経営労務情報 令和4年(2022年)6月

お知らせ◆コロナ感染対策と熱中症対策が重なる3度目の夏を迎えます。外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。
◆7月は4月から6月に支払う給与の届出月です。この届出で今年10月支払の給与から1年間の社会保険料が決まります。この間の残業が増えるなどにより、給与総額が増えると保険料が増えてしまいますので注意が必要です。
◆7月は「労働保険料」の納付月です。
第1期の納付期限は7月11日です。
口座振替による納付は9月6日になります。
◆夏期賞与を支払った際はお知らせ下さい。
賞与からも忘れずに社会保険料を引いてください。
◆雇用調整助成金について
コロナ感染の「雇用調整助成金」の特例期間は、9月末まで延長が決まりました。
「小学校休業等対応助成金」についても9月末まで延長する方針が決まりました。

「雇用保険料」が上がります雇用保険法改正により、2022年度は雇用保険料率が2段階で上がります。4月からは事業主負担のみ上がっています。また10月からは従業員負担も上がります。
◆保険料率が引き上げられた背景
コロナ感染拡大の影響で、事業縮小や休業による悪化した雇用環境を改善するための支出が増大したことによります。
◆保険料の負担率
《事業主負担率》
      3月まで 4月から 10月から
建設業以外 0.6%  0.65%  0.85%
建設業   0.8%  0.85%  1.05%
《従業員負担率》
      3月まで 4月から 10月から
建設業以外 0.3%   0.3%  0.5%
建設業   0.4%   0.4%  0.6%

最低賃金引上げの影響と対応~日商調査結果から~◆最低賃金引上げが中小企業に与えた影響
日本商工会議所と東京商工会議所は、全国の中小企業を対象に「最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査」(調査期間:2022年2月7日~28日、回答企業数:3,222社)を行いその結果を公表しました。
昨年10月の最低賃金引上げの影響とその対応等について調べたものです。
◆最低賃金引上げによる影響と対応
①最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた企業(直接的な影響を受けた企業)の割合は40.3%。
②賃金を引き上げた従業員の形態は、「パートタイム労働者(主婦パート、学生のアルバイトなど)」と回答した企業の割合が83.4%。
③人件費の増加に対して行った具体的な内容を聞いたところ、「人件費が増大したが対応策がとれない(とれなかった)」とする回答が4割超(42.2%)と最も多かった。
④現在の最低賃金額の負担感は、「負担になっている」と回答した企業の割合は65.4%。業種別では、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」で90.9%と最も高かった。
⑤今年の最低賃金額の改定について、「引き上げるべき」と回答した企業の割合は、前年調査から13.6ポイント上昇し41.7%となり、「引き下げるべき」と「引上げはせずに現状の金額を維持すべき」の合計(39.9%)を上回った。
◆2022年度の賃上げは?
本年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は45.8%、そのうち約7割(69.4%)が「業績の改善がみられないが賃上げを実施(防衛的な賃上げ)予定」と回答しています。社員のモチベーション向上や人材の確保・採用を目的に厳しい中でも賃上げを選択するという傾向がみられました。

就職観は「楽しく働きたい」が最多
  ~「マイナビ2023年卒業、大学生就職意識調査」から~
㈱マイナビが1979年卒より毎年実施している「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」の結果は次のとおりでした。
◆就職観
就職観はこれまでと同様に「楽しく働きたい」が最多で37.6%(対前年2.8pt増)。2020年卒以降減少傾向でしたが、3年ぶりに上昇に転じました。
経済状況の悪化や大災害等が起きた際は同項目の割合が減少する傾向にありますが、新型コロナ感染症の観点で見ると、ワクチン接種が進んだほか、各種行動制限の緩和などが進み、学生も社会に対する不安が軽減されたことから3年ぶりに数値上昇の背景となった可能性も考えられます。
◆企業選択のポイント
企業を選択する基準であてはまると思う項目を2つまでを聞いたところ、「安定している」が43.9%(対前年1.1pt増)と最多。「自分のやりたい仕事(職種)ができる」が32.8%で前年比1.8pt減、「給料がよい」が19.1%で前年1.6pt増となり、前年同様トップ3の項目となった。「給料がよい」は16年卒調査以来毎年上昇していましたが、前年22年年卒で2.3pt減少。今年は1.6pt増加となりました。
◆選択しない会社
選択しない会社(あてはまる項目を2つ選択)を聞いたところ、「ノルマがきつそうな会社」が前年に続き最多で37.4%(対前年1.6pt増)、次いで「暗い雰囲気の会社」で27.1%(対前年1.8pt減)となり、上位2項目は2008年卒以来変わっていませんが、2022年卒で上位3項目に浮上してきた「転勤の多い会社」が今年も3位となり、前年比1.7pt増の26.6%となりました。

