経営労務情報 令和6年(2024年)3月

お知らせ◆健康保険料・介護保険料が変更されます。
3月より「協会けんぽ」の保険料が変更されます。今回は健康保険料が上がりますが、介護保険料が下がるため、合計では少し下がります。
※ 新保険料率 (以下は本人負担率です)
     健康保険 = 5.01 %
     介護保険 = 0.8  %
健康保険+介護保険 = 5.81 %
◆4月から4業種の残業規制が強化されます。
現在、一般企業に定められている「時間外労働の上限規制」が、この4月から建設業、運送業、医療関係、砂糖製造業にも適用されます。今後は長時間労働の改善に向けた取り組みを実施していかなければなりません。
◆4月から6月に支払う給与にご注意を
4月から6月に支払う給与総額の「平均額」により、10月に支払う給与から1年間の社会保険料が決まります。
この間の残業など手当の増額で月額給与が増えると、社会保険料が増えてしまいます。
◆3月、4月は入社・異動が増加します。
この時期は入社や異動の申請が多く、新しい「保険証」の発行が遅れます。


9割の建設事業者が賃金引上げ◆建設工事における実態を調査
国交省では、毎年、建設工事における下請取引等の実態調査を行い、下請代金の決定方法や工期の設定、建設労働者への賃金支払状況等の項目における建設業の法令違反行為の有無を調べ、違反している建設業者に対して指導を実施しています。1月31日公表の令和5年度調査では、9,136業者が集計対象でした。
◆約9割の建設業者が賃金を引上げ
今回の調査結果では、賃金を引上げた、あるいは引上げる予定があると回答した建設業者は89.6%と、昨年度の84.2%よりアップしました。賃金を引上げた理由としては、「引上げなければ必要な労働者が確保できない」が55.9%で最多でした。一方、引上げない理由としては、「経営の先行きが不透明で引き上げに踏み切れない」が46.2%で最多でした。
◆見積書の項目に問題のある例も
下請負人に対し、見積書へ法定福利費の内訳を明示するよう働きかけている元請負人は69.3%、労務費の内訳を明示するよう働きかけている元請負人は65.2%にとどまり、逆に元請負人に対して、見積書に法定福利費の内訳を明示した下請負人は77.6%、労務費の内訳を明示した下請負人は68.3%でした。
調査の結果、建設業法に基づく指導を行う必要があると認められた建設業者には指導票の送付と指導が行われ、必要に応じて立入検査等も実施されます。

続く売り手市場、最近の学生の就活状況は?◆大学生の就職内定率は86%
厚労省と文科省が公表した、令和6年3月大学等の卒業予定者の就職内定状況調査 (令和5年12月1日現在)では、大学生の 就職内定率は86.0%(前年同期比1.6 ポイント上昇)でした。
また短大の就職内定率は66.7%で同2.7ポイント低下、高等専門学校および専修学校 (専門課程)の就職内定率は、それぞれ97.8%(同1.2ポイント上昇)、73.2%(同3.4ポイント上昇)となり、売り手市場が続いています。
◆学生の囲い込みのための「オヤカク」
学生優位の売り手市場の中、企業側も内定者の囲い込みに必死です。最近では、内定辞退等を防ぐため、就職希望者の入社や内定の承諾を直接親に確認する「オヤカク」などの広がりが報道されています。
◆難しい人材確保への対応を
これまで新卒採用は4月入社が主流でしたが、労働力人口の減少やグローバル化の状況を踏まえ、経団連は多様な人材の獲得に向けて通年採用の拡大を提言しています。
今後、大企業の通年採用の拡大が予想される中、内定辞退率の高さで悩む中小企業では人材獲得の難しさが増しており、深刻な人材確保の問題について検討する必要があります。

外国人労働者数が初の200万人超え◆外国人労働者数は過去最高を更新
国内で働く外国人は昨年10月末時点で前年と比べ12.4%増えて、204万8,675人 (前年比で22万5,950人増加)に上り、平成25年から11年連続で過去最多を更新しました。外国人労働者の増加率はコロナ禍前の水準にまで回復しています。また、比較可能な平成20年以降、200万人超えは初めてです。
◆外国人を雇用する事業所数も過去最高
外国人を雇用する事業所数は31万8,775所で、前年比1万9,985所増加し、届出の義務化以降、こちらも過去最高を更新しました。 
対前年増加率は6.7%と、前年の4.8%から1.9 ポイントの上昇でした。
◆国別ではベトナムが昨年同様に最多
ベトナムが51万8,364人で、外国人労働者数全体の25.3%を占め、次いで中国39万7,918人(全体の19.4%)、フィリピン22万6,846人(全体の11.1%)の順でした。
対前年増加率では、1位インドネシア(56.0%増)、2位ミャンマー(49.9%増)、3位ネパール(23.2%増)の順でした。
◆在留資格別では
在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率として最も大きく 59万5,904人で、前年比11万5,955人(24.2%)の増加、次いで「技能実習」が41万2,501人で、前年比6万9,247人(20.2%)増加、「資格外活動」が35万2,581人で、前年比2万1,671人(6.5%)の増加でした。

4月からの施行!労働者募集に関する注意点◆明示すべき労働条件が追加されます
令和6年4月より、労働契約の締結時や 有期労働契約の更新時に明示すべき労働条件として、「就業場所」と「業務の変更範囲」について「雇入れ直後」とその後の「変更範囲」を記載することになります。これは求人申込の際にも明示が必要になります。
更に有期労働契約を締結する場合には、 「有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項」(通算契約期間または更新回数の上限を含む)も明示しなければなりません。
◆「変更範囲」はどこまで書けばよいか
正社員の場合は契約期間が長いため、厚労省では「募集時点で具体的に想定されていないものを含める必要はない」としています。
◆求人票に書ききれない場合はどうするか
求人広告内に書き込めない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などとし、一部を別途明示することも可能です。この場合は面接などで求職者と最初に接触する時までに労働条件を明示する必要があります。

4月より労災保険率が改定!厚生労働省は令和6年4月1日施行に向け、主に労災保険率改定の作業を進めています。
◆労災保険率とは
労災保険率とは、労災保険料の計算に用いられる料率のことです。労災保険率は、54の事業についてそれぞれの業種の過去3年間の災害発生状況などを考慮し、原則3年ごとに改定されています。建設事業などの危険な業種ほど高く、労災事故が起こりにくい業種ほど低く設定されています。
◆業種平均で0.1/1000引下げへ
労災保険率の業種平均は現在4.5/1000ですが、4.4/1000へ引き下げられる予定です。
・引下げは、「林業、定置網漁業又は海面魚類養殖業」「採石業」「めつき業」「金属材料品製造業」などの17業種
・引上げは、「パルプ又は紙製造業」「電気機械器具製造業」「ビルメンテナンス業」の3業種
・変化なしは34業種
◆一人親方などの特別加入保険料率を改定へ
特別加入全25区分中、5区分で引下げとなる予定です。
・引下げは、「個人タクシー、個人貨物運送業者、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物運送の事業」「建設業の一人親方」「医薬品の配置販売業者」「金属等の加工、洋食器加工作業」「履物等の加工作業」の5区分
◆建設の事業に係る労務費率(請負金額に対する賃金総額の割合)を改定へ
「鉄道又は軌道新設事業」「その他の建設事業」の労務費率を引き下げる予定です。

賃金改定率が過去最高に~厚生労働省・実態調査から~◆「賃金引上げ等の実態に関する調査」結果
1人当たりの平均賃金を引き上げたまたは引き上げる企業の割合は89.1%(前年同比3.4ポイント増)、1人当たりの平均賃金の引上げ額は9,437円(同3,903円増)でした。
平均賃金引上げ率は3.2%(同1.3ポイント増)で平成11年以降最も高い数値でした。
同調査は、常用労働者100人以上を雇用する民間企業を対象とし、3,620社中1,901社から有効回答を得ました。
◆産業別にみると、平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は、「建設業」が100.0%で最も高く、次いで「製造業」が97.7%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が92.9%となっています。
◆平均賃金の引上げ額は、「鉱業、採石業、砂利採取業」が18,507円(引上げ率5.2%)で最も高く、次いで「情報通信業」15,402円(同4.5%)、建設業12,752円(同3.8%)
◆業績好調による賃金引上げとは限らない
賃金改定の決定に当たり最も重視した要素をみると、「企業業績」が36.0%で最も多く、次いで「労働力確保・定着」が16.1%、「雇用維持」が11.6%でした。
近年、物価上昇への対応や従業員のモチベーション向上、人材確保・定着などを理由として賃金引上げを実施する企業が増加しています。しかし、賃金引上げを実施するすべての企業が業績好調による引上げとは限らず、業績は改善しないが従業員の生活を守り、人材流出を防ぐことを狙いとして実施する企業も多いと考えられます。

