経営労務情報 令和3年(2021年) 7月

お知らせ◆コロナ感染対策と熱中症対策が重なる2度目の夏を迎えます。外作業や工場内での「熱中症」にはくれぐれもご注意ください。本格的な夏が訪れる前に色々な対策をご検討ください。
◆7月は4月から6月に支払う給与の届出月です。この届出で今年10月支払の給与から1年間の社会保険料が決まります。この間の給与が高いと保険料が増えます。
◆7月は「労働保険料」の納付月です。
現金納付は7月12日ですが、口座振替は9月6日になり、2期・3期の振替えも現金納付より遅くなります。
◆雇用調整助成金について
コロナ感染の「雇用調整助成金」は、8月まで延長が決まりました。ご不明な点はご連絡ください。

緊急事態宣言下でも企業の約37%が正社員不足
~帝国データバンク調査~
帝国データバンクは2021年4月に調査した「人手不足に対する企業の動向調査」の結果を発表しました(調査対象は全国 2万3,707 社、有効回答企業数1万1,003 社、回答率 46.4%)。
依然として雇用継続に苦慮している企業がある一方で、堅調な回復から人手が不足している企業もあり、企業の動向に二極化が表れていることがわかりました。
◆正社員の「不足」は37.2%。前年同月より増加も、2年前と比較すると大幅に低下
正社員が不足していると答えた企業は37.2%(前年同月比6.2 ポイント増、2年前比 13.1ポイント減)でした。
業種別では、「メンテナンス・警備・検査」と「教育サービス」(ともに「不足」55.6%)が最も高いという結果でした。以下、「建設」(54.5%)、「情報サービス」(54.1%)、「農・林・水産」(53.5%)、「自動車・同部品小売」(50.0%)が5割台と上位で続いています。
◆非正規社員(パートなど)の「不足」は 20.6%。業種では「飲食店」が唯一5割
非正規社員不足の企業は、20.6%(前年同月比4.0 ポイント増、2年前比11.2 ポイント減)でした。業種別では、「飲食店」が50.0%でしたが、2年前(78.6%)と比較すると、人手不足の割合は大幅に低下していました。次いで、「教育サービス」(46.2%)、「各種商品小売」(45.2%)、「メンテナンス・警備・検査」(42.8%)が4割台でした。
◆抜本的対策を講じなければ、人手不足は再拡大の傾向
企業の人手不足感は高まっているものの、新型コロナ以前と比較するとやわらいでいます。
ただ、新型コロナという非常事態によって人手不足は大きく低下したにもかかわらず、この調査からは依然人手不足感をもっている企業は多いという結果がわかりました。

シニア人材の処遇の不透明さは若手社員の流出につながる
~パーソル総合研究所 調査~
◆法令対応以外にも重要なことがある
改正高年齢者雇用安定法が4月1日に施行され、70歳までの就業確保を努力義務とする規定が盛り込まれました。パーソル総合研究所が行った「シニア人材の就業実態や就業意識に関する調査」からは、法令対応以外の対策も、経営にとって重要であることがわかります。
◆定年後の再雇用「年収」と「職務」の変化
定年後の再雇用で、年収が50%程度下がった人は22.5%、50%より下がった人は27.6%と約5割の人は半分以下になり、約9割の人が定年前より年収が下がっていた。(平均では44.3%減)以下の職務変化も「年収の変化」とおおむね似た傾向でした。
●定年前とほぼ同様の業務=55.0%
●定年前と同様だが業務範囲・責任が縮小した=27.9%
●定年前と関連するが異なる業務=8.1%
●定年前とは全く異なる業務=9.0%
シニア人材ついて考える参考となります。
◆シニア人材に対する会社の対応と、若手社員に与える影響
結果からは、若い世代ほどシニア人材は「給料をもらいすぎだ」「成果以上に評価されている」と思い(いずれも20代社員では約3割)、不公平を感じています。
また、シニア人材の役割や仕事を明確にせず「孤立した状況」にある会社では、転職意向を持つ若手社員が、そうでない会社に比べて2倍以上多く、この傾向は20代、30代、40代のどの年齢層でも同様でした。
◆シニア人材への教育・研修が不十分
シニア人材への教育・研修を
「していない」が50.7%、
「しているが充実していない」が9.8%。
「しており充実している」は19.5%でした。
労働力人口が減少する中で、シニア人材への対応をきちんと考えることが重要です。

