2011年8月号

I 従業員数が増えると減税に!!税制改正法が6月30日に公布され、雇用を増やす企業の税金(法人税または、個人事業の所得税)が減額される、税制上の優遇制度(雇用促進税制)が創設されました。

●「雇用促進税制」のしくみ
事業年度の1年間で5人以上(中小企業は2人以上)かつ10%以上の雇用増
雇用増加割合の計算は ⇒ 適用年度の雇用者増加数 ÷ 前事業年度末日の雇用者総数

従業員の増加1人当たり20万円の税額控除(※法人税額の10%(中小企業は20%)が限度)

●適用対象となる企業の要件は
(1)青色申告を行っていること
(2)「適用となる事業年度」及び「前事業年度」に「会社都合による退職」がないこと
(3)「適用年度の給与等支給額」が「比較給与等支給額以上」であること
比較給与等支給額=前事業年度給与等支給額+前事業年度給与等支給額×雇用増加割合×30%
(4)風俗営業等を行う企業でないこと(キャバレー・ダンスホール・パチンコ店など)

この優遇措置を受けるためには、事業年度の初日から2ヶ月以内に、ハローワークへ「雇用促進計画」を提出する必要があります。「雇用促進計画」の受付は、8月1日からハローワークで開始されています。
※平成23年4月1日から平成23年8月31日までの間に事業年度が始まる分については、10月31日までに届ければよいことになっています。

II セクハラによる労災の認定基準が緩和へ●「心理的負担」を重く評価
職場でのセクハラが原因で発症したうつ病など「精神障害の労災認定」について、専門家でつくる厚生労働省の分科会は、新たな認定基準の案をまとめました。直接的なセクハラについての被害者の心理的負担が重く評価され、労災認定されやすくなる見通しです。

●労災の認定基準とは?
精神障害の労災認定は、その原因となった職場の出来事を心理的負担が強い順に「3」~「1」の段階で評価したうえで、個々の事情も勘案して判断されます。現在、セクハラについては、原則「2」となっています。特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正されますが、判断基準が「セクハラの内容・程度」とあるだけで不明確なため、修正例は少ないようです。

新基準では、どのようなセクハラなら「3」や「1」に修正されるか、例示しています。「3」に修正される具体例として、「強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為」「胸など身体への接触が継続した」「接触は単発だが、会社に相談しても対応・改善されない」「言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した」などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきとなっています。

この他、長期的に繰り返されるセクハラ行為が少なくないため、従来の「発症前6ヶ月」よりも前の部分も評価するなどの意見も盛り込まれています。今後、基準が変われば、心理的負担がより重くみられ、労災認定されやすくなると思われます。会社としても、就業規則にセクハラ防止規定を設けるなど、これまで以上の対策が求められます。

III 「平成23年版労働経済の分析」の概要7月8日に「平成23年版労働経済の分析(通称「労働経済白書」)」が政府内で報告され、その概要が厚生労働省のホームページに公表されました。平成23年度版では「世代ごとにみた働き方と雇用管理の動向」と題し、自律的な景気回復に向け期待される雇用・給与について、今後の課題の検討がなされています。

●「平成23年版労働経済の分析」のポイント
1.労働経済の推移と特徴(震災など景気回復に向けた制約要因について分析)
所得・消費・雇用アップによる自律的な循環と回復が期待されるが、景況感に停滞がみられ、震災の影響などもあり、雇用情勢の先行き予測はさらに厳しい。

<着実な景気回復のための課題等>
消費など国内需要の回復のためには雇用の下支えが不可欠。雇用の維持・創出を支援することで、不安心理を取り除き、社会の安定と持続的な成長へとつなげることが重要。

2.経済社会の変化と世代ごとにみた働き方(バブル崩壊後の労働問題を世代ごとに分析)
・バブル崩壊後、厳しい経営環境のもとで、若年層の雇用情勢は悪化。
・大学進学率が上昇して大卒就職者が増加する中、社会のニーズとのギャップ。

<世代間のギャップの解消に向けての課題等>
不本意に非正規で働く人の正規雇用化への取り組みが重要。世代間格差の是正も求められ、人材の配置・育成などを一体的に行うための企業の機能強化も課題。

3.まとめ 世代をつなぐ雇用管理と雇用システムの主要課題
バブル崩壊後の不安定就業の増加や人材育成機能の低下に対する反省が必要。人的能力の形成を広く推し進めていくことが今後の雇用システムの課題。

解決策として以下の3つが求められるとしています。
(1)雇用の安定・確保と人材育成の充実
(2)不安定就業層の正規雇用化の推進
(3)高学歴化のもとでの職業選択への支援

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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