経営労務情報 令和3年(2021年) 9月

お知らせ◆最低賃金 が10月1日より28円上がり955円(愛知県)となります。
今年は過去最大の増額となりました。
パートさんの時給確認と、基本給などの固定的に支払う月額や日額が、時給単価に換算した場合に最低賃金以上になっているかをご確認下さい。
◆年1回の社会保険料の「定期変更」
「社会保険の算定基礎届」に基づく年1回の社会保険料の「定期変更」は、10月に支払う給与から対象となります。個人ごとに社会保険料を変更する必要があるかご確認ください。本年は保険料率の変更はございません。
◆雇用調整助成金について
コロナ感染の「雇用調整助成金の特例措置」は12月末までの延長が決まりました。

職場のルールの伝え方
「それは前に言っただろ!」~ と腹を立てる前に ~
◆原因は伝え方にある?
最近では「パワハラ」という文字が頭をよぎり「それは前に言っただろ!」と頭ごなしに怒るという場面は少なくなっているかもしれません。社内のルールが徹底しない原因は従業員が怠慢なのでしょうか?
もしかしてその原因はルールの伝え方にあるかもしれません。
◆そもそも注意したい点
①矛盾するルールがないかチェックする。
(アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような注意では、従業員が勝手に判断して行動してしまいます)
②ルールの目的を説明する。
(目的がわからなければ従おうという気にはなりません)
③ルール順守者を表彰する。
(みんなの前でほめることで、他の従業員がルールに気づき守ろうと考えるようになります)
④繰り返して伝える
(人は忘れる動物です。ルールを決めた本人が忘れているということもままあります)
◆伝え方の工夫
①画像等を使って方法をわかりやすくする。
②データを使って基準を明確にする。
③わかりやすい言葉、読みやすい文章にする。
④すべての従業員に確実に伝える。
若い従業員が多い場合には、ビジネスチャットツール(Teamsなど)を使用する場合もあるでしょう。この場合は、後から検索しやすいような工夫が必要となります。
またチャットツールだけでなく、やはり口頭での説明、繰り返し伝えることなど併せて行うことで効果が高まります。
従業員がきちんと認識し、それに従って行動しようと思えるように、常に伝え方を考えて工夫し改善することが重要です。

コロナ禍で転職検討者が増加傾向◆コロナ禍で転職を考える人が増加
株式会社MyReferが行った「コロナ禍の転職意向調査」では、コロナ禍で転職を考える人が増えているという結果が出ました。 
回答者の約8割が「転職を考えた」とし、その理由は、「会社や事業の将来性に不安を感じたから」(53.6%)、「働き方を変えたいから」(42.4%)、「自分のキャリアを見つめ直しいたから」(36.4%)が上位でした。
会社や事業の将来性に対する不安や、働き方についての価値観の変化から、転職を考える人が増えたと言えます。
◆人材の確保に向けて
転職を考えたという回答者の中で、実際に転職をした人は1割程度でしたが、いずれは実行に移そうと考える転職予備軍が一定数いるとも考えられます。
自社の離職を防ぐには、あるいは転職先として選ばれるためには、どのようなことに留意すればいいのでしょうか?
1、前述の転職を考えた理由に対処すること。つまり、自社のビジョンを明確に伝え、働き方の希望やキャリアプランを把握し、それに応えていくことなどが考えられます。
2、転職を考える人が重視する項目に対処すること。主なものとしては、
①給料、②残業量や休暇日数、勤務体制、③希望の勤務地 があります。
急に改善することできませんが、自社が他社に比べてどうなのか現状を把握することは必要でしょう。転職があたり前の時代となる中、人材確保のために何ができるのか、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。