新入社員が辞める理由は?
 ~連合「入社前後のトラブルに関する調査2022」より~
◆「3年以内に3割離職」の現実
日本労働組合総連合会が実施した「入社前後のトラブルに関する調査2022」(調査期間:2022年2月28日~3月2日、大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2~5年目の男女1,000名の有効サンプルを集計)によれば、新卒入社した会社を「半年以内の離職」は7.7%、「半年を超え1年以内の離職」は6.2%、「1年を超え2年以内の離職」は10.4%、「2年を超え3年以内の離職」は5.2%、「3年を超えてからの離職」は3.7%、となり、「3年以内」は合計29.5%という状況でした。
◆新入社員が辞めた理由は?
理由は「仕事が自分に合わない」(40.1%)が最も高く、次いで、「労働時間・休日・休暇の条件が悪い」(31.0%)、「賃金の条件が悪い」(27.4%)と続き、待遇よりも仕事のミスマッチを挙げる人の割合が多い結果でした。また新入社員研修や先輩・上司からの指導・アドバイスがなかった人では、『離職した』の割合は41.9%と、指導・アドバイスがあった人(30.9%)と比べて11.0ポイント高くなっており、周囲の支援による差は大きいことがわかります。

中小企業の賃金動向と今後の見通し◆給与水準を引き上げた企業は昨年より上昇も、2年連続で半数を下回る。
日本政策金融公庫が公表した「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果(調査時点2021年12月、有効回答数5,640社)によると、2021年12月の正社員の給与水準を前年から「上昇」させた企業割合は41.1%と、前回調査(31.2%)から9.9ポイント上昇しました。ただしコロナ禍前は給与水準上昇との回答が5割を超えていたことから、2年連続で半数を下回っている点が指摘されています。
◆正社員の給与水準上昇の背景
同調査では、「正社員の給与水準上昇の背景」も聞いており、「自社の業績が改善」と回答した企業割合が35.0%と最も高く、次いで「採用が困難」(19.3%)、「最低賃金の動向」(18.1%)、「同業他社の賃金動向」(10.3%)と続いています。
特に2021年は、「最低賃金の動向」による影響が前年度よりも増加していることから、過去最大の上げ幅となった最低賃金の引上げが影響を与えたことがわかりました。
◆他社との採用競争と給与水準の見直し
2022年見通しをみると、給与水準を「上昇」と回答した企業割合は44.4%となっており増加傾向にあります。コロナによる影響から持ち直している企業も増える中、すでに人手不足を訴える企業も増えています。
人手不足は売上機会の逸失というリスクを生み、企業の経営上、影響は非常に大きいところです。今後、他社との人材獲得競争の中、給与水準の見直しも検討が必要になります。

法定の歯科健康診断 
 事業場の人数にかかわらず実施報告が義務に
◆労働安全衛生規則の一部改正の趣旨
厚労省は、令和元年度に一部地域で実施した自主点検の結果により、常時使用する労働者が50人未満の事業場では、歯科健康診断の実施率が非常に低いことが判明しました。そこで、実施状況を正確に把握し、その実施率の向上のため、事業場の人数にかかわらず実施報告の義務付けを行うことにしました。
◆改正の内容(令和4年10月1日予定)
歯科健康診断を実施する義務のある事業者は、使用する労働者の人数にかかわらず、歯科健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出することとされます。
※現行は常時50人以上が対象。

