経営労務情報 平成25年(2013年)2月号

経営労務のお役立ち情報!!

I 「中高年従業員の戦略的活用」に向けた研修・教育の実施●悩みの種は「モチベーションの低下」
改正高年齢者雇用安定法(※1)の施行が今年4月1日に迫っています。
「(※1)改正高年齢者雇用安定法」......希望者全員65歳までの雇用が義務化

60歳以降も働く人は、今後ますます増加することが見込まれています。業種や職種にもよりますが、「中高年者を積極的に活用したい」と考えている企業も増えています。

60歳以降の人材を活用する上で、各企業に共通する悩みが、「モチベーションの低下」です。現役世代においても、昇進の可能性がなくなったり、役職定年制により肩書きがなくなったりした後には、モチベーションが下がる傾向にあることがわかっています。60歳以降は、手取り給与が少なくなったり、担当する業務が変更になったりすることから、一層モチベーションが低下してしまう傾向にあるようです。

●モチベーションを高める方法は?
継続雇用後のモチベーションの維持・向上の方法として、以下のようなテーマで研修を実施すると効果が高いようです。
(1)継続雇用後の環境の変化を受け止め、自らのものの見方や考え方の転換を促す
(2)これまでの自分を振り返り、強みを再確認することで自信を持ってもらう
(3)理想の将来を実現するために効果的な選択は何かを考えてもらう
(4)これから会社でどのようなことに取り組んでいくかを決めてもらう

新入社員や幹部候補の育成が中心ですが、中小企業でも、企業力アップ・業績向上のために、社員研修を実施する企業が増えています。今後、増加するであろう60歳以降の従業員により活躍してもらい、会社業績を伸ばすためにも、この層への研修も検討してみてはいかがでしょうか。当事務所でも人材育成・社員研修メニューを提供しております。お気軽にご相談下さい。

II 「改正高年齢者雇用安定法」にどう対応するか?●経団連による調査結果
経団連が発表した「2012年 人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」によれば、改正高年齢者雇用安定法への対応として、以下のような方策を検討している企業が多いようです。

●法改正への対応方法は?
調査結果における「法改正に伴い、必要となる対応は?」との質問に対する回答結果(上位10位)です。
(1)高齢従業員の貢献度を定期的に評価し、処遇へ反映する
(2)スキルを活用できる業務に限りがあるため、提供可能な社内業務に従事させる
(3)半日勤務や週2~3日勤務による高齢従業員のワークシェアを実施する
(4)高齢従業員の処遇(給与など)を引き下げる
(5)若手とペアを組んで仕事をさせ、後進の育成・技能伝承の機会を設ける
(6)60歳到達前・到達時に社外への再就職を支援する
(7)60歳到達前・到達時のグループ企業への出向・転籍機会を増やす
(8)新規採用数を抑制する
(9)60歳到達前の従業員の処遇を引き下げる
(10)従来アウトソーシングしていた業務を内製化したうえで従事させる

年金を受給できる年齢が徐々に65歳へと変更されるため、「現役世代の給与」「60歳以降の給与」をどのように設定するかが、これからの大きな課題のひとつとなっています。

III 「社員の健康管理」に関する取組み●健診を受診しない社員とその上司はボーナス減額!
コンビニエンスストア大手のローソンが発表した、健康診断に関する新制度が話題になっています。健康診断を受けない社員に対し、会社は3回程度、受診するよう促し、それでも受診しない社員についてボーナスの15%、その上司についても10%を減額するという制度です。同社では、健康診断受診率が約83%にとどまっていることから、健康で長く勤めてもらうために、あえてこうした制度を導入することにしたそうです。

●安全配慮義務違反による高額な賠償金
社員が健康診断を受診しないことは、「安全配慮義務違反」による会社のリスク要因となります。また、未受診の社員に関連した労災事故等が発生し、死亡してしまったような場合には、裁判となり、相当高額な賠償金の支払いが会社に命じられる可能性もあります。民間の賠償保険もありますが、リスクやコストを考えると、結局は、以下のような日常の労務管理をしっかり行うことが、最も合理的と考えられます。

(1)就業規則などルールの整備
(2)受診しない社員に対する書面での指導や処罰
(3)持病や診断結果に応じて、勤務時間・業務内容の管理
(4)社員の健康状態の把握(「血圧」「血糖値」「コレステロール値」「肥満」など)

IV 退職強要と退職勧奨の相違点・注意点●「退職勧奨」と「退職強要」の違い
会社が、社員の自由意思による退職を勧めるのが「退職勧奨」であり、これ自体は、会社と社員間の雇用契約について、社員の自由意思による解約を会社から申し出るもので、法的な規制はありません。しかし、あまりに執拗に行ったり、脅迫や詐欺行為だとみなされると、違法な「退職強要」と判断されてしまいます。実際に、そういった裁判例も多く、「損害賠償リスク」や「退職が無効となるリスク」があります。

争いを防止するためには、退職勧奨の行い方にも注意が必要です。「退職勧奨の実施回数・場所・時間」「社員に伝えるべき事項とその伝え方」「合意書面の作成」などに注意して、適切に行う必要があります。もっとも、問題社員に対する日頃の注意・指導がより重要であり、適切な指導を行ってきた事実・記録があれば、会社にとって有利に働きます。

監修 :中島光利、木嵜真一、八木義昭

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