経営労務情報 平成25年(2013年)2月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 「中高年従業員の戦略的活用」に向けた研修・教育の実施●悩みの種は「モチベーションの低下」
改正高年齢者雇用安定法(※1)の施行が今年4月1日に迫っています。
「(※1)改正高年齢者雇用安定法」......希望者全員65歳までの雇用が義務化

60歳以降も働く人は、今後ますます増加することが見込まれています。業種や職種にもよりますが、「中高年者を積極的に活用したい」と考えている企業も増えています。

60歳以降の人材を活用する上で、各企業に共通する悩みが、「モチベーションの低下」です。現役世代においても、昇進の可能性がなくなったり、役職定年制により肩書きがなくなったりした後には、モチベーションが下がる傾向にあることがわかっています。60歳以降は、手取り給与が少なくなったり、担当する業務が変更になったりすることから、一層モチベーションが低下してしまう傾向にあるようです。

●モチベーションを高める方法は?
継続雇用後のモチベーションの維持・向上の方法として、以下のようなテーマで研修を実施すると効果が高いようです。
(1)継続雇用後の環境の変化を受け止め、自らのものの見方や考え方の転換を促す
(2)これまでの自分を振り返り、強みを再確認することで自信を持ってもらう
(3)理想の将来を実現するために効果的な選択は何かを考えてもらう
(4)これから会社でどのようなことに取り組んでいくかを決めてもらう

新入社員や幹部候補の育成が中心ですが、中小企業でも、企業力アップ・業績向上のために、社員研修を実施する企業が増えています。今後、増加するであろう60歳以降の従業員により活躍してもらい、会社業績を伸ばすためにも、この層への研修も検討してみてはいかがでしょうか。当事務所でも人材育成・社員研修メニューを提供しております。お気軽にご相談下さい。

II 「改正高年齢者雇用安定法」にどう対応するか?●経団連による調査結果
経団連が発表した「2012年 人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」によれば、改正高年齢者雇用安定法への対応として、以下のような方策を検討している企業が多いようです。

●法改正への対応方法は?
調査結果における「法改正に伴い、必要となる対応は?」との質問に対する回答結果(上位10位)です。
(1)高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する
(2)スキルを活用できる業務に限りがあるため、提供可能な社内業務に従事させる
(3)半日勤務や週2~3日勤務による高齢従業員のワークシェアを実施する
(4)高齢従業員の処遇(給与など)を引き下げる
(5)若手とペアを組んで仕事をさせ、後進の育成・技能伝承の機会を設ける
(6)60歳到達前・到達時に社外への再就職を支援する
(7)60歳到達前・到達時のグループ企業への出向・転籍機会を増やす
(8)新規採用数を抑制する
(9)60歳到達前の従業員の処遇を引き下げる
(10)従来アウトソーシングしていた業務を内製化したうえで従事させる

年金を受給できる年齢が徐々に65歳へと変更されるため、「現役世代の給与」「60歳以降の給与」をどのように設定するかが、これからの大きな課題のひとつとなっています。

III 「社員の健康管理」に関する取組み●健診を受診しない社員とその上司はボーナス減額!
コンビニエンスストア大手のローソンが発表した、健康診断に関する新制度が話題になっています。健康診断を受けない社員に対し、会社は3回程度、受診するよう促し、それでも受診しない社員についてボーナスの15%、その上司についても10%を減額するという制度です。同社では、健康診断受診率が約83%にとどまっていることから、健康で長く勤めてもらうために、あえてこうした制度を導入することにしたそうです。

●安全配慮義務違反による高額な賠償金
社員が健康診断を受診しないことは、「安全配慮義務違反」による会社のリスク要因となります。また、未受診の社員に関連した労災事故等が発生し、死亡してしまったような場合には、裁判となり、相当高額な賠償金の支払いが会社に命じられる可能性もあります。民間の賠償保険もありますが、リスクやコストを考えると、結局は、以下のような日常の労務管理をしっかり行うことが、最も合理的と考えられます。

(1)就業規則などルールの整備
(2)受診しない社員に対する書面での指導や処罰
(3)持病や診断結果に応じて、勤務時間・業務内容の管理
(4)社員の健康状態の把握(「血圧」「血糖値」「コレステロール値」「肥満」など)

