経営労務情報 令和6年(2024年)6月

お知らせ◆7月は4月から6月に支払う給与の届出月
この届出(社会保険の算定基礎届)で今年10月払いの給与から1年間の社会保険料が決まります。3ヶ月の平均給与月額が、残業手当などの増加で多くなると社会保険料も増えますので注意が必要です。
◆7月は「労働保険料」の納付月です。
現金納付の第1期納付期限は7月10日です。
口座振替の第1期振替日は9月6日です。
◆梅雨の間も暑さが心配されます。
梅雨の季節でも外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。気温が高くなくても湿度が高いと熱中症のリスクが高くなります。本格的な夏の前に様々な熱中症の対策もご検討ください。「熱中症特別警戒アラート」の運用も開始されています。

中小企業の賃上げ状況と企業規模による格差拡大~帝国データバンクの調査結果から~
◆賃上げの求めと中小企業の状況
2024年の春闘では、日本労働組合総連合会(連合)が4月4日に発表した集計結果では、 全体の賃上げ率は平均で5.24%と33年ぶりの高水準となりました。
人手不足や物価高騰を背景に賃上げが求められていますが、大企業が積極的に賃上げ策を進める一方、中小企業では賃上げに対する厳しい状況が見えてきます。
◆「小規模企業」は10ポイント以上下回る
帝国データバンクが2024年4月18日に公表した調査では、本年度の賃上げ実施割合は77.0%と高水準ですが、規模別に「賃上げ」する(した)企業の割合をみると、「大企業」は77.7%、「中小企業」も 77.0%とほぼ同水準の一方、「小規模企業」は65.2%となり「中小企業」を11.8ポイント下回る結果でした。
◆新卒者の採用
この調査では2024 年度入社における新卒者の採用状況も調査し、「採用あり」は45.3%、「採用なし」は53.1%でした。これを規模別で「採用あり」の割合をみると、「大企業」は76.2%、「中小企業」は40.9%、「小規模企業」は23.7%と、差が大きいことがわかります。
◆広がる格差と人手不足への対応
更に中小企業からは「大企業との賃上げ格差が拡大し、人材の確保が一段と困難になっている」との声も聞かれました。
資金的余裕がなく賃上げしたくてもできない中小企業が多く、賃上げが進む大企業との賃金格差と、これによる人手不足はますます深刻化していくものと思われます。生産性を高める様々な施策とともに、他社と差別化した人材確保の対策もあわせて検討していきたいところです。

令和5年賃金事情令和5年の総合調査より中央労働委員会は、労働争議の解決に向けて行う「あっせん」「調停等」の参考として総合調査を毎年実施しています。この調査は運輸・交通関連業種以外の資本金5億円以上、従業員1,000人以上の企業を対象に、期間の定めのない労働者を対象に実施しています。
◆令和5年6月現在の調査結果
男女平均では、平均年齢40.9歳、平均勤続年数17.3年、平均所定内賃金は年381.3千円、平均所定外賃金は65.3千円でした。所定内賃金を構成する各賃金の構成比は、基本給92.1%、奨励給0.2%、職務関連手当2.9%、生活関連手当4.2%、その他の手当0.6%でした。
◆令和5年春闘の賃金要求交渉の妥結率
調査した企業で、労働組合からの要求に交渉が妥結したのは137社で、要求があった138社の99.3%でした。妥結内容は「ベースアップの実施」 72.3%、「定期昇給の実施・賃金体系維持」67.9%でした。
◆賃金改定でベースアップを実施した企業
基本給部分の賃金表がある企業は、調査対象企業の88.7%(141社)、この中で令和5年6月までの1年間でベースアップを実施した企業は114社(全体の80.9%)、賃金を据え置いた企業は19.1%でした。
また定期昇給制度のある企業の全てで定期昇給を実施していました。昇給額は、昨年と同額とする企業は、定期昇給を実施した136社のうちの52.2%、昨年比増額とした企業は39.0%、減額した企業も5.9%ありました。
同期間において、労働者1人平均の賃金改定額(率)(昇給分+ベースアップ分)は11,398円、率で3.58%でした。うち「ベースアップ分」は額で7,176円、率で2.35%となります。
◆モデル所定内賃金
学歴、年齢別にみた「モデル所定内賃金」のピークをみると、大学卒事務・技術(総合職)は55歳で617.0千円、高校卒事務・技術(総合職)は 55 歳で483.9 千円、高校卒生産は 55 歳で 413.6 千円でした。

