経営労務情報 令和5年(2023年)6月

お知らせ◆7月は4月から6月に支払う給与の届出月です
この届出で今年10月払いの給与から1年間の社会保険料が決まります。3ヶ月の平均給与月額が、残業手当などの増加で高くなると社会保険料も増えますので注意が必要です。
◆7月は「労働保険料」の納付月です
現金納付の第1期納付期限は7月10日です。
口座振替の第1期振替日は9月6日です。
◆夏期賞与を支払った際はお知らせ下さい
賞与からも忘れずに社会保険料を引いてください。個人ごとの賞与額を報告しますので 支払い後にお知らせください。
◆梅雨の間も暑さが心配されます
梅雨の季節でも外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。気温が高くなくても湿度が高いと熱中症のリスクが高くなります。本格的な夏の前に様々な熱中症の対策をご検討ください。
◆最低賃金が今年も10月から上がりそうです
昨年は過去最大の増額となりました。今年も確実に上がる情勢です。パートさんを多く抱える事業所様は、社員の給与とのバランスを考えながら対応策をご検討ください。

令和6年4月より「労働条件明示」ルールの改正◆労働条件明示事項が追加されました
労働基準法施行規則等の改正により、令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります。 
具体的には、労働契約の「締結及び更新」の際の労働条件明示事項が新しく追加されます。
追加される①~④の事項は以下のとおりです。
1) 全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新の際
→ ①:就業場所・業務の変更の範囲
2) 有期労働契約の締結と更新の際
→ ②:更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容。
※最初の締結後に更新上限を新設・短縮する場合は理由の説明が必須。
3) 無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新の際
→ ③:無期転換申込の機会を与える。
  ④:無期転換後の労働条件の明示。
※無期転換後の労働条件を決める際、実態に応じて正社員等とのバランスを考慮し説明する努力義務が加わりました。
◆「労働条件通知書」を見直しましょう
上記1)は、すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新ごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、「変更の範囲」についても明示が必要になります。有期契約労働についても、上記2)3)に基づき、会社の方針をしっかりと説明する必要があります。
改正に適応した「労働条件通知書」となるよう修正が必要となります。

人手不足でない企業はなにをしているのか総務省の統計では、2022年12月現在で、日本の15~64歳人口は前年同月比0.28%減、人数にすると20万8,000人も減少しました。
また、これから働く年齢の15歳未満の人口は同29万3,000人も減少しています。
総人口の推移では、2019年以降加速度的に減少し、2023年5月現在の概算では、総人口は前年同月比57万人減となりました。
◆人手が不足していない企業がしていること
新型コロナ5類移行を受け、多くの企業で人手不足感が高まるなか、不足していないという企業もあります。帝国データバンクのアンケート調査の結果では「人手が不足していない会社の要因(複数回答)」としては、主に次の項目をあげていました。
(1) 賃金や賞与の引上げ   (51.7%)
(2) 働きやすい職場環境づくり(35.0%)
(3) 定年延長やシニアの再雇用(31.2%)
(4) 福利厚生の充実     (26.6%)
(5) 公平で公正な人事評価  (22.0%)
上記(2)の「働きやすい職場環境づくり」とは清潔な環境や休憩スペース、社内相談窓口の設置などがあげられています。また(4)と(5)は、従業員が自身の成長を感じられ安心できる職場になっている状況を意味しています。
◆賃上げの必要性
物価の高騰を受け実質賃金が低下するなか、賃金や賞与の引上げに取り組めない(あるいは取り組む姿勢を見せていない)では、従業員満足度や安心感が低下して優秀な人材が流出し、企業の競争力低下から新規採用が厳しく、運よく採用しても人を育てる余裕もないため早期離職を招くという傾向が見られます。会社を支える一番の力は、信頼できる「人」の力です。会社を信頼してくれる従業員が1人でも多く育つよう、会社は自らの進む先を示しつつ率先して変える努力が求められそうです。