IV 退職強要と退職勧奨の相違点・注意点●「退職勧奨」と「退職強要」の違い
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の雇用契約について、社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。しかし、あまりに執拗に行ったり、脅迫や詐欺行為だとみなされると、違法な「退職強要」と判断されてしまいます。実際に、そういった裁判例も多く、「損害賠償リスク」や「退職が無効となるリスク」があります。

争いを防止するためには、退職勧奨の行い方にも注意が必要です。「退職勧奨の実施回数・場所・時間」「社員に伝えるべき事項とその伝え方」「合意書面の作成」などに注意して、適切に行う必要があります。もっとも、問題社員に対する日頃の注意・指導がより重要であり、適切な指導を行ってきた事実・記録があれば、会社にとって有利に働きます。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

経営労務情報 平成25年(2013年)1月号

あけましておめでとうございます。
本年が、皆様にとって良き年となりますよう、所員一同心から祈念いたしております。本年もよろしくお願い申し上げます。

I 平成24年「賃金引上げ等の実態に関する調査」厚生労働省は、平成24年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。厚生労働省の統計上においては、平成24年の各企業の給与改定等の状況をみると、前年に比べ好転しています。ただ、ベースアップ(全体的な給与額の底上げ)する企業はあまり増加してないようです

●調査結果のポイント
1 給与額の改定(平成24年中)
(1) 一人当たり平均給与額を引き上げた(予定も含む)企業は75.3%で、前年を上回りました。一人当たり平均給与額を引き下げた企業は3.9%で、前年を下回りました。
(2) 平成24年給与の平均改定額は4,036円、改定率は1.4%で、前年を上回りました。
(3) 給与カット(一定期間、給与を減額すること)を実施している企業は12.8%で、前年を下回りました。

2 定期昇給等の実施
(1) 定期昇給制度がある企業のうち、定期昇給を行った(予定も含む)企業は、管理職56.7%、一般職64.7%で、管理職・一般職ともに前年を上回りました。
(2) 定期昇給制度がある企業のうち、ベースアップを行った企業は、管理職9.8%、一般職12.1%で、管理職・一般職ともに前年を下回りました。

3 賞与の支給状況
(1) 平成23年冬期賞与を支給した企業割合は、89.5%となっています。
平成23年冬期賞与の平均賞与支給額をみると、582,902円、平成22年冬期賞与に比べ、40,753円増加しました。
(2) 平成24年夏期賞与を支給した企業割合は86.8%となっています。
平成24年夏期賞与の平均賞与支給額をみると、573,357円、平成23年夏期賞与に比べ、28,895円増加しました。

※統計上、給与改定等の数値は改善しています。が、現状、中小企業ではそこまでの回復には至っていないようにも感じます。本年以降の景気動向に期待したいものです。

II 雇用促進税制を利用しませんか?従業員を新たに雇うと従業員数の増加一人につき、一人当たり最大20万円の法人税が控除される制度です。活用する場合、「雇用促進計画」を事業年度開始後2ヶ月以内に、ハローワークへ提出する必要があります。平成26年3月31日までの期限付きの制度です。

●制度の要件
前事業年度末日と今期事業年度末日の雇用保険加入者数を比較

(例)平成25年3月決算で税制を利用したい場合
平成24年3月31日と平成25年3月31日との比較で、以下の①かつ②の要件を満たす企業は、雇用増加数1人当たり20万円の税額控除が受けられます。
(※法人税額の10%(中小企業は20%)が限度になります)
税額控除に該当する時は、雇用促進計画を平成25年5月31日までに労働局に提出し、確認を受けます。

(1)5人以上(中小企業の場合は2人以上)雇用した
(2)平成24年3月31日時点と比較し、雇用保険加入者数が10%以上増加した

●対象企業
・青色申告書を提出する企業(個人事業主)であること
・適用年度とその前事業年度に、解雇等による離職者がいないこと
・適用年度における給与等の支給額が、一定額以上であること  など

