経営労務情報 平成28年(2016年)8月号

Ⅰ お知らせ◆ 厳しい 残暑 が続きます。外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。
◆ 最低賃金が、10月より 845円(愛知県) に上がる予定です。今年も大幅な上昇です。パート募集時の時給や、10月以降の給与計算時にはご注意ください。
詳細は追ってご連絡いたします。
◆ 年1回 の 社会保険料 の「定期変更」は、10月に支払う給与 からです。
例年9月支払の給与 から 変更されてきた場合 には 9月 でも結構です。
※(問題は残りますが)
「厚生年金」の 料率 も また 上がります。 お客様へは改めてお知らせいたします。
◆ 本年10月より、社会保険加入者が500人以上の会社で、1年以上働く予定があり1週20時間以上働くパートさんも、社会保険加入対象となります。
◆ 本年も「労働保険料申告」「社会保険算定基礎届」にご協力いただきありがとうございました。

Ⅱ 同じ業務で定年後に再雇用、賃金差別は違法 ?◆会社に「賃金差額の支払いを命じる」 東京地裁判決 の 影響は今年5月、「定年後の再雇用と処遇(賃金)」について、これまでの "常識" をくつがえす判決が出ました。
「定年後に、嘱託社員 として 再雇用された トラックドライバー3人 の仕事内容が、定年前と変わらないのに、運送会社 が 賃金を約3割下げた ことは違法(労働契約法20条違反)である」というもので、会社には 賃金の差額 の支払いなどが命じられました。
◆今後の 企業実務 への影響は?
このような判決は 過去に例がなく 、会社側はすぐに 控訴 したため、最終的な結論 がどのようになるかはわかりません。この判決が、高裁・最高裁 でもなされた場合、定年時の賃金引下げは、認められなくなるケースが出てくる可能性があり、企業実務への影響 は 非常 に 大きなものとなります。
今後の 裁判がどのような結論 となるのかについて、注視しておく必要があります。
※このまま確定するとは思われませんが、定年後の条件を「少しでも変える対応」は必要になりそうです。

Ⅲ 自民党「外国人労働者の受入れ拡大案」の概要◆「単純労働者」 の受入れを容認?(※研修生ではありません)
自民党の「労働力確保に関する特命委員会」は、今後 本格化する「少子高齢化」や「人口減少」による 人手不足解消 のための 外国人労働者 の受入れを拡大することを提言しました。
政府は、これまでは 原則 として、大学教授 や 経営者、高度な技術者 といった 「専門的・技術的分野」 の 外国人労働者 を受け入れてきましたが、同委員会では、 建設作業員等 の 「単純労働者」 の受入れも 「必要に応じて認めるべきだ」 として容認し、政策の 抜本的 な転換を求めるとしています。
また、日本人 と 外国人 の 報酬 を同等にするなどの仕組みについても提言し、在留期間 を 当面は「5年間」 とすることも盛り込みました。近日中に正式決定し、政府への提言を検討するとしています。
◆外国人労働者 は 「過去最高」を更新
厚生労働省 発表 の「外国人雇用についての届出状況」(平成27年10月末 現在)によると、外国人労働者数 は90万7,896人(前年比15.3%増)と 過去最高 を 更新ました。
政府は、平成26年4月 の 「建設分野における外国人人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議」において、復興事業 のさらなる加速を図りつつ、平成32年(2020年)東京オリンピック 等の関連施設整備等 による 一時的な建設需要 の増大に対応するため、緊急かつ時限的な措置として、 即戦力 となりうる 外国人材の活用推進 を図る方針を示し、平成27年4月から 対象となる外国人材の受入れを 開始しています。
◆今後の 労働力不足 の 解消 となるか
平成32年(2020年)代には 介護分野で25万人、建設分野で77万~99万人 の 労働力が不足するとの 推計 があります。 外国人労働者 を研修生ではなく 明確な労働力 として受入れを容認すると、外国人労働者 はさらに増えることが予想されます。 中小企業 としても、今後 外国人 を 新たな人材 として採用できるか動向に注目する必要があります。

