経営労務情報 令和4年(2022年)9月

お知らせ◆最低賃金 が10月1日より31円上がり"986円"(愛知県)となります。
今年も過去最大の増額となります。
パートさんの時給変更と、社員の基本給や手当などの固定して支払う月額及び日額が、時間単価に換算した場合に、最低賃金以上となっている必要があります。
◆年1回の社会保険料の「定期変更」
「社会保険の算定基礎届」に基づく年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月に支払う給与から対象となります。
個人ごとの社会保険料を、変更する必要があるかご確認ください。健康保険・厚生年金の保険料率の変更はございません。
◆雇用調整助成金について
コロナ感染の「雇用調整助成金」の特例期間は、10月以降も上限額の減額や要件を縮小して延長になる報道がでてきました。
◆ 今年も厳しい 残暑 が続いています。
外作業、工場内の「熱中症」にご注意ください。仕事中の「熱中症」は労災になります。

「雇用保険料率」が上がります従業員の「雇用保険料率」が10月から上がります。 ただし、事業主負担は4月より上がっています。
◆従業員の負担率(10月から)
建設業以外は0.5%、 建設業は0.6%
給与計算の時は、給与プログラムの変更などもご注意ください。
◆変更する月の具体例は以下のとおりです。
15日締/当月25日払→10月25日払より
20日締/当月末日払→10月末日払より
25日締/翌月5日払→11月5日払より
末日締/翌月10日払→11月10日払より
末日締/翌月末日払→11月末日払より
末日締/翌々月末日払→12月末日払より

最低賃金の過去最大の引上げ◆令和4年度、地域別最低賃金額改定の 目安は、厚労省審議会公益委員が示した3.3%を基準とし、30~31円という過去最大の引上げになります。
◆これを踏まえて、茨城県、兵庫県、佐賀県、熊本県では、答申額を上回る32円の引上げを決定し、また北海道も同じく31円への引上げを決定しています。
◆中小企業向けの支援策は?
中央最低賃金審議会では、企業物価指数が9%超の水準で推移する中で、多くは十分な価格転嫁ができず厳しい状況であること、特に中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものになったと受止められています。
◆業務改善助成金の動向に要注目
具体的には、業務改善助成金について、原材料費等の高騰にも対応したものとするなど、より実効性ある支援の拡充、また最低賃金が相対的に低い地域における重点的な支援の拡充等が挙げられています。
昨年度は、最低賃金引上げに対応した業務改善助成金特例コースの受付が令和4年1月13日に開始されましたが、本年度の 支援策の動向に注目したいところです。

外国人技能実習制度見直しへ◆国際的な批判
「技術移転による途上国支援」を目的に始まった外国人技能実習制度は、外国人を安価な労働力として使っている実態が指摘され、国際的にも批判を受けています。
米国務省の「世界各国の人身売買に関する2022年版の報告書」では、この制度で「強制労働」の実態について悪質な仲介業者や雇用主の責任を日本政府が追及していないと批判もしています。
◆厚労省から「外国人技能実習生の実習実施者に対する令和3年の監督指導、送検等の状況」が公表されました。その概要は、
1)法令違反があった事業者は、調査した9,036事業所の内6,556事業所(72.6%)
2)主な違反は、①使用する機械等の安全基準不備(24.4%)②割増賃金の未払(16.0%)③労働時間違反(14.9%)などでした。
3)重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検されたのは25件でした。
◆制度見直しの表明
法務省及び政府は抜本的な制度の見直しを急ぐ予定ですが、発表された論点としては、「実習生の日本語能力が不足し、意思疎通が困難」、「不当に高額な借金を負って来日する実習生の存在」、「技能実習生の保護と、受け入れ先企業の監督を行う監理団体の相談・支援体制が不十分」、「転職の在り方」などの問題点が示されました。
企業としても、違反する実態がないかなどの自主点検も必要になりそうです。