期間限定のお得な制度です。従業員を増やす計画がある場合は、是非、活用をご検討下さい。雇用保険の助成金とは独立した制度のため、他の助成金を受けていても、利用可能です。

III 新入社員の入社後の意識の変化●「今の会社に一生勤めようと思っている」が大幅減
春に新入社員が入社してから半年以上が経ちました。新入社員には、働くうえで意識の変化はあったのでしょうか。公益財団法人日本生産性本部が2012年度新入社員(340人)に実施した、「2012年度新入社員秋の意識調査」によると、「今の会社に一生勤めようと思っている」とする回答は30.6%。同年春の調査結果(60.1%)から29.5ポイント減少しました。この落差は、1997以来過去最大となったそうです。

●「仕事を通じてかなえたい『夢』がある」も減少
「自分には仕事を通じてかなえたい『夢』がある」という質問に対して、「そう思う」と回答した人の割合は50.7%。同年春の調査結果(70.5%)から19.8ポイント減となりました。これらの意識の変化は、入社前の「理想」と、実際に働きはじめてからの「現実」とのギャップを感じ始めていることを示していると言えそうです。

●「人間関係の良さ」も企業選びには重要?
また、「今の会社に一生勤めようと思っている」と回答した人は、その理由として、給料・福利厚生等の良さの他に、「教育担当の先輩が熱心に指導してくれて、頑張らなければならないと感じている」、「先輩や上司が優しく働きやすい」など、人間関係の良さを挙げている傾向も見られました。入社直後は先輩・上司から指導を受けることが多く、誰にどのような指導を受けたかが、会社のイメージを左右するといっても過言ではありません。その意味で、新入社員の指導法等について検討することは、社員の定着向上のためにも大切です。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

2012年2月号

I 「人材への投資」を「企業の収益」に ●好業績企業の秘訣は?
長引く不況や円高など、企業を取り巻く環境が非常に厳しい中、好業績を維持している企業の秘訣は「人材の育成」や「人材の上手な活用」にあるようです。新聞報道によれば、2012年3月期まで5期連続(5期以上も含む)で経常増益を予想する3月期決算の上場企業を調査したところ、小売業やネット関連事業など、内需型企業を中心に32社が並んだそうです。事業が国内中心であるため、海外景気の影響を受けにくいメリットもありますが、それだけではなく、これら好業績企業の多くが、「待遇」や「人づくり」の面で独自の手法を確立し、人材活性化を果たしているようです。

●パート社員の戦力化を果たしたスーパー
関東を中心に営業展開する食品スーパーでは、1万人以上いるパート社員の戦力化を図ったことが、企業成長の原動力となったそうです。例えば、従来は正社員が行っていた業務(価格設定、商品発注など)をパート社員に移管し、また、地域トップ水準の給料を確保してパート社員の士気を高めたそうです。これにより、店舗に常駐する正社員を削減することができたとのことです。なお、上記の連続増益が見込まれる32社の過去5年の人件費をみると、毎年平均で2.9%増加していました。全上場企業の平均で0.8%減っているのとは対照的に、人材投資・待遇確保に意欲的であることがわかります。

●企業にとっての課題は?
人材への投資を企業の収益に繋げる仕組みは企業によって様々ですが、「仕事を通じて自らが成長できる道筋を企業が示すことが、人材活性化には不可欠」と考えられています。不景気による市場の縮小を乗り切るため、人件費削減で利益を確保するケースもありますが、収入増を伴わなければ持続的な成長を望むことはできません。限られた経営資源をもとに人材に投資し、次の収益拡大に繋げることが、より重要となっています。貴社にとっても、取り組むべき課題の一つではないでしょうか。

II 通勤手当の非課税限度額の見直し ●見直しの内容
通勤手当については、「交通機関の定期代等」と「自動車など(距離比例)」の2つの通勤方法に区分され、それぞれ非課税となる金額が決まっています。これまで「自動車など(距離比例)」に該当する人のうち「通勤距離が片道15キロメートル以上」の場合に限り、距離比例での上限額を超えても、「交通機関定期代相当額」までは非課税となる特例がありました。今年1月以降、この特例が廃止されてしまいました。そのため、「通勤距離が片道15キロメートル以上」の従業員がいる場合は、非課税で計上できる金額が変更となる可能性があります。給与計算時にはご注意下さい。

