経営労務情報 令和5年(2023年)12月

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意ください。
以下は本人負担率です。
     厚生年金 = 9.15%
健康保険+介護保険 = 5.915%
(健康保険5.005 %、介護保険0.91%)
 ・雇用保険料率は以下の料率です。
(建設業=0.7%、建設業以外=0.6%)
◆建設業、運送業の残業協定が変更されます。
令和6年4月より建設業、運送業の残業協定(36協定)の上限時間が原則45時間に減少し、一般の事業所と同じになります。
申請書式も変わりますので、ご注意ください。
◆インフルエンザの拡大にご注意を。
感染が広がっています。感染対策としてインフエンザのワクチン接種もご検討ください。
◆年末調整が始まります。
大きな変更はありませんが、配偶者や扶養家族の収入確認などをしっかりご確認ください。

建設業の時間外労働の変更適用猶予されていた時間外労働の上限規制が、令和6年4月から開始されます。
◆時間外労働の傾向に職種の差
帝国データバンクの「建設業の時間外労働に関する動向調査」(2023年8月時点)では、建設業全体の時間外労働は前年を下回っているものの職種により増加していました。
「建設業全体」の時間外労働DI(※)= 48.8
 ・「はつり・解体工事業」=54.4
 ・「内装工事業」=52.4
 ・「建築工事業(木造建築業を除く)」=51.8
 ・「鉄骨工事業」=51.6
※時間外労働DIは、0~100の値をとり、50超が増加、50未満は減少を表しています。
◆職種に応じた対策を
「建設業」全体では48.8(年平均も48程度)で減少していますが、土木工事業(造園工事業を除く)の44.8を除く職種が50を超えています。来年4月1日まで残された時間は多くありません。それぞれの職種の特性を踏まえ、時間外対策を具体化していく必要があります。

中途採用は即戦力重視の傾向株式会社マイナビが2023年1~7月に中途採用をした企業の人事担当者を対象(有効回答数1,600件)とする「中途採用実態調査」を実施しました。
◆「即戦力の補充」のため、中途採用を実施
直近半年(2023年1~7月)の正社員の過不足感については、「余剰」が27.3%(前年比1.9ポイント増)、「不足」が43.1%(前年比0.2ポイント減)となり、人手不足状況は変わっていませんでした。また、役職やスキル別では、「スペシャリスト人材(IT人材など)」の不足が最も多い47.9%でした。
中途採用する理由は、「即戦力の補充」が48.1%で最も多く、これは専門的な人材を求めた結果です。また運輸・物流業では、「労働時間短縮への対応」が33.7%と全体平均より10ポイント以上高く、来年4月からドライバーなどの残業時間上限規制が始まる、「2024年問題」に対応する人材確保と考えられます。
◆今後の中途採用の課題
課題としては、「求職者の質が低い」が36.3%で最も高く、次に「入社後の早期退職の増加」が30.3%でした。また今後の動向は、「積極的」が53.8%(前年比0.9ポイント増)で、「消極的」の8.1%と大きく差がでました。
特に、経験者採用を積極的に(52.1%)が、未経験者を積極的に(41.6%)を上回りました。
今後の採用基準は、「書類選考」「面接」ともに「厳しくする予定」と回答した企業が増加し、ています。

「年収の壁」への当面の対応厚生労働省は、パートさんの社会保険料負担による手取り収入の減少を避けるため出勤調整をする「年収の壁」問題への対策として、支援強化を発表し10月から実施しています。
◆106万円の壁への対応
・キャリアアップ助成金のコースの新設
 パート収入増の取組みをした事業所へは、一定期間助成(1人当たり3年で最大50万円)を支給します。賃上げや就労時間の延長、保険料負担分の手当(社会保険適用促進手当)の支給が対象です。この「社会保険適用促進手当」は最大2年間、社会保険料決定の対象外になります。
◆130万円の壁への対応
パート収入が130万円を超えてしまっても、人手不足による時間延長等で一時的な収入増であるという事業所の証明があれば、扶養者家族でいられます。
◆配偶者手当への対応
・企業の配偶者手当の見直し促進
 中小企業でも配偶者手当(家族手当など)の見直しが進む取り組みがされます。