2025年卒大学生の就職意識の動向㈱マイナビが、2025年卒大学生の就職意識調査の結果を発表しました。この調査は1979年卒より毎年実施されています。
◆就職観
「楽しく働きたい」が38.9%(前年同値)で最多。増加幅が最も大きかったのは「個人の生活と仕事を両立させたい」で、前年比1.7ポイント増の24.5%となり、プライベートも充実し無理なく働きたい若者が多いことがわかります。
◆企業志向
大手企業への志向が53.7%で前年比4.8 ポイント増となり、3年ぶりに半数を超えました。
最も多い回答は、「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」(43.9%)でした。やりたい仕事ができるかどうかということに対する関心の高さがうかがえます。
◆企業選択のポイント
「安定している会社」が49.9%で6年連続最多となり、「給料が良い会社」も3年連続で増加(23.6%)しました。待遇や働く環境への安心感を求める傾向が読み取れます。
◆行きたくない会社
「ノルマがきつそうな会社」が38.9%で最多で、また「転勤が多い会社」も4年連続で増加し、初めて3割を超えました。共働きが増える中でライフスタイルの変更を余儀なくされる転勤への抵抗感が高まっています。

来年4月から自己都合退職者の給付制限の扱いが変わります◆改正雇用保険法が成立
今回の改正は、育児休業給付の新給付、教育訓練やリスキリング支援の充実、雇用保険の適用拡大などです。
◆自己都合退職者の給付制限の変更
公共職業訓練等を受ける受給資格者は給付制限なく基本手当を受給できるようになります。また「自己都合離職者」への給付制限期間が1ヶ月に短縮されます。(5年間で3回以上自己都合退職をした場合は3ヶ月のまま)
◆育児休業に関する新給付
子の出生後間もない期間に両親がともに14日以上育児休業を取得した場合、休業開始前の賃金の13%が最大28日分支給されます。
また2歳未満の子の養育のため労働時間を短縮して短時間勤務を行う場合は短時間勤務中に支払われた賃金の約10%が支給されます。
◆雇用保険の適用拡大(令和10年から)
「31日以上雇用されることが見込まれ」かつ「1週間の見込労働時間が10時間以上」の労働者は雇用保険の加入対象となります。

労務費増加分の価格転嫁が十分に進まず足踏みする中小企業日本商工会議所は4月30日「商工会議所 LOBO(早期景気観測)」の4月調査結果を発表しました。(全国の会員企業2,472社を対象とし2,033社が回答) また付帯調査として 「コスト増加分の価格転嫁の動向」では、持続的な賃上げに向けての課題となる労務費の増加分の転嫁は、全くできていない企業が25.6%に上っていました。
原材料費やエネルギー費を含めたコスト全体の価格転嫁については、50.9%の中小企業が上昇分の4割以上を転嫁できていますが、2023年10月の前回調査より4.4ポイント低下しています。2023年11月には公正取引委員会が中小企業の賃上げ分の価格転嫁を促す指針を公表しましたが、転嫁が十分に行われていない状況です。
◆価格協議が実施できた企業は7割超、
発注側企業との「価格協議の動向」については、「協議を申し込み、話し合いに応じてもらえた」66.0%、「コスト上昇分の反映の協議を申し込まれた」7.7%で、合計で「協議できている」企業は73.7%と、2023年10月調査から0.7ポイント減少したものの7割超の高水準で価格協議は浸透しているといえます。
一方、コスト増加分の「価格転嫁の動向」は、50.9%の企業が「4割以上の価格転嫁」が実施できていますが、2023年10月調査から4.4ポイント減少しています。
◆労務費増加分の価格転嫁
コスト増加分のうち労務費増加分の「価格転嫁の動向」については、「4割以上の価格転嫁」が実施できた企業は33.9%で、2023年10月調査から0.8ポイント減少とほぼ横ばいとなっています。また全く価格転嫁できていない企業は25.6%あり、価格転嫁の進捗は足踏みしている実態が懸念されます。