片道の通勤距離 1か月当たりの限度額
交通機関の定期代等 1ヶ月あたりの合理的な運賃等の額
(上限100,000円)
2キロメートル未満 全額課税
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,100円
10キロメートル以上15キロメートル未満 6,500円
15キロメートル以上25キロメートル未満 11,300円
25キロメートル以上35キロメートル未満 16,100円
35キロメートル以上45キロメートル未満 20,900円
45キロメートル以上 24,500円

III 心理的負荷による精神障害の労災認定の基準が変更されました! 最近、精神障害の労災請求件数が大幅に増加し、認定の審査には平均約8.6か月がかかっています。そのため、厚生労働省は「審査の迅速化」「効率化」を図るため、新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定め、2011年の年末に都道府県労働局長に通知しました。基準がどのように変更されたのか、概要を紹介します。

<心理的負荷の評価に関する改善事項>

  改正前 改正後
評価方法 2段階による評価
出来事の評価+出来事後の評価
→総合評価
1段階による評価
出来事+出来事後の総合評価
特別な出来事 ・極度の長時間労働
・生死に関わる事故への遭遇等心理的負荷が極度のもの
「極度の長時間労働」を月160時間程度の時間外労働と明示
「心理的負荷が極度のもの」に強姦やわいせつ行為等を例示
具体例 心理的負荷評価表には記載なし 「強」「中」「弱」の心理的負荷の具体例を記載
労働時間 具体的な時間外労働時間数については、恒常的長時間労働を除き定めていない 強い心理的負荷となる時間外労働時間数等を記載
発病直前の連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上
発病直前の連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上
「中」の出来事後に、月100時間程度 等
評価期間 例外なく発病前おおむね6か月以内の出来事のみ評価 基本的には発病前おおむね6か月以内の出来事で評価
ただし、セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続する場合には6か月を超えて評価
複数の出来事 一部を除き具体的な評価方法を定めていない 具体的な評価方法を記載
・強+中又は弱 → 強
・中+中... → 強又は中
・中+弱 → 中*
・弱+弱 → 弱*
*近接の程度、出来事の数、その内容で総合判断
発病者の悪化 既に発病していた場合には、悪化しても労災対象としない 発病後でも、特に強い心理的負荷で悪化した場合には、労災対象とする

ポイント
(1) 分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)が定められた
(2) いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として、心理的負荷を評価することとされた
(3) 精神科医の合議による判定は、判断が難しい事案のみに限定することとされた

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

2012年1月号

I 社員の「世代間ギャップ」をどう埋める? 独立行政法人労働政策研究・研修機構が、昨年1月に「世代間コミュニケーション」についての企業調査を行いました。調査対象を3世代に分類し、それぞれの世代の入社時点での印象を企業に尋ねたところ、キャリア意識などの面で違いが見られました。

●世代間ギャップの要因は?
バブル期以前の採用世代の印象は
「組織が求める役割を果たそうとする意識が強い」
「失敗や困難があってもやり遂げようとする意思が強い」
など
1990~2000年代に採用世代の印象は
「自分の取り組みたい仕事へのこだわりが強い」
「失敗したり困難な仕事に直面したりすると自信を失う」
など

上の世代は、自分が若かった時と比べがちで、それが世代間ギャップの一因ともなっているようです。

●働く目的は何か?
高度経済成長で豊かになった時代に生まれ育った団塊ジュニア世代以降は、「食べるために働く」意識が希薄だと言われています。働く目的は「自分の能力や個性を生かすため」であり、「給料をもらうために辛抱しろ」といった考えは通用しない傾向が見られます。一方、下の世代からみると、会社への依存傾向が強い今の40代に対する不満がつのりやすいようです。

●部下・後輩に歩み寄ることも必要
若手社員は「自己成長」には強い関心があります。先輩・上司は、その特質を知り、どのように接すれば良いパフォーマンスを引き出せるかを考える必要があります。仕事環境は常に変化し、不景気で人員も少ない中で効率を上げることが求められています。コミュニケーションに割ける時間は確実に減少していますが、先輩・上司が自分から部下・後輩に歩み寄り、彼らの仕事観に合わせることも必要になってきています。