転職者が前職を辞めた理由◆年間で常用労働者の15%が退職
採用に苦慮する企業も多いですが反面、退職者を減らさなくては状況が変わりません。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果」では、令和4年の1年間の離職者数(事業所を退職したり解雇された者)は約765万人となり、常用労働者数に対する離職率は15.0%となりました。
◆転職者が前職を辞めた理由
同調査で、前職を辞めた理由は、男女とも「その他の個人的理由」(男性19.6%、女性25.0%)と「その他の理由(出向等を含む)」(男性14.7%、女性8.6%)を除くと、①「定年・契約期間の満了」(男性15.2%、女性10.9%)が最も多く、②「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」(男性9.1%、女性10.8%)、③「職場の人間関係が悪かった」(男性8.3%、女性10.4%)となりました。
◆企業で可能な取組みを検討
上記調査とは別に、エン・ジャパン㈱が実施した「就業前後のギャップ」についてのアンケート調査では、約8割が入社前後で「ギャップを感じた経験がある」と回答し、上位の理由 ①「仕事内容」②「職場の雰囲気」③「仕事量」の3項目で合計55%となりました。特に「職場の雰囲気」は離職理由のトップでした。

メンタルヘルス不調者の増加帝国データバンク「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査が発表されました。
◆「50人の壁」とは
社員数が50人を超えると発生する経営課題をさします。50人を超えると経営をするために社長のほか複数の管理職が必要となり、人事制度も複雑化し管理のレベルも高まります。また情報共有や意思疎通が難しくなるため、組織内のコミュニケーションの質が低下しメンタルヘルス不調者の割合が高まります。
◆社員数50人超で大きく増加
この調査では、過去1年間で「過重労働時間となる労働者」や「メンタルヘルスが不調となる労働者」がいるかどうかを質問しています。(有効回答企業数は1万1,039社)
<社員数と メンタルヘルス不調者がいる割合 (%)>
 ・5人 以下 :5.0%
 ・6 人~ 20人:10.8%
 ・21人~ 50人:19.5%   
 ・51人~ 100人 :31.6%
 ・101人~300人:45.5%
 ・301人~1,000人 :59.0%
 ・1,000人 超 :62.0%
(全体では21.0%が「いる」と回答(5社に1社)
規模が大きくなるほど割合が高まり、50人を超えたところで大きく増加しています。
考えられる改善策は、定期健康診断の確実な実施、職場の喫煙対策、労働時間管理や仕事の進め方の見直しなどによる労働密度の適正化などが重要となってきます。

新規学卒就職者の離職状況厚生労働省は令和2年3月卒業の新規学卒就職者の離職状況を公表しました。
◆就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度比1.1ポイント上昇)、新規大卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。
◆事業所規模別、産業別の離職率
事業所規模別では、1,000人以上で高卒者26.6%、大卒者26.1%と3割を切るのに対し、5人未満で高卒者60.7%、大卒者54.1%、5~29人で高卒者51.3%、大卒者49.6%と規模別の差が大きいことがわかります。
産業別では、宿泊業、飲食サービス業(大卒51.4%)、生活関連サービス業、娯楽業(同48.0%)、教育、学習支援業(同46.0%)、医療、福祉(同38.8%)、小売業(同38.5%)などで離職率の高さが目立っています。
◆人材の流出を防ぐために
株式会社リクルートマネジメントソリューションズによる「新人・若手の早期離職に関する実態調査」によれば、入社3年目以下社員の退職理由は、
「労働環境・条件がよくない」(25.0%)
「給与水準に満足できない」(18.4%)
「職場の人間関係がよくない、合わない」、
「上司と合わない」、「希望する働き方ができない」(各14.5%)となっています。
企業にとってはすぐに対応が難しい課題もありますが、人手不足の中で様々な工夫をしている状況も見られることから、各企業でも人材の流出を防ぐための施策をいろいろと検討したいところです。

