経営労務情報 平成30年(2018年)9月号

お知らせ◆本年も「労働保険料申告」「社会保険算定届」へのご協力、誠にありがとうございました。
◆年1回の社会保険料の「定期変更」は10月に支払う給与からです。
お客様へは改めてお知らせいたします。
◆最低賃金が10月より 898円 (愛知県)にまた上がります。今年も大幅な上昇です。
「パート募集時の時給」や「10月以降の給与計算」 にはご注意ください。
◆年金事務所による「社会保険加入促進」が更に強化されています。おどすような文面も届いています。ご不明点は連絡ください。

最低賃金が3年連続で3%増加へ◆政策どおり引上げ
厚労省の中央最低賃金審議会は今年(平成30年)度の地域別最低賃金額改定を公表。
引上げ額の全国平均は26円(昨年度25円)、改定額の全国平均額は874円(同848円)となります。引上げ率は+3.1%で、3年連続+3%以上の引上げとなり政府の「働き方改革実行計画」に沿う形になります。
◆地域別最低賃金
都道府県に適用されるランクは以下の通り(都道府県の経済実態でABCDの4ランク)
・Aランク(+27円)...愛知、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪
・Bランク(+26円)...茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、他4県
・Cランク(+25円)...北海道、宮城、群馬、新潟石川、岐阜、他8県
・Dランク(+23円)...青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、他10県
10月から適用(発効日は都道府県ごとによる)。
◆地域間格差の拡大
政府は毎年3%程度引き上げ、全国平均額を1,000円にする目標です。 
最低賃金が高い東京都(985円)と神奈川県(983円)は、1,000円に近く、まだ19県は700円台で地域間格差の拡大も指摘されています。

労働時間の把握、来春より「管理監督者」 にも義務化◆労働時間の記録と保存
来年4月から「管理監督者」の労働時間把握と、その記録の保存が義務化されそうです。(取締役ら経営陣は対象外) 日経新聞7月31日付
◆労働基準法の「管理監督者」とは
労働基準法の「管理監督者」は、労働時間や休日の規定の対象外とされています(ただし深夜割増賃金の支給や年次有給休暇の付与は必要です)。
管理監督者は経営に参画する立場として、自らの労働時間に一定の裁量があるため、労働時間の把握や保存の義務はありませんでした。勤務時間を管理している多くの中小企業の「管理職」はここでいう「管理監督者」にはなりませんので注意が必要です。
◆改正「安全衛生法」の「面接指導」
今回の労働時間把握義務は、労働安全衛生法(安衛法)の、健康管理の「面接指導」に関連するところです。
◆管理監督者の過重労働にも注意
企業の実務上、現在一般社員に行っている出退勤記録と同じことを「管理監督者」にも徹底させる必要がありそうです。
大手電力会社の課長職の過労自殺や、大手フランチャイズ店の店長(「名ばかり管理職」)の過労自殺などの報道を見てくると、管理監督者の過重労働にも注意が必要になります。

66歳以上も働ける企業の割合に関する調査より◆66歳以上まで働ける企業の割合が増加
厚労省の労働市場分析レポート「希望者全員が66歳以上まで働ける企業の割合について」によれば、従業員31人以上の企業では、平成29年度で9.7%(前年比1.2ポイント増)となりました。
◆企業規模が小さいほど65歳を超える高齢者雇用に積極的
企業規模別では、31~100人規模で12%、
101~300人規模で6.2%、
301人以上規模で 3 %
と小さい企業ほど高齢者雇用に積極的です。
ここ5年はゆるやかな増加傾向でしたが平成28年度から平成29年度にかけての伸びは大きくなっています。
◆「定年廃止」 も約3割
「希望者全員66歳以上の継続雇用」が55%、「定年なし」も 26.8% という内訳です。
建設業、情報通信業、宿泊、飲食サービス業などでは、定年を廃止する傾向にあり、人手不足の産業を中心に長く働けるようにしている企業が多いこともわかります。
◆国も 「高齢者雇用」 を推進
厚労省は、従業員が31人以上の企業で「65歳までの継続雇用」を再雇用制度で対応している約12万社を対象に「定年制の撤廃」や「再雇用年齢の引上げ」を呼びかけるとしています。
今後は、高齢者雇用の取組みがますます求められてくる中で、企業としても、処遇制度や研修体制、健康配慮の体制などを整えていく必要がありそうです。