II 平成23年の給与見直し状況 平成23年11月30日に「賃金引上げ等の実態に関する調査」概要が公表されました。

●給与の改定状況
(1)平成23年中に「1人平均賃金を引き上げた」または「予定している」企業の割合
73.8%(前年74.1%)
(2)平成23年中に「賃金カットを実施」または「予定している」企業の割合
5.2%(前年23.0%)

定期昇給制度がある企業のうち
(3)平成23年中に「定期昇給を行った」または「予定している」企業の割合
管理職52.4%(前年51.6%)・一般職62.9%(前年63.1%)
(4)平成23年中に「ベースアップを行った」または「予定している」企業の割合
管理職11.7%(前年 9.4%)・一般職13.4%(前年 9.6%)

III 平成23年初任給の概況 平成23年11月15に「賃金構造基本統計調査結果(初任給)」概要が公表されました。

●学歴別にみた初任給

  男女計 男性 女性
大学卒 202,000円(+2.3%) 205,000円(+2.3%) 197,900円(+2.3%)
高校卒 156,500円(-0.8%) 159,400円(-0.8%) 151,800円(-0.9%)

(  )は、対前年増減率
大卒の初任給は男女とも前年から増加、高卒の初任給は男女とも前年を下回りました。

●企業規模別にみた初任給

社員数100 人以上の大・中規模の企業 大卒の男女で前年比 増加
社員数100人未満の小企業 大卒・高卒の男女とも前年比 減少

大卒の初任給は、男女とも20万円台
高卒の初任給は、男性16万円台 ・女性15万円台が、最も多くなっています。

IV 平成24年度の労災保険率、35業種で引き下げへ 労災保険料を算出するための労災保険率が、平成24年4月1日より引き下げられる見込みです。

●4月1日以降の労災保険率
平均で1,000分の0.6 引下げ 〔引下げ35業種 / 据置き12業種 / 引上げ8業種〕

<平均の労災保険率の推移(単位:1/1,000)>

元年度 4年度 7年度 10年度 13年度 15年度 18年度 21年度 改正案
10.8 11.2 9.9 9.4 8.5 7.4 7.0 5.4 4.8

●メリット制の適用対象を拡大
労災保険には、個々の事業場の災害発生率に応じて労災保険料を-40%~+40%の幅で増減する「メリット制」という制度があります。これは、同一の業種でも事業主の災害防止努力などによって災害発生率に差があるためで、保険料負担の公平性の確保や事業主による災害防止努力を一層促進するために設けられている制度です。

改正案 建設業と林業で、メリット制の適用要件である確定保険料の額
現行の「100 万円以上」→「40 万円以上」 に緩和して適用対象を拡大

業種ごとの詳しい保険料率等につきましては、決定後、詳しくお伝えしていきます。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

2011年12月号

I 「個人賠償責任保険」に加入していますか?●日常生活で思わぬことが...
日々の暮らしの中で、思わぬ形で人にケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合に、「個人賠償責任保険」に加入していれば、保険金により相手方に与えた損害を賠償することができます。以下に主な補償例や加入時の注意点をまとめました。

●補償の対象となるケースは?
保険の補償対象となる主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
・自転車で人をはねてケガをさせた
・子どもが友達とケンカをしてケガをさせた
・飼い犬が通行人に噛みついた
・マンションで階下に水漏れを起こした
・買物中の店で高価な商品を壊した

上記のような過失による事故が補償対象となりますが、同居の親族に対する損害賠償や他人から借りた物を壊した場合の損害賠償、故意に起こした事故などは対象外となります。仕事中の事故は対象外ですが、通勤途中の事故は補償対象となります。特に、自転車通勤の方などは、ご本人に加入を検討してもらった方がよいのではないでしょうか。