転勤は退職のキッカケになるエン・ジャパン㈱の社員・バイト求人サイト『エンゲージ』上で、ユーザーを対象に「転勤」についてアンケートを実施し、1,039名から回答を得た結果が公表されました。
◆69%が「転勤は退職のキッカケになる」
「あなたに転勤の辞令が出た場合、退職を考えるキッカケになりますか?」と問うと、69%が「なる」(なる:44%+ややなる:25%)と回答。 年代別では、20代78%、30代75%、40代以上の64%が「なる」「ややなる」と回答し、年代が低いほど転勤への抵抗感が大きいことが判明しました。また男女別では、男性62%、女性75%が「なる」「ややなる」でした。
◆転勤の辞令を受けた人の動向
転勤辞令を受けたことがある人に「転勤を理由に退職したことがありますか」と問うと31%が「退職したことがある」と回答しました。
◆半数が転勤を承諾。
「もし転勤の辞令が出た場合、どう対処しますか?」と問うと50%が「承諾する」(「承諾する」8%、+「条件付きで承諾する」42%)と回答。「条件付きで承諾する」と回答した人に承諾条件を問うと、トップは「家賃補助や手当が出る」(72%)でした。
「条件に関係なく拒否する」と回答した人に理由を問うと、トップは「配偶者の転居が難しいから」(40%)でした。

スポット情報●下請への減額分の返還額が37.3億円
11年ぶり高水準(6/6)
公正取引委員会が発表した下請法の2023年度の運用状況によると、減額や支払い遅延によって下請け企業が被った不利益に対して発注側から約37憶3,000万円が返還された。
統計で比較可能な08年度以降、12年度の約57億円に次いで、過去2番目に多い額となった。
●改正子ども・子育て支援法が成立(6/5)
少子化対策の改正子ども・子育て支援法が6月5日参院で成立した。児童手当の所得制限撤廃、高校卒業までの支給期間延長は、令和6年12月に支給分から実施。児童扶養手当の第3子以降の加算額引上げは令和7年1月分から実施される。また「共働き・共育て」の推進に向け、出生後休業支援給付および育児時短就業給付が創設される。財源の支援金は、令和8年度から医療保険料とあわせて徴収される。
●4月の有効求人倍率は1.26倍(5/31)
厚労省の5月31日の発表によると、4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.26倍(前月比0.02ポイント減)となった。物価高による収益悪化から、求人を控える傾向が続いている。製造業の新規求人数が減少(前月比7.8%減)し、4月から残業時間の上限規制が適用開始となった建設業(同3.9%)や運輸・郵便業(同2.3%)などでも減少した。一方、総務省が発表した同月の完全失業率(季節調整値)は2.6倍と、2カ月続けての横ばいとなった。
●厚生年金、企業規模要件を撤廃へ(5/29)
厚労省は、短時間労働者の厚生年金加入をめぐる企業規模要件について、撤廃する方針を固めた。試算によると、新たに130万人が適用対象者に加わる。また従業員5人以上の個人事業所の非適用業種も原則撤廃し、飲食業や宿泊業なども対象とする見通し。6月にまとめる骨太の方針に盛り込考え。
●60歳以上の労災3.9万人、8年連続の増加に(5/28)
厚労省の発表によると、昨年に労働災害で死傷した60歳以上の人は、前年比1,714人増の3万9,702人(うち死者290人)で、8年連続過去最多となった。労働者全体(死傷者数13万5,371人)に占める60歳以上の割合は29.3%。足がもつれたり、つまずいたりしたことによる転倒や、階段からの転落が多いとみられる。
●「育成就労」法案が衆院通過(5/22)
政府は2027年度までの新制度施行を目指す。育成就労で1~2年就労後は同業種での転籍を可能とし、監理団体への外部監査人の設置を義務付ける。税や社会保険料を故意に納めなかったり一定の罪を犯したりした永住者の永住許可を取り消せる規定なども盛り込まれている。
●従業員の28%からカスハラ相談(5/18)
厚労省の「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」で、過去3年間で従業員からカスタマーハラスメントについて相談を受けたと回答した企業が約28%に上った。また就職活動やインターンシップを経験した男女への調査では、約3割がセクハラ被害に遭ったと回答したことも明らかとなった。
●出産費用の保険適用、検討会設置へ(5/16)
出産費用の公的医療保険の適用について議論するため、厚労省は検討会を近く立ち上げると、16日の社会保障審議会医療保険部会で発表した。保険適用の導入検討は、政府が掲げる「こども未来戦略方針」に含まれており、次期診療報酬改定がある2026年度の実施も視野に具体的な議論に入る。

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