「新たな在留資格」で外国人の長期就労が可能に◆「骨太の方針」のひとつ
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案をまとめ、人手不足対策として、外国人材の受け入れを拡大するため「新たな在留資格」の創設を予定しています。
現在は単純労働の分野で外国人就労を原則として禁止していますが、医師や弁護士など高度な専門性を持った人材は積極的に受け入れ家族の帯同も認めています。
今回の新たな在留資格の対象は、人手の確保が難しく、業種の存続・発展のために外国人材の受け入れが必要と認められる業種(農業、介護、建設、宿泊、造船)の5分野を想定しています。
◆最長で10年の就労が可能
日本では約128万人の外国人が働いています。内訳は多い順に、①永住者や日本人と結婚した配偶者、②留学生などのアルバイト、③技能実習生、④専門性が高い医師や研究者などです。
技能実習生は約25万8,000人で、5年前のおよそ2倍です。今回の原案では、技能実習生に対する5年の就労延長を想定した新資格の創設を明記。実現すれば最長で10年の就労が可能となります。
政府は秋の臨時国会にも出入国管理法改正案を提出し、来年4月からの導入を目指しています。
さらに新資格を得た人が、日本語や専門 分野の試験に合格した場合には、在留期限の上限を撤廃し、家族の帯同も認める考えも掲げました。
◆技能実習制度が骨抜きになるとの懸念も
平成5年に始まった技能実習生制度は、 本来は途上国への技術移転が目的でした。
日本での就労期間が延びると、身に付けた技術を母国で活かす機会は遠のきます。
今回の案は、技能実習制度を骨抜きにする可能性も指摘され、事実上の移民政策につながるとの懸念の声も上がっています。
◆法務省で在留情報を一元管理
政府は、法務省に「在留管理インテリジェンス・センター」(仮称)を設け、雇用や婚姻などの情報を一元管理させることで、不法就労を防ぐとしています。
法務省は、外国人の離職や転職などの状況を把握しやすいよう、雇用保険を所管する厚生労働省との情報共有を進める方針です。
日本人と結婚した外国人が離婚した場合などに自治体と提携して情報を得るための法整備を進めます。
また外国人留学生の勤務先や勤務時間の管理を強化し、法定時間(1週間あたり28時間以内)を超えれば在留許可を取り消す方針です。

スポット情報●「70歳雇用」実現に向け、高齢者就労促進施策を検討 ~政府方針~ (9月6日)
政府は、原則70歳まで働き続けることができるよう、環境整備を始める。高齢者雇用に 積極的な企業への補助金の拡充、高齢者が働く意欲を高めるために評価・報酬体系の官民での見直しを行うとともに、高年齢者雇用安定法を改正し継続雇用年齢を徐々に70歳にまで引き上げる方針。今秋から本格的な検討に入る。
●留学生の就職可能業種緩和へ ~法務省が在留資格拡大を検討~(9月6日)
法務省は、外国人留学生らが日本で就職しやすくなるよう在留資格を得られる職種を広げる方針を固めた。「特定活動」の対象を拡大し、レストランでの接客業務やアニメーターのアシスタント等の仕事に就くことを可能とする。 
同省の告示を改正し、来年4月の運用開始を目指す。
●求人倍率1.63倍  ~44年ぶり高水準~ (8月31日)
厚労省が7月の有効求人倍率を発表し、前月比0.01ポイント上昇の1.63倍だったことがわかった。上昇は3カ月連続で44年ぶりの高水準。
●社会保障給付費が過去最高(8月31日)
国立社会保障・人口問題研究所は、平成 28年度の社会保障給付費について、前年度と比べ1.3%増え、116兆9,027億円だったと発表した。高齢化に伴う医療費や介護費の増加が影響し、過去最高を更新した。
●厚生年金、パート適用拡大へ (8月27日)
厚労省が、厚生年金に加入するパート労働者の適用対象を拡大することを検討していることがわかった。パート労働者の月収要件を、現在の8.8万円から6.8万円に緩和することなどが軸。9月にも社会保障審議会に検討会を設置する。
●入国在留管理庁(仮) ~来年設置へ~ (8月25日)
法務省は、平成31年4月に「入国在留管理庁」(仮称)を設置する方針を固めた。現在4,870人いる入国管理局を再編し、「庁」に格上げ。外国人労働者の受入れ拡大への対応や、不法就労の取締り等を強化する。
●パワハラ対策で中小企業を支援(8月17日)
厚労省は9月から、中小企業のパワーハラスメント対策の支援に乗り出す。パワハラ対策は従業員1,000人以上の企業の88%が対策を行っているのに対し、99人以下では26%にとどまる。このため全国約100社を対象に、専門知識を持った社労士らを無料で 派遣し、相談窓口の設置や社内規定の整備などを後押しする。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム