経営労務情報 令和1年(2019年) 9月号

お知らせ◆年1回の社会保険料の「定期の変更」は、10月に支払う給与からです。
一人ひとりの保険料が変わっているかご注意ください。
本年は保険料率の変更がございません。
お客様へは改めてお知らせいたします。
◆最低賃金が10月より28円上がり、926円(愛知県)となります。今年も大幅な上昇です。「パート時給の見直し」や「基本給」が最低賃金を下回っていないか、などの注意が必要となります。
◆消費税が10月より変更されます。
見積書、請求書を作成する際の消費税率にご注意ください。詳しくは税理士さんとご相談ください。
◆本年も「労働保険料申告」「社会保険算定基礎届」にご協力いただき誠にありがとうございました。

高齢者の労働災害が増加!
「再考したい職場づくり」
◆労災発生件数の4分の1は高齢者
定年延長や人手不足により働く高齢者が増加しています。今では65歳以上の働く高齢者は労働力人口の12.8%を占めています。こうした中、高齢者の労災事故が増加しています。厚労省「労働災害発生状況(2018年)」では、60歳以上は前年比10.7%増の3万3,246人で、労災全体の4分の1を占めています。
◆防ぐためのカギは「転倒防止対策」
60歳以上の労災で目立つのは転倒事故で37.8%を占めます(全世代では転倒による労災事故は25%程度)。転倒防止対策が労災減少のカギとなりそうです。
段差でつまずく、バランスを崩すなどにより、下肢の筋肉の衰えが影響して、転倒しやすくなります。
また視力や握力・バランス保持能力などの身体機能の低下、身体機能・認知機能の低下に気がつかず、「できる」と過信して無理な動作をして転倒します。
段差をなくす、通路を整頓するなどの対策のほか、本人の認識のズレを正すためのチェックを受けさせることも効果的です。
◆増え続ける「働く高齢者」のために
国は「希望する人が70歳まで働ける機会の確保」を努力義務として企業に課す方針を打ち出しています。高齢者の安全確保に取り組む中小企業を対象とした助成制度も新設される見込みです。

下請取引適正化への取組み
「下請け駆込み寺」の対応
中小企業庁では、下請取引の適正化に向けた取組みとして、平成28年9月発表の「未来志向型の取引慣行に向けて」による3つの基本方針のもと、①「価格決定方法の適正化」、②「コスト負担の適正化」、③「支払条件の改善」を重点とし、親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけないよう徹底を図っています。
具体的には親事業者への立入検査や、下請Gメンによるヒアリング調査の実施などにより下請取引の問題解決に努めています。  
◆下請かけこみ寺とは?
下請取引適正化を目的として、経済産業省 中小企業庁が全国48カ所に設置しています。様々な悩み事相談への対応や裁判外紛争解決手続(ADR)による迅速な解決を行っており、相談員や弁護士が、秘密厳守・相談無料で受けています。
◆かけこみ寺の実施状況(平成30年度)
平成30年度では、相談受付8,381件、弁護士による無料相談513件および裁判外紛争解決手続(ADR)の調停申立18件の案件に対応しています。
◆相談事例
「支払日を過ぎても代金を支払ってくれない」、「原材料が高騰しているのに単価引き上げに応じてくれない」、「発注元から棚卸し作業を手伝うよう要請された」、「お客さんからキャンセルされたので部品が必要なくなったと言って返品された」、「歩引き」と称して、代金から一定額を差し引かれた」、「長年取引をしていた発注元から突然取引を停止させられた」など様々ですが、特に、代金の未払い、次いで取引中止、代金の減額に関する相談が多くあるようです。
公益財団法人全国中小企業振興機関協会の下請かけこみ寺ホームページを参考にしてみるとよいでしょう。

内定辞退率販売事件と
「個人情報保護法」
◆リクナビの「内定辞退率販売事件」
大手就職情報サイト「リクナビ」等を運営する㈱リクルートキャリアが自社サービスを利用している就職活動中の学生の「内定辞退率」をAIで予測し、そのデータを30社以上の企業に販売していたとして、法的・企業倫理的な問題となっています。
8月26日、個人情報保護委員会は、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)第20条の「安全管理措置」を適切に講じず、また同法第23条1項の「個人データを第三者に提供する際に必要な同意」を得ていなかったとして、同社に対し、委員会発足後初となる是正勧告を行いました。
また東京労働局も9月6日、同社が職業安定法および指針の違反として、すべての事業について同法違反がないか確認し、必要な是正や再発防止策を講じることなどを求める指導を行いました。
◆すべての事業者は「個人情報取扱事業者」
改正個人情報保護法(平成29年5月30日施行)により、規模の大小に関わらず、何らかの個人情報を取り扱う事業者には、同法が適用されます。
自社従業員はもちろん、自社の採用活動への応募者や、自社サービスを利用する顧客の個人情報も、適正に取り扱わなければなりません。
◆個人情報保護委員会のQ&A
個人情報保護委員会では、個人情報の取扱いに関する、わかりやすいガイドラインやQ&Aを公表・更新しています。
Q&Aの最新版では、
・防犯目的で、万引き・窃盗等の犯罪行為や迷惑行為に対象を限定した上で、顔認証システムを導入しようとする場合の注意点
・飲食店で、顧客からの予約を受付時に取得した個人情報の取扱い
・「貴社が保有する私の情報すべてを開示せよ」という請求があった場合の対応
など興味深い論点が盛り込まれています。
ほかにも中小企業向けに抜粋した簡易版Q&Aなども公表されています。

賃金等請求権の消滅時効
見直しに向け審議始まる
◆7月1日に検討会報告書公表
厚労省の、賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会は、7月1日に報告書を公表しました。
この報告書は、現在一律2年とされている賃金や年休に関する権利等について、改正民法において短期消滅時効に関する規定が整理されたことを受け、どのように見直すべきか方向性を示したものです。
◆改正民法で消滅時効はどう変わる?
改正民法施行後は、
①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または
②権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効消滅することとなります。
現行の労働基準法115条では、
①「賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権」は2年間、
②労基法の「退職手当の請求権」は5年間
請求を行わない場合においては、時効によって消滅すると規定されています。
改正民法に合わせた場合、未払い賃金訴訟や年休の繰越し等で企業実務に大きな影響を及ぼすため、改正民法とは別に、検討されてきました。
◆対象により異なる見直し案を提示
報告書は、賃金請求権について、「2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」としています。
未払い賃金訴訟等で使用者に支払いが命じられる付加金についても、併せて検討することが適当とされています。
さらに、労働者名簿や賃金台帳等、3年間の保存義務が課される記録の保存についても、併せて検討することが適当、とされています。
なお、年休については賃金と同様の取扱いを行う必要性がないとして、2年を維持する案が示されています。
◆2020年4月から改正される可能性も?
見直しの時期については、
改正民法が2020年4月1日から施行されるのを念頭に置いて、速やかに労働政策審議会で検討すべきとされており、今秋から議論が始まります。
既に経過措置に関する案も2つ示されており、今後の動向が注目されます。
今春から施行された改正労働基準法により労働時間管理の厳格化が求められているところですが、賃金等請求権の消滅時効が改正されれば、万が一未払い賃金が生じたときに重大な影響があるため、自社で適切な管理がなされているかを改めてチェックし、不安な点があれば相談する必要があります。

中小企業の平均夏期賞与額◆三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2019年7月調査の「夏のボーナス見通し」では、中小企業の単純平均ボーナスは約39万円になるという結果でした。
◆今回の調査は、従業員規模5人以上の民間企業が対象です。社員5人未満の企業や、そもそもボーナス制度がない企業は含まれていません。
◆民間企業のボーナス支給額は、企業によってかなりばらつきがあります。
大企業や業績が良い企業では基本給の2~3.5ヵ月分のところもあり、逆に業績が悪い場合は1~1.5ヵ月分の会社もあります。
◆一般財団法人労務行政研究所(東証1部上場企業の2019年夏季賞与・一時金の妥結水準調査)では、夏のボーナスの支給額の平均は約74万円でした。
◆2015年から4年連続で前年比プラスでしたが、昨年の2.4%増加から考えると今年の増加率は0.7%と鈍化しました。

スポット情 報●技能実習めぐり日立に改善命令 
計画通りの実習行わず(9月6日)
出入国在留管理庁と厚労省は、技能実習生を計画と違う作業をさせたとして、日立製作所を技能実習適正化法に基づく改善命令を出した。実習生を紹介した監理団体についても違反を把握していたが対応しなかった可能性があるとみて調査をしている。
●7月実質賃金は前年比0.9%減 
減少は7カ月連続(9月6日)
厚労省の毎月勤労統計調査(速報)では、7月の実質賃金は前年比0.9%減少、前年同月を7カ月連続で下回った。現金給与総額が前年同月を0.3%下回り2カ月ぶりにマイナスに転じた一方、消費者物価指数が同0.6%上昇し実質賃金を押し下げた。
●建設人材データベース 
活用企業に優遇措置(8月29日)
国交省は、建設作業員の技能や職歴を一元的に把握するデータベース「建設キャリアアップシステム」を活用する企業を、2020年度以降の公共事業の入札資格審査で優遇する方針を固めた。建設会社側のメリットを高め、国が普及を後押しすることで、業界の人手不足解消につなげる狙い。
●「経済成長と労働参加が進めば5割維持」年金の検証(8月28日)
厚労省は、公的年金財政の今後100年間程度の見通しである「財政検証」を公表。法律では給付水準を標準モデル世帯で現役世代の収入の50%以上を確保すると定めている。(現在は61.7%)今回は6つのケースを示し、経済成長と労働参加が進む3ケースで50%をわずかに上回ったが、一定程度進むケースでは40%台、進まないケースでは30%台となった。
●6年連続で「就職率」が「離職率」を上回る 
雇用動向調査(8月22日)
厚労省の2018年の雇用動向調査では、働き手のうち就職率(就職者や転職で仕事に就いた人の割合)は15.4%(前年比0.6ポイント減)で、仕事から離れた人を示す離職率(14.6%・同0.3ポイント減)を6年連続で上回った。仕事に就いた男女別では女性が18.5%で、男性の12.9%を上回った。
●転職で37%が「賃金増加」 
雇用動向調査(8月22日)
厚労省の2018年雇用動向調査では「転職で賃金が増えた人」の割合が37%となった。これは比較可能な2004年以降で最高水準。年齢別では20~30代ほど転職で賃金が増加した割合が高く、ほぼ4割を超えた。一方50代以上では、下がる割合が高い。これは定年後再雇用や子会社出向などが要因とみられる。
就業形態別ではパートタイマ―への割合が最も高く41.8%にのぼった。
●年金75歳開始も可能に(8月12日)
厚労省は公的年金の受給開始時期を本人の選択で75歳まで繰り下げられるようにする方針を固めた(現行法では70歳まで)。 
来年の通常国会に法案を提出する。繰り下げるほど年金月額は増える仕組みで、75歳の場合、原則の65歳で受給を始めた時よりも約1.8倍に増額される見込み。長く働く高齢者の資産作りを支援する狙いがある。

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