経営労務情報 平成30年(2018年)3月号

Ⅰ お知らせ◆3月より 「健康保険料」 「介護保険料」の保険料率が下がります。給与の保険料は、「4月に支払う給与」から下げることになります。お客様へは改めてお知らせいたします。
◆本年4月からの「雇用保険料免除(不要)」対象者は昭和29年4月1日以前生の方です。対象者は改めてお知らせいたします。
◆4月から6月に支払う「給与総額」にご注意ください。本年9月から1年間の社会保険料は4月から6月に支払う給与の「平均額」で決まります。この間で残業などの手当が多いと社会保険料が増えてしまいます。
◆4月は入社・異動が増え「年金事務所」への申請が多くなり「保険証」が届くのが遅れてしまいます。早めの連絡をお願いいたします。

Ⅱ 無期転換ルールがスタート
◆「無期転換ルール」とは
平成25年4月の「労働契約法」の改正で、同じ使用者(企業)との「有期労働契約」が「5年」を超えて更新されてきた場合に、労働者からの「申込み」によって「無期労働契約」に転換されるルールのことです。今年4月で5年経過し、いよいよ「申込み」がスタートすることになります。
例えば、「契約期間1年」の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換の申込権が発生し、使用者は断ることができません。
◆切り替えを回避する動きも
雇用の安定が目的の制度ですが、再雇用する際に空白期間が6ヶ月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、通算されないという抜け道もあります。これを利用し、大手自動車メーカーは契約終了後に6ヶ月の空白期間を設けて、無期雇用への切り替えを回避する動きも見られています。
◆「無期雇用転換者」=「正社員」?
もう一つの注意点は、「無期雇用転換者」=「正社員」と考えなくてもよい点です。正社員と区別し別管理をする企業もあり、選択を各企業で決めることになります。考えられる選択肢は
(1)「同一条件で契約期間のみを変更」
(2)「多様な正社員(勤務地、労働時間、職務などに制約を設けた正社員)へ転換」
(3)「正社員へ転換」など。各企業は業務にふさわしい形態を選ぶ必要があります。
◆導入へのステップ
企業が「無期転換ルール」を導入するには、
(1)「有期契約者の実態を調べる」
(2)「仕事を整理し任せる仕事を考える」
(3)「労働条件見直し就業規則を改正する」
(4)「運用と改善を検討し実行する」
といったステップが必要とされています。
人手不足が進む中、より柔軟な人材の登用や、「契約期間の変更」 →「多様な正社員」 →「正社員」といった変更制度を設けるなど、一層の工夫が求められるようになりそうです。

Ⅲ 日本国内で雇用される「外国人数」が過去最高を記録◆外国人雇用状況の「届出制度」
外国人労働者の「雇用管理の改善」や「再就職支援」などを目的とし、すべての事業主に、外国人労働者の雇入れおよび離職時に「氏名」「在留資格」「在留期間」などを確認し、ハローワークへの届出が義務づけられています。
届出対象者からは「特別永住者」「在留資格」「外交」「公用」者は除かれます。
以下は、平成29年10月末時点の届出件数を基準にしています。
◆外国人雇用状況の概要
外国人労働者数は127万8,670人で、前年同期比で19万4,901人(18.0%)増加し、過去最高を記録。増加要因は、
①「高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること」
②「永住者や日本人の配偶者等の身分に基づく在留資格者などの就労が進んでいること」
③「技能実習制度の活用が進んでいること」等。最多の国籍は、①中国37万2,263人(全体の29.1%)、②ベトナム24万259人(同18.8%)、③フィリピン14万6,798人(同11.5%)。
在留資格別では、身分に基づく在留資格の45万9,132人(35.9%)が最多、資格外活動(留学)25万9,604人(20.3%)、技能実習25万7,788人(20.2%)、専門的・技術的分野23万8,412人(18.6%)でした。
◆事業所状況
雇用事業所は、全国で19万4,595件。前年同期比2万1,797件の増加し過去最高を更新しました。
都道府県別では、①東京都5万4,020件(27.8%)が最多、②愛知県1万5,625件(8.0%)、③大阪府1万2,926件(6.6%)、
④神奈川県1万2,602件(6.5%)、⑤埼玉県9,103件(4.7%)でした。
◆産業別状況
産業別では、製造業が最多で全体の30.2%が就労していますが、建設業およびサービス業のでは減少傾向です。

