2011年12月号

I 「個人賠償責任保険」に加入していますか?●日常生活で思わぬことが...
日々の暮らしの中で、思わぬ形で人にケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合に、「個人賠償責任保険」に加入していれば、保険金により相手方に与えた損害を賠償することができます。以下に主な補償例や加入時の注意点をまとめました。

●補償の対象となるケースは?
保険の補償対象となる主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
・自転車で人をはねてケガをさせた
・子どもが友達とケンカをしてケガをさせた
・飼い犬が通行人に噛みついた
・マンションで階下に水漏れを起こした
・買物中の店で高価な商品を壊した

上記のような過失による事故が補償対象となりますが、同居の親族に対する損害賠償や他人から借りた物を壊した場合の損害賠償、故意に起こした事故などは対象外となります。仕事中の事故は対象外ですが、通勤途中の事故は補償対象となります。特に、自転車通勤の方などは、ご本人に加入を検討してもらった方がよいのではないでしょうか。

●「個人賠償責任保険」の特徴
この「個人賠償責任保険」は、契約者本人だけでなく「配偶者・同居の親族・1人暮らしの学生など生計を同じくする別居の未婚の子」もカバーできるのが特徴です。加入方法は、損保会社の販売する「自動車保険」「火災保険」「傷害保険」のいずれかに加入したうえで、特約として上乗せを行うのが一般的です。

●加入時のチェックポイント
チェックポイントとして、以下のことが挙げられます。
(1)示談交渉代行サービスが付いているか
(2)重複契約になっていないか
(3)自動車の売却や引越しなどで保険が途切れていないか
(4)海外で賠償責任を負った場合でも補償されるか

特約の保険料は、最大保険金額1億円(または無制限)であっても、年額1,000円~2,000円程度で済むようです。

II 雇用・労働をめぐる最近の裁判例●「雇止め」をめぐる裁判例
地方自治体の非常勤職員だった女性(55歳)が、長年勤務していたにもかかわらず、一方的に雇止めをされたのは不当であるとして、自治体を相手として地位確認(雇止め無効)や慰謝料900万円の支払いなどを東京地裁に求めていました。

同地裁は、「任用を突然打ち切り、女性の期待を裏切ったものである」として慰謝料150万円の支払いを認めましたが、雇止めについては有効と判断しました。この女性は、主にレセプトの点検業務を行っており、1年ごとの再任用の繰り返しにより約21年間勤務していたそうです。(11月9日判決)

●「過労死」をめぐる裁判例
外資系携帯電話端末会社の日本法人で勤務し、地方の事務所長を務めていた男性(当時56歳)が、接待の最中にくも膜下出血で倒れて死亡した事案。労働基準監督署は「労災と認めず、遺族補償年金を支給しなかった」ため、男性の妻が「夫が死亡したのは過労が原因である」として、その処分の取り消しを大阪地裁に訴えていました。

同地裁は、会社での会議後に行われた取引先の接待について「技術的な議論が交わされており業務の延長であった」と判断し、男性の過労死を認めました。
この男性は、お酒が飲めなかったにもかかわらず、週5回程度の接待(会社が費用を負担)に参加していたそうです。(10月26日判決)

III 昨年度 残業代不払いでの是正支払総額は123億円超平成22年度のサービス残業に関する統計資料が、厚生労働省から公表されました。全国の労働基準監督署が労働基準法違反により是正指導した事案のうち、100万円以上の割増賃金未払いがあった企業の数などについて取りまとめたものです。

今年は昨年よりさらに増え、100万円以上の是正企業数は165社増えて1,386企業・是正支払総額は7億2,060万円増えて、123億2,358万円になりました。「企業数」「支払われた残業代」では製造業、「対象社員数」では商業が最も多かったようです。

●割増賃金の是正支払の状況
・是正企業数        1,386企業(前年度比165企業増)
・支払われた残業代合計額  123億2,358万円(7億2,060万円増)
・対象社員数        11万5,231人(3,342人増)
・支払われた残業代平均額  1企業 平均889万円・社員1人平均11万円

●厚生労働省が公表しているサービス残業代の是正事例
A社(小売業、約200人、北海道・東北)

A社は、始業・終業時刻をタイムカードにより確認しているとしていたが、監督署が会社の機械警備記録等を調査したところ、タイムカードの最終打刻者の退勤時刻と警備開始時刻に大幅な相違が生じていた。そこで、会社からの事情聴取などを行ったところ、所定勤務時間終了後に、社員にタイムカードを打刻させた後で時間外勤務を行わせていたことが発覚した。監督署は、サービス残業について是正勧告するとともに以下の指導を行った。

(1)全社的な実態調査を行い、サービス残業が明らかになった場合には適正な割増賃金を支払うこと
(2)サービス残業の再発防止対策を確立し、実施すること

労働基準法違反として指摘を受けるなど、想定外の事態をできるだけ防止するためにも、「日頃から勤務時間を適正に把握すること」、時間外勤務を行う必要がある場合には「36協定の締結・届出」「割増賃金に関する取り決めや給与規定の整備」などの対応・対策を行っていくが必要とされています。その他、従業員との様々な労務トラブルに対処していくためにも、就業規則を整備しておくことの重要性が高まっています。不安があれば、お気軽にご相談下さい。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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