宿泊、飲食サービス業などでは、定年を廃止する傾向にあり、人手不足の産業を中心に長く働けるようにしている企業が多いこともわかります。
◆国も 「高齢者雇用」 を推進
厚労省は、従業員が31人以上の企業で「65歳までの継続雇用」を再雇用制度で対応している約12万社を対象に「定年制の撤廃」や「再雇用年齢の引上げ」を呼びかけるとしています。
今後は、高齢者雇用の取組みがますます求められてくる中で、企業としても、処遇制度や研修体制、健康配慮の体制などを整えていく必要がありそうです。

「新たな在留資格」で外国人の長期就労が可能に◆「骨太の方針」のひとつ
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案をまとめ、人手不足対策として、外国人材の受け入れを拡大するため「新たな在留資格」の創設を予定しています。
現在は単純労働の分野で外国人就労を原則として禁止していますが、医師や弁護士など高度な専門性を持った人材は積極的に受け入れ家族の帯同も認めています。
今回の新たな在留資格の対象は、人手の確保が難しく、業種の存続・発展のために外国人材の受け入れが必要と認められる業種(農業、介護、建設、宿泊、造船)の5分野を想定しています。
◆最長で10年の就労が可能
日本では約128万人の外国人が働いています。内訳は多い順に、①永住者や日本人と結婚した配偶者、②留学生などのアルバイト、③技能実習生、④専門性が高い医師や研究者などです。
技能実習生は約25万8,000人で、5年前のおよそ2倍です。今回の原案では、技能実習生に対する5年の就労延長を想定した新資格の創設を明記。実現すれば最長で10年の就労が可能となります。
政府は秋の臨時国会にも出入国管理法改正案を提出し、来年4月からの導入を目指しています。
さらに新資格を得た人が、日本語や専門 分野の試験に合格した場合には、在留期限の上限を撤廃し、家族の帯同も認める考えも掲げました。
◆技能実習制度が骨抜きになるとの懸念も
平成5年に始まった技能実習生制度は、 本来は途上国への技術移転が目的でした。
日本での就労期間が延びると、身に付けた技術を母国で活かす機会は遠のきます。
今回の案は、技能実習制度を骨抜きにする可能性も指摘され、事実上の移民政策につながるとの懸念の声も上がっています。
◆法務省で在留情報を一元管理
政府は、法務省に「在留管理インテリジェンス・センター」(仮称)を設け、雇用や婚姻などの情報を一元管理させることで、不法就労を防ぐとしています。
法務省は、外国人の離職や転職などの状況を把握しやすいよう、雇用保険を所管する厚生労働省との情報共有を進める方針です。
日本人と結婚した外国人が離婚した場合などに自治体と提携して情報を得るための法整備を進めます。
また外国人留学生の勤務先や勤務時間の管理を強化し、法定時間(1週間あたり28時間以内)を超えれば在留許可を取り消す方針です。

スポット情報●「70歳雇用」実現に向け、高齢者就労促進施策を検討 ~政府方針~ (9月6日)
政府は、原則70歳まで働き続けることができるよう、環境整備を始める。高齢者雇用に 積極的な企業への補助金の拡充、高齢者が働く意欲を高めるために評価・報酬体系の官民での見直しを行うとともに、高年齢者雇用安定法を改正し継続雇用年齢を徐々に70歳にまで引き上げる方針。今秋から本格的な検討に入る。
●留学生の就職可能業種緩和へ ~法務省が在留資格拡大を検討~(9月6日)
法務省は、外国人留学生らが日本で就職しやすくなるよう在留資格を得られる職種を広げる方針を固めた。「特定活動」の対象を拡大し、レストランでの接客業務やアニメーターのアシスタント等の仕事に就くことを可能とする。 
同省の告示を改正し、来年4月の運用開始を目指す。
●求人倍率1.63倍  ~44年ぶり高水準~ (8月31日)
厚労省が7月の有効求人倍率を発表し、前月比0.01ポイント上昇の1.63倍だったことがわかった。上昇は3カ月連続で44年ぶりの高水準。
●社会保障給付費が過去最高(8月31日)
国立社会保障・人口問題研究所は、平成 28年度の社会保障給付費について、前年度と比べ1.3%増え、116兆9,027億円だったと発表した。高齢化に伴う医療費や介護費の増加が影響し、過去最高を更新した。
●厚生年金、パート適用拡大へ (8月27日)
厚労省が、厚生年金に加入するパート労働者の適用対象を拡大することを検討していることがわかった。パート労働者の月収要件を、現在の8.8万円から6.8万円に緩和することなどが軸。9月にも社会保障審議会に検討会を設置する。
●入国在留管理庁(仮) ~来年設置へ~ (8月25日)
法務省は、平成31年4月に「入国在留管理庁」(仮称)を設置する方針を固めた。現在4,870人いる入国管理局を再編し、「庁」に格上げ。外国人労働者の受入れ拡大への対応や、不法就労の取締り等を強化する。
●パワハラ対策で中小企業を支援(8月17日)
厚労省は9月から、中小企業のパワーハラスメント対策の支援に乗り出す。パワハラ対策は従業員1,000人以上の企業の88%が対策を行っているのに対し、99人以下では26%にとどまる。このため全国約100社を対象に、専門知識を持った社労士らを無料で 派遣し、相談窓口の設置や社内規定の整備などを後押しする。