有給休暇の取得率が過去最高◆年次有給休暇の取得率が初の6割超え
厚生労働省の令和5年「就労条件総合調査」結果によると、令和4年の年次有給休暇の 付与日数の平均は17.6日(前年調査17.6日)、実際に取得した日数は10.9日(同10.3日)で、平均取得率は62.1%(前年比3.8ポイント増)と初めて6割を超え、昭和59年以降では過去最高となりました。
産業別では、郵便局、農業協同組合等の「複合サービス事業」が74.8%と最も高く、「宿泊業、飲食サービス業」が 49.1%と最も低くなりました。
政府は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和3年7月30日閣議決定)において、令和7年までに年次有給休暇取得率を70%以上とすることを目標に掲げています。
◆有給休暇の取得率を上げるためには
厚生労働省は、毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、年次有給休暇を取得しやすい環境整備を推進するための集中的な広報を行っています。今年は、リーフレットを使い「年次有給休暇の計画的付与制度」の導入、年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式の活用方法についても紹介しています。
平成31年4月に年次有給休暇の年5日取得義務が施行されて以来、年次有給休暇の取得率は過去最高となりましたが、政府の目標の70%には及ばない状況です。各企業で年次有給休暇の取得率を上げるにはどのような取組みが必要なのか検討も必要となります。
中小企業でも、若者の採用を増やすための検討課題のひとつにする必要がありそうです。

スポット情報●少子化財源の「支援金」概要案判明(11/10)
少子化対策の財源の一つとして創設する 「支援金制度(仮称)」の概要案が、9日のこども家庭庁の会合で示された。現役世代や後期高齢者を含む全世代から、収入に応じた額を医療保険の保険料に上乗せして徴収する。
使い道は法律に明記し、まずは妊娠・出産期から0~2歳の支援策に充てるほか、育児休業給付の拡充、親の就労に関わらず保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」などの施策に充てる。年内に詳細を詰め、2024年の通常国会への関連法案提出を目指す。
●有休取得率が6割超え義務化で拡大(11/3)
厚生労働省の2023年就労条件総合調査によると、労働者の年次有給休暇の取得率は62.1%と初めて6割を超えた。2019年(52.4%)から10ポイント近く上がった。有給休暇の1人当たり平均持ち分は17.6日で、実際の取得日数は10.9日。労基法改正による年5日の有休取得義務化が追い風になった。
●フリーランスを労災保険の対象に(11/2)
厚生労働省は、フリーランスの労災保険特別加入の対象範囲を原則全業種に拡大する。
加入は任意で、企業から業務委託を受け、企業で働く労働者と同じ条件にある事が加入条件となる見通し。労災保険法施行規則を改正し、2024年秋の施行を目指す。
●求人倍率が 3カ月連続で低下(10/31)
厚生労働省の31日の発表によると、9月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で、前月から横ばいだった。有効求人数も横ばいだったが、新規求人数(現数値)は前年同月比で3.4%減少した。また、総務省が同日発表した9月の完全失業率は2.6%で、前月から0.1ポイント減少した。
●潜在的な働き手約530万人(10/31)
内閣府は「眠る働き手」が約530万人いるとの試算を公表した。内訳は「就労時間を増やしたくて、それができる労働者」265万人と完全失業者184万人、就業希望はあるが今は求職活動をしていない84万人。
人手不足が成長の制約とならないためには、これらの人が力を発揮できるよう、「年収の壁」の是正や働き手のスキルの磨き直し等を行うことで、潜在的な労働力を掘り起こせるとみる。
●2024年春闘の賃上げ目標発表(10/20)
連合は19日、2024年の春闘での統一要求の賃上げ目標を「5%以上」とする方針を正式発表した。物価上昇を踏まえ、今春闘の「5%程度」より表現を強めた。来春闘について、日本商工会議所会頭は「少なくとも中小企業では難しいというのが実感だ」、経団連会長は「(今春闘と)同じ熱量で賃上げを目指す」と述べている。
●高齢者の職場への送迎制度を新設へ(10/19)
厚生労働省は、交通が不便な地域に住む高齢者の就労を支援するため、2024年度より職場への送迎制度を新設する。全国シルバー人材 センター事業協会に委託し、費用は国が負担する。モデル事業として数十カ所から開始し、将来的には全国展開を目指す。
●労基法改正を求める報告書まとまる(10/14)
働き方の多様化に対応するため、労基法の改正を求める報告書が、13日の「新しい時代の
働き方に関する研究会」でまとめられた。
労基法の対象となる「労働者」の定義や、労働条件を「事業場」ごとに決める原則、労働者の「過半数代表者」の枠組みの見直しなどを求めている。年度内にも新しい研究会を立ち上げ、法改正に向けた本格的な議論に入る。

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