経営労務情報 平成27年(2015年)6月号

I お知らせ◆真夏を感じるほどの天候になり、建設業のお客様では「熱中症」が早くも心配されます。皆様の会社でも、暑さ対策と健康管理をお願い致します。
◆労働保険の申告書が届き始めました。7月10日までの申告となります。お客様の申告書はこちらでお預かりして保険料をお知らせ致します。
◆送付されてきた住民税「特別徴収」通知書の中に、退職者分は含まれていませんか。退職者分は異動届の提出が必要となります。ご不明点は連絡ください。
◆前号でもお知らせしましたが、今年9月から来年8月までの社会保険料は、4月から6月に払われる給与の「平均額」で決定されます。この間の給与総額が多いと社会保険料が増えてしまいます。6月に支払う給与総額にはご注意ください。

II 中小企業における「人材不足」と「人件費高騰」の実態 ◆中小企業白書からみえる人材不足の広がり
平成27年版の中小企業白書が公開され、人材不足の企業が約4割にものぼりました。特に、建設業、医療・福祉関連の人手不足が目立ち、これは高い離職率も影響しています。新卒者の4割以上が3年以内に離職しており、また小規模の会社ほど離職率が高くなっています。

◆ベア実施の中小企業も大幅増
今年度に入り、中小企業でも景気回復や人手不足を背景に、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)を実施する動きが広がっています。財務局の調査によると、中小企業の37%が今春ベアを実施したことが判明、ベアを含む何らかの賃上げを実施した企業は89.1%に上り、雇用確保のため人件費を捻出していることがよくわかります。

◆「人手不足」関連倒産の傾向
人手不足による企業倒産も、平成25年から目立ち始め、徐々に増加しています。
東京商工リサーチの集計では、「後継者難」型倒産が多いものの、最近は「求人難」による倒産の増加が目立つようです。賃上げによる人材獲得競争はコスト増を招くため、人材不足・人件費高騰は中小企業の経営にとって足かせとなっている様子もうかがえます。

◆自社の対策
今後は、賃上げ以外の措置も必要になります。自社の現状と時流を見極めながら、雇用確保の対策を講じていく必要があります。

III 平成26年の労働災害発生状況と発生防止の取組み◆労働災害の発生数が前年を上回る
厚労省が平成26年の「労働災害発生状況」を公表し、「死亡災害」は1,057人(前年比+27人、+2.6ポイント)、「死傷災害」は11万9,535人(同+1,378人、+1.2ポイント)、「重大災害」(一度に3人以上が被災)は292件(同+48件、+19.7ポイント)となり、いずれも前年を上回る結果となりました。同省では「死亡災害、死傷災害の15%以上の減少」を目標に対策を実施しています。

◆労働災害の概要と動向
死亡者数が多い業種は、(1)建設業377人(前年比+10.2ポイント)、(2)製造業180人(同▲10.4ポイント)、(3)陸上貨物運送業132人(同+23.4ポイント)、発生状況では、(1)「墜落・転落」263人(同▲1.1ポイント)、「交通事故」232人(同▲0.4ポイント)、「はさまれ・巻き込まれ」151人(同+14.4ポイント)となりました。
また、死傷者数が多い業種は、(1)製造業2万7,452人(同+1.4ポイント)、(2)商業1万7,505人(同+4.0ポイント)、(3)建設業1万7,184人(同+0.03ポイント)、発生状況は、(1)「転倒」2万6,982人(同+4.3ポイント)、(2)「墜落・転落」2万551人(同+1.8ポイント)、(3)「はさまれ・巻き込まれ」1万5,238人(同▲0.2ポイント)でした。
「重大災害」の内訳は、(1)「交通事故」147件(同+19.5ポイント)、「中毒薬傷」50件(同+22.0ポイント)、「火災高熱物」14件(同+133.3ポイント)となりました。

◆労働災害防止のための取組み
死傷者数の多い転倒災害の防止策として、6月の重点期間に、巡視・点検の実施指導が行われます。交通事故災害は業種を問わず発生していることから、全国安全週間(準備月間)においては警察機関と連携して安全対策に取り組むようです。

IV 通常国会に提出された「労働基準法改正案」のポイント◆改正案のポイント
1)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
2)著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
3)一定日数の年次有給休暇の確実な取得
有給5日を毎年、時季を指定して与えなければならない法案
4)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
5)フレックスタイム制の見直し
6)企画業務型裁量労働制の見直し
7)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
特定高度専門業務の従業員は、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定が除外
◆詳細は、次号よりご説明いたします。

V スポット情報 ●「年金記録確認第三者委員会」を6月末で廃止 (H27/5月15日)
総務省は、年金記録確認第三者委員会を6月末で廃止する。平成19年の設置後、8年間で約14万6,000件(審査件数は約27万件)の記録を回復、近年は処理件数が大きく減少し役目を終えたと判断したため。業務は、すでに厚生労働省に引き継がれている。

●収入の多い高齢者の基礎年金「減額」を検討(H27/5月19日)
政府の経済財政諮問会議が、一定以上の収入のある高齢者の基礎年金を減額する仕組みを検討していることがわかった。国と現役世代の負担を軽くするのがねらいで、6月末にもまとめる政府の「財政健全化計画」に反映したい考え。

●リストラ離職が大幅に減少、卸売・小売業では増加 (H27/5月21日)
リストラにより30人以上の離職者が出る企業に作成が義務付けられている「再就職援助計画」に基づく離職者が、平成26年に4万7839人(前年度比12%減)になった。(厚生労働省)業種別では、製造業で2万2,506人(同27%減)となったものの、卸売・小売業で9,291人(同19%増)となった。

●「配偶者控除」平成29年からの新制度導入を検討(H27/5月2日)
政府が「配偶者控除制度」を見直す検討に入ったことがわかった。年内に具体案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出し、平成29年1月から導入したい考え。現在の減税規模は維持しながら、夫婦単位で一定額を控除する案などを検討。新制度により適用対象者は大幅に拡大される見込みだが、所得制限等も検討するとしている。

●企業の「節税策の報告」を義務化へ 政府検討 (H27/5月26日)
政府は、税理士やコンサルティング会社に対し、企業に提供している節税策の報告を義務付ける検討に入った。報告を受けた節税策の情報をもとに法制度を手直しし、脱法的な手法をなくすのがねらい。報告を拒む場合は罰金も検討しており、平成29年の改正予定。

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