失業「1年以上」が74万人、失業者全体の3割超
~総務省労働力調査~
総務省が8月10日に発表した労働力調査(詳細集計)で、2021年4月~6月の失業者233万人のうち、仕事につけない期間が1年以上に及ぶ人が74万人と、3割以上を占めていることがわかりました。
コロナ禍で経済活動の抑制が続いていることが最大の要因とみられます。
◆正規、非正規の従業員数と「非正規」の理由
役員を除く雇用者5,615万人のうち、正規の従業員は3,557万人、非正規の従業員は2,058万人で、非正規の従業員は四半期別で6期ぶりの増加でした。
非正規の従業員について、非正規についた主な理由を男女別にみると、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く、男性は181万人と前年同期に比べ4万人の増加、女性は469万人と64万人の増加でした。一方「正規の従業員の仕事がないから」を回答した男性は104万人と3万人の減少、女性では111万人と4万人の減少でした。
◆失業者数と仕事につけない理由
失業者は233万人と、前年同期に比べ19万人増加。失業期間別にみると、失業期間が「3か月未満」の者は95万人と2万人の増加、「1年以上」の者は74万人と19万人の増加でした。
失業者が仕事につけない理由別では、
①「希望する種類・内容の仕事がない」とした者が最も多い78万人と12万人の増加、②「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が26万人、③「勤務時間・休日などが希望とあわない」が22万人、④「条件にこだわらないが仕事がない」とした者も16万人と2万人の増加でした。
◆前職の離職理由
失業者233万人のうち離職した失業者は158万人と前年同期に比べ19万人の増加。
前職の離職理由別では、①「定年又は雇用契約の満了のため」とした者が28万人、 ②「家事・通学・健康上の理由のため」が25万人、③「会社倒産・事業所閉鎖のため」が13万人、④「人員整理・勧奨退職のため」が15万人、⑤「事業不振や先行き不安のため」が8万人と、業績悪化や倒産が原因と思われる離職も増加傾向が続いています。
コロナ禍の先行きが見通せない中、我慢の続く企業も多いと思います。
一方で、業績が好調または回復基調にある企業にとっては、積極的に人材を採用できる機会といえるかもしれません。

コロナ禍で急増のおそれも「アルコール依存症」への対応
◆懸念される「アルコール依存症の増加」
働き方や生活時間の変化によるストレス、また在宅勤務により飲みやすい環境ができたことなどにより、アルコール依存症患者の増加が懸念されています。この依存症の問題は仕事のストレスや過重労働と深い関係もあるとも言われ、企業でも「職場の心の健康問題」として考える必要があります。
◆依存症が引き起こす職場のトラブル
WHO(世界保健機構)でも、健康問題・家族問題・職業問題・経済問題・刑事問題としても考えられ、個人の健康問題だけでなく、多くの社会的影響を指摘しています。
会社では、業務効率の低下、注意力の低下により事故の危険性も高まります。遅刻・早退や無断欠勤が繰り返されることによる周囲への悪影響も看過できません。
◆アルコール依存症への職場対応
アルコール依存症の治療には、本人の「何とか治したい」という治療意欲が欠かせません。酒臭い出勤、また無断欠勤などには、就業規則による懲戒処分の対象とするなど、厳しい態度で接していくことも重要です。
これにより「このままではいけない」との自覚を促し、いち早く治療につなげてあげることが、その人のことを考えた本当にあたたかい対応だともいえます。
もちろん本人がストレスをため込み過剰な飲酒に走ることのないようストレス対策を講じていくことも欠かせません。医師などとも連携し、適切なアルコール依存症対策を取ることが望まれます。

