経営労務情報 令和4年(2022年)12月

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意ください。
以下は本人負担率です。
        厚生年金 = 9.15 %
 健康健康保険+介護保険 = 5.785 %
(健康保険4.965 %、介護保険0.82 %)
 ※雇用保険料率も変更されています。
(建設業=0.6%、建設業以外=0.5%)
◆感染の再拡大に注意しましょう。身近な方が感染されるケースも増えています。発熱時はすぐ受診して検査を受ける対応をお願いいたします。
◆インフエンザワクチンの接種も
今年も感染対策としてインフエンザのワクチン接種もご検討ください。
◆年末調整の注意点
今年も配偶者や扶養家族の収入確認など、もれがないようにお願いいたします。

中小事業も月60時間超えの残業割増率が50%以上に◆猶予措置の廃止
令和5年4月1日から、中小企業も月60時間を超える残業時間に対して割増賃金率を「5割以上の率」とする規定が適用されます。これにより残業時間が60時間を超えた場合は、今までの1.25ではなく1.5を乗じた残業手当の支給が必要になります。
平成22年4月1日施行の改正により、残業時間が月60時間を超えた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金を支払うことになっていますが、中小事業では適用が猶予されていました。
◆代替休暇の規定も適用に
1ヶ月に60時間を超えて残業を行なった場合は、労使協定を結び、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の代わりに有給の代替休暇を与えることができます。
代替休暇は、代休や振替休暇とは違い、超過時間分を有給の代替えの休暇として振り替える制度です。代替休暇の計算方法や、代替休暇の単位(1日または半日)などについては注意が必要になります。
◆残業を減らす管理をしましょう
残業時間の上限規制や残業単価の計算方法が厳格になってきています。効率の悪い残業を減らすなど、時間外労働の問題点を改善する努力が求められています。

雇用調整助成金の特例措置が終了◆12月以降は通常制度による支給
雇用調整助成金の支給上限額引上げや助成率引上げ、提出書類の簡素化等の特例措置が、有効求人倍率の回復等を理由に終了し、令和4年12月以降、通常制度による請求となります。10月以降は1日あたり支給上限額は原則8,355円となっています。
◆特に業績が厳しい事業主の経過措置
ただし特に業績が厳しい事業主については、令和5年1月31日まで1日あたりの支給上限額を最大9,000円とする経過措置が設けられます。助成率も、令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合は10分の9(大企業は3分の2)となります。
◆令和5年2月以降は
原則どおりの扱いとなりますが、申請書類が簡素化されたりする等の措置は令和5年3月まで続きます。

募集しても人が採れない!中小企業の採用活動の現況◆企業の採用活動は活発化している
人手不足の中で企業の採用活動が活発化しています。(株)マイナビが実施した最近の「中途採用・転職活動の定点調査(2022年9月)」の結果でも、9月に中途採用活動を実施した企業は全体で39.8%、従業員規模別に見ると「51~300名」「301名以上」で約5割となり、ほぼすべての業種で採用活動実施率が前年同月比で増加しています。
◆人が採れない企業が2割
採用活動の活発化により、中小企業の新卒採用も厳しい状況となっています。日本商工会議所ならびに東京商工会議所が中小企業6,007社に実施した調査によれば、2021年度の新卒採用の状況について、募集した企業は51.0%で、そのうち「予定人数を採用できた」と回答した企業は45.6%にとどまり、約2割の企業が「募集したが、全く採用できなかった」(19.9%)と回答しています。
マイナビが2023年卒採用の内定状況と2024年卒採用の見通しなどをまとめた「2023年卒企業新卒内定状況調査」でも、24年卒採用は78.6%が実施する予定で、採用予定数を「増やす」とする企業も増加するとしています。今後も採用活動の激化は避けられません。
◆採用活動にも工夫が必要に
コロナによる影響でオンライン面接が普及するなど、採用を取り巻く状況も大きく変化しました。学生の採用活動における質問事項としてよく使われる「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)なども、コロナ禍でエピソードが少なかった学生を困らせているという話も聞きます。これまでの手法が必ずしもマッチしない状況の中で人材を獲得するためには、自社の採用方法に工夫を凝らし、他社と差別化していく取組みが必要になってきそうです。

いま注目の「人的資本経営」◆盛り上がりをみせている「人的資本経営」
近年盛り上がりをみせている「人的資本」や「人的資本経営」ですが、今年の8月30日には内閣官房から「人的資本可視化指針」が公表されています。こは上場企業向けにガイドラインを示したもので、「人材版伊藤レポート(2020年9月)」、「人材版伊藤レポート2.0(2022年5月)」と併せて活用することが想定されています。
これらは非上場企業にとっても無視できない内容となっています。
◆企業の人的資本の活性度は約30~40%
経済産業省は、「人的資本経営」とは人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」としています。
(株)リクルートが企業で働く10,459人を対象に実施した人的資本経営をテーマとした調査によれば、①今の職場が最適な部署配置だと感じている人、自分の知識やスキル・経験を活かすようなジョブ・アサインメント(仕事の割り当て)を実感している人の割合は約30%、②現在の仕事に関する知識やスキル・経験を言語化できる人、現在の仕事のレベルを高めるために必要な知識やスキル・経験を理解している人の割合は約40%という結果でした。
この結果からみえる企業の現況は、「人材の価値を最大限に引き出す」という人的資本経営からはまだ隔たりがありそうです。
◆今後の動きにも要注目
大企業中心と考えられがちな「人的資本経営」ですが、中小企業でも人材獲得の面などから注目されています。8月には経済産業省および金融庁がオブザーバーとして参加する、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間協力に向けた議論、効果的な情報開示の検討を行う「人的資本経営コンソーシアム」が設立され、様々な情報が出されることが予想されます。今後の動きも注視していきたいところです。