半数以上の新入社員が10年以内の退職を考えている!株式会社マイナビが2022年卒の新入社員800人を対象にWEB上で「新入社員の意識調査」を実施しその結果が公表されました。注目点は以下のとおりです。
◆今の会社を「3年以内に退職予定」は28.3%、「10年以内」では51.0%。
昨年とほぼ同じ割合ですが、ここ数年は 微増となっています。最も多い理由は、男性が「転職でキャリアアップしたい」(33.9%)、女性が「ライフステージに合わせて働き方を変えたい」(43.6%)でした。
なお「定年まで」と答えた割合は18.5%。
◆一方65%が現在「働きがい」を感じています。「働きがいを感じる職場」とは、
①「自身の成長を感じる」(55.6%)
②「誰か(顧客・同僚)の役に立てた」(49.8%)
③「褒められる、むくわれる」(48.0%)
意外にも、「自身の働きに見合う給与が得られている」は31.1%と低めの結果となり、金銭面よりも精神面での充実のほうが重要視されているようです。
◆「テレワークが廃止されても働き続ける」は約半数
新入社員のテレワーク率は19.1%ですが、廃止されても働くかの回答は、「働き続ける」(51.3%)、「テレワークできる会社に転職する」(23%)、残りは「分からない」。一方で、テレワークがない人に、テレワークで働きたいかを問うと「働けるならテレワークがいい」(50.0%)、「思わない」(43.7%)と分かれる結果でした。
本年の新入社員は授業や就職活動がWEB上であった世代で、完全出社、テレワークを問わず、上司や先輩とのコミュニケーションがとりやすく、働きがいを感じると職場の定着につながりそうです。

健康診断結果の「所見あり」は「受診推奨」を。放置はNG!◆会社にもメリットの多い「受診推奨」
健康診断の後「受けたまま」になっていませんか?「要再検査」「要精密検査」「要医療」などの「所見あり」になった場合、会社は「二次健康診断の受診をすすめるか、医師の意見を受けることが適当である」とされています。医師の意見書を受けるだけなら「地域産業保険センター」または「医師会」にて無料で受けることが可能です。
この再受診をすすめなかったために企業が安全配慮義務違反に問われたこともあります。病気が重症化する前に医療機関を受診すれば、労働者の健康リスクは低減されます。健康で長い間働き続けてもらうことができれば、企業の生産性向上、ひいては業績向上にもつながります。
◆すすめても受診しない場合の対応
どうしても受診しない場合は、会社が最善を尽くした証拠を残し、どのように受診をすすめたかか、どのように拒否されたかなどを記録しておくことが重要です。

企業の社員教育の現状とリスキリング◆教育訓練費用を支出した企業は5割
厚労省が令和3年度「能力開発基本調査」を発表し、企業の教育訓練への支出では、教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は50.5%となり、昨年と同水準でしたが近年は低下傾向です。
OFF-JTに支出した費用の1人当たりの平均額は1.2万円でこちらも近年は減少傾向です。
◆能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は76.4%。
問題点は、①「指導する人材が不足している」(60.5%)、②「人材育成を行う時間がない」(48.2%)、③「人材を育成しても辞めてしまう」(44.0%)と続きました。
◆厚労省は6月に「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を策定・公表し、社会環境の変化、職業人生の長期化、労働者の学び・学び直しの重要性の高まり、労使が取り組むべき事項、公的な支援策等を体系的に示しました。
社員のリスキリング(働き方の変化による新たに発生する業務に役立つスキルや知識の習得を目的に勉強する取り組み)にも注目が集まり、モチベーションアップや生産性の向上にも寄与する可能性があります