Ⅳ 「働き方改革」って、実際進んでいるの?◆企業における「働き方改革」の実態
政府が推進する「働き方改革」の名のもとで様々な「働き方」の見直しが進められています。関連する国の動きや企業事例などがメディアでも多く取り上げられています。
一方で実態が伴わない「働き方改革」に対する批判もあります。実際、企業ではどのように受け止められているのでしょうか。
◆取り組んでいない企業も
株式会社オデッセイによる、全国の人事部門または「働き方改革」に係わる部門に所属している担当者を対象とした「働き方改革に関する意識アンケート」の結果では、約8割が「働き方改革」の必要性を感じていると回答したものの、実際に「働き方改革」に取り組んでいるのは約5割という結果でした。
必要性を感じるものの、実行できていないことがわかります。
◆労働時間の改善、休暇取得促進への取組みが中心
「働き方改革」の具体的に取り組んでいることで最も多かったものは、①「労働時間の見直しや改善」、②「休暇取得の促進」でした。
また「女性の働きやすい環境作り」と「育児・介護中の社員が働きやすい環境作り」という回答も多く集まり、女性を支援する施策に取り組んでいる企業も多いことがわかります。
◆実現にはまだまだ課題も
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが、企業の人事制度の企画・運営および「働き方改革」推進責任者を対象に実施した「『働き方改革』の推進に関する実態調査」の結果では、「働き方改革」推進上の課題として、「社外を含めた商習慣を変える難しさ」を挙げる回答が62.1%と最も多く、「現場や他部署との連携が難しい」(54.0%)、「マネジメント難度上昇への懸念」(50.3%)が続いています。
◆自社の現状を踏まえて適切な対応を
人材確保や従業員のメンタルヘルス対策等の面からも、企業の「働き方改革」に対する取組みは今後も重要性が増しそうです。
自社の現状を見極めながら適切な対応を考えていく必要があります。

Ⅴ スポット情報●国民年金未納者の強制徴収 対象者を拡大へ(1月29日)
日本年金機構は、国民年金保険料の未納者の財産を差し押さえる強制徴収の対象を拡大する方針を社会保障審議会で示した。今年4月から、年間所得300万円以上で未納期間7月以上の人とする考えで、対象者は今年度の約36万人から1万人程度増える見込み。

●同一労働同一賃金・残業規制、中小企業への適用延期へ(1月25日)
厚生労働省は、今国会に提出予定の働き方改革関連法案で、中小企業に適用する時期を、①時間外労働時間の上限規制は2020年度から、②「同一労働同一賃金」は2021年度からと、1年延期する方針を固めた。高度プロフェッショナル制度については、従来通り 2019年度。法案の審議入りが予算成立後の4月以降となる見通しで、施行定や就業規則、人事・賃金制度の見直し等の準備期間が  十分に確保できないため。

●公的年金支給額は据え置き(1月26日)
厚労省は、2018年度の公的年金の支給額を今年度と同じに据え置くと発表。物価が上がる一方で賃金が下がったため据え置くこことした。支給額が増える時に伸び幅を抑えるマクロ経済スライドも発動されない。

●40歳以上の転職では賃金減(1月21日)
内閣府が公表した「日本経済2017―2018」(ミニ白書)では、2004年から2016年にわたり40歳以上の転職では賃金が常に減少していることがわかった。29歳以下ではほぼ全期間で賃金が増えており、年齢が転職後の賃金上昇率を大きく左右していると指摘している。2016年の転職者数は7年ぶりに300万人を超え、306万人となっている。

●年金受給開始年齢「70歳超」も選択可能に 政府案(1月18日)
政府が「高齢社会対策大綱案」を示し、公的年金の受給開始年齢について、受給者の選択により70歳超に先送りできる制度の検討を盛り込んだ。厚生労働省が制度設計を進めたうえで2020年中の法整備を目指す考え。

●労働基準監督官 人手不足対応でOBを雇用へ(1月10日)
厚労省は、残業などの監督指導を強化するため、2018年度から監督官のOBを非常勤として雇用する考えを示した。監督官の人手不足に対応するもので約50人の採用を予定。

●未払い賃金請求の時効期間延長について議論開始、厚労省検討会(12月27日)
厚生労働省の有識者検討会は、未払い賃金の「請求権の時効延長」に向けて議論を開始した。現行の労働基準法では、労働者は過去2年分の未払い賃金を会社に請求することができるが、民法改正に合わせて最長5年まで延長するかが焦点となっている。検討会では法改正に向けて議論し、2019年に法案を国会に提出。2020年にも適用する考え。

●労災保険料率を0.02ポイント引下げへ(12月21日)
労働政策審議会は、労災保険の料率を2018年度から全業種平均で0.02ポイント引き下げ、0.45%とする政府方針を了承。労災死亡事故の減少で積立金が増加等によるもので、引下げにより企業の負担は年間約1,311億円軽くなる見込み

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

連絡先 お問合せフォーム