高齢者の体力は低下傾向!これから企業が対策を講ずべきこと◆65歳以上の高齢者の体力は低下傾向!
70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取組みを行うことが努力義務として企業に課せられているなか、気になるデータが公表されました。
高齢者の体力の低下傾向が顕著であることが、スポーツ庁の体力・運動能力調査(2021年度)で分かりました。特に、65~74歳の男性の体力は過去10年間で最低を記録。週1日以上の頻度で運動している人の割合も同区分では減少しており、専門家は、「高齢者に運動習慣が広がり体力向上につながっていた流れが、頭打ちとなってきた」と警戒しています。
◆労働災害が増加する心配も
高齢者の体力の低下は、労働災害の増加にもつながります。そもそも高年齢層の労働災害発生率は若年層に比べ相対的に高いのですが、これは身体機能や体力の低下といった高齢者特有の事情によるものと考えられます。働く高齢者が増えるなか、企業としては、従来の想定以上に高齢者の体力が落ちていることを念頭に、安全に働ける職場づくりが必要となりそうです
◆特に重要な課題は「転倒対策」
特に意識して対応策を講じたいのは「転倒災害」です。職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、厚労省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用して身体機能の状態について知り、無理な動作をしないなどの心がけが必要です。
職種によっては、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法や評価基準について定め、高齢労働者の体力を把握することも必要になりそうです。

紹介状なしで大病院を外来受診する場合の患者負担が増加◆紹介状なしの大病院の外来受診が増加
本年10月から紹介状なしで大病院を受診する場合の患者負担が引上げられました。
これは、一部の病院への外来患者の集中を避けるため「特別の料金」が見直されたことによるもので、対象病院の拡大も行われています。
◆具体的な見直しの内容
「特別の料金」は、これまで医科の初診が5,000円以上、再診が2,500円以上でしたが、初診が7,000円以上、再診が3,000円以上へと引き上げられています。歯科でも、初診が3,000円以上、再診が1,500円以上から、初診が5,000円以上、再診が1,900円以上へと引き上げられています。対象病院は、これまでの特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)に、紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)が加えられています。

スポット情報●介護保険制度見直し、議論先送り(12/9)
厚労省は、2024年度の介護保険制度見直しについて年内の結論とりまとめを先送りする方針を固めた。社会保障審議会で5日に示された案はDX推進や人材確保にとどまりケアプランの有料化などの法改正を要する見直しは、2024年度からの実施を断念。65歳以上の高所得者の介護保険料負担引上げやサービス利用料2~3割負担の対象者拡大などは来年以降も検討を続ける。
●企業年金運用、企業にも責任(12/5)
金融庁は、企業年金の運用に企業も責任を負うよう法律で最善利益義務とよばれる規定を盛り込む方針。金融機関だけでなく企業を含め運用の受託者としての責任を明確にし、民事上や行政上の責任を負わせ、信託銀行などに運用を任せきりで運用戦略がないなどの問題への対処を促す。2023年の通常国会での改正を目指す。
●専門人材の就活前倒しを検討。2026年春入社の学生から対象に(12/1)
政府は、大学生の就職活動の日程ルールの見直しを発表した。来秋までに結論を出す。2026年春入社予定の大学1年生から、専門性の高い人材採用の前倒しや通年採用を容認する方向。
●パートと正社員の待遇差「見直ししていない」が36%(11/26)
厚労省が実施したパートタイマーや有期雇用労働者の待遇に関する調査結果によれば、正社員との「不合理な待遇差の禁止」の法制化を受け、「見直しを行った」とした企業は28.5%、「見直しは特にしていない」とした企業が36.0%だった。「見直した」との回答の内訳は、「基本給」が45.1%で最多、「扶養手当」(6.1%)や「退職金」(3.1%)は少なかった。
●「インフレ手当」19%の企業が支給を検討(11/17)
帝国データバンクが約1,250社から回答を得た調査結果で、物価高の中でインフレ手当を「支給した」企業は6.6%で、「予定・検討中」が19.8%あることがわかった。支給方法は「一時金」が66.6%、「月額手当」が36.2%。一時金の平均支給額は53,700円だった。
●パートの厚生年金加入
企業規模要件撤廃に向け検討へ(11/10)
政府は、短時間労働者の社会保険加入要件を緩和する検討に入る。既に2024年10月より現在の101人以上から51人以上まで従業員規模を引き下げるが、企業規模要件を撤廃する方向で検討を進める。また労働時間が週20時間未満の労働者や、5人以上を雇用する個人事業所の適用業種追加、5人未満の個人事業所への拡大なども検討。
●実質賃金が6カ月連続で減少(11/8)
厚労省の毎月勤労統計調査では、9月の実質賃金が前年同月比1.3%減となり、6カ月連続でマイナスとなった。7~9月では1.7%減となった。現金給与総額は緩やかに増えているが物価上昇率は3.5%に達しており実質賃金の減少につながっている。
●傷病手当金のうち精神疾患の割合が過去最多(11/8)
協会けんぽが毎年10月に支払った傷病手当金の状況に関する調査で、昨年10月の約15万5,000件を調査したところ、「精神及び行動の障害」が約33%と最も多く、統計が残る1995年以降で最多だったことがわかった。件数自体も約5万1,000件と、公開されている2010年以降で最多だった。
●24.5%で定年が「65歳以上」(10/29)
厚労省は2022年の就労条件総合調査の結果を公表。一律定年制を定めている企業のうち、定年年齢を「65歳以上」としている割合は24.5%となり、平成29年の前回調査より6.7ポイント増え、平成17年の同調査開始以降過去最高となった。また、最高雇用年齢を「66歳以上」とする企業は勤務延長制度がある企業で31.7%、再雇用制度がある企業で22.0%だった。

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