インターン学生情報、採用選考での活用が可能に◆「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」の改正
これまで採用活動前の学生のインターンシップは「広報活動や採用選考活動に使用できない」ルールでしたが、一定の条件を満たす場合は、企業が採用選考時に利用できるようになります。
◆インターンシップとは?
これまでは「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(その仕事で通用するか)」体験することを目的に、就業体験(企業の実務を経験)を行う活動(学生の学習段階に応じた内容)」と定義されていました。
◆今回の改正により、令和6年度以降に卒業・修了予定の大学生と大学院生の就職・採用活動において、令和5年度以降に実施するインターンシップで得られた学生情報については、採用活動開始後に活用できるようになります。これにより、今後インターンシップの実施を検討する企業も増えることが予想され、また既に実施している企業でも、採用活動に利用することができるようになります。
◆ただし、インターンシップは「就職・採用活動そのものではないので、インターンシップと称して就職・採用活動開始時期の前に就職・採用活動そのものを行わないこと」や、募集要項等に情報開示(実施時期・期間などの項目に関する情報を記載し、HP等で公表する)が求められるなどの要件が定められるため注意が必要です。

スポット情報●10月から「雇調金特例措置」上限引下げ
1万2,000円で検討(8月26日)
政府は特例的に増額していた雇用調整助成金について、10月から助成額の上限を引き下げる方針を固めた。特に業績が悪化している企業の日額上限1万5,000円を1万2,000円に引き下げる。それ以外の企業についても、日額上限9,000円を原則の8,355円に戻す。新しい上限額は2~3カ月間適用し、さらに引き下げるかは雇用情勢や感染状況等を踏まえて判断するとしている。
●「人への投資」に1,100億円
厚労省23年度概算要求(8月26日)
厚労省は25日、総額33兆2,644億円とする23年度予算概算要求案を自民党の厚労部会に提示した。政府が重要政策として掲げる「人への投資」を進めるため、関連予算で22年度当初予算比1割増の1,101億円を計上。デジタル人材の育成強化、「学び直し」を促進する環境の整備、人手不足業種への労働移動促進等により、成長力・生産性の向上につなげる。
●今年度の最低賃金改定額 
全国平均は31円増の961円(8月24日)
厚生労働省は23日、各都道府県の地方最低賃金審議会がまとめた22年度の地域別最低賃金(時給)の改定額を発表した。各地の引上げ幅は30~33円。全国平均は961円で、21年度からの上昇率(3.3%)、引上げ幅(31円)ともに過去最大となった。また、地方を中心に22道県で中央最低賃金審議会が示した目安額を超える改定となり、最高額と最低額の地域格差は2円縮まった。改定後の最低賃金は、10月1日から順次適用される予定。
●事務系の派遣時給
2カ月連続で過去最高を更新(8月18日)
エン・ジャパンが17日に発表した三大都市圏の7月の派遣社員の募集時平均時給は、全職種平均が1,628円で前年同月比0.2%(3円)増だった。特に事務(オフィスワーク)系が1,599円で前年同月比2.4%(37円)増となり、2か月連続で過去最高を更新した。
●特定技能外国人の運用見直し(8月4日)
政府は3日、特定技能制度による外国人の在留資格について、業種ごとに定めた受入れ上限人数の改定案をまとめた。コロナ禍で持ち帰り弁当や総菜の需要が強まったことを受け、飲食料品製造業の上限は現在の2.6倍に増やす一方、客数が減る外食業や宿泊は縮小させる。全業種合計の上限人数は据置きとする。このほか、一部の業種で技能実習生が試験免除で特定技能の在留資格へ円滑に移行できるようにする。近く閣議決定する見通し。
●技能実習
JICA・ベトナムが求人サイト(7月29日)
国際協力機構(JICA)はベトナム政府と協力し、日本の求人情報を提供する専用サイトを開設する。技能実習生が来日時に負担する高額な手数料が問題視される中、仲介業者を通さずに送り出し機関に直接応募しやすくすることで、手数料負担を減らす。2023年度に試行予定。
●中小企業の賃金上昇率
24年ぶりの高さに(7月13日)
厚労省は12日、今年の中小零細企業の賃金上昇率が1.5%だったことを明らかにした。コロナ禍の影響を受けた昨年は0.4%まで下がったが、今年は企業の業績回復や
物価高の影響もあったとみられ、24年ぶりの高さとなった。

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