経営労務情報 平成25年(2013年)11月号

I アルバイトの非行増加!就業規則のチェックを●飲食店や小売店で被害が続出
コンビニのアルバイト店員がアイス用の冷凍庫の中に入っているところを写真に撮ってインターネット上に掲載した事件を皮切りに、最近、飲食店や小売店で類似の事件が相次いで起こりました。中には事件をきっかけに閉店することとなった店舗もあることから、経営者が この問題を軽く考えてアルバイトに対する教育や労務管理をおざなりにすることは、経営の存続をも危うくする大きなリスクをはらんでいます。

●被害を未然に防止するには?
こうした非行を未然に防止するためには、就業時間中は業務に集中することとして携帯電話(スマホ)の操作を禁じたり、休憩時間中や就業時間外であっても勤務先の不利益につながるような行為は慎むべきことを教育したりする必要があります。
さらに、これらのことを職場におけるルールとして徹底し、就業規則や店舗に備付けの業務マニュアル等にも明記しておく必要があります。

●万が一に備えて就業規則等を確認
就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者に作成が義務付けられていますが、正社員用の就業規則だけでアルバイト用のものは作成されていなかったり、アルバイト用の就業規則はあるが、規定内容に不備があったりするケースもあります。

就業規則が作成されていない、または規定内容に不備がある場合、従業員に非行があってもそれを理由として、懲戒処分・懲戒解雇にすることができない場合があります。自社の就業規則をチェックし、作成の仕方や見直しの要否等について検討してみてはいかがでしょう。

II 労働基準監督署による最近の送検事例(労災関連)東京労働局は労災事故に関連した最近の送検事例を公表しました。

●事例(1)労災かくしで道路旅客運送業者を書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年2月、タクシー会社の駐車場で従業員がハイヤーを洗車していたところ、転倒して手首を骨折し、休業4日以上に及ぶ労災事故が発生しました。労働安全衛生法では、「休業4日以上」の労災については、遅滞なく所轄労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出することになっていますが、労災の発生を隠すため報告書を提出しませんでした。タクシー会社と営業所長が平成25年8月に書類送検されました。

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●事例(2)工事現場の墜落死亡災害で書類送検(悪質と判断されたケース)
平成24年4月、高架橋の防風柵新設工事現場で、工事業者の従業員(当時19歳)が、つり足場の組み立て作業中に足場から約13m下に墜落して死亡しました。つり足場の組立て作業を行わせる場合は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者から作業主任者を選任し、作業主任者に作業の進行状況および保護帽と安全帯の使用状況を監視させなくてはなりません。

この工事業者は、選任した作業主任者が現場に不在であり、作業の進行状況と安全帯の使用状況を監視せず、作業をさせていたことが判明しました。工事業者と工事部長が平成25年9月に書類送検されました。

●労働基準監督官が注目されている?
監督署が送検を行うのは特に重大な事案の場合に限られますが、「労働安全衛生法違反」以外にも「労働基準法違反」や「最低賃金法違反」等でも送検されます。10月から、監督官を主人公としたドラマ放送がスタートしたことや、今話題のブラック企業問題など、今後、監督署や監督官に注目が集まるかもしれません。

III 企業における「懲戒処分」の実施状況は?近年、労使トラブルは増加傾向にありますが、それに伴い懲戒処分を実施する (または実施を検討する)企業も増えています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が今年7月に発表した「従業員の採用と退職に関する実態調査」の結果から企業における懲戒処分の状況について紹介します。

●懲戒処分の規定内容
懲戒処分の規定が「ある」企業の割合は94.6%で、ほとんどの企業が「就業規則」に規定しています。規定内容は、割合の高い順に以下の通りです。
「必要な場合には懲戒処分を行う旨の規定」(75.7%)
「懲戒処分の種類」 (69.9%)
「懲戒の対象となる事由」(61.9%)

●最近5年間における実施状況
ここ5年間の懲戒処分の、種類ごとの実施割合は次の通りです。
(1)始末書の提出 (42.3%)
(2)注意・戒告・譴責 (33.3%)
(3)一時的減給 (19.0%)
(4)降格・降職 (14.9%)
(5)懲戒解雇(13.2%)
(6)出勤停止(12.3%)
(7)諭旨解雇( 9.4%)

なお、「いずれの懲戒処分も実施していない」企業の割合は39.0%でした。

●懲戒処分の実施時の手続き
懲戒処分を実施する際の手続きとして法律で定められた要件はありませんが、一般的には「理由の開示」、「本人の弁明機会の付与」が必要とされています。また、「労働組合や従業員代表への説明・協議」を行うことにより、本人以外の従業員の納得性を高めることもできます。実施する際には慎重な配慮が必要です。

監修 :中島光利、八木義昭

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