経営労務情報 平成30年(2018年)3月号

Ⅰ お知らせ◆3月より 「健康保険料」 「介護保険料」の保険料率が下がります。給与の保険料は、「4月に支払う給与」から下げることになります。お客様へは改めてお知らせいたします。
◆本年4月からの「雇用保険料免除(不要)」対象者は昭和29年4月1日以前生の方です。対象者は改めてお知らせいたします。
◆4月から6月に支払う「給与総額」にご注意ください。本年9月から1年間の社会保険料は4月から6月に支払う給与の「平均額」で決まります。この間で残業などの手当が多いと社会保険料が増えてしまいます。
◆4月は入社・異動が増え「年金事務所」への申請が多くなり「保険証」が届くのが遅れてしまいます。早めの連絡をお願いいたします。

Ⅱ 無期転換ルールがスタート
◆「無期転換ルール」とは
平成25年4月の「労働契約法」の改正で、同じ使用者(企業)との「有期労働契約」が「5年」を超えて更新されてきた場合に、労働者からの「申込み」によって「無期労働契約」に転換されるルールのことです。今年4月で5年経過し、いよいよ「申込み」がスタートすることになります。
例えば、「契約期間1年」の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生し、使用者は断ることができません。
◆切り替えを回避する動きも
雇用の安定が目的の制度ですが、再雇用する際に空白期間が6ヶ月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、通算されないという抜け道もあります。これを利用し、大手自動車メーカーは契約終了後に6ヶ月の空白期間を設けて、無期雇用への切り替えを回避する動きも見られています。
◆「無期雇用転換者」=「正社員」?
もう一つの注意点は、「無期雇用転換者」=「正社員」と考えなくてもよい点です。正社員と区別し別管理をする企業もあり、選択を各企業で決めることになります。考えられる選択肢は
(1)「同一条件で契約期間のみを変更」
(2)「多様な正社員(勤務地、労働時間、職務などに制約を設けた正社員)へ転換」
(3)「正社員へ転換」など。各企業は業務にふさわしい形態を選ぶ必要があります。
◆導入へのステップ
企業が「無期転換ルール」を導入するには、
(1)「有期契約者の実態を調べる」
(2)「仕事を整理し任せる仕事を考える」
(3)「労働条件見直し就業規則を改正する」
(4)「運用と改善を検討し実行する」
といったステップが必要とされています。
人手不足が進む中、より柔軟な人材の登用や、「契約期間の変更」 →「多様な正社員」 →「正社員」といった変更制度を設けるなど、一層の工夫が求められるようになりそうです。

Ⅲ 日本国内で雇用される「外国人数」が過去最高を記録◆外国人雇用状況の「届出制度」
外国人労働者の「雇用管理の改善」や「再就職支援」などを目的とし、すべての事業主に、外国人労働者の雇入れおよび離職時に「氏名」「在留資格」「在留期間」などを確認し、ハローワークへの届出が義務づけられています。
届出対象者からは「特別永住者」「在留資格」「外交」「公用」者は除かれます。
以下は、平成29年10月末時点の届出件数を基準にしています。
◆外国人雇用状況の概要
外国人労働者数は127万8,670人で、前年同期比で19万4,901人(18.0%)増加し、過去最高を記録。増加要因は、
①「高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること」
②「永住者や日本人の配偶者等の身分に基づく在留資格者などの就労が進んでいること」
③「技能実習制度の活用が進んでいること」等。最多の国籍は、①中国37万2,263人(全体の29.1%)、②ベトナム24万259人(同18.8%)、③フィリピン14万6,798人(同11.5%)。
在留資格別では、身分に基づく在留資格の45万9,132人(35.9%)が最多、資格外活動(留学)25万9,604人(20.3%)、技能実習25万7,788人(20.2%)、専門的・技術的分野23万8,412人(18.6%)でした。
◆事業所状況
雇用事業所は、全国で19万4,595件。前年同期比2万1,797件の増加し過去最高を更新しました。
都道府県別では、①東京都5万4,020件(27.8%)が最多、②愛知県1万5,625件(8.0%)、③大阪府1万2,926件(6.6%)、
④神奈川県1万2,602件(6.5%)、⑤埼玉県9,103件(4.7%)でした。
◆産業別状況
産業別では、製造業が最多で全体の30.2%が就労していますが、建設業およびサービス業のでは減少傾向です。