2021年度賃上げの実態
~東京商工リサーチアンケート~
◆2021年4月1日~12日にネットによる調査を実施
(資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人事業を含む)を「中小企業」と定義)
◆賃上げ実施率
回答企業8,235社のうち、「実施する」は66.0%で、前年比8.5ポイント上昇
・実施する企業の産業別割合(高い順)
①製造業71.9%、
②建設業67.4%
③卸売業66.9%、
最下位は不動産業の46.2%。
・規模別では、大企業が74.1%に対し、中小企業は64.8%(中小企業で70%を超えたのは製造業だけ)
◆賃上げの内容
賃上げ内容については、「定期昇給」が83.6%、「ベースアップ」が28.7%、「賞与(一時金)の増額」22.4%。
◆賃上げ率
最多は「2%以上3%未満」の26.6%。
次いで「1%以上2%未満」の24.0%。
賃上げに慎重な企業が多いものの、半数以上が賃上げをする傾向でした。
今後は厳しい企業と余力のある企業との二極化がさらに進むことが懸念されます。

令和2年の労働災害発生状況◆死亡者数は3年連続過去最少、
令和2年の労働災害は、死亡者数は802人(前年比43人減・5.1%減)と3年連続で過去最少でしたが、休業4日以上の負傷者と死者数の総数(以下「死傷者数」)は131,156人(前年比5,545人増・4.4%増)と平成14年以降で最多でした。
◆死傷者数の傾向
最多の「転倒」が前年比943人増(3.1%増)、「動作の反動・無理な動作」が同1,412人増(8.0%増)で増加しています。
年齢別では、60歳以上が全死傷者数の約4分の1を占め、34,928人(前年比1,213人増・3.6%増)でした。転倒防止は、高齢者への重要課題といえます。

「最低賃金引上げの影響に関する調査」の集計結果
~日本商工会議所~
日本商工会議所と東京商工会議所から「最低賃金引上げの影響に関する調査」の結果が公表されました。
調査は、最低賃金が2016年から2019年まで4年連続で3%台(25円~27円)の大幅な引上げが行われてきたことを踏まえ、コロナ禍における中小企業の負担感や経営への影響等を把握し、今後の要望活動に活かしていくために実施されました。(2021年2月1日~22日までに全国の中小企業6,007社を対象、3,001社が回答し回答率:50.0%)
●昨年は全国加重平均額1円増だったが、その前は4年連続の大幅増で、現在の最低賃金額の負担感について、「負担になっている」(「大いに負担」と「多少負担」の合計)企業が過半数に達した(55.0%)。
●業種別では、コロナ禍の影響が大きい「宿泊・飲食業」が「負担になっている」と8割が回答した(82.0%)。
●最低賃金額が経営に影響したか、については「影響があった」(「大いに影響」と「多少は影響」の合計)と回答した企業が4割に達した(43.9%)。
●最低賃金額を「全国で一元化すべき」という考えについて、「反対」(「反対」と「どちらかと言うと反対」の合計)と回答した企業約8割に達した(78.0%)。
地方別では、Dランク(青森、岩手、秋田、 山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)の企業が83.9%「反対」と回答しました。
●仮に今年の最低賃金が30円増となった場合「影響がある」と回答した企業は6割に達した(63.4%)。
●「影響がある」とした企業の対応策は、
「設備投資の抑制等」(42.1%)が最多、次に「一時金を削減する」(28.4%)、
「非正規社員の採用を抑制する」(24.9%)との回答だった。
※最低賃金の大幅な引上げは、設備投資による生産性向上の阻害要因になることに加え、賃金増に必ずしも直結しないことや採用の抑制につながることが分かります。