スポット情報●実質賃金22カ月連続で減少も
マイナス幅は縮小(3/7)
厚労省が7日発表した2024年1月の毎月勤労統計調査(速報)によると、労働者1人当たりの実質賃金が前年同月比0.6%減で、22カ月連続の減少となった。名目賃金は同2.0%増で、25カ月連続のプラス。実質賃金の算出に使う 1月の消費者物価指数は2.5%増で12月より0.5ポイント下がり、名目賃金の伸びが前月を1.2ポイント上回ったため、物価上昇と賃金の伸びの差が縮まった。
●マイナンバーカードの全機能をスマホに搭載(3/5)
政府は3月5日マイナンバー法などの改正案を閣議決定し国会に提出した。マイナンバーカードのICチップが備える3つすべての機能を スマートフォンに搭載し、マイナンバーカードをスマホにかざしたり画像を撮影して送ったりしなくても本人確認ができ、実物のカードが手元になくてもスマホのみで様々な手続きができるようにする。今国会で成立させ2025年夏以降の運用開始を目指す。
●求人倍率2カ月連続で横ばい(3/1)
厚労省が3月1日に発表。1月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.27倍で、前月から横ばいだった。新規求人数(現数値)は前年同月比で3.0%減少した。また総務省が同日発表した1月の完全失業率は2.4%で、前月から0.1ポイント低下し、3カ月ぶりに改善した。
●日本で就職する留学生の在留資格変更が柔軟に(3/1)
出入国在留管理庁は2月29日、在留資格に関連する告示と運用指針を改正。専門学校等を卒業した留学生に日本での就職を促すため、 文科相の認定課程を修了した学生らが日本で働く場合に、在留資格を「留学」から高度人材に相当する「技術・人文知識・国際業務」に変更する際、専攻科目と就業分野の関連性が低くても認めるなど、従事できる業務の幅を広げる。
●在留カードと一体にした新マイナカード発行(2/26)
政府は外国人の在留カードとマイナンバーカードを一体にした新たなカードを発行する。新たなカードは表面に氏名、国籍、在留資格の種類、就労の可否、裏面にマイナンバー情報などを記載する方針。3月中に出入国管理法改正案など関連法案を国会に提出し、システムを改修した後、2025年度に希望する外国人から受付を開始する。
●2024年度の公共工事の労務単価5.9%の引上げへ(2/17)
国交省は2月16日、公共工事の予定価格の見積もりに使う賃金基準「公共工事設計労務単価」について、2024年度は前年度より平均5.9%引き上げ、全職種の全国平均で2万3,600円とすると発表した。引上げは12年連続で、公表を始めた1997年以降で過去最高。3月以降に発注する工事から適用される。
●中堅企業の賃上げを重点支援(2/17)
政府は2月16日、産業競争力強化法の改正案を閣議決定した。従業員2,000人以下の企業を「中堅企業」と定義し、賃上げ等の重点支援を行う。これまで大企業と同等に扱われ、中小企業と比べて税制面での支援が手薄だったが、設備投資減税や法人税の減税により成長の後押しをし、経済の底上げと賃上げ拡大につなげる。年内の成立、施行を目指す。
●中小企業の61%が賃上げを予定 (2/15)
日本商工会議所が2月14日に公表した中小企業の人手不足・賃金等に関する調査結果で、4月以降に賃上げ予定との回答が、61.3%に上った。このうち36.3%が3%以上の賃上げを計画していると回答。人手が不足しているとの回答は65.6%だった。調査は今年1月、全国の中小6,013社を対象に行われ、回答率は49.7%。
●特定技能に4分野追加を検討(1/28)
政府は、在留資格「特定技能」に4分野(自動車運送、鉄道、林業、木材産業)の追加を検討している。2023年度内の閣議決定を目指す。また既存の飲食料品製造分野、産業機械製造業分野については、対象業務の追加を検討している。
●コスト増を下請企業が価格転嫁しているか 最低業種は運送業(1/19)
公正取引委員会と中小企業庁は1月18日、2023年度の企業の価格転嫁状況に関する調査結果を公表。下請法違反などが多い27業種を対象に取引状況を調査したもので、下請企業からの価格転嫁を「おおむね受け入れた」と回答した発注企業の割合は、全業種平均で84.5%、ただし運送業では45.5%だった。運送業は昨年度より2.9ポイント悪化し全業種で最低となった。
●自己都合退職の失業給付が1カ月早く(1/5)
厚労省の労働政策審議会が1月10日、雇用保険制度の改正に向けた報告書を提出。失業給付の給付制限が「自己都合退職」では2カ月以上だったが、1カ月に短縮する。このほか、在職中にリスキリングに取り組んでいたことを 条件に、自己都合でも会社都合と同じ期間受給できるようにする。通常国会に関連法案を提出し、2025年度の実施をめざす。

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