70歳就業時代の人事労務管理に必要なもの◆65歳以降の雇用・就業に向けた現状と課題に関する調査
独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、6月に「70歳就業時代の展望と課題、~企業の継続雇用体制と個人キャリアに関する実証分析~」という報告書を公表しました。
65歳以降の雇用・就業機会の拡大に向けた人事労務管理を考える上で参考になるポイントが公表されました。
◆年齢に関係ない評価と賃金制度を望む
70歳までの就業確保を義務化する政策がすすんでいますが、継続雇用が促進されると、各企業は人件費負担を考慮し、高年齢従業員の賃金や仕事内容等を工夫する必要に迫られます。
報告書では、「仮に65歳以降の就業機会の更なる拡大を目標とするなら、60歳前後で仕事内容や責任を変化させる社内制度から、変化を伴わない雇用継続のあり方へと変えていくことが重+要である。」とし、高年齢者に対して「技能やノウハウの継承」という役割を強調しすぎないこと、年齢に関わらず評価等に即して賃金を決定していく制度を導入することを挙げています。
◆労働者個人の感じ方にも留意が必要
60代前半の労働者個人の感じ方としては、60歳または定年到達前後で仕事が変わらないことに、必ずしも満足しているとはいえないとの結果も出ています。60歳や定年という節目で気分一新し、新たな学びや成長につなげたいというのが、一般的な感情なのかもしれません。
◆従業員とのコミュニケーションをとり、自社の事情に合った制度の検討が必要
各企業では、従業員の体力などへの配慮や、雇用・就業年齢がこれまでよりも上がることを考えた従業員とのコミュニケーションが必要になると思われます。
日本は高齢化社会に向かっていますし、いずれ誰もが高年齢者になります。採用や賃金への影響も考えながら、自社の事情に合った、高年齢者の雇用維持・確保方法を検討する必要があるでしょう。

スポット情報●成長戦略会議で追加の支援策(9月3日)
政府は2日の成長戦略会議で、6月に閣議決定した戦略を踏まえ、「人への投資」や経済安全保障などの分野で追加の支援策を秋にまとめる方針。人への投資としては、「飲食・宿泊業の非正規に職業訓練支援」、「フリーランスの労災対象拡大」、「リカレント(学び直し)教育などの能力開発」など。
●休校時助成金、個人申請可能に(9月1日)
厚労省は8月31日、コロナ禍による休校で仕事を休む家計支援のため、保護者個人で申請できる助成金制度を整備する方針を示した。今年3月末までの「小学校休業等対応助成金」の枠組みを活用する方向でこれから詰めるとしている。
●離職者が就職者を上回る~2011年以来9年ぶり(9月1日)
厚労省が31日に発表した2020年の雇用動向調査によると、2020年の1年間で、労働者の離職者数は727万人(14.2%)、就職者数は710万人(13.9%)となり、2011年以来、9年ぶりに離職者が就職者を上回ることとなった(調査は5人以上の常用労働者がいる1万5,184事業所を対象に実施)。
●求人サイトの個人情報取扱いについてルール化を議論(8月31日)
求人サイトなどでの雇用仲介事業が急速に広まり、労働条件をめぐりトラブルが相次いでいることを受け、厚生労働省の労政審の分科会は、ネットに掲載する情報の正確性や利用者の個人情報取扱いのルール化のため、職業安定法の改正に向けた議論を開始した。現行法上、求人サイトの開設には許可や届出が不要で、利用者の個人情報についても保護義務はなく、行政処分の対象になっていない。仲介事業の内容ごとの法的な位置づけ等を明確化し、年内に概要をとりまとめて来年の通常国会への改正案提出を目指す。
●法定以上の時間外労働で8,904事業所に是正勧告(8月20日)
厚労省は20日、2020年度に全国の監督署が立入調査をした2万4,042事業所のうち、37%(8,904事業所)で法定以上の時間外労働が確認され是正勧告をした、と発表した。このうち実際に1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は2,982事業場(33.5%)。この指導は、各種情報から80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等の労災請求が行われた事業場を対象に実施している。
●厚労省が労災特別加入対象拡大に関する調査へ(8月17日)
厚労省は、労災保険の特別加入の対象拡大に関するニーズ調査を行う。対象に追加すべき職種や業務、労災に該当する傷病の事例をサイト上で募集する(9月17日まで)。フリーランスの増加に伴い4月から芸能従事者、アニメーター、柔道整復師などを対象に含めており、9月からは自転車配達員、ITエンジニアも追加する。
●コロナ禍で首都圏から地方へ移住した人の7割がテレワーク(8月11日)
内閣府の調査でコロナ禍以降に首都圏の4都県から地方に移住した人のうち、7割以上がテレワークをしていることが分かった。今年2月にインターネットを通じて、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県から移住した478人を対象に調査し、昨年4月以降に移住した215人のうち71.6%がテレワークをしていた。移住先は出身地に戻るUターンが60.9%を占めた。

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