Ⅳ 人材不足問題は 深刻 ...採用すべき人材を確保するために...◆平成28年は「人材不足問題」が 企業経営 を圧迫する?
平成28年の 業績見通し について、中小企業経営者はどのように考えているのかを尋ねた、学校法人産業能率大学 の 調査結果 が公表されています。
これによると、多くの経営者 が業績は 平成27年と同様か 良くなるとの見方を示しましたが、一方で「人材の不足」が 経営活動 に影響を与えると想定しており、業績を上げる機会 を人材不足によって逃がすことのない対策 を講じることが 急務 となっています。
人材不足問題 は深刻であり、人材の確保は優先度の高い経営課題となっていると言えるでしょう。
◆厳しいのは「新卒採用」求人
中小企業にとっては、特に「新卒採用活動」が厳しい状況です。同調査では平成28年入社の新卒採用について、およそ4割が当初の採用予定数を下回るという結果となりました。
代わって活発化しているのが中途採用です。恒常的な人員不足の解消や欠員の補充、即戦力となる人員の確保をねらい、半数以上が中途採用の予定があると回答しました。
◆これからの採用活動に求められること
新卒採用にせよ中途採用にせよ、人材不足が深刻化している状況にあって、現在、採用選考を行うに あたり「いかに良質な母集団を形成するか」 に関心が集まっています。
採用すべき人材と接点を持ついろいろな方法の確立が望まれます。Facebook等のSNSを活用しようとする企業も多くなりました。一歩進んでSNSなどのデータから人材を探し、直接連絡を取って採用するという方法も見られるようになってきました。「従来の方法では競合に負ける」と言われ、様々な手法を検討しながら、自社にあった採用活動を行うことが求められています。

Ⅴ スポット情報●社会保障給付費 が 過去最高 の112兆円超 に(8月5日)
国立社会保障・人口問題研究所が、平成26年度の年金・医療・介護等の「社会保障給付費」を発表。112兆1,020億円(前年比1.3%増)で過去最高を更新。高齢化による介護利用者が伸びた。今後も増加予想。

●厚生年金・国民年金 の 決算収支 3 . 2兆円 の赤字(8月5日)
厚労省が、平成27年度の厚生年金と国民年金の収支決算(時価ベース)を発表。合計積立金は3兆2,458億円の赤字。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が出した5兆3,000億円の運用損 が影響した。

●平成29年度から 雇用保険料 引下げ --- 経済対策の一環 ---(7月26日)
政府は、雇用保険料率を平成29年度から数年間の引下げを決定。企業の負担軽減より最低賃金の引上げへの負担軽減策として。引下げ幅は年末までに決定。また雇用保険積立金が財源の「育児休業時の給付金」を拡充する方針で、育休の期間を半年伸ばし、最長2年とすることが検討されている。

●無年金者 救済策 「平成29年度中 に 実施」予定(7月26日)
政府は、年金が受給できる加入期間を10年(現在20年)に短縮する救済策を、平成29年度に実施する法案を提出する。今秋の臨時国会での成立を目指す。必要予算額は、年間約650億円(約64万人分)となる。

●中小企業 の 賃金上昇率 1.1%(7月14日)
厚労省は、本年の中小企業(従業員30人未満)の賃金上昇率が 「1.1%」 と発表。上昇したのは2年ぶり。有効求人倍率 が上昇し、パート募集時 の賃金が上がっていることなども影響した。

●「改正 確定拠出 年金法」が成立 専業主婦・公務員も対象(5月24日)
改正 確定拠出年金法 が衆議院本会議で可決、成立。平成29年1月から「個人型の確定拠出年金(DC)」の対象を専業主婦(約932万人)、公務員(約439万人)にも広げ、全現役世代が加入資格を得た。企業年金の普及策として、従業員100人以下の中小企業向けに設立手続を簡素化した「簡易型DC」も創設する。

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