令和2年「高齢者の雇用状況」
~厚労省調査より~
◆65歳雇用を調査した令和2年「高年齢者の雇用状況」(2020年6月1日現在)を公表(従業員31人以上の企業164,033社)。
◆定年の引上げ、65歳定年企業が増加
・「定年制の廃止」4,468社、2.7%(前年同比は変動なし)
・「定年の引上げ」34,213社、20.9%(同1.5ポイント増)
・「継続雇用制度の導入」125,352社、76.4%(同1.5ポイント減)
・「65歳定年企業」30,250社、18.4%(同1.2ポイント増)
大企業、中小企業ともに増加しています。
◆4月1日からは70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務へ
・「66歳以上も働ける制度のある企業」は54,802社、33.4%(同2.6ポイント増)
・「70歳以上も働ける制度のある企業」も51,633社、31.5%(同2.6ポイント増)
2025年4月には、全企業に65歳までの雇用確保が義務となります。

スポット情報●中小3割、夏季賞与「増額」(6月18日)
人材サービス大手、エン・ジャパンが中小企業を対象にした調査では、2021年度の夏季賞与を支給する企業のうち、28%が前年から「増額予定」とした。コロナ禍の長期化に対する懸念が和らぎ景況感回復への期待からボーナスを増額する傾向にはずみがついたようだ。
●派遣時給、5月0.6%高 三大都市圏、IT系は最高額(6月18日)
エン・ジャパンが発表した5月の派遣社員の募集時平均時給は三大都市圏(関東、東海、関西)で前年同月比0.6%(9円)高の1594円だった。IT系は前月の過去最高額を更新した。コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、時給水準を押し上げた。
●雇用調整助成金特例措置延長(6月17日)
厚労省は7月末までの期限としていたコロナウイルス感染拡大に伴う雇用調整助成金の特例措置を8月も延長する。措置内容に変更はなく同じ措置を続ける。9月以降の扱いは7月中にも判断するとしている。
●中小企業のコロナ一時支援金、余る見込み(6月15日)
国が中小企業や個人事業主に最大60万円を支給する一時支援金給付が、予算の2割にとどまっている。6,550億円の予算に対し、6月10日までの支給件数は約31万件、1,259億円。申請自体も約55万件(6月10日現在)で、全申請後も予算が余る見込み。売上高が50%以上減る等の厳しい要件が一因のようだ。
●6月1日時点の大卒内定率 過去最高(6月8日)
2022年春卒業予定の大学生らの就職内定率が6月1日時点で71.8%だったことが就職情報会社の調査結果で明らかになった。前年同期比を7.8ポイント上回り、現行の就活ルールとなった2017年卒以降、過去最高。インターンシップなどで採用が早期化していることも要因とみられている。
●来春卒業予定大学生らの採用選考が解禁(6月1日)
2022年春に卒業予定の大学生・大学院生を対象にした採用選考が解禁された。コロナ禍で2年目となり、ウェブ面接による選考も定着するなか、最終面接のみ対面で実施する企業も出てきている。今年はコロナ禍での停滞はみられず、解禁前にすでに内定を出している企業も多い。
●残業時間13.7%減、過去最大の減少幅。給与総額も8年ぶり減少(5月29日)
厚労省が28日に発表した2020年度の毎月勤労統計調査で、正社員の所定外労働時間が前年度比13.7%減、パート労働者も21%減で、1993年の調査開始以来最大の減少幅となった。飲食業や生活関連サービスでの減少が著しく、新型コロナによる休業や時短営業の影響によるとみられる。また、労働者1人あたりの平均賃金を示す現金給与総額は31万8,081円で同1.5%減となり、8年ぶりに減少に転じた。
●マイナンバー連携進まず19年実績は想定の5.5%(5月26日)
国のマイナンバー情報連携システムについて、2019年の利用実績が想定の5.5%(約6億4,700万件の利用想定のところ、実績3,600万件)にとどまることが会計検査院の調査でわかった。また個人情報の監視システムが事実上機能していなかったことも判明。
●介護保険料が初の6,000円超(5月15日)
厚労省は、65歳以上が支払う介護保険料が、4月から全国平均で月6,014円になったと発表。介護保険料は3年ごとに見直し、要介護者などの増加により上昇が続いている。4月の改定では全国平均が改定前の5,869円から145円上がり、上昇率は2.5%。制度が始まった2000年度の2,911円から約20年で約2.1倍の水準となった。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム