経営労務情報 平成30年(2018年)12月号

お知らせ◆賞与の社会保険料率にご注意を
 (以下は本人負担率です)厚生年金 9.15 % 、健康保険 4.95 %、介護保険 0.785 %(健康保険+介護保険 = 5.735 %)
◆年間5日以上の有給消化の義務化。
 平成31年4月より有給休暇を年間5日以上消化することが義務化されます。その他「働き方改革法案」に伴う中小企業の今後の対策は随時お知らせいたします。
◆インフエンザのワクチンを接種しましょう。
 欠勤短縮、感染予防、早い回復にも効果的です。接種費用の会社負担も可能です。
◆配偶者特別控除枠が拡大しました。
 配偶者のみ給与収入基準103万円が150万円に、141万円が201万円に増額されました。年末調整時の収入確認にご注意下さい。
◆本年も1年間、誠にありがとうございました。年末年始の事故・ケガなどにお気をつけください。年末年始休業をお知らせいたします。
「 29日(土)より新年6日(日)まで 」

外国人労働者受け入れ拡大で社会保険制度はどう変わる?◆治療のために来日する医療保険の「ただ乗り問題」
 日本では「国民皆保険制度」として保険証があれば誰でも1~3割の自己負担で受診できます。ところが留学や技能実習制度を利用して、治療のためだけに来日する外国人の問題が指摘されています。
低額な自己負担で、がん治療など高額な保険給付を受けるためです。また来日した家族が本人と偽って保険証を利用する「なりすまし受診」も報告されています。来年4月から外国人労働者の受け入れを拡大するなかで、不正利用をどうすべきかが議論されています。
◆医療保険で母国の家族を除外
 今は外国人労働者が生計を支える3親等以内の親族は海外在住でも扶養家族になれます。母国での受診も申請すれば医療費は協会けんぽや健康保険組合などが負担します。
政府は、膨らむ医療費を考慮して改める方針を固めました。母国に残した家族の医療費は除外する方針です。また日本人の家族で日本国内に生活実態がない場合は扶養家族から除外することも検討しています。
◆社会保険料を長期滞納する外国人の在留を認めない方針
 政府は受け入れ拡大により国民健康保険や国民年金の保険料滞納を警戒。また未加入のまま病院で受診し、医療費を踏み倒すなどが想定されるため、保険料の長期滞納者の在留を認めない方針を固めました。
法務省と厚生労働省が保険料滞納に関する情報を共有し、法務省が在留許可の運用指針要件として追加する方針です。
◆国民年金第3号被保険者に国内居住要件
 厚生年金の加入者が扶養する配偶者(国民年金の第3号被保険者)は、保険料を払わず年金を受け取れますが、受給資格に国内の居住を要件とする方向で検討に入りました。
来年度中にも、国民年金法を改正する方針です。これにより海外で生活する配偶者には年金が支給されません。ただし日本人従業員の配偶者が海外に住んでいる場合の対応が検討課題になります。

定年延長の導入状況と課題◆定年延長の状況
 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が「定年延長」に関して行った調査(定年延長実施企業調査)の結果等を公表しました。
今現在は「60歳定年とし、その後継続雇用」とする企業が70%以上ですが、65歳以上を定年とする企業も着実に増え25,000社(平成29年現在)を超えています。
定年の延長をしている企業のうち、80%超が定年年齢を「65歳」とし、また95%が全社員を対象にしています。特に人手不足な職種(運転手、薬剤師、介護職、清掃・警備職等)では、職種に応じた定年年齢する企業も一部にあります。また「役職定年制」を導入している企業は、従業員が30人以下で9.3%、301人以上で21.2%でした。
◆仕事内容と賃金水準
 延長後の定年年齢までの仕事内容が、それ以前と同じである企業が90%以上でした。(59歳以前とまったく同じ:53.8%、まったく同じではないが大体同じ:42.5%)。
特に運輸業では、99.1%が同じ(まったく同じ・だいたい同じの合計)でした。仕事が同じだと、賃金をどうするのか問題にもなります。
 定年延長で社員全体の人事・賃金制度の見直しを行った企業は30.2%、行わなかった企業は67.1%でした。賃金は「59歳時点と変わらない」も61.5%でした。
59歳以降の賃金変更方法は、多い順に、①「個別に決めている」②「等級やランクなどで決めている」③「全員一律で同じ水準に決めている」となっています。
59歳時点の賃金水準を100%として、65歳時点の賃金が
「100%以上」が58.3%、
「90%~100%未満」が8.5%、
「80%~90%未満」10.4%となり、
「80%以上」の総合計は77.2%でした。
◆定年延長の提案は経営層から
 大半の企業で、定年延長に向けて検討を開始してから実際に定年を引き上げるまでの期間は半年から1年程度です。また定年延長の提案は77.5%が社長などの経営陣からの提案によるものでした。
◆社員の納得を得るには
 社員の満足度が9割を超える定年延長ですが、導入には、高齢社員の賃金、組織の若返り、健康管理、モチベーション維持が大きな課題になります。給与も個別対応だけでなく、ルールを決めることも必要になります。

従業員の「通勤事故リスク」対策を取っていますか?◆会社が通勤時の事故責任を追及される ケースが増加
 今年10月1日、事故死したトラック運転手の遺族が、原因は過重労働だとして約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
同様に、通勤途中で発生した事故をめぐり責任追及されるケースが増えています。
◆上司も書類送検されたケース
 平成29年10月、業務で公用ワゴン車を運転中の兵庫県川西市職員が5人を死傷させる事故が発生。職員は当時、選挙対応で約1カ月間休みがなく、200時間超の時間外労働でしたが、今年4月に自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で書類送検されました。 
また過労状態を知りながら運転を命じたとして、上司も道路交通法違反(過労運転下命)で書類送検されています。
◆裁判で和解が成立したケース
 今年2月には横浜地方裁判所川崎支部では、帰宅途中のバイクの居眠り運転で事故死した従業員の遺族が、過重労働が原因だとして損害賠償を求めた裁判は会社が7,590万円支払うことで和解しました。従業員は約22時間の徹夜勤務明けで、事故前1カ月の時間外労働は約90時間でした。
◆裁判官は通勤中の「安全配慮義務」に言及
 裁判所は通勤時にも過労による事故を起こさないよう安全配慮義務があると認定しました。これまで通勤中の事故で会社の責任を認めたものはほとんどなかったため、安全配慮義務が通勤でも必要となってきています。
◆「労働時間把握」だけではリスク回避できず
 働き方改革法では、労働時間把握が使用者の義務として課されることとなりました。
しかし、労働時間を記録等するだけでなく、過労状態で従業員が事故を起こさないような具体策を考える必要がでてきました。

スポット情報●働き方改革実現に向け厚労省が方針(11月15日)
 厚生労働省は、働き方改革の実現に向け、「長時間労働の事業所への監督指導を徹底し、悪質な場合は書類送検などで厳正に対処する」とする政策指針となる基本方針をまとめた。年内にも閣議決定される見通し。
●介護報酬を来年10月に臨時改定~介護職員の賃上げ目指し、厚労省が方針(11月2日)
 厚生労働省は、介護現場の人材不足解消策の1つとして介護職の賃金を引き上げるため、平成31年10月に介護報酬を臨時に改定する方針を固めた。消費税率引上げによる増収分と保険料の計2,000億円で、勤続年数の長い介護職員を中心に処遇改善を図る。12月をめどに大枠が示される見込み。
●9月の有効求人倍率1.64倍に上昇し、正社員は過去最高に (10月30日)
 厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.64倍(前月比0.01ポイント上昇)で、44年8カ月ぶりの高水準だった。また正社員の有効求人倍率は1.14倍で過去最高値を更新。総務省が発表した9月の完全失業率は2.3%(前月比0.1ポイント低下)で2カ月連続して改善した。
●継続雇用年齢70歳へ ~未来投資会議~ (10月23日)
 安倍首相が議長を務める未来投資会議で、企業の継続雇用年齢を65歳から70歳に引き上げる方針を表明した。関連法改正案を2020年の通常国会に提出する方針。
●派遣労働の約4割正社員希望(10月18日)
 厚労省が発表した平成29年に行った実態調査の結果で、派遣労働者のうち39.6%が正社員で働きたいと回答。一方、派遣労働者が働く事業所で「派遣社員を正社員に採用する制度がある」と回答した事業所は24.4%だった。また派遣労働者の年齢層は40~44歳が16.5%で最多。平均賃金は時給換算で1,363円と平成24年結果に比べ12円増加。
●外国人労働者の永住が可能に(10月11日)
 外国人労働者の受入れ拡大のため、政府は新たに2種類の在留資格「特定技能1号、2号」(仮称)を設け、来年4月の導入を目指す。
技能実習生(在留期間最長5年)が日本語と技能の試験の両方に合格すれば「特定技能1号」の資格を得られる。在留期間は最長5年で、家族の帯同は認められない。さらに難しい試験に合格すれば「特定技能2号」の資格を得られ、家族の帯同や永住も可能となる。
●電子メール等による労働条件通知書交付が可能に (10月8日)
 労働条件通知書について、従来の書面による交付に代えて電子メールやファクスなどによる交付が可能になる。労働基準法施行規則改正により来年4月から適用。電子メール等による受取りを希望した労働者に限られ、印刷してそのまま書面化できるものに限られる。
電子メール等での受取りを希望しない場合は、これまでどおり書面交付が必要です。

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