2025年卒業予定の学生のキャリア形成志向◆概要
スカウト型就職サイトを運営する、株式会社 学情は、2025年卒業予定者の学生を対象に「キャリア形成」について以下3点のアンケート調査を実施しました。
(1) キャリア形成の志向
(2)「ジョブ型」採用への興味の有無
(3)「ジョブ型」インターンシップの興味の有無
(1) キャリア形成の志向について
「自身で主体的に選択したい」(29.8%)と「どちらかと言えば自身で主体的に選択したい」(34.4%)の合計が65%以上となり、自主的にキャリア形成を考えたい傾向を示しました。企業に依存する学生は15.6%に留まりました。
(2) 「ジョブ型」採用への興味の有無について
「興味がある」(44.6%)と「どちらかと言えば興味がある」(36.8%)の合計が81.4%となり、学生が「ジョブ型」採用に興味があると回答しました。前年同時期(2024年卒対象)の回答は67.7%で、昨年よりも「ジョブ型」採用に興味がある学生が増加していることがわかりました。
(3) 「ジョブ型」のインターンシップへの興味の有無について
「参加したい」(40.9%)と「どちらかと言えば参加したい」(37.9%)の合計78.8%となり「ジョブ型」のインターンシップに興味があると回答していました。
本格的な採用シーズンを迎え、自立的なキャリア形成を望む学生が増えていることを念頭に採用準備が必要になりそうです。

「2023年度 新入社員の意識」~東京商工会議所~東京商工会議所が2023年卒の新入社員1,050人を対象に、WEB上で社会人生活や仕事に対する意識調査を実施しました。
◆就職先の会社を決める際に重視したこと
「社風、職場の雰囲気」が60.0%で、半数以上が職場の雰囲気に重きを置いています。
その他、「処遇面(初任給、賃金、賞与、手当など)」(51.5%)、「福利厚生」(41.6%)、「働き方改革、ワーク・ライフ・バランス(年休取得状況、時間外労働の状況など)」(40.3%)が上位でした。
◆就職先の会社が、内定から入社までの間に 実施したフォローの取組み
「採用担当者からの定期的な連絡」(43.2%)、「会社見学会」(29.0%)、「内定式・内々定式」(27.6%)が上位でした。内定から入社まで期間があるため不安を持たせない対策です。
◆社会人生活で不安に感じること
「仕事と私生活とのバランスが取れるか」(42.0%)、「上司・先輩・同僚とうまくやっていけるか」(40.7%)、「仕事が自分に合っているか」(40.0%)が上位を占めていました。
9割強の新入社員は、社会人生活に何らかの不安を感じている結果が現れました。

「残業」は転職先選びに影響する~重要事項~エン・ジャパン㈱は、令和5年5月8日、「社会人1万人の「残業」実態調査~『エン転職』ユーザーアンケート」を公表しました。
運営する総合求人サイト『エン転職』上でユーザーを対象にアンケートを実施し1万2,940名が回答(調査期間は令和5年2月22日~3月28日)。
◆「残業の有無や平均残業時間」が転職先選びに影響していると回答したのは84%
「転職活動をする上で、残業の有無や平均 残業時間等は企業選びにどの程度影響しますか?」の質問に対し、「とても影響する」が最多で49%、「少し影響する」は35%で、合わせて84%が「影響する」と回答しました。
年代別で見ると、20代、30代は半数以上が「とても影響する」(20代:55%、30代:56%)と回答し、「少し影響する」と合わせると、20代は89%、30代は88%に上ります。
また男女別では、「とても影響する」と回答した男性が44%に対し、女性は54%と10ポイントの差があり、男性より女性のほうが、企業選びで残業時間を重要視していました。
◆残業時間が「増加傾向」は26%、「減少傾向」は24%。半数は「変わらない」
「ここ数年であなたの残業時間は増加傾向ですか?減少傾向ですか?」の質問には、 「変わらない」が50%と半数を占め「増加傾向」は26%、「減少傾向」は24%でほぼ同率でした。
業種別で残業時間が増加傾向だったのは、「コンサルティング・士業」が最多で36%、一方、減少傾向は「メーカー(機械・電気・電子など)」が最多で32%でした。
◆残業時間の増加理由は「人手不足」、減少理由は「企業の残業制限」
残業が増加傾向と回答したその理由を聞くと、「人員が足りないため」が最多で75%、次いで「仕事量が増えてきたため」が67%と続きます。一方、残業時間が「減少傾向」と回答した理由は、「残業が制限されたため」が最多で42%でした。
◆残業代の割増制度を知っている人は4割弱
中小企業で働く人の「月60時間を超える残業代の割増率が50%に引き上げられた」ことを「知っている」は39%(内容も含めてよく知っている9%、概要だけ知っている30%)と全体の4割弱に留まりました。
引上げについて「とても良いと思う」(47%)と「良いと思う」(33%)を合わせた80%の人が好感を示しました。一方で引上げが「良くないと思う」(とても良くないと思う1%、良くないと思う8%)という声は1割弱でした。