令和4年4月からの年金制度の変更点年金制度が4月より一部改正されました。
◆繰下げ受給の上限年齢引上げ
老齢年金の繰下げ年齢の上限が75歳になりました。(以前の上限は70歳)
また65歳後に受給権を得た場合も繰下げ上限が10年になりました。(以前は5年)
◆繰上げ受給の減額率の見直し
繰上げ受給の場合の減額率が、1月あたり0.4%になりました。(現在は0.5%)
◆在職老齢年金制度の見直し
60歳から64歳に支給される年金制度も、支給停止とならない範囲が拡大され、給与と年金の合計額の基準が28万円から47万円になりました。(65歳以上の在職老齢年金と同じ基準になりました)
◆加給年金の支給停止規定の見直し
加給年金の加算対象となる配偶者の支給停止基準が変更されました.(経過措置あり)
◆在職定時改定の導入
老齢厚生年金受給者が、再就職し厚生年金に加入した場合、65歳以降の加入期間は退職時か70歳到達時にのみ年金額が改定されましたが、在職中の65歳以上の受給者は毎年改定が行われるようになりました。
◆基礎年金手帳を持っていない人には「基礎年金番号通知書」が発行されます。

スポット情報●実質賃金4カ月ぶりにマイナス(6月7日)
厚労省は7日、4月の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。1人当たりの現金給与総額は28万3,475円と前年同月よりも1.7%増え、4ヶ月連続のプラスとなった。
一方、実質賃金は前年同月1.2%減で4ヶ月ぶりにマイナスとなった。
●コンビニFCオーナー 労組法上の「労働者」と認めず(6月7日)
コンビニFCオーナーが労働組合法上の労働者に当たるかが争われた訴訟で、東京地裁は6日、「労働者には当たらない」との初めての判断を示した。中央労働委員会の命令を是認した内容となる。原告のユニオンは2009年に会社から団体交渉を拒否され、その救済申立てに対し14年に岡山県労働委員会から団体交渉に応じるよう命令が出されたが、再審査を受けた中央労働委員会が2019年に結論をくつがえしていた。
●実質賃金 5年ぶり増もコロナ前下回る(5月24日)
24日、厚労省が発表した2021年度の毎月勤労統計(確報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年度に比べて0.5%増えた。5年ぶりのプラスとなったが、新型コロナ禍前の水準には届かなかった。
●75歳以上の金融所得を健康保険料に勘案(5月22日)
政府が近く決定する「骨太の方針」の原案が判明し、75歳以上の後期高齢者の金融所得を勘案して健康保険料を決める新たな仕組みを検討することがわかった。収入のある高齢者に応分の負担を求めるため、年金収入だけでなく株式売却益や配当収入などを勘案じて保険料を決めることを想定する。
●大企業の賃上げ2.27%で4年ぶりに上昇(5月21日)
経団連は春季労使交渉の1次集計結果で、大手企業の定期昇給とベアを合わせた賃上げ率は2.27%で、前年より0.45ポイント上昇したと発表した。前年を上回ったのは2018年以来4年ぶりで下落傾向に歯止めがかかる一方、新型コロナ禍で業種による格差も目立った。
●厚生年金加入義務 個人事業所の業種拡大検討へ(5月13日)
厚労省は5人以上の従業員を雇う個人事業所も厚生年金の加入を義務付ける業種を拡大する検討に入る。現行では製造や土木など16業種で加入が義務付けられており、今年10月には「士業」の追加が決まっている。新たに飲食店や旅館などを追加するか社会保障審議会で議論し、2025年の厚生年金保険法等の改正を目指すとしている。
●バス・タクシー運転手年齢要件を19歳以上に緩和(5月10日)  
改正道交法が施行され(5月13日)、バスやタクシーなど旅客運送に必要な「第2種運転免許」の受験資格「21歳以上かつ普通免許保有歴3年以上」が、特別な技能教習などを受ければ「19歳以上かつ普通免許保有歴1年以上」に緩和される。
21歳になるまでに累計3点以上の違反をした場合9時間の若年運転者講習の受講が義務付けられ、受講しなければ2種免許が取り消される。

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