Ⅳ 「働き方改革」って、実際進んでいるの?◆企業における「働き方改革」の実態
政府が推進する「働き方改革」の名のもとで様々な「働き方」の見直しが進められています。関連する国の動きや企業事例などがメディアでも多く取り上げられています。
一方で実態が伴わない「働き方改革」に対する批判もあります。実際、企業ではどのように受け止められているのでしょうか。
◆取り組んでいない企業も
株式会社オデッセイによる、全国の人事部門または「働き方改革」に係わる部門に所属している担当者を対象とした「働き方改革に関する意識アンケート」の結果では、約8割が「働き方改革」の必要性を感じていると回答したものの、実際に「働き方改革」に取り組んでいるのは約5割という結果でした。
必要性を感じるものの、実行できていないことがわかります。
◆労働時間の改善、休暇取得促進への取組みが中心
「働き方改革」の具体的に取り組んでいることで最も多かったものは、①「労働時間の見直しや改善」、②「休暇取得の促進」でした。
また「女性の働きやすい環境作り」と「育児・介護中の社員が働きやすい環境作り」という回答も多く集まり、女性を支援する施策に取り組んでいる企業も多いことがわかります。
◆実現にはまだまだ課題も
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが、企業の人事制度の企画・運営および「働き方改革」推進責任者を対象に実施した「『働き方改革』の推進に関する実態調査」の結果では、「働き方改革」推進上の課題として、「社外を含めた商習慣を変える難しさ」を挙げる回答が62.1%と最も多く、「現場や他部署との連携が難しい」(54.0%)、「マネジメント難度上昇への懸念」(50.3%)が続いています。
◆自社の現状を踏まえて適切な対応を
人材確保や従業員のメンタルヘルス対策等の面からも、企業の「働き方改革」に対する取組みは今後も重要性が増しそうです。
自社の現状を見極めながら適切な対応を考えていく必要があります。

Ⅴ スポット情報●国民年金未納者の強制徴収 対象者を拡大へ(1月29日)
日本年金機構は、国民年金保険料の未納者の財産を差し押さえる強制徴収の対象を拡大する方針を社会保障審議会で示した。今年4月から、年間所得300万円以上で未納期間7月以上の人とする考えで、対象者は今年度の約36万人から1万人程度増える見込み。

●同一労働同一賃金・残業規制、中小企業への適用延期へ(1月25日)
厚生労働省は、今国会に提出予定の働き方改革関連法案で、中小企業に適用する時期を、①時間外労働時間の上限規制は2020年度から、②「同一労働同一賃金」は2021年度からと、1年延期する方針を固めた。高度プロフェッショナル制度については、従来通り 2019年度。法案の審議入りが予算成立後の4月以降となる見通しで、施行定や就業規則、人事・賃金制度の見直し等の準備期間が  十分に確保できないため。

●公的年金支給額は据え置き(1月26日)
厚労省は、2018年度の公的年金の支給額を今年度と同じに据え置くと発表。物価が上がる一方で賃金が下がったため据え置くこことした。支給額が増える時に伸び幅を抑えるマクロ経済スライドも発動されない。

●40歳以上の転職では賃金減(1月21日)
内閣府が公表した「日本経済2017―2018」(ミニ白書)では、2004年から2016年にわたり40歳以上の転職では賃金が常に減少していることがわかった。29歳以下ではほぼ全期間で賃金が増えており、年齢が転職後の賃金上昇率を大きく左右していると指摘している。2016年の転職者数は7年ぶりに300万人を超え、306万人となっている。

●年金受給開始年齢「70歳超」も選択可能に 政府案(1月18日)
政府が「高齢社会対策大綱案」を示し、公的年金の受給開始年齢について、受給者の選択により70歳超に先送りできる制度の検討を盛り込んだ。厚生労働省が制度設計を進めたうえで2020年中の法整備を目指す考え。

●労働基準監督官 人手不足対応でOBを雇用へ(1月10日)
厚労省は、残業などの監督指導を強化するため、2018年度から監督官のOBを非常勤として雇用する考えを示した。監督官の人手不足に対応するもので約50人の採用を予定。

●未払い賃金請求の時効期間延長について議論開始、厚労省検討会(12月27日)
厚生労働省の有識者検討会は、未払い賃金の「請求権の時効延長」に向けて議論を開始した。現行の労働基準法では、労働者は過去2年分の未払い賃金を会社に請求することができるが、民法改正に合わせて最長5年まで延長するかが焦点となっている。検討会では法改正に向けて議論し、2019年に法案を国会に提出。2020年にも適用する考え。

●労災保険料率を0.02ポイント引下げへ(12月21日)
労働政策審議会は、労災保険の料率を2018年度から全業種平均で0.02ポイント引き下げ、0.45%とする政府方針を了承。労災死亡事故の減少で積立金が増加等によるもので、引下げにより企業の負担は年間約1,311億円軽くなる見込み

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