「技能実習制度を廃止すべき」との中間報告書が示された◆技能実習制度・特定技能制度のあり方を検討
令和4年12月からの有識者会議の中間報告書がまとめられ、「技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきである」と示されました。
◆新たな制度はどんな制度?
基本的な考え方は、(1)制度目的と実態を踏まえた制度の在り方(技能実習)、(2)外国人が成長しつつ中長期に活躍できる制度(キャリアパス)の構築、(3)受入れ見込数の設定等のあり方、(4)転籍のあり方(技能実習)、(5)管理監督や支援体制のあり方、(6)外国人の日本語能力向上に向けた取組みの6項目がでました。
◆具体的にどう変わる?
上記6項目のうち、例えば(2)は「外国人がキャリアアップしつつ我が国で修得した技能等をさらにいかすことができる制度とする」、また(4)は「人材育成に由来する転籍制限は、限定的に残しつつも、制度目的に人材確保を位置づけることから、制度趣旨と外国人の保護の観点から緩和する」とされました。
◆管理監督や支援体制のあり方等も議論の対象
監理団体や登録支援機関の要件厳格化や 悪質な送出機関の排除等に向けた取組み強化のほか、来日前外国人の日本語能力向上(コスト負担の在り方)等も議論の対象となりました。

スポット情報●特定技能2号が11分野に拡大-閣議決定-(6/9)
政府は9日、在留資格「特定技能2号」の対象を現在の2分野から11分野へ拡大する方針を閣議決定した。新たにビルクリーニング、自動車整備、農業、外食業など9分野を追加する。
今後、法務省令改正により対象を追加、今秋にも9分野の試験を開始して合格者は来年5月以降、在留資格変更が認められる見通し。
●12月から白ナンバーの飲酒検査義務化(6/9)
警察庁は8日、白ナンバーの車を使う事業者に対するアルコール検知器を使用したドライバーの飲酒検査について、12月1日から義務化する方針を示した。2022年10月に義務化予定だったが、世界的な半導体不足の影響で検知器の供給が遅れ延期していた。白ナンバー5台以上か、定員11名以上の車を1台以上使用する事業者が対象。
●正職員の手当削減を「合法」と判断(6/5)
正職員の待遇を引き下げて非正規職員との格差を解消する手法について、就業規則変更の合理性を認める判決が、5月24日、山口地裁であった。正職員だけに支給していた手当を全職員対象の手当に改めたことについて、パート・有期法の趣旨に添うとし、経営が右肩下がりで人件費抑制を意識しながら手当の組替えを検討する必要があったとして、正職員の手当削減を肯定。職員全体の不利益は小さいとして、原告従業員の請求を退けた。パート・有期法の趣旨を意識しながら労働契約法10条の不利益変更の合理性に踏み込んだほかにない判決となった。
●物流2024年問題、政策パッケージ公表(6/3)
トラックドライバーへの時間外労働の上限規制適用等により輸送能力が不足する「2024年問題」について、政府は2日「物流革新に向けた政策パッケージ」を示した。荷主と物流事業者に対して、荷待ち・荷卸しなどの作業時間削減といった商慣行の見直しを求め、悪質な事業者には法的措置をとれるようにする方針。24年通常国会への関連法案提出を目指す。物流の効率化や消費者の行動変容も求める。
●荷待ち時間の削減、荷主の義務に(6/2)
運送業における荷待ち時間について、政府は、荷主企業への規制を強化し、削減に取り組むよう義務付ける。一定以上の物流量を抱える荷主企業には、トラック運転手の負担軽減に向けた計画策定を義務付け、国への定期報告も要請するほか、物流に関する管理責任者の任命も求める。関連法の改正案を2024年の通常国会に提出する。
●2028年度までに雇用保険対象者拡大(5/26)
政府は、週所定労働時間20時間未満で働く人も失業給付や育児休業給付等を受け取れるよう、6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」に、2028年度までの雇用保険の対象者の拡大を盛り込む見通し。
まずは雇用保険法を改正し、細かい条件は 労働政策審議会にて議論のうえ、周知と準備の期間をかけて進める。

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