●「個人賠償責任保険」の特徴
この「個人賠償責任保険」は、契約者本人だけでなく「配偶者・同居の親族・1人暮らしの学生など生計を同じくする別居の未婚の子」もカバーできるのが特徴です。加入方法は、損保会社の販売する「自動車保険」「火災保険」「傷害保険」のいずれかに加入したうえで、特約として上乗せを行うのが一般的です。

●加入時のチェックポイント
チェックポイントとして、以下のことが挙げられます。
(1)示談交渉代行サービスが付いているか
(2)重複契約になっていないか
(3)自動車の売却や引越しなどで保険が途切れていないか
(4)海外で賠償責任を負った場合でも補償されるか

特約の保険料は、最大保険金額1億円(または無制限)であっても、年額1,000円~2,000円程度で済むようです。

II 雇用・労働をめぐる最近の裁判例●「雇止め」をめぐる裁判例
地方自治体の非常勤職員だった女性(55歳)が、長年勤務していたにもかかわらず、一方的に雇止めをされたのは不当であるとして、自治体を相手として地位確認(雇止め無効)や慰謝料900万円の支払いなどを東京地裁に求めていました。

同地裁は、「任用を突然打ち切り、女性の期待を裏切ったものである」として慰謝料150万円の支払いを認めましたが、雇止めについては有効と判断しました。この女性は、主にレセプトの点検業務を行っており、1年ごとの再任用の繰り返しにより約21年間勤務していたそうです。(11月9日判決)

●「過労死」をめぐる裁判例
外資系携帯電話端末会社の日本法人で勤務し、地方の事務所長を務めていた男性(当時56歳)が、接待の最中にくも膜下出血で倒れて死亡した事案。労働基準監督署は「労災と認めず、遺族補償年金を支給しなかった」ため、男性の妻が「夫が死亡したのは過労が原因である」として、その処分の取り消しを大阪地裁に訴えていました。

同地裁は、会社での会議後に行われた取引先の接待について「技術的な議論が交わされており業務の延長であった」と判断し、男性の過労死を認めました。
この男性は、お酒が飲めなかったにもかかわらず、週5回程度の接待(会社が費用を負担)に参加していたそうです。(10月26日判決)

III 昨年度 残業代不払いでの是正支払総額は123億円超平成22年度のサービス残業に関する統計資料が、厚生労働省から公表されました。全国の労働基準監督署が労働基準法違反により是正指導した事案のうち、100万円以上の割増賃金未払いがあった企業の数などについて取りまとめたものです。

今年は昨年よりさらに増え、100万円以上の是正企業数は165社増えて1,386企業・是正支払総額は7億2,060万円増えて、123億2,358万円になりました。「企業数」「支払われた残業代」では製造業、「対象社員数」では商業が最も多かったようです。

●割増賃金の是正支払の状況
・是正企業数        1,386企業(前年度比165企業増)
・支払われた残業代合計額  123億2,358万円(7億2,060万円増)
・対象社員数        11万5,231人(3,342人増)
・支払われた残業代平均額  1企業 平均889万円・社員1人平均11万円

●厚生労働省が公表しているサービス残業代の是正事例
A社(小売業、約200人、北海道・東北)

A社は、始業・終業時刻をタイムカードにより確認しているとしていたが、監督署が会社の機械警備記録等を調査したところ、タイムカードの最終打刻者の退勤時刻と警備開始時刻に大幅な相違が生じていた。そこで、会社からの事情聴取などを行ったところ、所定勤務時間終了後に、社員にタイムカードを打刻させた後で時間外勤務を行わせていたことが発覚した。監督署は、サービス残業について是正勧告するとともに以下の指導を行った。

(1)全社的な実態調査を行い、サービス残業が明らかになった場合には適正な割増賃金を支払うこと
(2)サービス残業の再発防止対策を確立し、実施すること

労働基準法違反として指摘を受けるなど、想定外の事態をできるだけ防止するためにも、「日頃から勤務時間を適正に把握すること」、時間外勤務を行う必要がある場合には「36協定の締結・届出」「割増賃金に関する取り決めや給与規定の整備」などの対応・対策を行っていくが必要とされています。その他、従業員との様々な労務トラブルに対処していくためにも、就業規則を整備しておくことの重要性が高まっています。不安があれば、お気軽にご相談下さい。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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