2011年11月号

I 年金の支給年齢引上げ等が議論されています 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の年金部会は、社会保障と税の一体改革の一環として、公的年金の支給開始年齢の見直し議論を始めました。(※下記の内容は決定ではありません。)

●厚生年金の支給開始年齢を引き上げ 政府・与党の一体改革案は、年金財政の悪化や平均余命の伸びを踏まえ、厚生年金の支給開始年齢を欧米並みに68~70歳へ引き上げる方針を提示しました。支給開始年齢の引き上げ時期を前倒しする考えも盛り込んでいます。審議会で出た案としては下記の3つです。

(1)「3年に1歳」の引き上げペースは維持しつつ、支給開始年齢を68歳に遅らせる
(2)ペースを「2年に1歳」に速める
(3)ペースを「2年に1歳」に速め、支給開始年齢も68歳に遅らせる

※「3年に1歳」の引き上げペースを「2年に1歳」に速めると下記のようになります。

  現行の受給開始年齢 見直し案での受給開始年齢
1953年度生 (58歳) 2014年 (61歳) 2014年 (61歳)
1954年度生 (57歳) 2015年 (61歳) 2016年 (62歳)
1955年度生 (56歳) 2017年 (62歳) 2018年 (63歳)
1956年度生 (55歳) 2018年 (62歳) 2020年 (64歳)
1957年度生 (54歳) 2020年 (63歳) 2022年 (65歳)

●在職老齢年金制度の見直し 在職老齢年金は60歳以降も働いている人の、厚生年金の額を調整する仕組みです。
(1)60歳から64歳の場合
給与+(直近の年間賞与÷12)+年金月額>28万円 → 年金減額
(2)65歳以上の場合
給与+(直近の年間賞与÷12)+年金月額>46万円 → 年金減額

この制度は、高齢者の就業意欲を阻害しているとの指摘があります。そのため、厚生労働省は、60から64歳について、3つの見直し案を検討しています。

(1)減額する基準を、65歳以上と同じ46万円に引き上げる
(2)60歳代の給与の平均額(33万円)に引き上げる
(3)60歳代前半は年金の調整そのものを廃止する

II 社員が行う「副業」をどう考える? ●問題点の多い「副業」
リーマンショック以降の景気低迷によって残業時間が少なくなり、給与の手取りが減少した分を補うために、数年前から「副業」を行う人が増えていました。しかし、社員が本業の仕事とは別に副業を行う場合には、「通算して長時間労働になり本業に支障をきたす可能性がある」「副業先で労災が起こった場合にどう対処するか」など、様々なリスクがあります。

●会社として認めるか否かを適切に判断
合理的な理由がある場合には、「会社として社員の副業を認めない(副業禁止)」とすることも可能ですが、認める場合の選択肢としては、「(1)許可制とする」「(2)届出制とする」「(3)完全解禁とする」ことなどが考えられます。上記のいずれを選択するにしても、就業規則などを整備して、副業を認める場合のルールを明確にしておく必要があるでしょう。

●副業を認める場合に注意すべきこと
仮に社員の副業を認める場合には、リスク管理の観点から「本業に支障が生じてしまうほど長時間労働となるような副業は認めない」ことや「自社の業務内容と競合するライバル会社での副業は認めない」ことなどが必要です。

III 受動喫煙防止対策助成金が創設されました 労働者災害補償保険法による社会復帰促進等事業の一環として、10月1日から「受動喫煙防止対策助成金」が創設されました。

●受動喫煙防止対策助成金の概要
(1)対象事業主
労災保険の適用事業主であって、旅館業・料理店または飲食店を経営する中小企業事業主であること。
※料理店または飲食店については「常時雇用する労働者が50人以下」または「資本金の規模が5,000万円以下」、旅館業については「常時雇用する労働者の数が100人以下」または「資本金の規模が5,000万円以下」である事業主をいいます。

(2)助成対象
・一定の要件を満たす喫煙室の設置に必要な経費
・喫煙室以外に、受動喫煙を防止するための換気設備の設置等のために必要な経費
※工事前に「受動喫煙防止対策助成金関係工事計画」を策定し、所轄都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

(3)助成率、助成額
喫煙室の設置等に係る費用の1/4(上限200万円)

(4)申請書等提出先
都道府県労働局労働基準部健康課

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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